今日も世話を焼く   作:ディアーリーズ

73 / 73
読者募集ネタになります。
時系列は37話~Ex.十年後①の間になります。


Ex.隼斗とヤチヨの二人旅

宮島口の案内標識が見えてきたところで、隼斗がぽつりと言った。

 

「……マジで来たんだな」

 

助手席のヤチヨが窓の外を見ていた。

 

「うん。だって、厳島神社見たかったんだもん」

「お前から二人で行きたいって言われた時、てっきり別の場所かと思ったわ」

「なんで?」

「もっとお前らしい場所があるかと」

「ヤッチョらしい場所ってどんなとこ?」

「……古墳とか、大阪城?」

「行きたいけど、それは今回じゃないかな~」

「で、なんで厳島神社なんだ」

「……あの鳥居がね」

 

ヤチヨが少し考えた。

 

「ツクヨミの鳥居に似てるんだ。ずっと気になってて」

「ツクヨミのあれか」

「うん。最初に作った時から、なんでこの形にしたんだろうって思っててさ」

「あとから知ったんだ。厳島神社の鳥居が元になってるかもしれないって」

「お前が作ったんじゃないのか?」

「私が作ったツクヨミの元は、もっと昔の記憶から来てるからさ」

「だから、自分でもなんでこの形なのか分からなかったんだ」

「……それで気になってたのか」

「うん。八千年も気になってたんだよ」

「……まあ、それなら行く価値あるな」

 

信号待ちで隼斗が言った。

 

「隼斗が誘ってくれたんじゃなくて、こっちから誘ったんだけどね」

「言い方の問題だ。お前が誘ってくれたから、行こうと思ったわけだからな」

「……ありがと」

 

ヤチヨが少しだけ笑った。

 

 

 

 

 

時間は丁度お昼時。

市街地のお好み焼き屋。

鉄板の前のカウンター席に並んで座る。

 

「広島焼きって言うと現地の人は嫌がるらしいぞ」

「知ってる。ただのお好み焼きでいいんだよね」

「詳しいな」

「事前に調べた」

「俺と同じことしてるな」

 

ヤチヨが少し笑った。

そばと卵と豚肉が重なって焼かれていく。

へらで切り分けられる音。

 

「……うまそうだな」

「うん」

 

出来上がったお好み焼きが二人の前に置かれる。

 

「いただきます」

「いただきます」

 

ヤチヨが一口食べて、しばらく黙った。

 

「……どうした」

「……美味しい」

 

それだけ言った。

 

「お前のリアクション、たまに静かになるよな。何か考えてる時」

「考えてるというか、味わってる」

「それは良いことだ」

「次は何食べようかなって考えてる。」

「もう次の話?今食ってるヤツに集中しろよ」

「楽しみで、事前に色々調べてたから~」

「下調べの量がすごいな」

 

 

 

 

 

 

三枚のお好み焼きを二人で食べ終わり、本題へ。

フェリーで宮島へ渡る。

潮が満ちていて、大鳥居が海に浮かんでいるように見えた。

 

「……凄いな」

 

ヤチヨがしばらく無言で見ていた。

 

「……これだったんだ」

ツクヨミの鳥居(記憶にあるの)と同じ形か?」

「ん~……分かんないや。隼斗と彩葉以外の昔のことは、もうだいぶ曖昧だし」

「これも何度か建て替えられてるはずだしさ。でも……」

 

ヤチヨが少し目を細める。

 

「この形自体は、ずっとここにあったんだろうね」

「写真撮るか?」

「うん」

 

スマホを構える。

 

「並んで撮るか?」

「良いの?」

「誘ってくれなきゃ二人で来ることもなかったろうからな」

「……うん」

 

他の観光客に頼んでスマホを渡し、二人並んで写真を撮った。

お返しに、こちらも相手のスマホで写真を撮って、礼を言い合って別れた。

参道を歩く。

厳島神社の社殿が、潮の上に浮かんでいるように見える。

 

