読者募集ネタになります。
「よー、ジュンヨウだ。今日はツクヨミに新しく出来たアスレチックコースに挑戦する。名前が『YACHIYO』らしい」
カメラがゆっくりとコース全体を映していく。
五段跳び。
水面の上を渡るローリング丸太。
高く張られたネットが待ち受けるジャンプハング。
そして最後には、高さ四メートル近いそり立つ壁。
どれも見た目以上に難しく、既に試走したメンバーの多くが途中で脱落しているという。
「思ったよりガチだぞこれ」
ジュンヨウが苦笑すると、かぐやは逆に目を輝かせた。
「楽しそう!!」
配信タイトルは【新アスレチック】YACHIYO挑戦してみた【JunY0u×かぐやいろP×帝】
「かぐやっほー!!挑戦者かぐやだよ~!」
「いろっぴー。いろPで~す」
「よう、子ウサギ共。挑戦者、帝アキラだ」
「障害物は四つ。五段跳び、ローリング丸太、ジャンプハング、そり立つ壁」
「本家と同様、一人ずつ挑戦する形式だ」
「なお、今回アバターのステータスはリアル準拠になってるらしい。筋力とか体重とか、スタミナとかその他諸々」
「本格実装のときはその辺弄れるようになるんだっけ?」
「サーバ毎に設定できるって話。環境設定とかも出来るってよ。重力とか」
「そりゃすげえ。ちなみになんでYACHIYOって名前なんだ?」
「……ヤチヨが監修に関わったらしい」
「そのヤチヨちゃんはいねえの?」
「順番はどうする」
「くじで決めるか」
くじ引きの結果、かぐや→いろP→帝→隼斗の順に決まった。
第一走者:かぐや
「かぐや一番手だ!頑張る!」
五段跳び
45度の角度で左右対称に立てかけられた、幅60cmの五つの足場を交互に飛び移っていく。
「これくらいなら余裕だよ!」
一段目、二段目と勢いよく飛び移る。
三段目でわずかに着地が乱れたが、体勢を立て直しながら踏み切った。
「うわっとと!あっぶね!」
四段目、五段目と続けて成功し、対岸に着地。
「クリア!!」
ローリング丸太
レールの上に置かれた丸太に抱きつき、回転させながらレールを下って対岸へ渡る。
抱きつく位置が悪いと丸太ごと脱線する難所だ。
「うわっと、回る回る!」
丸太の回転に振り落とされそうになりながらも、しっかり抱きついたまま滑り下りていく。
「よしっ、突破!!目ぇ回ったぁ~~~」
丸太から降りた瞬間、その場へへたり込むかぐや。
「目ぇ回るぅぅ……」
「酔った?」
「三人に見える……」
「元から三人だが」
「隼斗が三人いる……」
「重症だわ」
ジャンプハング
トランポリンから飛び上がって頭上のネットに飛びつき、下を伝うか上を登って対岸まで移動する。
足が着水すると失格になってしまう。
「これ怖い……」
トランポリンを大きく踏み込み、勢いよくネットへ飛びつく。
ネットの下を伝おうとしたところで、足が水面すれすれまで垂れ下がった。
「あっ、あっ」
咄嗟に体を持ち上げようとするが、腕の力が続かず、そのままネットから手が離れた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「……脱落。おつかれ、かぐや」
「悔しい~!!ネットの上まで登れば良かった!!」
「かぐやの結果、第三関門で脱落。おつかれ」
「次は絶対突破する!!」
第二走者:いろP
「いろっぴー。まあ、頑張ります」
五段跳び
一段ずつ、着地の姿勢を確認しながら丁寧に進んでいく。
勢いはないが、着実な足取りで五段全てを踏破した。
「……堅実だな」
「勢いで行くタイプじゃないし」
ローリング丸太
腰を落として重心を低く保ちながら丸太に抱きつく。
回転の勢いに合わせて姿勢を微調整し、慎重にゴールへ。
