今日も世話を焼く   作:ディアーリーズ

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Ex.いろかぐヤチジュンWithROKAまみTSUGU&黒鬼ライブ《ray》②

照明が落ちる。

 

先ほどまで会場を揺らしていた歓声が、少しずつ静まっていく。

 

残されたのは無数のペンライト。

 

 

緑。

白。

水色。

黄色。

 

揺れる光の海。

ステージの中央。

 

ジュンヨウが静かにギターを抱えて立っていた。

その後ろでは、彩葉がキーボードの前に立っている。

TSUGUM1もドラム席で静かにスティックを構えた。

 

先ほどまでの激しい空気とはまるで違う。

客席も自然と息を潜めていた。

ジュンヨウは一度だけ目を閉じる。

 

そして、そっとギターを鳴らした。

 

優しいアルペジオ。

続いて彩葉のピアノが重なる。

静かな音色が会場いっぱいに広がった。

 

「―――『シアワセネイロ』」

 

囁くような歌声。

決して大きくない。

それなのに、数千人がいる会場の隅々まで届いていた。

 

 

 

舞台袖で、かぐやはモニター越しにステージを見ていた。

 

隣にはヤチヨ。

そして芦花や真実、黒鬼達もいる。

 

誰も喋らない。

ただ静かに聴いていた。

 

「……」

 

かぐやはヤチヨと目を合わせて、少しだけ笑った。

隼斗ってさぁ、あんまり口に出してはくれないけど、誰よりかぐやたちのことを大事に思ってくれてるよね。

今も口には出してないけどさ。

優しい歌声で、言葉よりも伝わってきてるよ。

 

──ありがとう 心から 僕に今があるのは皆のおかげさ──

──ありがとう 心から 次は僕が皆にHAPPY贈るよ Wow──

 

ステージ上。

ギターを奏でながら歌うジュンヨウ。

支える彩葉。

リズムを刻むTSUGUM1。

 

その光景に客席も静かに聴き入っている。

 

誰も叫ばない。

誰も飛ばない。

ただ歌を受け取っていた。

それはライブというより、一つの想いを共有する時間だった。

 

──涙がこぼれそうな 長い夜はふっと振り返って──

──足跡をたどるんだ あの日を忘れないように──

 

曲が終わる。

最後のギターが静かに消えていく。

 

ほんの数秒、誰も声を出せなかった。

 

そして、割れんばかりの拍手が会場を包んだ。

 

「ありがとな」

 

ジュンヨウが小さく笑う。

照れ隠しみたいな笑顔だった。

その表情は、今日初めて見るくらい穏やかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しんみりとした余韻。

 

その空気を吹き飛ばしたのは、やっぱりかぐやだった。

 

「よーーーし!!」

 

ステージへ飛び出してきたその姿に、スポットライトが当たる。

 

「まだまだしんみりしてちゃ駄目だよーーー!!」

 

客席から笑いが上がる。

 

「次はみんなで行くよー!!」

 

ヤチヨ。

彩葉。

芦花。

真実。

 

次々とステージへ現れる。

ジュンヨウも苦笑しながらギターを持ち直した。

TSUGUM1がドラムスティックを回す。

 

「準備いいー!?」

「「「おおおおおおおお!!!」」」

 

「じゃあ次は!」

 

高らかに鳴り響くピアノ。

 

歓声。

 

イントロだけで分かる。

 

客席の熱量が一気に跳ね上がった。

 

「「「「「『光るなら』!!」」」」」

 

会場中のペンライトが一斉に揺れた。

 

光の海が再び広がる。

さっきまで静かだった客席が、一瞬で色づいていく。

歌声が重なり、笑顔が弾ける。

 

そしてライブは次の景色へと進んでいく。

 

──雨上がりの虹も──

 

ヤチヨの透明感のある歌声が響く。

 

──凛と咲いた花も──

 

かぐやは笑顔で客席へ手を振るながら、元気いっぱいに。

 

──色づき溢れ出す──

 

キーボードを弾きながら歌う彩葉。

 

──茜色の空 仰ぐ君に──

 

優しく伸びる真実の歌声。

 

──あの日恋に落ちた──

 

芦花は照れたように笑った。

 

歓声。

拍手。

ペンライトが揺れる。

 

歌うたびに、笑うたびに会場のボルテージは上がっていった。

 

曲は進む。

 

サビ。

二番。

間奏。

 

誰もが知っているメロディ。

客席から自然と手拍子が生まれた。

 

