今日も世話を焼く   作:ディアーリーズ

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Ex.ジュンヨウの配信─10 years after─③

⑤ ゲリラ歌枠

 

「よー、ジュンヨウだ。深夜に歌いたくなった、それだけだ」

 

配信タイトルは【ゲリラ歌枠】急に歌いたくなった【JunY0u】

─きた

─ゲリラ歌枠!

─深夜じゃん

─待ってた

 

「特に理由はない。歌いたくなる日があるんだよ」

 

マイクの音量を確認する。

軽く咳払い。

 

「まず一曲。『ベテルギウス』」

─選曲良い

─深夜にこれは刺さる

 

イントロ。

少し間を置いて、歌い始める。

 

──空にある何かを見つめてたら──

──それは星だって君が教えてくれた──

 

深夜の静けさに合っていた。

力の抜けた、でも芯のある歌い方。

 

─良い

─深夜にこれはずるい

─作業する手が止まる

 

曲が終わる。

 

「……はい」

 

ウィスキーを一口。

 

「次、『RE:I AM』」

 

数曲、淡々と続ける。

喋りは少ない。

歌と歌の間に短いコメント拾いが入るくらい。

 

─今日は無口だな

─でもそれが良い

─ラジオ感ある

 

「……次は」

 

と言ったところで。

防音室のドアが開いた。

 

「……」

 

振り向いて下手人を確認する。

特徴的な、艶のある白髪。

ヤチヨだ。

 

「寝てんじゃなかったのか」

「隼斗が歌ってるの聴こえてきたら眠れなくなった」

「嘘吐け防音室だぞ。配信見てたな?」

「~~~♪」

─ヤチヨ来た!!

─待ってたやつ

─口笛でごまかせてねえw

─ジュンヨウの歌が召喚した

 

配信タイトルが更新される。

【ゲリラ歌枠】急に歌いたくなった【JunY0u×月見ヤチヨ】

 

「……まあ、来たなら歌うか」

「うん!何歌う?」

「お前のリクエストから行こう」

「じゃあ……『目抜き通り』」

─目抜き通り!!

─それをこの二人で!?

─コンビとして強すぎる

 

イントロ。

ジュンヨウが先に入る。

 

──D'où venons-nous. Que sommes-nous Où allons-nous?──

 

次にヤチヨ。

 

──Lorsque nous mourrons, Aurons-nous les reponses?──

 

交互に入れ替わる歌い方が決まっていた。

ヤチヨの澄んだ声と、ジュンヨウの低音が、奇妙なくらい合う。

二人の声が重なった。

 

────誰も知らない わたしが何なのか 当てにならない 肩書きも苗字も────

 

─やばい

─この二人の声の相性おかしい

─爆速で流れてるコメ見てんじゃないかと思ってる

─深夜にこれは体に悪い

 

曲が終わる。

 

「……うん、合うな」

「合う!二人の声、合うんだよね~♪」

「初めて歌ったのいつだっけ」

「……ずっと前だね」

─ずっと前

─ヤチヨのずっとは本当にずっとだからな

 

「次、俺からリクエストしていいか」

「もちろん!」

「『W-B-X ~W-Boiled Extreme~』」

 

─特撮ソング!?

─仮面ライダーWじゃん

─ジュンヨウ特撮好きなの!?

─うわじゃあ他にも歌ってほしいのいっぱいあるな

 

「親の影響だな。小さい頃よく観てた。これはリアタイじゃねえけどよ」

「俺、産まれたのは平成だけど初めてちゃんと見たライダーは令和世代だし」

「うわ~ニュージェネレーションだぁ」

「ヤチヨはリアルタイムで観てたんだっけ?」

「観てたよ~。放送当時に映画館も行ったし~」

「それリアルタイムって言えるのか?お前の場合」

 

FUSHIの体で?

