Re:透き通る世界で燃える蒼炎   作:タンの串焼き

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プロローグです!


プロローグ なんか、転生してました。

「あぁ~……疲れた……」

思わずそんな言葉が口から漏れた。

夜風が頬を撫でる。

時刻は午後十時を少し過ぎた頃だった。

街灯が等間隔に並ぶ歩道を、仕事帰りのサラリーマンたちが黙々と歩いている。

誰も喋らない。

誰も笑わない。

ただ家へ帰るためだけに足を動かしている。

その光景を見ながら、俺――轟燈真は小さくため息を吐いた。

社会人三年目。

言葉だけ聞けばそこそこ立派だ。

新人ではない。

かといってベテランでもない。

会社のことも分かってきて、仕事も覚えてきて、気付けば色んな仕事を押し付けられる立場。

それが今の俺だった。

朝は七時に起きる。

八時には会社。

定時は十八時。

でも帰れるわけがない。

気付けば二十時。

二十一時。

二十二時。

そんな生活を何年も続けていた。

「人生ってこんなもんだっけな……」

ふと呟く。

昔はもっと楽しかった気がする。

小学生の頃。

放課後は友達と遊んでいた。

中学の頃。

深夜アニメにハマった。

高校では漫画を読み漁った。

大学ではソシャゲに課金していた。

そして社会人になった今も結局変わらない。

趣味はアニメ、漫画、ゲーム。

彼女なし。

友達少なめ。

休日は家。

立派なオタクだった。

だが別に後悔はしていない。

アニメも漫画もゲームも好きだった。

辛い時に支えてくれた。

学生時代、テストで赤点をとった時も。

社会人になって上司に無茶な仕事をふられた時も。

だからこそ。

その瞬間は衝撃だった。

何気なく開いたスマホ。

SNSのトレンド。

そこに表示されていた文字。

『僕のヒーローアカデミア アニメ最終回』

「……は?」

思考が止まった。

いや待て。

待て待て待て。

落ち着け。

一回落ち着こう。

見間違いかもしれない。

俺はもう一度画面を見る。

『最終回放送終了』

「えっ」

もう一度見る。

終わっていた。

「えっ?」

日付を見る。

ほぼ半年前。

数秒ほど固まった。

そして。

「終わったの!?」

思わず叫んだ。

通行人が振り返る。

知らない。

そんなことはどうでもいい。

ヒロアカが終わっていた。

俺の好きだった作品。

毎週楽しみにしていた作品。

そのアニメが。

終わっていた。

しかも俺は知らなかった。

「マジかよ……」

膝から崩れ落ちそうになる。

だって見てない。

最終回見てない。

仕事してる間に終わってた。

何それ。

悲しすぎるだろ。

俺の最推し。

轟燈矢。

荼毘。

救われなかった男。

あのキャラが最後どうなったかすら知らない。

「最終回……見たかったな……」

そう呟いた時だった。

ふと視界の端に違和感を覚えた。

交差点。

大型トラック。

赤信号。

そして横断歩道を渡る小さな女の子。

運転手は気付いていない。

少女も気付いていない。

このままじゃ。

「おい!!」

気付けば叫んでいた。

「危ねぇ!!」

身体が勝手に動く。

考えるより先に走っていた。

人生で一番速く。

全力で。

少女へ向かって。

「間に合えぇぇぇぇぇぇぇ!!」

少女を突き飛ばす。

次の瞬間。

凄まじい衝撃が身体を襲った。

世界が回る。

空。

街灯。

アスファルト。

全部がぐちゃぐちゃに混ざる。

息が苦しい。

身体が動かない。

寒い。

痛い。

死ぬ。

本能で理解した。

視界の端で少女が泣いている。

怪我はない。

無事だ。

それだけ確認して少し安心する。

後悔は沢山あった。

親孝行したかった。

旅行にも連れて行きたかった。

もっと生きたかった。

もっと遊びたかった。

そして最後に浮かんだのは。

(ヒロアカ最終回……見たかったなぁ……)

そんなオタクらしい未練だった。

意識が沈む。

暗闇。

静寂。

そして――。

暑い。

最初に感じたのはそれだった。

次に感じたのは眩しさ。

最後に感じたのは。

「……砂?」

目を開けた俺は固まった。

砂だった。

見渡す限り砂。

右を見ても砂。

左を見ても砂。

前を見ても砂。

後ろを見ても砂。

どこまでも続く砂漠。

「いやここどこだよ」

死後の世界?地獄?いや、それにしては平和すぎる。

地獄にしては静かすぎる。

俺は立ち上がった。

身体は問題なく動く。

怪我もない。

痛みもない。

むしろ絶好調だった。

トラックに轢かれた人間とは思えないくらい元気である。

「夢か?」

頬をつねる。

痛い。

夢じゃない。

最悪だ。

いや良いのか?

分からん。

何も分からん。

とりあえず歩くしかない。

そう思って砂漠を歩き始めた。

それが俺の新しい人生の始まりだった。

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