ジュンヨウのギター。

TSUGUM1のドラム。

彩葉のキーボード。

 

その上で五人の歌声が重なる。

まるで一つの光みたいに。

 

そして、ラスサビ前も照明が少し落ちた。

 

客席が息を呑む。

彩葉がキーボードの前で、マイクを握った。

 

──君だよ 君なんだよ 教えてくれた 暗闇は終わるから──

 

その歌声が会場いっぱいに広がる。

ドラム。

ギター。

キーボード。

全てが一気に弾けた。

 

────君だよ君なんだよ教えてくれた────

 

全員。

 

────暗闇も光るなら星空になる────

 

かぐやとヤチヨ。

二人の歌声が重なる。

 

────握りしめたその希望も不安も────

 

芦花と真実。

 

────きっと二人を動かす光になるから────

 

全員での最後のフレーズが、会場に響き渡った。

 

その瞬間、ステージ上の五人が同時に前へ飛び出す。

 

かぐやは大きく手を振り。

 

ヤチヨは柔らかく微笑み。

 

真実と芦花は客席へ指を向け。

 

彩葉はキーボードから離れて拳を掲げた。

 

「「「「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」

 

歓声。

拍手。

 

揺れるペンライト。

 

白。

水色。

黄色。

薄黄色。

桃色。

 

光が波のように広がっていく。

 

まるで曲名そのものだった。

その全てが混ざり合ってライブはさらに熱を増していく。

 

「まみまみ、ROKA、ゲストありがと!」

「アラサーのお母さんに歌わせる曲じゃないって~」

 

マイクを握った真実が苦笑いしながら、どこか楽しそうに言う。

 

「双子ちゃんと旦那さんも見てるんでしょ?お母さん、可愛いって言ってるでしょ」

「旦那に見られるのもそれはそれで恥ずかしいよ~!」

 

芦花と真実のやり取りに、会場から笑いがあふれた。

その二人の間から。

 

「次はかぐやの番だよー!」

 

元気いっぱいに前へ飛び出したかぐや。

 

「お前が一番元気だな……」

 

ジュンヨウが呆れたように笑う。

 

「当たり前でしょ!まだまだ行けるよー!みんなもそうでしょ~!!?」

 

会場から歓声。

 

「かぐやーー!!」

「待ってましたーー!!」

「竹取ーーー!!」

 

その声を聞いて、かぐやがにやりと笑った。

 

「えへへ。分かってるじゃん♪」

 

照明が少しずつ落ちる。

彩葉がキーボードへ。

TSUGUM1がドラムスティックを、ジュンヨウがギターを構える。

 

そして、大型スクリーンいっぱいに映し出されたのは―――

 

満月。

 

客席から大歓声が上がった。

 

「それじゃあ次は―――」

 

かぐやがマイクを握る。

 

「『竹取オーバーナイトセンセーション』!!」

 

 

スクリーンに映し出された黄金色の満月。

 

その光を背負うように、かぐやがステージ中央へ立った。

 

歓声。

 

ペンライトの黄色が一気に増える。

 

「かぐやーーー!!」

「待ってたーーー!!」

 

かぐやは楽しそうに笑った。

 

そして、ジュンヨウのギターが軽快に鳴る。

TSUGUM1のドラム。

彩葉のキーボード。

 

どこか祭囃子を思わせるような賑やかなイントロが会場を包み込んだ。

 

その瞬間、かぐやが弾けるように歌い出す。

 

会場が揺れた。

歓声。

手拍子。

黄色いペンライトの波。

 

ステージを駆け回るかぐやは、まるで生まれながらにしてこの舞台の中心に立つ運命だったかのようだった。

 

笑う。

跳ねる。

手を振る。

客席へ指を向ける。

 

その一つ一つに歓声が返ってくる。

 

まるで会場全体が、かぐやに振り回されることを楽しんでいるみたいだった。

 

 

 

曲は進む。

軽快なリズム。

どこか昔話を思わせるような世界観。

 

けれど歌っている本人は、そんな物語の姫君というより、いたずら好きな少女そのものだった。

 

間奏を挟んで二番。

 

かぐやがふと後ろを振り返る。

 

キーボードを弾く彩葉。

ギターを鳴らすジュンヨウ。

 

二人を交互に見て、いたずらっぽく笑う。

 

そして客席へ向き直った。

 

小首を傾げる。

両手を背中の後ろで組む。

わざとらしいほど可愛らしい仕草で、二番サビ前のフレーズをあざとく歌い上げる。

 

