今日も世話を焼く   作:ディアーリーズ

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読者募集ネタになります。


Ex.かぐや「この間言ってた位置情報とかなんだけどさぁ」

リビングで思い思いに過ごしていると、かぐやがふと思い出したようにヤチヨへ声を掛けた。

 

「ねえヤチヨ。この間言ってた位置情報とかなんだけどさぁ」

「うん?」

 

ヤチヨはソファへ腰掛けたまま顔を上げる。

 

「ああ、かぐやも見ようと思えば見れるよって言ってたやつだね」

「そうそれ~」

 

かぐやは瞳をオレンジ色に光らせ、スマコンをARモードで起動しながら首を傾げた。

 

「今さぁ、隼斗の居場所を見てみたんだけど……これ合ってるの?」

「へ?」

 

ヤチヨもスマコンを起動する。

 

「隼斗の場合はスマホと、あとはバイクと車のGPSを拾ってるから……」

 

空間に投影した画面を確認しながら説明する。

 

「隼斗がスマホを手放した上で徒歩で移動してるって状況じゃない限り、その三つのどれかに本人がいるはずだけど……」

「う~ん」

 

かぐやは唸った。

 

「車とバイクは家にあるんだけどさぁ……」

「……?」

 

違和感を覚えたヤチヨが、自分でも位置情報を開く。

 

「ちょっと待って、ヤッチョも見てみる……」

 

数秒後。

 

「…………どこ、ここ?」

「ね?」

 

かぐやが空間に投影した地図を、ヤチヨの視界にも共有する。

 

「今日は出勤だから、研究所で彩葉と一緒のハズなんだけどさぁ」

 

ヤチヨは地図を拡大した。

 

「駅の近くだね……?南口の繁華街の辺り……?」

「でさぁ」

 

かぐやは困ったように笑う。

 

「かぐやちゃん気になっちゃったから、ここになにがあるか調べてみたわけよ。したらぁ……」

「……ガールズバー?」

 

ヤチヨが思わず読み上げる。

 

「しかもバニー」

「……な、なにかの間違いじゃないかなぁ???」

「かぐやもそう思ったから聞いたんだよぉ」

 

二人は顔を見合わせる。

ヤチヨはもう一度地図を拡大した。

 

店名を見間違えたのではないかと思った。

 

しかし、表示されている店舗情報は何度見返しても同じだった。

「バニーガールがおもてなし」と大きく書かれている。

 

「……どう見ても、ここだね」

「だよねぇ……」

「周辺の監視カメラとか見れれば早いんだけどねぇ」

「流石にちょっと犯罪になっちゃう」

「犯罪にちょっとも何もないと思うけど、だよねぇ」

 

二人ともが首を捻って考える。

 

「ちょっと考えてみよ」

「例えば、隼斗がスマホを落としたとか」

 

ヤチヨが可能性を挙げる。

しかし、かぐやは首を横へ振った。

 

「落としたとして、拾った人が交番に届ける前にガールズバー行くぅ?」

「ごめん、言っといてなんだけどそれはちょっと難しいかも……」

 

挙げたヤチヨ自身も苦笑する。

 

「まあ、キャストさんが出勤前に拾って時間がなかったとか?可能性は無くもないけど?」

「うっすいよねぇ……」

 

ヤチヨは地図を見つめたまま唸る。

 

「偶然、隼斗がオープン前の時間にその近くを通ったとかじゃないと……」

「でしょ~?」

「う~ん……???」

 

二人して首を捻っていると、玄関のドアが開いた。

 

「ただいま~」

 

彩葉だった。

 

「「おかえり~!」」

 

二人の声が重なる。

 

「……あれ?」

 

かぐやが辺りを見回した。

 

「やっぱり隼斗と一緒じゃないんだ」

「やっぱりって……」

 

彩葉は呆れたようにため息をつく。

 

「あんた位置情報見てたんかい。プライバシーの侵害って言ったでしょ」

「それどころじゃないよぉ!」

 

かぐやは勢いよくスマホを掲げた。

 

「なにがよ」

 

彩葉は靴を脱ぎながら答える。

 

「ああ、隼斗なら男性陣と飲み会だから遅くなるって言ってたよ」

「それ!」

「だから、なにがそれなの」

「隼斗、ガールズバーに行ってるみたい!」

「……はぁ?」

 

彩葉は一瞬きょとんとしたあと、

 

「…………いやいやいやいや。んなワケないでしょ」

 

と笑って否定した。

 

「でもさぁ!」

 

スマコンを着けていない彩葉に、かぐやがスマホを差し出す。

 

