「よー、ジュンヨウだ。今日はいつも通りカラオケ配信。かぐや、いろP、ヤチヨとの雑談枠だ」
配信タイトルは【カラオケ】いつもの四人でだらだら歌う【JunY0u×かぐやいろP×月見ヤチヨ】
「かぐやっほー!!」
「いろっぴー。いろPで~す」
「ヤオヨロ~♪」
雑談を挟みながら、それぞれソロで一曲ずつ歌う流れが続いていた。
コメント欄から、ふとリクエストが流れてくる。
「あ、ジュンヨウとデュエット?良いよー!」
かぐやが真っ先に反応した。
「待ってかぐや」
ヤチヨが手を挙げる。
「ジュンヨウと『誰が』ってリクエストが無いよ」
「あ、ホントだ」
かぐやがコメントを見直して、少し考えてから。
「でもかぐやで良いっしょ!相性良いし~♪」
「聞き捨てならないなぁ」
ヤチヨが袖を軽く払いながら言った。
「ヤッチョもジュンヨウとの相性は良い方だと自負しておりましてよ?」
「歌のって言え、歌声の相性な」
隼斗が即座に訂正した。
「アンタら、どこで張り合ってんのよ」
彩葉が呆れたように口を挟んだ。
「ジュンヨウと一番相性がいいのは私に決まってんでしょ、一番付き合い長いのよ」
「オメーもかブルータス」
隼斗が頭を抱えた。
「歌声のって言えって、なんか意味深に聞こえるって」
「え~!?」
かぐやが目を輝かせた。
「じゃあ全員歌えば良いじゃん!そんでジュンヨウの相方決めよ!」
「俺の喉は労わってくれねえの?」
「一人ずつジュンヨウとデュエットして、アンケートで決める、で良い?」
ヤチヨが仕切り出した。
「良いんじゃない」
「賛成!」
「勝手に決まってく……」
隼斗がぼやいたが、既に三人は準備を始めていた。
くじの結果、かぐや→ヤチヨ→彩葉の順に決まった。
一組目:かぐや&ジュンヨウ
「じゃあかぐやから!曲は……『ロキ』にする!」
「まあ、お前らしい選曲だな」
「せっかくだし楽しい曲が歌いたくって!」
イントロが始まる。
──さあ眠眠打破──
──昼夜逆転──
──VOX AC30
──テレキャスター背負ったサブカルボーイがバンド仲間にやっほー──
かぐやが元気よくリンのパートを歌い、隼斗が男声パートを受け継ぐ。
かぐやの明るい声と、隼斗の落ち着いた声が、テンポの速い曲の中でも自然に噛み合っていた。
────勘違いすんな教祖はオマエだ────
────ロキロキのロックンロックンロール────
サビでハモると、かぐやが嬉しそうに隼斗の方を見た。
「合ってる合ってる!」
「まあ、悪くねえな」
二番に入った。
──「知名度あるけど人気はそんなにないから色々大変ですね。」──
この歌詞に、彩葉とヤチヨがくすっと笑う。
「ヤチヨカップ優勝者がなに言ってんだか」
「人気も知名度もある癖に~」
「10年以上前だよ!歌詞だし!」
「かぐや。歌、歌」
「わっととと」
────ぶっちゃけどんだけ賢くあざとくやったって────
────10年後にメイクは落ちてんだよ────
また二人が笑う。
「「微塵も落ちてないよね」」
「だから歌詞だってば~!」
ラスサビ。
かぐやも隼斗も自然と歌唱に力が入る。
──死ぬんじゃねえぞ──
──死ぬんじゃねえぞ──
────死にたかねえのはお互い様!────
曲が終わって。
「どうだった!?」
「明るくて楽しい曲だったな」
「聞いてるだけで楽しくなる」
「かぐやらしい歌だったよ~」
二組目:ヤチヨ&ジュンヨウ
「じゃあ次、ヤッチョ行くよ~。曲は~……『獣ゆく細道』で」
「……重いんだよな、それ」
「でも声合いそうでしょ?」
「そりゃ合うだろうけど」
イントロが静かに流れる。
隼斗の男声パートからの歌入り。
