今日も世話を焼く   作:ディアーリーズ

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Ex.ジュンヨウの配信─10 years after─②

③ 雑料理配信

 

「よー。今日は疲れた。でも腹は減った。冷蔵庫の話をする」

配信タイトルは【雑料理】冷蔵庫の残り物なんとかする【JunY0u】

 

─きた

─疲れたって言ってる

─雑料理配信だ

─深夜帯じゃん

 

「研究所が繁忙期でな。まあそれだけだ。とりあえず冷蔵庫見るぞ」

 

カメラが冷蔵庫の中に向けられる。

 

「……卵が四個。白菜の残り。豚コマ。あとなぜかゴルゴンゾーラが入ってる」

─ゴルゴンゾーラ

─なぜか

─かぐやか?

─かぐやちゃんが買ったやつでしょ

 

「多分そう、食べかけだし。『買ったはいいけど自分では食べ切れなかった~』ってやつだろ」

「ま、うちだと名前を書いてない食材は使っていいルールなので」

 

カメラを引く。

 

「あとはパンが半斤と、調味料は大概のものは揃ってる。これで何とかするか~」

「テーマは『つじつま合わせ』だ。冷蔵庫の整理も兼ねてる」

─つじつま合わせ

─テーマ設定するとこが好き

─ゴルゴンゾーラどうするんだろ

 

「まず白菜と豚コマの中華炒めから行くか」

 

フライパンを出す。

ごま油を引いて火をつける。

 

「豚コマは先に炒める。白菜は炒め物にするときは大きめにちぎった方が食感が残る」

「白菜が多いからちょっとかさ張るけど、火通したら萎れるから心配しなくていい」

「……これ前も言った気ぃすんな」

─帝の家で言ってた奴だ

 

手際よく炒めていく。

豚コマに焼き色がつく。

白菜を投入。

じゅわっ、という音。

 

「醤油、みりん、鶏がらスープの素、豆板醤で味付け。豆板醤は少なめにしとく」

「今日は疲れてるから辛いの無理だ」

─疲れてる時に辛いもの避けるの分かる

─自己管理してる

 

「卵も入れる。半熟にしとく方が全体がまとまる」

 

溶き卵を流し込む。

さっと混ぜて火を止める。

 

「……出来た」

 

皿に盛る。

カメラを向ける。

白菜と豚コマの炒め物。

卵がふんわり絡まっている。

 

─うまそう

─シンプルだけどそれが良い

─ゴルゴンゾーラはどうした

 

「ゴルゴンゾーラはこれから。パンを焼く」

 

トースターにパンを入れる。

 

「ゴルゴンゾーラってクセが強いから、そのままだとしんどいんだよな」

「でも蜂蜜との相性が良い。蜂蜜の甘みでチーズの塩気と風味が落ち着く」

 

トースターが鳴る。

焼けたパンの上にゴルゴンゾーラを乗せる。

蜂蜜をかける。

 

「……うん、これだ」

─ゴルゴンゾーラ蜂蜜トースト

─それ食べたことある

─うまいやつ

─冷蔵庫の整理でこれが出てくるのがジュンヨウ

 

「いただきます」

 

炒め物から食べ始める。

 

「……うん、悪くない。疲れた日に醤油と卵は正解だな。豆板醤が微妙にアクセントになってる」

 

コメントから。

─いろPは何してるの?

─今日一緒に食べないの?

 

「先に寝てる。今日は発表会だったから疲れてんだろ」

─発表会

─研究所の?