客席が悲鳴を上げた。

 

「かわいいーーー!!」

「姫ぇぇぇぇぇ!!」

「俺だーーー!!」

 

その反応に満足したように、かぐやは胸を張る。

 

「残念でしたー!」

 

会場が笑う。

 

「かぐやはもう予約済みでーす!」

 

さらに歓声。

 

舞台端で次の出番を待つヤチヨが苦笑し。

ジュンヨウは呆れたようにギターを鳴らし。

彩葉は顔を真っ赤にして視線を逸らした。

 

その反応すらも、客席にとっては最高のご褒美だった。

 

 

 

曲は終盤へ向かう。

 

スクリーンの満月がさらに大きく輝く。

照明が落ちる。

スポットライトだけが、かぐやを照らした。

 

それまでの無邪気な笑顔とは違う。

ほんの少しだけ、優しく、柔らかく、愛おしそうな表情。

 

月を背負ったその姿は、本当に物語の姫君のようだった。

客席も自然と静かになる。

誰もが、その一瞬を見守っていた。

 

 

 

最後のフレーズ。

 

ドラムが弾ける。

ギターが駆け抜ける。

キーボードが一気に広がる。

 

紙吹雪。

銀テープ。

照明。

 

全てが同時に炸裂した。

 

「「「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」

 

歓声。

拍手。

黄色い光の海。

 

かぐやは満面の笑みで両手を大きく振った。

 

「ありがとーーー!!」

 

その笑顔に応えるように、会場中のペンライトが大きく揺れた。

 

ライブの熱気は、さらに一段階上がっていた。

 

 

 

紙吹雪が舞い終わる。

 

歓声の余韻。

 

だが、その熱が落ち着くのを待つように、照明が少しずつ暗くなった。

ステージ中央から、かぐやが手を振りながら下がっていく。

 

代わりに前へ出てきたのはヤチヨだった。

 

客席の白い光のペンライトがゆっくりと増えていく。

 

スクリーンに映し出されるのは無機質な街並みと、青白い光。

まるで電子の海のようだった。

 

彩葉のキーボードが静かに鳴る。

ジュンヨウのギターが重なる。

 

そして、ヤチヨがマイクを握った。

 

──0と1が交差する地点。間違いだらけのコミュニケーション。アナタの名前はなんですか?10文字以内で答エヨ──

 

静かな歌声。

 

先ほどまでの熱狂が嘘のようだった。

 

誰も叫ばない。

 

ただ、その歌声に耳を傾ける。

 

スクリーンには流れる文字列。

無数の数字。

電子ノイズのような演出が広がる。

 

曲は進む。

一番。

間奏。

静かに響くピアノ。

 

そして二番。

ヤチヨはゆっくりと客席を見渡した。

 

──昼と夜が交差する地点。誰かに会いたくて会えなくて。ワタシの名前は何ですか?10文字以内で教えて──

 

その歌声に、八千年の旅路の日々が重なる。

 

お迎えが来て、月に帰って、仕事をしていた時に。

月まで届いた彩葉の歌声。

 

その声に心を動かされて。

二人に会いたいと願って、もう一度月を飛び出した。

 

けれど、隕石に衝突して、ピーキーだった時間遡行システムが暴走して。

そして気づけば、そこは八千年前の世界だった。

 

誰も知らない時代。

誰も知らない場所。

 

帰る方法も分からないまま。

 

何度も人と出会い、何度も別れた。

 

名も知らぬ村人達。

旅の途中で笑い合った人達。

守れなかった人達。

時の流れの中で老いていった人達。

 

出会いの数だけ別れがあった。

手を伸ばしても届かないものばかりだった。

 

置いていかれるのは、いつも自分だった。

 

気がつけば、何千年もの時間が流れていた。

 

それでも。

 

彩葉と隼斗(だいすきなふたり)に会いたいという想いだけは消えなかった。

 

だから歩き続けた。

 

何度季節が巡っても。

何度世界が変わっても。

 

ずっと。

 

ずっと。

 

―――そして今。

 

ステージの後ろには仲間がいる。

見渡せば、応援してくれる人達がいる。

近くには、会いたくて堪らなかった人達がいる。

 

もう、あの日の自分は一人じゃない。

 

それでも歌は続く。

まるで、長い旅を続けていた過去の自分へ向けるように。

 

そして最後。

照明がさらに落ちる。

会場を埋めるのは白色の光だけ。

ヤチヨは胸元でマイクを握りしめた。

 