「……綺麗だな」

「うん」

「お前、こういうとこ来ると静かになるな」

「考えることが多いから」

「八千年分のことか」

「半分はそうかな。半分は……」

 

少し止まる。

 

「今のことを考えてる」

「今のこと?」

「うん。八千年前から気になってたものを、今こうして隼斗と一緒に見られてること」

 

隼斗が少し黙った。

 

「……まあ、来て良かったな」

「うん。今度はみんなで来たいな」

 

社殿を回る。

お守りを売っている場所で、ヤチヨが足を止めた。

 

「これ、買おうかな」

「縁結びのか」

「うん」

「お前、縁結びとか興味あるんだな」

「あるよ。今の縁を大事にしたいから」

「……そうか」

 

ヤチヨが縁結びのお守りを買った。

隼斗も少し考えて、同じものを買った。

 

「隼斗も買うんだ」

「お守りはお守りだろ」

「ふふ。これ、彩葉とかぐやの分も買おうかな」

「土産か」

「うん。帰ったら見せながら話す」

 

 

 

宮島近くのホテル。

食事処の個室で、瀬戸内懐石が並んでいく。

 

「すごい品数だな」

「楽しみだね」

 

先付。

お造り。

焼き物。

牡蠣の土手鍋。

 

「これ、写真撮っておくか」

「撮ろう。後で彩葉とかぐやに見せる」

 

スマホで一品ずつ撮影していく。

 

「ヤチヨ、こういう写真の撮り方、丁寧だよな」

「美味しそうに見えるように撮りたいから」

「配信者意識か」

「そういうわけじゃないけど……まあ、似たようなものかも」

 

牡蠣を一口食べたヤチヨが、また少し黙った。

 

「……どうだ」

「美味しい」

「短いな、感想」

「美味しい時ほど、言葉少なくなるんだよ」

「それもそうか」

 

懐石の最後にデザートが出てくる頃には、二人とも満腹になっていた。

 

「食べすぎたな」

「うん。でも全部美味しかった」

「……明日も色々食う予定だけどな」

「楽しみ」

 

2ベッドの和洋室。

隣り合ったベッドに、それぞれ腰掛ける。

 

「……本当に同室で良かったのか?」

 

隼斗が部屋を見渡しながら言った。

 

「なんで?」

「2ベッドとはいえ、同室だからな」

「せっかく二人で旅行してるのに、お部屋別だと寂しいじゃん」

「寂しいって」

「それに同室の方が少しお安くなるし~」

「……まあ、それもそうか」

「隼斗が気にしてくれるのは嬉しいけど、大丈夫だよ」

 

ヤチヨがスマホを取り出しながら続けた。

 

「私、義体だからさ。万が一夜中になにかあっても隼斗を助けられるじゃない?」

「なにかってなんだよ」

「地震とか、停電とか」

「……お前、そういう心配の仕方するんだな」

「八千年分の用心深さかな~」

「そうか」

「明日はどこ行く予定だっけ?」

 

ヤチヨがスマホで予定を確認しながら言った。

 

「朝、ロープウェイで弥山に登って、それから市街地に戻って原爆ドームと平和記念公園を回る」

「……原爆ドームか」

 

ヤチヨが少し声のトーンを落とした。

 

「……行きたかった場所の一つ」

「重くなりすぎるなら無理しなくていい」

「無理じゃないよ。八千年の中で、人がどれだけのことをしてきたか、ちゃんと見ておきたい」

 

隼斗が黙って頷いた。

 

「弥山の後、昼飯は穴子にするか」

「穴子飯食べたい」

「予約は」

「もう取ってある」

「お前も下調べしてたのか」

「隼斗に任せっきりも悔しいし」

「対抗意識持つようなことか、これ」

「持つよ」

 

ヤチヨが少し笑った。

しばらく予定の確認が続いた。

 

「お土産、何にするか考えてる?」

「もみじ饅頭は決定だな」

「ベタだけど美味しいやつだよね」

「あとは……牡蠣の加工品も良いかもな」

「彩葉好きそう」

「かぐやは食べ物全般好きだから何でも喜ぶだろ」

「それはそう」

 