 

「エターナルカッコ良いよね~」

「なんかお前が言うと重いんだよな」

─ヤチヨのリアルタイムは次元が違う

 

「まあ行くか。歌詞割りはそのままで」

 

イントロ。

ヤチヨのコーラスから入った。

 

──W-B-X Crime and the city──

 

リクエストしたは良いけど、俺の出番ほぼねえのよなこの歌。

あ、でもそろそろか。

 

──闇に潜む Keyword──

────見つけ出そう────

──1人では届かない夢──

──検索する無限のアーカイヴ 記憶という海へとDive──

─ラップ良っ

─オーズも歌ってほしいなこれ

─タジャドルとか良さそう鳥やし

 

二人のやり取りが決まっていた。

 

─めっちゃ良い

─天才か

 

Cメロ。

ヤチヨの透明感のある歌声が響く。

 

──そこに人がいなくちゃ 街は空虚な箱さ──

────僕らを繋いだ風を 止めたくない!────

 

─なんか感情籠ってるな

─ツクヨミもユーザー居ないとではあるしな~

 

曲が終わった。

 

─888888

─そういやヤチヨって義体なんよね?

─かぐやちゃんもそうだな

─ヤチヨはAIの義体被験者って話だけどかぐやちゃんは何で義体なんだっけ?

─病気して寝たきりだったって記者会見してなかった?

─卒業もそれ関係だったんだっけ

─お~い、ここジュンヨウチャンネルやぞ

─話を戻すけど、義体に変身機能とかついててもおかしくないな

─流石に酒寄研究所と言えどもw

─まあでも護身用の機能くらいは付いてそう

─スタンガンとかロケットパンチとか?

 

「あはは、流石にそんな物騒なもの付いてないよ~。ね、隼斗」

「………………」

「……付いてないよね?」

「さ、次の曲入れるか」

「ねえ隼斗!?こっち向いて隼斗!!」

─そっぽ向いてて草

─胸倉掴まれてガクンガクンなってる

─えっ付いてるんですか?

 

カセットアームくらいならイケるかなって検討はした by.副所長

使用者からの希望があれば義体に備え付けます by.所長

 

「ヤチヨ、次『ラフ・メイカー』」

「あとで詳しく聞かせてもらうからね!」

─ラフ・メイカー!!

─これをこの二人でやるの!?

 

「ラフ・メイカー部分は俺、それ以外はヤチヨで行くか」

「了解!」

 

イントロが始まる。

ヤチヨのパートから入る。

 

──涙でぬれた部屋に ノックの音が転がった──

 

声が夜に溶ける。

 

──「名乗るほど 大した名じゃないが 誰がこう呼ぶ "ラフ・メイカー"──

 

ジュンヨウが畳みかける。

ヤチヨが受ける。

またジュンヨウ。

また返す。

掛け合いが決まっていた。

 

──「アンタの泣き顔笑えるぞ」──

──呆れたが なるほど 笑えた──

─この歌詞割り天才じゃん

─二人でやることで完成する曲だ

─ずっと聴いてられる

 

「次はヤチヨのリクエスト」

「じゃあ『オツキミリサイタル』!」

─ポップなのに重くないか

─なんかしっとりしてる

─湿度急に上がったな

 

「……ヤチヨがリクエストしてくる曲、たまに刺すな」

「そう?」

「月の曲が多い気がするんだが」

「……そうかな~?」

 

少し間が空く。

 

「まあ、行くか」

──「もう、どうやったって無駄かもな」泣きそうな顔 見ていた──

──「諦めないでよ」みたいな言葉じゃ 全然足りない!──

 

ヤチヨの声が少しだけ変わった気がした。

コメント欄の流れが自然と遅くなる。

曲が終わって。

 

「……ヤチヨ」

「なに?」

「月の曲、好きなのか」

「……うん」

 

それだけだった。

 

─聞かなくても分かる

─まあ苗字が苗字だしね

 

「んじゃ次は俺から。『JANE DOE』

─重い重い重い

─おかしいな息ができんぞ

─演出でもないのに海に沈んだ

─選曲が攻撃的すぎる

 

ヤチヨが女声パート、ジュンヨウが男声パート。

 

──まるでこの世界で二人だけみたいだね──

 

 

──錆びたプールに放たれてく金魚──

 

 

二人の声が交わる。

 

──この世を──

────間違いで満たそう────

 

ただし、このフレーズのみ。

それ以降、声が重なるパートはない。

 

──まるでこの世界で二人だけみたいだね──

 

──なんて少しだけ夢を見てしまっただけ──

 

コメント欄がほぼ止まった。

曲が終わる。

しばらく誰も何も言わなかった。

 

「……この辺で〆っか」

「そだね~」

─待って待って待って

─もうちょい明るいので〆て

─このまま終わったら眠れない

─なんとかして

 