──自分だけどこか取り残された。色のない世界 夢に見た世界──

 

会場が静まり返る。

誰も声を出さない。

ただ歌を受け取る。

 

──傷んだ果実を捨てることすら。1人じゃできない 傍にいてほしくて──

 

最後のピアノと最後のギター。

音が静かに消えていく。

 

ヤチヨは目を閉じた。

そしてゆっくりと開く。

 

その先には、無数の白色のペンライトが揺れていた。

まるで、「ここにいていい」と伝えるように。

 

数秒の静寂。

その後―――

 

「「「「「「「「「ヤチヨーーーー!!」」」」」」」」」」

 

大きな歓声が会場を包み込んだ。

数秒続いた歓声。

ヤチヨは少し照れたように笑った。

 

「……ありがとう、みんな」

 

拍手。

 

揺れる白色の光。

 

ヤチヨは少しだけ照れたように笑った。

 

「ヤッチョはさ」

 

少し間を置く。

 

「八千年、生きてきたんだ」

 

会場が静まる。

 

「沢山の人と出会って」

 

「沢山の人と別れて」

 

「沢山の景色を見てきた」

 

ぽつりと続く言葉。

 

「だからね」

 

客席を見渡す。

 

「今こうして、みんなと同じ時間を過ごせてることが」

 

「ヤッチョは本当に幸せなんだ」

 

拍手。

静かな温かい拍手が広がる。

ヤチヨは照れたように微笑んだ。

 

「ありがとう」

 

そして振り返る。

 

そこには彩葉がいて。

 

ジュンヨウがいて。

 

TSUGUM1がいて。

 

舞台袖では、かぐやが大きく手を振っていた。

その隣で、芦花と真実も微笑んでいる。

 

ヤチヨは思わず笑う。

 

「……本当に」

 

小さく息を吐く。

会場から大きな拍手。

 

「ヤチヨーーー!!」

「ありがとうーーー!!」

 

歓声が飛ぶ。

 

その時。

 

「はいはいはいはい!!」

 

勢いよく飛び出してきたのは、もちろんかぐやだった。

 

「重い!重いよヤチヨ!!」

 

客席が笑う。

 

「せっかくいい空気だったのに!」

「か~ぐや~……」

「なーに?」

「台無しぃ~」

「えぇぇぇ!?」

 

爆笑。

会場の空気が一気に和らぐ。

その様子を見ながら、ジュンヨウがマイクを取った。

 

「まぁでも」

 

ギターを肩に掛け直す。

 

「ここから先は、もっと聞いてもらいたい曲がある」

 

歓声。

 

「後半戦だ」

 

会場が沸く。

 

「まだ帰さねぇぞお前ら、準備は良いか?」

「「「うおおおおおおおお!!!!!」」」

 

TSUGUM1がスティックを掲げる。

彩葉も笑顔で頷いた。

 

「それじゃあ行こうか」

 

ジュンヨウが振り返る。

彩葉と視線が合う。

TSUGUM1も頷く。

 

照明が落ちる。

かぐやとヤチヨがステージをハケる。

 

残ったのは三人。

 

ジュンヨウ。

いろP。

TSUGUM1。

 

静寂。

 

スクリーンに映し出されたのは―――

 

満天の星空。

 

夜空を横切る無数の流星。

 

そして、その下に広がるネオンの海。

 

青。

紫。

緑。

 

どこか無機質な光が輝く未来都市。

 

星空を流れていた流星が一つだけ都市へ落ちた。

 

落ちた光が、その光が巨大な数字を形作った。

 

1,000,000

 

客席からざわめきが起きる。

 

「マジ?」

「まさか……!?」

 

彩葉がマイクの位置を調整して、キーボードに指を置く。

TSUGUM1が静かにスティックを構える。

ジュンヨウがマイクへ近づいた。

 

「後半戦、一曲目」

 

そしてギターを鳴らす。

ジュンヨウといろPの声が揃って、曲名を告げた。

 

「「―――『1,000,000(ミリオン) TIMES』!!」」

 

 

 

 

 

 

 




マリアナ海溝さん、評価いただきありがとうございます。

ROSOさん、海の坊主さん、感想いただきありがとうございます。

お気に入り登録いただいた方々もありがとうございます。
とても励みになります。

活動報告の方でネタの募集も始めておりますので、ご一読いただければと思います。

使用楽曲コード:14886961,71113045,N00036774

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