「バランス感覚良いな」
「これバランス感覚か?」
ジャンプハング
トランポリンから跳んでネットに飛びついた後、下ではなく上を登る選択をした。
「かぐやを見て学んだ」
ネットの上部を掴みながら、着実に登って対岸へ移動する。
時間はかかったが、足を濡らすことなくクリア。
「よし、突破」
「いろPは第三関門を突破。ここまで来たのは初めてだな」
「次はそり立つ壁か。緊張する」
そり立つ壁
湾曲した壁を駆け上がり、頂上に手をかけてよじ登る最終関門。
助走をつけて壁に向かって走る。
中盤まで駆け上がる。
右手が壁の縁へ届く。
しかし指先だけでは体を支え切れない。
「あと少し……!」
左手も伸ばす。
指先は届く。
だが、体勢が低すぎた。
腕に力を込める。
数秒耐えた。
しかし腕力の限界だった。
両腕がぷるぷると震え始めた
つま先を壁に引っ掛けようとするも、壁には摩擦がなく滑ってしまう。
そして。
ここで無情にもタイムアップ。
「あ~っ……!」
力の抜けたいろPの体が、坂の一番下までずるずると落ちていった。
「……惜しいな。もうちょっと時間があったらいけたか?」
「いや、時間云々じゃねえなありゃ」
「一度掴んだ後、体勢直すのに体力使いすぎだ。もう一度やりなおしゃ行けたかもな」
「いろPは第三関門を突破もそり立つ壁で脱落。ここまで到達した挑戦者も十人いないらしいぞ」
「思ったより頑張れた。でも悔しいな」
第三走者:帝
「見とけ、子ウサギ共」
五段跳び
大きなストライドで一気に飛び移っていく。
五段を最短ルートで駆け抜けた。
「さすが」
「これくらい朝飯前だ」
ローリング丸太
体幹の強さを活かして、丸太の回転にほとんど動じずに渡り切る。
「これくらいなら余裕だ」
「体作ってる甲斐があるな」
ジャンプハング
「見せてやる」
トランポリンを力強く踏み切って、ネットの上部を両手で掴む。
一瞬逡巡したがそのまま登り切り、上を進んで対岸へ着地した。
「いろPが上からだったから、下から行っても良かったんだけどな」
「さすが黒鬼」
「ここまで一番タイムが速いのは帝だ」
「ここで黒鬼の意地を見せてもらいたいね」
「帝~!ガンバ~!」
帝は何も言わず頷き、グローブを握り直した。
「行くぞ」
そり立つ壁
いろPが失敗した箇所を見ながら、助走の距離を調整する。
「……」
勢いよく壁に向かって走り出した。
しかし、一回目では指先が僅かに壁の縁に擦れただけ。
チッ、と指先が壁の縁を掠めた音が響く。
「……なるほど。彩葉は体重が軽い分で届いた。俺は助走をもっと乗せねぇと届かねぇワケね」
ならば、振り子のように何度も助走を付ける。
ここまでハイペースで攻略してきた分、多少余裕はある。
十分勢いを付けて、再度壁に向かって駆けだした。
先ほどとは違い、指先が壁の縁に掛かった。
そのまま片腕だけで体を持ち上げる。
「うおおっ……!」
もう片腕でも縁を掴んだ。
両腕が小刻みに震える。
もう少し。
あと少し。
胸元までは上がった。
しかし最後の一押しが届かない。
「まだ残ってる!まだ時間ある!」
「帝、耐えてるぞ!」
「あと少し!もうちょっと!」
必死に身体を押し上げる。
あと数センチ。
膝でも、足先でもいい。
壁の上に乗れば。
あと数センチが届けば。
その瞬間───
無情にも、タイムアップのブザーが会場に鳴り響いた。
「くっ……!」
帝は悔しそうに歯を食いしばると、ゆっくりと壁から手を離した。
身体が壁を滑り落ちていく。
「くそ……あと少しだったのによ」
「帝は最終関門でタイムアップ。いろPと同じ壁で敗れたが、あと一歩だったな」
