③ 雑料理配信
「よー。今日は疲れた。でも腹は減った。冷蔵庫の話をする」
配信タイトルは【雑料理】冷蔵庫の残り物なんとかする【JunY0u】
「研究所が繁忙期でな。まあそれだけだ。とりあえず冷蔵庫見るぞ」
カメラが冷蔵庫の中に向けられる。
「……卵が四個。白菜の残り。豚コマ。あとなぜかゴルゴンゾーラが入ってる」
「多分そう、食べかけだし。『買ったはいいけど自分では食べ切れなかった~』ってやつだろ」
「ま、うちだと名前を書いてない食材は使っていいルールなので」
カメラを引く。
「あとはパンが半斤と、調味料は大概のものは揃ってる。これで何とかするか~」
「テーマは『つじつま合わせ』だ。冷蔵庫の整理も兼ねてる」
「まず白菜と豚コマの中華炒めから行くか」
フライパンを出す。
ごま油を引いて火をつける。
「豚コマは先に炒める。白菜は炒め物にするときは大きめにちぎった方が食感が残る」
「白菜が多いからちょっとかさ張るけど、火通したら萎れるから心配しなくていい」
「……これ前も言った気ぃすんな」
手際よく炒めていく。
豚コマに焼き色がつく。
白菜を投入。
じゅわっ、という音。
「醤油、みりん、鶏がらスープの素、豆板醤で味付け。豆板醤は少なめにしとく」
「今日は疲れてるから辛いの無理だ」
「卵も入れる。半熟にしとく方が全体がまとまる」
溶き卵を流し込む。
さっと混ぜて火を止める。
「……出来た」
皿に盛る。
カメラを向ける。
白菜と豚コマの炒め物。
卵がふんわり絡まっている。
「ゴルゴンゾーラはこれから。パンを焼く」
トースターにパンを入れる。
「ゴルゴンゾーラってクセが強いから、そのままだとしんどいんだよな」
「でも蜂蜜との相性が良い。蜂蜜の甘みでチーズの塩気と風味が落ち着く」
トースターが鳴る。
焼けたパンの上にゴルゴンゾーラを乗せる。
蜂蜜をかける。
「……うん、これだ」
「いただきます」
炒め物から食べ始める。
「……うん、悪くない。疲れた日に醤油と卵は正解だな。豆板醤が微妙にアクセントになってる」
コメントから。
「先に寝てる。今日は発表会だったから疲れてんだろ」
「当たり前だろ。疲れてる時は寝た方が良い」
ゴルゴンゾーラトーストを一口。
「……これ、正解だったな。ゴルゴンゾーラを置いていったやつが正しい」
「チーズの塩気と蜂蜜の甘みが、疲れた時にちょうど良い。濃いけど重くない」
しばらく黙って食べる。
コメント欄がゆっくり流れる。
「……まあ、一人の飯もたまには良いな」
「そういうつもりじゃない。……ただ、最近ずっと賑やかだから」
箸を置いて、少しだけコメント欄を見る。
「家に帰ったら誰かしらいて、飯の時間もだいたい誰かと食ってて」
「それは普通に良いことなんだけど」
少し間が空く。
「……たまにこういう時間も必要だよな、って思っただけだ」
「コメント欄がうるせえな」
苦笑しながら炒め物の最後を食べる。
「別に深い意味はない。ただ飯食いながら駄弁りたかっただけだ」
「小せえ頃から食卓は賑やかだったもんでな」
「……お前らとこういうのも悪くないな」
皿が空になった。
トーストも最後の一口。
「……うまかった。冷蔵庫の整理にもなった。かぐやのゴルゴンゾーラが活きたわ」
「そんじゃ、食ったし寝る。おつかれ~」
④ ガチ料理配信
「よー、ジュンヨウだ。今日はガチ料理配信。ゲストもいる」
「かぐやっほー!今日は料理するよ!!」
「ヤオヨロ~♪ヤチヨだよ~」