──この世は無常 皆んな分つてゐるのさ──
──誰もが移ろふ──
──さう絶え間ない流れに ただ──
────右往左往してゐる────
隼斗の低音へ、ヤチヨの透明な高音が静かに溶け込む。
重厚なメロディラインを、二人は丁寧になぞっていく。
二人の声が重なった瞬間、彩葉とかぐやが同時に息を呑んだ。
「わ……」
かぐやが小さく声を漏らす。
「なんか、声の重なり方が独特」
彩葉も画面を見つめたまま呟いた。
「こういう曲になると、お前の持ち味がよく出るな」
隼斗が小声で呟く。
「そういう曲、選んだからね~♪」
サビに入る。
──丸腰の命をいま 野放しに突走らうぜ──
────行く先は こと切れる場所────
ヤチヨと隼斗、二人の声質の違いがむしろ曲の陰影を際立たせていた。
静かながらも、呼吸がぴったり合っている。
「……ヤチヨ、この曲どこで見つけたの」
「たまたま。でも見つけた瞬間、隼斗の声と合うと思った」
──そっと立ち入る はじめての道に震へて ふゆを覚える──
二番に入ると、ヤチヨの表情が少しだけ変わった。
遠くを見るような、静かな歌い方。
「なんか、ヤチヨが歌ってる時だけ空気が変わる気がする」
彩葉がぽつりと言った。
「分かる。ヤチヨの歌って、自然と聴き入っちまうんだよな」
隼斗も歌いながら、少しだけそちらに気を取られていた。
ラスサビ。
──無けなしの命がひとつ──
──どうせなら使ひ果たそうぜ──
────かなしみが覆ひ被さらうと抱きかゝへて行くまでさ────
込められた感情に圧倒され、コメント欄も勢いが落ちる。
────誰も通れぬ程狭き道をゆけ────
二人の声が最後まで丁寧に重なり合い、曲が静かに終わった。
曲が終わって。
「……上手いこと選んだな」
「でしょ?」
ヤチヨが満足そうに微笑んだ。
「かぐやとの曲とは全然違う雰囲気だったね」
彩葉がしみじみ言った。
「同じ相方でも、こんなに変わるんだ……」
「曲の方向性の違いだろ、これに関しては」
三組目:いろP&ジュンヨウ
「最後、私は『かくれんぼ』」
「お前これ歌詞割りどうすんだよ」
「なんとなくで行けるでしょ」
「行けそうだけどさ」
イントロはなく、いきなり歌い出しから始まった。
──"いっせーのー"で鳴り響いたスタートの合図──
──なぞった線で結んだ世界──
────色付けていく ここから────
アイコンタクトも無しに彩葉が歌い出し、隼斗がそっと重ねる。
二人の声がひとつになった瞬間、熱量が上がった。
「……あ」
かぐやが小さく声を漏らした。
「なんか、大人っぽい感じ」
彩葉が歌詞の切れ目で、自然に隼斗へパートを渡す。
アイコンタクトもなく、まるで打ち合わせ済みのような呼吸だった。
──自分の価値に 目を疑って──
──どこまでだって 堕ちていけるの──
──どこか遠くに 消えてしまいたい──
──こんな世界じゃ 僕はいらない──
「歌詞割り、全然決めてなかったよね二人とも」
ヤチヨが小声で言う。
「決めてないよ。でも合うんだろうね」
──カウントダウンは──
────始まっているよ────
サビに入る瞬間、彩葉と隼斗の声が重なった。
アップテンポな曲調に合わせて、歌声が綺麗にハモる。
「……なんか、二人だけ雰囲気違うね」
かぐやが小さく呟く。
「クール系だとこうなるんだろうね」
ヤチヨも興味深そうに聴いていた。
二番。
彩葉の声が少し力を抜いたところで、隼斗の声が自然に支える。
崩れそうで崩れない、絶妙なバランス。
「……こういう曲だと、カッコよさが出るんだなぁ」
かぐやがぽつりと零した。
「うん。かぐやの時とも、ヤッチョの時とも、また違う感じ」