「次は登り切ってやる」
第四走者:ジュンヨウ
「よし、最後は俺だ」
五段跳び
段差の距離を目で測りながら、リズムよく飛び移っていく。
「……」
一段ごとに着地の衝撃を殺しながら進み、五段全てを無駄のない動きで渡り切った。
「OK」
ローリング丸太
丸太の回転する感覚を見極めながら、抱きついたまま一定のペースで下っていく。
「……」
途中、丸太が大きく揺れる瞬間があったが、体幹で持ちこたえて通過した。
「突破」
ジャンプハング
いろPと帝が使った「上を登る」方法を選ぶ。
トランポリンで跳躍し、ネットの上部を掴む。
腕力に頼りすぎないよう、足も使いながら着実に登っていった。
「よし、抜けた」
「ヤチヨ、俺にだけ煽り方が違わないか」
「かぐやは抜いて、いろPと帝と同率。あと一つだけだな」
そり立つ壁
いろPと帝の挑戦を思い出しながら、助走の距離を調整する。
帝が滑った位置を指でなぞるように見つめる。
「あそこだな」
「何か分かった?」
「壁じゃない。助走だ」
「助走?」
「最後の一歩の位置が悪い」
帝は腕力で壁をねじ伏せようとした。
なら俺は、助走を変えて届かせる。
一呼吸置いてから、勢いよく壁に向かって駆け出した。
中盤で失速しないよう、着地の際に足の角度を微妙に変えながら駆け上がる。
右の手のひらが壁の縁を捉えた。
落ちる勢いを腕だけで止める。
もう片方の手ですぐに支えて、そのまま腕の力だけで体を引き上げる。
膝を壁の縁に引っ掛ける。
脚の力も使って体を壁に乗せ切った。
壁の上まで登り切り、頂上に設置されているボタンを拳で叩いた。
ブザーが鳴り響き、白煙が上がった。
静かに息を吐く。
「……よし」
壁の上へ立ったジュンヨウが、静かに拳を掲げた。
下ではかぐやが飛び跳ねていた。
「やったぁぁぁ!!」
「ホントに制覇しちゃった」
帝も腕を組みながら笑う。
「やるじゃねぇか」
「ヤチヨ、どうした急に静かになって」
「監修者が想定してないのはどうなんだ」
「まだクリア一人目なんだろ、次回の構想が速すぎるわ」
「結果発表。今日の最高到達は俺の全関門突破」
「次点で帝がそり立つ壁、俺以外で一番先まで行った」
「先越されたのがちょっと悔しいけどな」
帝が息を切らしながら言った。
「ま、俺も最後ってアドバンテージがあってのモンだし」
「次は俺が先に攻略する」
「負けず嫌いめ。……かぐや、いろP。二人もおつかれ」
「悔しい~!!次はリベンジする!!」
「私も、そり立つ壁の対策考えてくる」
「……ってか、そういやここだとアバターのステータスってリアル準拠なんだよな」
「そういう話だったと思うけど、今更どしたん?」
「……いや、かぐやだけジャンプハングで落ちたのって、義体の重さが影響してんのかなって」
「「あっ」」
「そういうことぉ!?ヤチヨぉ!!」
「しまった、配信〆るつもりだったのに」
「ジュンヨウのせいでかぐやに火ぃ着いちゃったじゃん」
「あ~ヤベヤベ。今日はここまで。おつかれ~」
「「おつかれ~」」
「ヤチヨ出てこぉい!!」
「絶対難しくなるやつじゃん」
「楽しみにしてる」
「言ったな?」
「言った」
「じゃあまた挑戦する」
「逃げるなよヤチヨ!!!!」
配信終了の文字が表示されても、コメント欄には
「おつかれ!」
「第二回待ってる!」
「YACHIYO怖すぎる」
「いやKAGUYAも怖すぎる」
そんな文字が流れ続けていた。
ROSOさん、感想いただきありがとうございます。
お気に入り登録いただいた方々もありがとうございます。
とても励みになります。
活動報告の方でネタの募集も始めておりますので、ご一読いただければと思います。