タイトルは【ガチ料理】ヤチヨとかぐやと三人でちゃんと作る【JunY0u×かぐや×月見ヤチヨ】
「経緯から説明すると、二人から『一緒に料理したい』ってリクエストが来た」
「ということで今日は俺がメインで作りつつ、二人にも手伝ってもらう形だ」
「やる気満々!!かぐやに任セロリ!」
「楽しみにしてたんだ~♪」
「まずメニューから決めよう。二人は何食いたい?」
「ミートドリア!!」
かぐやが即答した。
「ミートドリアか。それは」
「かぐやたちと最初に食べた料理じゃん!覚えたくって!」
「ヤチヨは?」
「隼斗のハンバーグ……と、プリン!」
「欲張りだなお前ら」
「全部作るけどさぁ。ハンバーグはソースをおろしポン酢にする。煮込みじゃなくて焼きだ」
「ミートソースはドリアと兼用できるから、今日はそっちで行く」
「やった!!」
「プリンは仕込みが要るから最初に作っとく。冷やしてる間にドリアとハンバーグだ」
「段取りが良い~」
「当たり前だろ、三品一度にやんだから」
「じゃあ始めるぞ。かぐやは下ごしらえ担当。玉ねぎを炒めやすい大きさに刻んでくれ」
「らじゃー!」
「ヤチヨは盛り付けと味見担当」
「あと様子見ながら手が必要なとこは言うから、その時に入ってくれ」
「分かった!任せて」
「キャラ的に不安なのわかるけどよ、コイツ普通に料理できるからな。和食なら俺より上だし」
「自分のチャンネルでも料理配信やってるんだけどな~?」
「ウチのチャンネルに来たとき好き放題暴れてるからだろ」
「それか~!」
かぐやが玉ねぎを刻み始める。
最初は慎重に。
少しずつリズムが出てくる。
「……上手いわ~やっぱ」
「えへへ!あ、玉ねぎは切る前に冷やしておくと涙が出にくくなるよ!」
プリンの仕込みに入る。
卵を割って、牛乳と砂糖を合わせて煮詰め、バニラエッセンスも加えて卵液を作る。
「カラメルは焦がしすぎると苦くなる。色が濃い茶色になってきたら火を止めて型に流す」
「こわい」
「怖くはねえだろ。ちゃんと見てれば大丈夫だ」
完成したカラメルをプリンカップへ。
カラメルが冷めたことを確認してから、卵液を流し入れる。
蒸し器に入れて、弱火で三十分程度。
三十分経ったら火を止めて、更にもう十分蒸らす。
「これで後は荒熱取って冷やすだけだ」
「はや~い!」
「慣れてるからな」
次にミートソースの仕込み。
かぐやが刻んだ玉ねぎフライパンへ。
「炒めるぞ。玉ねぎは飴色になるまで。急がなくていいから弱火でじっくり」
「分かった!」
「奥の部屋へどうぞ~」
「ステーキ定食じゃねえのよ」
じゅわっ、という音。
玉ねぎが熱を帯びていく。
「ヤッチョ、味見しても良い?」
ヤチヨがフライパンを覗き込む。
「まだ炒めてる途中だぞ。玉ねぎだけだし」
「でも良い匂いする~」
「匂いだけにしとけ」
「……ん、でも一口だけ」
つまみ食いしようとするヤチヨを手で制す。
「待~てって」
「むぅ」
飴色になった玉ねぎの半分をボウルに移す。
ハンバーグ用に取っておく。
フライパンに残った方の玉ねぎにひき肉を加えて炒める。
トマト缶。
ウスターソース。
塩コショウで調整して。
「……よし、ソース出来た。味見して良いぞ」
「やった!!」
ヤチヨがスプーンで一口。
「……ん」
目を細める。
「美味しい」
「まあ、ちゃんと作ったからな」
「でもまだ途中でしょ?」
「ソースはここで完成だ。後はバターライスに乗せてチーズ乗せてオーブンに入れるだけだから」
「でも美味しい」
「分かった分かった」
かぐやもスプーンで一口。