ヤチヨも静かに聞き入る。
ラスサビ。
──"いっせーのー"で声を上げて──
──"いっせーのー"で声を上げて──
────聴こえてくるんだ────
「……ズルいなぁ。二人とも楽しそう」
かぐやがぽつりと漏らす。
「この二人だけ、呼吸が自然すぎる」
ヤチヨも小さく笑った。
「かぐやもこの曲歌えるのにぃ」
「それ言ったら私も歌えるし~」
──泣きじゃくった声で──
──もういいかい?まーだだよ──
──笑う君が見えた──
──もういいかい?まーだだよ──
──幕は上がりだした──
────もういいかい?もういいよ────
────色付けていく ここから────
最後のロングトーンを歌い切って、二人の声がぴたりと止まった。
曲が終わって。
「……良い曲だったな」
隼斗が静かに言った。
「うん」
彩葉が微笑みで返した。
「かぐやの元気なのとも、ヤチヨのしっとりしたのとも違う感じだった!」
かぐやが興味津々に言った。
「三人とも全然違う色が出てて面白いな」
ヤチヨも頷いた。
二人の感想に、彩葉は少し照れくさそうに笑った。
「じゃあ、アンケート結果発表するか」
隼斗がコメント欄の集計を見ながら言った。
「……あれ」
「どうしたの」
「拮抗してる。ほぼ三等分だ」
「「「え」」」
三人が同時に画面を覗き込んだ。
「本当だ、ほぼ横並び……」
「かぐやが一番楽しかったコメントもらってるのに!」
「ヤチヨの声質評価も高いのにぃ~」
「私のも空気変わったってコメントあったのに」
三人が困惑した顔で顔を見合わせた後、一斉に隼斗へ詰め寄った。
「隼斗、結局誰が一番相性良いと思う!?」
「正直に言ってね?」
「逃げないでよ」
隼斗が三人に囲まれながら、少し考えた。
「……曲による」
「「「身も蓋もない!!」」」
三人の声が綺麗に揃った。
「いや、逃げてねえよ。ちゃんと理由がある」
隼斗が真面目な顔で続けた。
「まずアップテンポで可愛い曲なら、かぐやが一番合う」
かぐやが胸を張る。
「でしょ~!」
「重めのしっとりした曲なら、ヤチヨの透明感ある声が一番映える」
ヤチヨが満足そうに微笑む。
「それなら納得かな~♪」
「で、クール系とかロック寄りは、いろPと一番噛み合う」
彩葉が少しだけ得意げになる。
「でしょ?」
「だから本当に曲次第なんだよ」
「……なるほど」
彩葉が納得したように呟いた。
「確かに、それぞれ違うジャンルで組んでたもんね」
「例えば『ロキ』をヤチヨと歌っても、あの勢いは出なかっただろうし」
ヤチヨも頷いた。
「そう考えると、公平な判定だったのかもね」
「じゃあ結局、優勝はナシってこと~?」
かぐやが少し不満そうに言った。
「優勝はナシだ。全員別のベクトルで相性がいいってコトで」
「……なんか丸め込まれた気がする」
「丸め込んでない、事実を言っただけだ」
「……まあ、俺抜きで歌ってんのも聞きたいんだけどな」
「「「へ?」」」
「かぐやとヤチヨで『ライオン』とか、彩葉とヤチヨで『星天ギャラクシィクロス』とか。かぐやと彩葉で『桜ロック』とか『少女S』とか?絶対合うだろ」
三人で『三原色』とかも良さそうだよな、と隼斗が笑う。
「じゃあ今度やろ!」
「決まりだね」
「ジュンヨウは観客席ね」
「なんで俺だけ歌わせてもらえねぇんだよ」
「ジュンヨウが言ったんじゃん!」
taka114たかさん、評価いただきありがとうございます。
図書館司書さん、ROSOさん、感想いただきありがとうございます。
お気に入り登録いただいた方々もありがとうございます。
とても励みになります。
活動報告の方でネタの募集も始めておりますので、ご一読いただければと思います。