「かぐやっほー!今日はかぐやが小料理屋やるよ!」
「いろっぴー。いろPでーす。本日はコラボです」
「ヤオヨロ~!ヤチヨだよ~♪」
「よー、ジュンヨウだ。今日はゲストとして来店してま~す」
配信タイトルは【一日限定】小料理かぐや開店♪【かぐやいろP×JunY0u×月見ヤチヨ】
「今日はかぐやたちが料理担当!」
「俺は客として飲む。前回の居酒屋隼鷹の逆バージョンだ」
「そう!かぐやたちが隼斗に料理を振る舞う!美味しいよ!!」
「……そういえば聞いてなかったんだが、今日のメニューはなんだ」
「ひ・み・つ!」
「えっ」
「出てきてからのお楽しみ!」
「いろPは知ってんの?」
「……うん、まあ。ちょっと手伝ったし」
「ヤチヨは」
「知ってるし、ヤッチョも手伝ったよ」
「俺だけ知らんの?」
「そう!」
……なんで嬉しそうに言うんだこいつは。
「ちなみにアレルギーとかはないから」
「それは俺のセリフなんだよな。ねえけどよ」
「飲み物は?今日は俺が決めていいんだろ」
「もちろん!」
「小料理ってなると、ジャンルは和食ってことで良いのか?」
「そのくらいなら答えてあげても良いんじゃない?かぐや」
「そだね!今日は和食オンリー!」
「じゃ、日本酒くれ。キッチンの下の棚に入ってるから」
「らじゃー!」
かぐやがキッチンへ飛んでいく。
ドタドタとした足音。
しばらくして。
「あったよ!」
「持ってきてくれ。今日はひやで飲む」
「らじゃー!」
「……居酒屋隼鷹の時、一杯で抑えてたのにね」
彩葉が小声で言う。
「あん時は俺がホストだったからな、配信切れなくなったら目も当てられん。今日はゲストで俺の枠じゃねえからな」
「客の自覚があるんだ」
「当たり前だろ」
かぐやが一升瓶を持ってくる。
グラスに注ぐと、ふわりと米の香りが漂った。
「……良いな」
思わず口元が緩む。
「「「かんぱーい!」」」
「おう、乾杯」
しばらく雑談しながら飲んでいると、キッチンから良い匂いがしてきた。
「……何作ってんだ」
「まだ秘密!」
「匂いで大体分かるんだが」
「言わないで!!」
しばらくして、かぐやが皿を持って出てきた。
「はい!まずはお通しで~す!」
皿に乗っているのは、だし巻き卵。
「……これは」
「ジュンヨウが前に作ってたやつ!かぐやも作れるけど、味付けをジュンヨウと同じにするのに苦労したんだ!」
「……見た目は悪くないな」
一口。
「……」
もう一口。
「……美味いじゃん」
「ほんと!?」
かぐやがぱっと顔を輝かせる。
「ちゃんとだし巻きになってる。巻き方も綺麗だ」
「えへへへへ!!褒められた!!」
「彩葉に教わったの。だし巻き卵、彩葉が得意になったから!」
「そうか」
彩葉の方を見る。
「……なに」
「いや、お前が教えられる側になったのかと思って」
「……うるさい」
「俺が作ったのより美味い気がするな」
「それは気のせいでしょ~」
「……まあ、人が作ってくれた料理ってバイアスかかってる可能性はあるか」
次々と料理が出てくる。
肉豆腐。鶏の塩焼き。小松菜のおひたし。
どれもちゃんと食べられる仕上がりだった。
日本酒が進む。
「かぐや、鶏美味いぞ」
「ほんと!?」
「皮がパリッとしてる。火の通し方が良い」
「やった!!」
「いろP、この肉豆腐の味付けなんだけど」
「味見はしたけど、どっか変だった?」
「バランスが良い。甘みと塩気がちゃんと乗ってる」
「……そう?」
「そうだ」
グラスが空いていた。
かぐやがお代わりを注いでくれる。
「はい隼斗!」
「ん、ありがとよ」
「んえっ」
「どうした」
「……素直にありがとって言った」
「なにが変なんだ。お代わり注いでもらったから礼言っただけだろ」
「いや、そうなんだけど……」
「……ヤチヨ、おひたしなんだけど」
「食べた!」
「出汁がちゃんと染みてる。小松菜の歯ごたえも残ってる。よく出来てる」
「ありがと!……ん?なんでヤチヨがおひたし作ったってわかったの?」
「分かるだろ。味付けがお前の好みだし」
「……」
「……そういや肉豆腐も私が手伝ったってバレてた」
「俺が食う前にそわついてたからな」
グラスが空いていた。
かぐやがお代わりを注ごうとして、一升瓶を傾ける。
「ありゃ……空だ」