「ん~!!やっぱり隼斗のミートソースだ!!かぐや覚えてる!!」
「10年前と同じ作り方だからな」
「変えてないの!?」
「変える必要がなかったから」
バターライスを作って、ドリアの仕上げに入る。
チーズを乗せてオーブンへ。
その間にハンバーグの成形。
ひき肉と炒めた玉ねぎをボウルへ。
「かぐや、ここ手伝えるか。捏ねるのは力がいるから」
「やる!!」
「ヤチヨはソース用の大根おろしてくれるか?」
「任セロリ~」
かぐやが手を洗って袖をまくり、肉だねを捏ね始める。
「しっかりやれよ、空気を抜くように」
「こう?」
「そう。粘りが出るまで続けろ」
「むぅ~……」
一生懸命捏ねるかぐや。
ヤチヨが横で大根をすりおろしながら見ている。
「かぐや、
「むぅ~……!頑張ってる!!」
「……これ注意するべきか?」
「……上手く出来てるぞ」
「ほんと!?」
「ちゃんと粘り出てる。形整えてくれ」
かぐやが楕円形に整える。
中心をへこませた、綺麗なハンバーグの形になった。
「良いな」
「えへへ!!かぐやが作ったハンバーグだ!!」
フライパンで焼く。
表面に焼き色がついてきた。
蓋をして蒸し焼きに。
その間にオーブンからドリアが取り出す。
チーズに焼き色がついて、湯気が立ちのぼる。
「……おっけ、出来たな」
皿に盛る。
ミートドリア。
焼きたてのチーズがとろけている。
「わあ!!」
かぐやが目を輝かせた。
「かぐやたちが作ったやつだ!!」
「俺が作ったんだが」
「一緒に作ったじゃん!!」
「……まあ、そうだな」
ハンバーグも焼き上がる。
大根おろしとポン酢を合わせたソースをかける。
「いただきます」
「「いただきます!!」」
かぐやが一口。
「んまーーーい!!!やっぱり最初に食べた時と同じ味だ!!でもあの時より美味しい!!」
「ちゃんとバターライスにしたし、チーズの焼き加減も今回の方が丁度良かったからな」
「ジュンヨウが作ると毎回美味しい!」
「そりゃどうも」
ヤチヨがハンバーグを一口。
「……おろしポン酢、合う」
「さっぱりするからハンバーグには合いやすいんだよ」
「隼斗のハンバーグ、好きだな」
食べ進めていくと。
「そういえばさ」
ヤチヨがスプーンを置いて、少し声を落とした。
「一番食べたかったのはプリンだったんだ、実は」
「それ最初に言えよ」
「でもミートドリアも食べたかったし、ハンバーグも食べたかったから、全部にした」
「……プリン、食べるか」
冷蔵庫からプリンを取り出す。
それぞれの前に一つずつ置く。
「……」
ヤチヨが一口食べた。
何も言わなかった。
もう一口。
「……ずっと食べたかった」
静かに言った。
コメント欄の流れが少し遅くなった。
「ヤチヨ~!!」
かぐやがヤチヨに抱き着いた。
「わっ、かぐや?」
「ヤチヨが美味しそうに食べてるの嬉しい!!」
「……うん。美味しい」
ヤチヨが少しだけ笑った。
「また食べたいな」
ジュンヨウは何も言わなかった。
ただ、自分のプリンを一口食べた。
「……うん、上手く出来てんな」
食べ終わって。
「……また作るか、そしたら。今度はいろPも誘って」
「「うん!!」」
声が揃った。
「今日はここまで。おつかれ~」
「おつかれ~!!また作ろうね!!」
「またね~♪」
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活動報告の方でネタの募集も始めておりますので、ご一読いただければと思います。