予定の話が、自然と雑談に変わっていく。

 

「……次、四人で来る時はどこ泊まろうか」

「お前、もう次の話してんのか」

「だって楽しみだから」

「気が早いな」

「八千年分の楽しみを取り戻してるところだから」

 

隼斗が何も言わなかった。

 

「……まあ、好きなだけ計画立てれば良い」

「ほんと?」

「お前が楽しそうなら、それで良い」

 

ヤチヨが少しだけ嬉しそうな顔をした。

スマホの画面を見ながら、二人でぽつぽつと話を続けた。

 

「明後日は何時頃に出るの?」

「……昼くらいかな」

「もう少し早くても」

「いや、ゆっくりで良い」

「そっか」

 

会話が、少しずつ間延びしていく。

 

「……隼斗」

「なんだ」

「今日、ありがとう」

「もう何回目だその礼」

「言い足りないから」

「……」

 

返事がなかった。

 

「隼斗?」

「Zzz……」

 

ヤチヨが隣のベッドを見ると、隼斗は目を閉じて寝息を立てていた。

 

「……ふふ、流石に運転で疲れちゃったみたい」

 

ヤチヨが小さく笑って、隼斗の髪を手櫛で梳かすように撫ぜた。

くすぐったそうに眉をひそめ、少しだけ身を捩る。

その様子に、ヤチヨはまた小さく笑った。

スマホをそっと置いて、部屋の明かりを落とす。

窓の外、宮島の夜景がぼんやりと見えていた。

 

「……おやすみ、隼斗」

 

それだけ呟いて、ヤチヨも静かに目を閉じた。

 

 

 




お気に入り登録いただいた方々もありがとうございます。
とても励みになります。

活動報告の方でネタの募集も始めておりますので、ご一読いただければと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

超かぐや姫! ヤチヨのかくれんぼ(作者:夜叉竜)(原作:超かぐや姫!)

 月見ヤチヨ、八千歳。得意な事はかくれんぼ。今日も彼女はかくれんぼをしている。大切な友達と。▼ 


総合評価:693/評価:7.94/連載:8話/更新日時:2026年06月22日(月) 21:00 小説情報

今は昔、竹取の翁といふもの有りける(作者:何もかんもダルい)(原作:超かぐや姫!)

ネトフリで脳を焼かれ書籍に脳を焼かれ映画館の大音響で脳を灰にされCV前田さんみたいな男子が居るかぐや姫が浮かんでしまったなどと供述しており


総合評価:1482/評価:8.31/短編:8話/更新日時:2026年07月05日(日) 23:10 小説情報

超人酒寄彩葉と借金貧乏男子が運命的な出会いをする話(作者:陸結)(原作:超かぐや姫!)

完璧超人女子高校生酒寄彩葉と莫大な借金を抱えて日夜バイトを繰り返す男子高校生有原泉が運命的な出会いをしてハッピーエンドへ向かう話▼作者の体調不良に付き更新が滞っています。ご了承下さい


総合評価:399/評価:6.25/未完:24話/更新日時:2026年05月31日(日) 22:21 小説情報

よくある男オリ主もの(作者:SeA)(原作:超かぐや姫!)

超かぐや姫を見て、小説読んで、書きたくなった。▼いろPのアパートの隣の部屋に住んでて、KASSENが強くて、ヤチヨにこっそり特別扱いされてる。▼そんなよくあるオリ主くんの話。


総合評価:1014/評価:8.76/連載:5話/更新日時:2026年07月05日(日) 21:00 小説情報

君の神様になりたい(作者:香椎)(原作:超かぐや姫!)

▼ 孤独だった。ずっと、ひとりだった。▼ 終わりたかった。誰かに見つけてほしかった。▼ 声が届くなら、歌でもよかった。▼ 温もりがあるなら、嘘でもよかった。▼ だから。▼ 永遠を生きる君を、救いたかった。▼ ──君の神様になりたかった。▼


総合評価:722/評価:8.27/連載:13話/更新日時:2026年06月21日(日) 22:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>