─気遣いがある

─起こさないようにしてるじゃん

 

「当たり前だろ。疲れてる時は寝た方が良い」

 

ゴルゴンゾーラトーストを一口。

 

「……これ、正解だったな。ゴルゴンゾーラを置いていったやつが正しい」

─かぐや正解だった

─感謝されてるかぐや

 

「チーズの塩気と蜂蜜の甘みが、疲れた時にちょうど良い。濃いけど重くない」

 

しばらく黙って食べる。

コメント欄がゆっくり流れる。

 

「……まあ、一人の飯もたまには良いな」

─寂しそうにも聞こえる

─一人がたまには良いは強がりでは

─どっちだ

 

「そういうつもりじゃない。……ただ、最近ずっと賑やかだから」

 

箸を置いて、少しだけコメント欄を見る。

 

「家に帰ったら誰かしらいて、飯の時間もだいたい誰かと食ってて」

「それは普通に良いことなんだけど」

 

少し間が空く。

 

「……たまにこういう時間も必要だよな、って思っただけだ」

─「それは普通に良いことなんだけど」が大事

─全然寂しくないんだな

─賑やかさを肯定した上でのソロ飯

─なんかちゃんと生活してる感じがする

 

「コメント欄がうるせえな」

 

苦笑しながら炒め物の最後を食べる。

 

「別に深い意味はない。ただ飯食いながら駄弁りたかっただけだ」

「小せえ頃から食卓は賑やかだったもんでな」

「……お前らとこういうのも悪くないな」

─お前らとも言った

─リスナーも込みで「賑やか」なんじゃん

─嬉しい

 

皿が空になった。

トーストも最後の一口。

 

「……うまかった。冷蔵庫の整理にもなった。かぐやのゴルゴンゾーラが活きたわ」

─ちゃんと感謝されてるかぐや

 

「そんじゃ、食ったし寝る。おつかれ~」

─おつかれ~

─ゆっくり休んでね

─今日の配信好きだった

─また雑料理配信やって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

④ ガチ料理配信

「よー、ジュンヨウだ。今日はガチ料理配信。ゲストもいる」

「かぐやっほー!今日は料理するよ!!」

「ヤオヨロ~♪ヤチヨだよ~」

 

タイトルは【ガチ料理】ヤチヨとかぐやと三人でちゃんと作る【JunY0u×かぐや×月見ヤチヨ】

─ガチ料理配信だ

─かぐやとヤチヨが料理するの!?

─三人で作るのか

─楽しみすぎる

 

「経緯から説明すると、二人から『一緒に料理したい』ってリクエストが来た」

「ということで今日は俺がメインで作りつつ、二人にも手伝ってもらう形だ」

「やる気満々!!かぐやに任セロリ!」

「楽しみにしてたんだ~♪」

「まずメニューから決めよう。二人は何食いたい?」

「ミートドリア!!」

 

かぐやが即答した。

 

「ミートドリアか。それは」

「かぐやたちと最初に食べた料理じゃん!覚えたくって!」

─最初に作ってもらった料理か

─それを作りたいのか

─エモい

 

「ヤチヨは?」

「隼斗のハンバーグ……と、プリン!」

「欲張りだなお前ら」

─三品!?

─ヤチヨの食欲が

 

「全部作るけどさぁ。ハンバーグはソースをおろしポン酢にする。煮込みじゃなくて焼きだ」

「ミートソースはドリアと兼用できるから、今日はそっちで行く」

「やった!!」

「プリンは仕込みが要るから最初に作っとく。冷やしてる間にドリアとハンバーグだ」

「段取りが良い~」

「当たり前だろ、三品一度にやんだから」

─三品同時進行する気だ

─料理人の顔してる

 

「じゃあ始めるぞ。かぐやは下ごしらえ担当。玉ねぎを炒めやすい大きさに刻んでくれ」

「らじゃー!」

「ヤチヨは盛り付けと味見担当」

「あと様子見ながら手が必要なとこは言うから、その時に入ってくれ」

「分かった!任せて」

─役割分担が上手い

─かぐやに刃物を持たせて大丈夫か

 

「キャラ的に不安なのわかるけどよ、コイツ普通に料理できるからな。和食なら俺より上だし」

「自分のチャンネルでも料理配信やってるんだけどな~?」

「ウチのチャンネルに来たとき好き放題暴れてるからだろ」

「それか~!」

 

