① SETSUNAリスナー参加型対戦・レビュー配信
「よー、ジュンヨウだ。今日は参加型SETSUNA。負けても泣くなよー」
SETSUNAの専用ステージに転送される。
夜の川上。
ところどころ崩れた木造の橋。
燃え盛る篝火。
対面の初心者らしきプレイヤーが、緊張したように刀を構えていた。
「そんな硬くなんな。一本やって感覚掴め。楽しまなきゃ損だぞ」
『は、はい!』
開始直後。
相手が突進。
勢いを加えた突き。
「お、思い切り良い」
突きから横薙ぎ。
フェイント。
逆袈裟。
悪くない。
だが。
「……ただ、見え見えすぎなんだよな」
左で大上段からの振り下ろしを受け流しながら、右の刀が走る。*1
相手の首が飛び、切断面から血の代わりに桜の花弁が飛び散る。
「今の、大振りすぎる。受けられた時のことも考えとけ。フェイントも入れっとより効くぞ」
『なるほど……!』
「でも受けられた後の反応は悪くなかった。ちゃんと相手が見えてる動きだった。
ああいうときはもう刀手放して素手で行け、素手で。蹴りでもいい」
『ありがとうございます!』
「一本目終~了。じゃ次、二本目だ。今のアドバイス忘れんな。次の相手も待機しとけよ?
初心者も上級者も遠慮せず来い。ボコすけど。誰か今日、俺の眼帯剥がせんの?」
② マシュマロ・コメント雑談配信
「よー、ジュンヨウだ。お疲れ。今日は雑談。重い相談送ってきたヤツ、あとで体育館裏な」
『配信始めたけど、誰も来ません。向いてないんでしょうか』
「あー……これなぁ」
ジュンヨウが椅子にもたれかかる。
「最初なんかそんなもんだろ。むしろ最初から人来る方が珍しい」
「十人来たら、その十人を一人残らず覚えろ」
「配信って結局、受け手が居ねえと成立しねえんだよ。一人じゃ出来ねえ、続かねえ」
「人ってのは単純でな。自分を覚えてくれる相手って、やっぱ嬉しいんだよ」
「数字は大事だ。そりゃ見る。俺も見る」
「でも数字ばっか見てっと、いつかポキッと折れんぞ」
コメント欄がゆっくり流れる。
『配信切ると虚しくなります』
少しだけ、間。
「……まあ、それは分かる」
部屋のエアコンの音だけが響く。
「配信切っと、急に静かになんだよな」
ジュンヨウは苦笑した。
「だからまあ、来てくれるヤツは大事にしろ」
「結局、それが一番長続きする」
「あっやっべツグ居やがる。やめろやめろこんなん見てんな」
「ってか帰ったら一人部屋なくなんだろお前」
③ 雑料理配信
「よー、ジュンヨウだ。今日は虚無メシ作る」
「腹減ったからな」
狭いキッチン。
冷凍うどんをどんぶりへ放り込みながら、
「包丁?洗うの面倒だから今日は使わん。夜食の洗いモンなんて少なけりゃ少ねえほどいい」
「はい、冷凍うどんレンチン。そこにバター落とす。めんつゆ。卵。以上。全て目分量」
「で、ここに黒胡椒とチーズ。これまた目分量」
湯気が立つ。
「んで混ぜる」
とろり、と卵が麺へ絡む。
「完成。虚無釜玉バターうどん。注意点はバター最初な、めんつゆと卵でぬるくなっと溶け残る」
「料理なんかこれで良いんだよ。生きてりゃ勝ち。
ありゃネギか刻み海苔散らすと見た目マシになるぞ、今回はねえけど」
椅子へ座り、そのまま啜る。
「……あ、これ楽だわ。リピしよ」
「……なんで管理人様いんの?」
「あーキャンプ動画なぁ。ツーリング兼キャンプ動画作りてえって前言ったっけ」
箸を置いて、コメント欄と駄弁る。
「やりてえのはずっとやりてえのよ。ただ如何せん、まだ学生で未成年だからよ。外泊動画ってどうなん?って思ってるワケ」
「わざわざそのためだけに親の手煩わせんのは違うべ。キャンプ動画やりてえってのは俺の我儘だし」
箸を取り直し、うどんを啜る。
「ま、あと一年ちょっとで法的には成人だ。それまで待っといてくれや」
「マジか」
ズルっと最後のうどんを啜り切った。
④ ガチ料理配信
「よー、ジュンヨウだ。今日はちゃんと作る」
まな板へ置かれる玉ねぎ。
一定のリズムで包丁が鳴る。
トントントントン。
「飴色まで炒める。レンチンすると時短になる」
「牛肉もしっかり表面を焼き固める。旨味を閉じ込めるのと、香ばしさを出す。あと煮崩れ防止。口ん中で崩れる分には良いけど、これをサボると鍋んなかで崩れっちまう」
本来なら赤ワインを使うところだが、未成年なのでそこは代用。
料理酒とぶどうジュース、そこにバルサミコ酢を合わせて風味を寄せている。
「……成人してねえとこういう制限がなぁ」
牛肉。
香草。
デミグラス。
「火は弱め。焦ると全部死ぬ」
ジュンヨウは自然な動きで灰汁を取る。
無駄がない。
「圧力かけまーす」
静かな蒸気音。
コメント欄が妙にざわついていた。
「やだよ面倒くせぇ。料理なんて工程通りやりゃ出来んだろ」
完成したビーフシチューを皿へ盛る。
仕上げに生クリーム。
付け合わせに蒸しブロッコリーと人参のグラッセを添える。
近所のパン屋で買ってきたバゲットも。
「そのうちパンも焼いてみてえんだけどな。生地捏ねるには部屋が狭ぇ」
「コラボなぁ、まだ学生だしな俺。万一なんかあった時がこえーわ」
湯気。
照り。
柔らかく崩れる肉。
生クリームの白とのコントラストが食欲をそそる。
「……まあ、こんなもんだろ」
「店レベルとか言われても困るわ。身内ならともかく、金取って他人様に食わせられるレベルじゃねえよ」
「……もうツッコまんぞ」
⑤ ゲリラカラオケ歌枠
「よー、ジュンヨウだ。近隣住民との和平条約締結のため、今日はカラオケからです」
「前に一回やったら、隣の部屋の壁ドンがドラムみたいになったからな。隣が友達で良かったぜ」
音量とエコーの調整。
カラオケボックスの安っぽいエコー。
マイクを近づけるとハウリングの音が配信に乗り、リスナーが阿鼻叫喚。
「やっべ」とマイクを遠ざける。
「すまん、鼓膜の替えあるか?今日は失恋ソング縛りでいくか。んじゃまず『Pretender』」
イントロ。
──君とのラブストーリー、それは予想通り──
──いざ始まれば、一人芝居だ──
ジュンヨウの低めの歌声が響く。
コメント欄が、数秒だけ感嘆符だらけになった。
歌い終わり。
ドリンクバーの氷の音がカランと音を立てた。
「……はい次。『女々しくて』」
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