「ほら、位置情報ここなんだよぉ」

 

かぐやのスマホを覗き込んだヤチヨも、指差しながら小さく頷いた。

だんだんと理解し始めた彩葉の表情が、少しずつ曇っていく。

 

「…………え?」

 

笑っていた口元がゆっくりと消えていく。

冗談だと思っていたものが、少しずつ現実味を帯び始めた。

彩葉はもう一度地図を見つめ直した。

 

「…………電話は?」

「出ない~」

「アプリも既読つかない~」

「…………」

 

ここなら、徒歩で5分もかからない。

彩葉は少し考え込んだあと、小さく口を開いた。

 

「…………行く?」

 

ヤチヨがすぐ反応する。

 

「行っちゃう?」

「行く!!!」

 

かぐやだけが勢いよく拳を突き上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼斗の位置情報の発信場所である、ガールズバーの向かい側。

三人は店の正面から少し離れた曲がり角へ身を隠し、店の入口をじっと見つめていた。

 

「出てこないねぇ」

 

店の扉が開くたびに三人は反射的に顔を向ける。

三人とも「今度こそ」と身を乗り出す。

しかし出てくるのはスーツ姿の男性だったり、楽しそうに笑う女性客だったり。

その度に肩透かしを食らい、また物陰へ隠れる。

 

「なんか、悪いことしてる気分」

 

かぐやが小声で呟く。

 

「やってることは尾行だからねぇ……」

「まぁ、呑んでるならまだかかるんじゃないかなぁ」

 

ヤチヨも同じように店を眺める。

一方、彩葉だけは腕を組んだまま無言だった。

その表情は、普段の穏やかさが嘘のように険しい。

そんな三人の背後から、不意に声が掛かった。

 

「……お前らなにしてんの?」

「「「ひゃっ!?」」」

 

三人は一斉に肩を跳ねさせて振り返る。

そこには渦中の人物である、隼斗が立っていた。

ほのかに煙草の匂いが漂ってくる。

 

「びっくりしたぁ!」

 

かぐやが胸を押さえる。

 

「こっちのセリフなんだが」

 

隼斗は呆れたように肩をすくめた。

 

「隼斗、なにしてたの?」

 

ヤチヨが尋ねる。

 

「店でも家でも吸えねえし、喫煙所で一服してた」

 

隼斗が封を切ったばかりの、真新しい煙草の箱を軽く掲げる。

 

「喫煙所って、エスカレーターの下のとこの?」

「そうそこ。んでエスカレーター乗ってウチに帰ろうとしたら、見覚えのある背中が三つ見えたもんで」

「よく見えたねぇ」

「お前らのことならな」

 

そんな隼斗を彩葉はじとっと見つめた。

 

「ガールズバー抜け出して?」

「ああ。……ん?なんで知って……」

 

「……ああ」

 

隼斗は事情を察したように額へ手を当てた。

 

「位置情報か」

 

面倒なことになった、とでも言いたげに小さくため息をついた。

溜息と同時に納得したように頷くと、先に釘を刺した。

 

「先言っとくけど、なんも疚しいことはしてねえぞ」

「どうだか」

 

彩葉は疑いの目を向けたまま返す。

 

「一杯だけ呑んで、研究所の連中の分も金置いて出てきただけだ」

「呑んでるじゃん!」

 

かぐやがすかさずツッコむ。

 

「入った以上、一杯も呑まずに出るわけにもいかんだろ」

 

隼斗も苦笑するしかない。

 

「バニーは見たんでしょ~?」

 

ヤチヨが半ば面白がるように尋ねる。

 

「嫌でも目には入る。でも帰ることしか考えてなかったわ」

 

隼斗は即答した。

 

「言い訳みたいになるけど、店選んだのも俺じゃねえぞ」

「じゃあ誰」

 

彩葉が短く聞き返す。

 

「…………佐伯」

 

その名前を聞いた瞬間、

 

「あ~……」

 

ヤチヨは納得したように頷き、

 

「佐伯くんかぁ……」

 

かぐやも苦笑した。

 

「指輪もしてんだ。スクープ、スキャンダルになるようなことするわけねえだろ」

「なんで断んなかったのよ」

 

彩葉はまだ納得していない。

隼斗は困ったように頭を掻いた。

 

「部下が店まで選んだ手前、その場のトップがいの一番に離脱するわけにいかんだろ」

 

少し間を置いて続ける。

 

「だから一杯だけ呑んで、『あとはお前らだけで楽しめ』っつって金置いて出てきたんだって」

 