かぐやが玉ねぎを刻み始める。

最初は慎重に。

少しずつリズムが出てくる。

 

「……上手いわ~やっぱ」

「えへへ!あ、玉ねぎは切る前に冷やしておくと涙が出にくくなるよ!」

─かぐやちゃん見くびっててゴメン

─豆知識まで

 

プリンの仕込みに入る。

卵を割って、牛乳と砂糖を合わせて煮詰め、バニラエッセンスも加えて卵液を作る。

 

「カラメルは焦がしすぎると苦くなる。色が濃い茶色になってきたら火を止めて型に流す」

「こわい」

「怖くはねえだろ。ちゃんと見てれば大丈夫だ」

 

完成したカラメルをプリンカップへ。

カラメルが冷めたことを確認してから、卵液を流し入れる。

 

蒸し器に入れて、弱火で三十分程度。

三十分経ったら火を止めて、更にもう十分蒸らす。

 

「これで後は荒熱取って冷やすだけだ」

「はや~い!」

「慣れてるからな」

 

次にミートソースの仕込み。

かぐやが刻んだ玉ねぎフライパンへ。

 

「炒めるぞ。玉ねぎは飴色になるまで。急がなくていいから弱火でじっくり」

「分かった!」

「奥の部屋へどうぞ~」

「ステーキ定食じゃねえのよ」

 

じゅわっ、という音。

玉ねぎが熱を帯びていく。

 

「ヤッチョ、味見しても良い?」

 

ヤチヨがフライパンを覗き込む。

 

「まだ炒めてる途中だぞ。玉ねぎだけだし」

「でも良い匂いする~」

「匂いだけにしとけ」

「……ん、でも一口だけ」

 

つまみ食いしようとするヤチヨを手で制す。

 

「待~てって」

「むぅ」

─我慢できないヤチヨ

─食い意地はかぐやと同じ

 

飴色になった玉ねぎの半分をボウルに移す。

ハンバーグ用に取っておく。

 

フライパンに残った方の玉ねぎにひき肉を加えて炒める。

トマト缶。

ウスターソース。

塩コショウで調整して。

 

「……よし、ソース出来た。味見して良いぞ」

「やった!!」

 

ヤチヨがスプーンで一口。

 

「……ん」

 

目を細める。

 

「美味しい」

「まあ、ちゃんと作ったからな」

「でもまだ途中でしょ?」

「ソースはここで完成だ。後はバターライスに乗せてチーズ乗せてオーブンに入れるだけだから」

「でも美味しい」

「分かった分かった」

 

─でも美味しいを繰り返すヤチヨ

─隼斗が苦笑してる

 

かぐやもスプーンで一口。

 

「ん~!!やっぱり隼斗のミートソースだ!!かぐや覚えてる!!」

「10年前と同じ作り方だからな」

「変えてないの!?」

「変える必要がなかったから」

─10年間変えてないのか

─それが美味しいから変えないの分かる

 

バターライスを作って、ドリアの仕上げに入る。

チーズを乗せてオーブンへ。

その間にハンバーグの成形。

ひき肉と炒めた玉ねぎをボウルへ。

 

「かぐや、ここ手伝えるか。捏ねるのは力がいるから」

「やる!!」

「ヤチヨはソース用の大根おろしてくれるか?」

「任セロリ~」

 

かぐやが手を洗って袖をまくり、肉だねを捏ね始める。

 

「しっかりやれよ、空気を抜くように」

「こう?」

「そう。粘りが出るまで続けろ」

「むぅ~……」

 

一生懸命捏ねるかぐや。

ヤチヨが横で大根をすりおろしながら見ている。

 