「そうか。……呑み足りねえな」
「え、もう一本出す?」
「頼んだ」
「ジュンヨウ、大丈夫?」
「頭は動いてる」
「でもなんかいつもと違う」
「なにが違うよ」
「……いつも優しいけど、なんかそれが表に出てきてる」
「普段通りのつもりなんだけどな」
「普段通りじゃないよ?」
かぐやが二本目を持ってくる。
注ぐ。
飲む。
「……うまいな。楽しいよ、今日」
「ホント!?」
〆のご飯が出てきた頃、二本目の一升瓶はすでに三分の一を切っていた。
さらに飲み進んだ頃。
かぐやが〆のご飯を持って来た。
白米とみそ汁。
シンプルだった。
「かぐやのおみそ汁!飲んでみて!」
一口。
「……」
「どうどう?」
「……出汁がちゃんと取れてる。昔、油揚げ好きって言ったの憶えてたのか?」
「うん!出汁が染みたやつが好きって言ってたよね」
「……家で毎朝これ飲めたら幸せだな」
かぐやが固まった。
「いま、なんて言ったの?」
「出汁がちゃんと取れてると言った」
「そのあと」
「油揚げ好きって言ったの憶えてたのかって」
「そのあと!最後!」
「家で毎朝飲めたら幸せだと言った」
「……」
にやけ面のかぐやの目尻に涙が浮かんでいる。
「なんで泣いてんの?」
「だって……!そんなこと言われたら……!!」
「事実を言っただけなんだけど」
「……いろP」
今度は彩葉の方を向く。
「な、なに」
「今日、料理に関わってくれてありがとな。かぐやのサポートしながら、自分でも動いてくれてた」
「……え?」
「全部見えてた。偉いと思う」
「……な、なんか変だよ?今日」
「何が変なんだよ。思ったことを言ってるだけだ」
「……ヤチヨも」
「え、わたしも?」
「おひたし、ちゃんとできてた。火の通りも揃ってたし、色も鮮やかなままだった」
「……簡単だからね」
「シンプルだからこそ作り手の腕が試されるからな」
ヤチヨが頬を押さえた。
「……ジュンヨウ、今日おかしい」
「おかしくない」
「普段言わないこと言ってる」
「普段も思ってるが言う機会がないだけだ」
「……お前ら三人、本当によく頑張ってると思う。いつも助けられてる」
グラスを持ったまま、静かに言った。
「かぐやは覚えるのが早い。ヤチヨは気が利く。いろPはサポートが細かい。三人揃ってると、なんでも出来るよな」
三人が黙った。
しばらく誰も何も言わなかった。
「……三人じゃないよ」
「あん?」
かぐやが小さく言った。
「三人じゃなくて!隼斗も入れて、四人じゃないと!」
「ん、んん~……」
照れくさくて、ポリポリと頬を掻いた。
「……あんまそういうこと言うな、恥ずい」
「どの口が言ってんの!?」
「……次は素面でも言いなよ」
彩葉がぼそっと言った。
「え?」
「普段も思ってるなら、普段も言えばいいじゃない」
「……」
グラスを置く。
「……検討する」
「……ジュンヨウ、何杯飲んだの?」
「五……いや六?」
「「「六杯!!」」」
「普段あんまり飲まないからな」
「日本酒でそんだけ吞まないと褒め魔にならないの!?」
「褒め魔って言うな。思ってることを言ってるだけだって」
「ジュンヨウがいらん事喋りそうだから、今回はここまで!」
「いらんことってなんだよ、褒めてるのに」
「はいはいおつかれ~!」
と、かぐやが強引に配信を〆た。
「……お水持ってくるね」
「いらんけど」
「顔が赤いし、言動がふわふわだから。次からはチェイサー挟みなさい」
「そうか。気い使わせて悪ぃな」
彩葉が台所に向かう。
かぐやがそっと隣に座ってきた。
「ねえ、隼斗」
「なんだ」
「さっき言ってたやつ、素面でも聞きたいなぁ」
「……また今度な」
「絶対!?」
「……絶対だ」
ヤチヨが反対側からそっと寄ってくる。
「ヤッチョも聞きたいな~?」
「……分かった」
水を持ってきた彩葉が俺たち三人の様子を見て、小さく溜息をついた。
「……あんた六杯で駄目になるんだね」
「駄目になってない」
「普段に比べたら、十分駄目になってる」
でも、そういうのも良いんじゃない?と、その口元は少し笑っていた。
大暴れってほど暴れなかったな……。
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