彩葉は小さく息を吐き、

 

「……連絡くらいしなさいよ」

 

とだけ呟いた。

隼斗は深いため息をつく。

 

「だから、店に入って10分も居なかったっての」

「10分?」

 

彩葉が眉をひそめる。

 

「最初の一杯だけ呑んで、会計代わりに財布から金だけ置いて出てきた」

「店員にも『もう帰るんですか?』って驚かれたくらいだ」

「それは……」

 

彩葉の表情が少しだけ揺らぐ。

 

「証拠ならあるぞ」

 

隼斗はスマホを取り出した。

 

「ほら」

 

画面には決済アプリの履歴が表示されている。

 

いまから約45分ほど前、一軒目の居酒屋で決済した記録。

一軒目の決済から24分後にはコンビニで煙草を購入した履歴が残っていた。

 

移動時間を差し引いても、ガールズバーへ移動して10分ほどで店を出ていることが分かる時刻だった。

 

「……ほんとにすぐ出てる」

 

ヤチヨが苦笑する。

位置情報を見たタイミングが良かったのか、悪かったのか。

ドンピシャのタイミングだったようだ。

 

「だから言ったろ」

 

隼斗は肩をすくめた。

 

「俺だって入った瞬間、『あ、これ俺が来る店じゃねぇ』って思ったんだから」

「じゃあなんで電話出なかったの」

 

彩葉はまだ腕を組んだまま尋ねる。

 

「電話ぁ?」

「既読も付かなかったし」

 

隼斗はスマホの通知履歴を開いた。

そこにはヤチヨとかぐや、そして彩葉からの大量の着信とメッセージが並んでいる。

 

「……あ~……」

 

頭を掻きながら苦笑した。

 

「マナーモードにしたまま戻し忘れてたわ。すまん」

「……」

「……」

「……」

 

三人は無言で顔を見合わせた。

そして次の瞬間。

 

「「「それを先に言え!!」」」

(いって)っ」

 

三方向から軽く頭を叩かれ、隼斗は思わず頭を抱えた。

 

「……理不尽じゃねぇ?」

「心配したんだから!」

 

彩葉が珍しく少しだけ声を荒らげる。

その一言で、隼斗は三人がわざわざ店の前まで来た理由をようやく理解した。

 

「……悪かった。不安にさせて」

 

三人の顔を順番に見回しながら、隼斗はもう一度頭を下げる。

 

「心配かけるつもりは本当になかった」

「でも、結果的にはそうなっちまったな。本当に悪かった」

 

その声音に誤魔化しは無かった。

 

彩葉もヤチヨも、それ以上強く責める気にはなれなかった。

静かになった空気の中、かぐやだけがぽつりと呟く。

 

「じゃあ今日はおうち帰ったら、お酒の匂いするねぇ」

「まあ、ガールズバーでは一杯だけだったけど、一軒目では結構呑んだし」

「歯磨き二回ね!」

「なんで二回なんだよ」

「煙草の分!」

「……それは、そうだな」

 

隼斗が苦笑すると、ヤチヨが吹き出した。

それにつられるように彩葉も笑い出す。

重かった空気は、ようやくいつもの四人らしい穏やかな空気へ戻っていった。

 

「でも」

 

彩葉が隼斗の胸元へ顔を近付け、小さく眉を寄せた。

 

「少しだけとはいえ……他の女の匂い、する」

「えっ」

 

ヤチヨも彩葉に同調する。

 

「良い気分じゃあないね~」

「いや、あの」

 

隼斗の反応を遮るように、かぐやも追撃を加える。

 

「かぐやってものがありながら、他のうさぎに現を抜かしたのは許せない!」

「抜かしてねえけど、あの、慈悲とかは……」

 

恐る恐る尋ねる隼斗に、三人は顔を見合わせる。

そして息を合わせて。

 

「「「無い」」」

「ですよねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒寄研究所内Slack ダイレクトメッセージ #佐伯智也

高羽隼斗

 @佐伯智也

 骨は拾ってくれ

  ↳

  佐伯智也

   えっ、もうバレたんすか

 

佐伯智也

 俺も謝った方が良いです?

 

佐伯智也

 リアクション無いのが一番怖いんですが

 

佐伯智也

 週明けの所長が怖いです

 

佐伯智也

 週明け有給取れません?

 

 

 

 




ROSOさん、感想いただきありがとうございます。

お気に入り登録いただいた方々もありがとうございます。
とても励みになります。

活動報告の方でネタの募集も始めておりますので、ご一読いただければと思います。
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