「かぐや、頑張(が~んば)れ♡頑張(が~んば)れ♡」

「むぅ~……!頑張ってる!!」

「……これ注意するべきか?」

─かぐやが本気で捏ねてる

─ヤチヨが応援してる

─応援してるんだけどさ

─今日はこれで良いや

 

「……上手く出来てるぞ」

「ほんと!?」

「ちゃんと粘り出てる。形整えてくれ」

 

かぐやが楕円形に整える。

中心をへこませた、綺麗なハンバーグの形になった。

 

「良いな」

「えへへ!!かぐやが作ったハンバーグだ!!」

 

フライパンで焼く。

表面に焼き色がついてきた。

蓋をして蒸し焼きに。

その間にオーブンからドリアが取り出す。

チーズに焼き色がついて、湯気が立ちのぼる。

 

「……おっけ、出来たな」

 

皿に盛る。

ミートドリア。

焼きたてのチーズがとろけている。

 

「わあ!!」

 

かぐやが目を輝かせた。

 

「かぐやたちが作ったやつだ!!」

「俺が作ったんだが」

「一緒に作ったじゃん!!」

「……まあ、そうだな」

─否定しなかった

─「まあそうだな」が全て

─三人で作ったんだな

 

ハンバーグも焼き上がる。

大根おろしとポン酢を合わせたソースをかける。

 

「いただきます」

「「いただきます!!」」

 

かぐやが一口。

 

んまーーーい!!!やっぱり最初に食べた時と同じ味だ!!でもあの時より美味しい!!」

「ちゃんとバターライスにしたし、チーズの焼き加減も今回の方が丁度良かったからな」

「ジュンヨウが作ると毎回美味しい!」

「そりゃどうも」

 

ヤチヨがハンバーグを一口。

 

「……おろしポン酢、合う」

「さっぱりするからハンバーグには合いやすいんだよ」

「隼斗のハンバーグ、好きだな」

─ヤチヨが静かに喜んでる

 

食べ進めていくと。

 

「そういえばさ」

 

ヤチヨがスプーンを置いて、少し声を落とした。

 

「一番食べたかったのはプリンだったんだ、実は」

「それ最初に言えよ」

「でもミートドリアも食べたかったし、ハンバーグも食べたかったから、全部にした」

─全部食べたかったは分かる

─プリンが一番なの笑う

 

「……プリン、食べるか」

 

冷蔵庫からプリンを取り出す。

それぞれの前に一つずつ置く。

 

「……」

 

ヤチヨが一口食べた。

何も言わなかった。

もう一口。

 

「……ずっと食べたかった」

 

静かに言った。

コメント欄の流れが少し遅くなった。

 

─ずっと

─ヤッチョにとっての「ずっと」の長さ

─泣きそう

「ヤチヨ~!!」

 

かぐやがヤチヨに抱き着いた。

 

「わっ、かぐや?」

「ヤチヨが美味しそうに食べてるの嬉しい!!」

「……うん。美味しい」

 

ヤチヨが少しだけ笑った。

 

「また食べたいな」

 

ジュンヨウは何も言わなかった。

ただ、自分のプリンを一口食べた。

 

「……うん、上手く出来てんな」

─ジュンヨウが自分で作って自分で褒めた

─でも照れ隠しだよな

─二人のために作ったやつじゃん

 

食べ終わって。

 

「……また作るか、そしたら。今度はいろPも誘って」

「「うん!!」」

 

声が揃った。

 

─揃った

─次回も楽しみすぎる

─また見たい

 

「今日はここまで。おつかれ~」

「おつかれ~!!また作ろうね!!」

「またね~♪」

─おつかれ~

─ガチ料理配信また来てください

─今日の配信好きだった

─ヤチヨのプリンのシーン忘れられない

 

 

 

 




海の坊主さん、白米50%さん、ROSOさん、感想いただきありがとうございます。

お気に入り登録いただいた方々もありがとうございます。
とても励みになります。

活動報告の方でネタの募集も始めておりますので、ご一読いただければと思います。
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