「みんな欲張りだな~」

「まあ、気持ちは分かるけど」

 

ジュンヨウが顎に手を当てて、少し考える。

 

「なんか明るい曲あるか。湿っぽくならないやつ」

「ん~~~」

 

ヤチヨが少し考えて。

 

「じゃあこれ!」

─ヤチヨが選ぶ明るい曲

─怖いな

 

「『ケロッ!とマーチ』!」

─高低差で耳キーンなるわ

─明るいけどさ

─ジュンヨウとヤチヨがケロッとマーチを歌う画が謎すぎる

─でも聴きたい

 

「……まあ、良いか」

 

苦笑しながらイントロに入る。

 

──ケロッ!ケロッ!ケロッ!

──いざ進め~ッ 地球侵略せよ──

 

ヤチヨが楽しそうに歌う。

ジュンヨウもつられて少しだけテンションが上がる。

 

──「気をつけ~ッ、目を喰い縛れェェ!!!」──

──カレーのライスを炊き忘れ──

─なんか良いな

─JANE DOEの後にこれは感情が追いつかない

─でも笑顔になった

─ヤチヨの選曲正解だった

─ジュンヨウ米炊き忘れることあんのかな

 

曲が終わる。

 

「……うん、これで終わりにするか」

「今日楽しかった!また歌おう!」

「また気が向いたらな」

「気が向かなくても呼んで~」

 

─気が向かなくても呼んで

─ヤチヨが聴きたいから呼ぶの良い

 

「……まあ、そういうことにしとくか」

「今日はここまで。おつかれ~」

「またね~♪」

─おつかれ~

─今日の配信最高だった

─またゲリラ歌枠やってください

─JANE DOEとケロッとマーチが同じ配信に存在するの意味分からん

─また来ます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⑥ギター弾き語り

「よー。今日はギターを弾く」

 

配信タイトルは【弾き語り】深緑のレスポールで【JunY0u】

─きた

─ギター弾き語りだ

─珍しい

─レスポールじゃん

 

それだけ言って、チューニングを始める。

深緑のレスポール。

復活ライブで使ったやつだ。

弦を一本ずつ確認していく。

 

「……うん、合ってる」

 

ピックを手に取る。

 

「今日は適当に弾く。ミスっても知らん」

─アコギじゃないのか

─レスポールで弾き語り

─音が全然違うな

 

「まず一曲。『ヘビーローテーション』」

─え

─それをレスポールで??

─待って

 

「冗談だ」

─知ってた

─引っかかったわ

─なんで嘘つくんだ

 

「『サウダージ』から行くか」

イントロ。

レスポールの音が部屋に広がる。

アコギとは違う、少し重みのある音。

 

──私は私と はぐれる訳にはいかないから──

──いつかまた逢いましょう その日までサヨナラ恋心よ──

 

力の抜けた歌い方。

でも弦の音が芯を持っていた。

 

─良い

─声とレスポールが合ってる

─アラサーの選曲だ

 

曲が終わる。

「……次、『美しい鰭』」

─スピッツだ!

 

数曲、淡々と続ける。

派手さはない。

ただ弾いて、歌う。

コメントから。

 

─10年前のアコギ弾き語り好きだった

─あの頃の配信好きだったな

─メン限のやつ今でも見返す

 

「あれはあれで良かったな」

 

弦を軽く鳴らしながら。

 

「今はこっちが性に合ってる」

「アコギは近い感じがするけど、レスポールは……なんか、ちゃんと鳴らしてる感じがする」

─10年で変わったものと変わらないものがある

─ちゃんと鳴らしてる感じが好き

 

「まあ、どっちも好きだけどな」

 

麦茶を一口飲む。

 

「次、『君にこの声が 届きますように』」

─ガッシュだ!

─カサブタじゃなくてあえてのこっちなんだ

 

イントロのカッティング。

意外と合っていた。

 

──君にこの声が 届きますように──

──絡み付く風をすり抜け 今 願うよ──

─合ってる

─想定外に合ってる

 

しばらく弾いた後、麦茶の氷がカランと鳴った。

 

「……次は『またあえる日まで』にするか」

─!!

─うーわなっつ!

─このギターで弾くのか

 

「この曲好きなんだよ」

 

軽く言いながら、イントロを弾き始める。

 

どこかノスタルジックなイントロ。

弦が鳴る。

 

──青い空白い雲 勇気をもって踏み出そう──

──思い出すと笑い合える 楽しい思い出──

─泣きそう

─なんか沁みる

─えっこれもう四十年前の曲なんですか

─やめろ効くから

 

最後のコードが鳴り終わる。

少しだけ沈黙。

 

「……次は本当に最後にするか」

 

麦茶を一口。

 

「最後に一曲」

 

コードを押さえようとしたところで、配信部屋の扉が開いた。

 

かぐや。

ヤチヨ。

彩葉。

 

三人がドアの向こうで笑っていた。

 

「……タイミング計ってたろ」

─待ってた勢三人

─計ってたろ草

 

「「「計ってた(うん)!」」」

 

声が揃った。

 

─やっぱり

─三人で示し合わせてたじゃん

─これが見たかったんだよ

 

「……まあ、来たなら歌うか」

 

コラボ申請を承認する。

配信タイトルが更新される。

 

【弾き語り】深緑のレスポールで【JunY0u×いろP×かぐや×月見ヤチヨ】

 

「かぐやっほー!!待ってたよ!!」

「いろっぴー。いろPで~す。……ちゃんと準備してたからね」

「ヤオヨロ~♪ヤッチョも来たよ~」

─四人揃った

─キーボードの音がする

─いろPが準備してたって言った

 

「彩h……いろP、キーボード繋いだのか」

「一応ね」

「準備してたとはな」

「計ってたから当然」

「……開き直ってんなぁ」

─言い訳もしない

─堂々と計ってたと言う

 

「最後の一曲、何弾くつもりだったの?」

「COLORSだ」

「「「じゃあそれで!(それで!)(それ!)」」」

また揃った。

「お前らな」

苦笑しながらレスポールを構え直す。

「彩葉はキーボードの準備、かぐやとヤチヨはマイク確認してくれ」

 

「「はーい!(うん!)」」

少しの準備時間。

「……行くぞ」

 

イントロ。

彩葉のキーボードが重なった。

 

─あ

─キーボードが入った

─全然違う

 

かぐやの声が入る。

 

──自分を、世界さえも変えてしまえそうな──

 

ヤチヨのハーモニーが重なる。

 

────瞬間はいつもすぐそばに……────

 

ギターが鳴る。

キーボードが支える。

二つの声が絡み合う。

四人の音が、揃った。

─これが見たかった

─10年分の話だ

─泣いてる

─ライブでも聴いたけど今日のも好きだ

─距離が近い

─弾き語りの延長だから今日は余計に近い

 

サビ。

かぐやが声を張る。

ヤチヨがそれを支える。

彩葉のキーボードが場を整える。

ジュンヨウのギターが鳴り続ける。

ライブのような大きさはない。

 

でも今夜の四人には、これがちょうど良かった。

最後のコード。

 

音が静かに消えていく。

しばらく、誰も何も言わなかった。

コメント欄も、少しの間だけ止まった。

それから一気に流れ始めた。

 

─最高だった

─ありがとう

─この配信来て良かった

─深夜にこんなもの見せるな

─でも見て良かった

 

「またやろ!!」

 

かぐやが真っ先に言った。

 

「気が向いたらな」

「またそれ!!」

「それが俺のスタイルだから」

「言い訳にしてる」

 

彩葉がぼそっと言った。

 

「んなことはない」

「してる」

「してない」

「「してる(してるよ)」」

 

かぐやとヤチヨが揃った。

 

─三対一

─多数決で負けてる

─ジュンヨウ絶対また計画するじゃん

─「気が向いたらな」は絶対やるやつだもんな

 

「……まあ、気が向いたら」

 

少しだけ口元が緩んだのを、コメント欄は見逃さなかった。

 

「今日はここまで。おつかれ~」

「おつかれ~!!」

「おつかれ」

「またね~♪」

─おつかれ~

─今日の配信ありがとう

─また来ます

─気が向くのを待ってます

 

 

 




ゆー_yuuさん、評価いただきありがとうございます。

お気に入り登録いただいた方々もありがとうございます。
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活動報告の方でネタの募集も始めておりますので、ご一読いただければと思います。

使用楽曲コード:10456511,11507489,11507705,13504746,22728384,26744333,32798202,N01235996,N01558308

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