ようこそ、ネットミームハウスへ。
この青春おでんはサービスだから、まず食べて落ち着いて欲しい。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、15周年のイナズマイレブンを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、深夜テンションでこの作品を書いたんだ。
じゃあ、イナズマチャレンジャーしようか。
「ハァイ、雲明ィ」
うわでた。
今まで気配も何もなかったはずなのに、どこからともなく、ベンチの下からヌルリと這い出てきた男を見て、錆浅葱色に先端がターコイズブルーのセミロングヘアーが特徴の少年、笹波雲明は心の中で呟いた。
「昼飯食べてる?」
「いえ、まだやらなければならないことがあるので」
「Oh……お昼時なのに。弁当作ってきたけど食べる?」
「いえ、お気持ちだけいただきます。というかどこから取り出したんですか?」
今さっきベンチの下から這い出てきたというのに制服に全く汚れが見当たらず、弁当箱を包んである風呂敷を取り出した男は、雲明の腐れ縁である。
いつの間にか近所に引っ越してきていて、いつの間にか雲明と交流するようになり、いつの間にか雲明と腐れ縁となっていた男である。コズミックホラー映画の始まりかな? と思わないこともないが、普通に地球出身の地球育ちの人間である。どこからともなく現れることもあるが、れっきとした人間である。本物の宇宙人でも、宇宙人ごっこをしていた人間でも、未来からやってきたわけでもないただの人間である。人間の構造上絶対にできないような挙動を見せることもあるが、れっきとした人間である。人間なのだ。人間だと言え。
「今日の弁当は現在の雲明の身長体重から算出した必要カロリーを計算した上でタンパク質とビタミンを豊富に取り込める特製焼き魚弁当だ」
「なぜ僕の身長体重を知っているんですか?」
「見て触れば解るだろ」
「本当に距離を取ってください。取れ!」
「Oh……そんなに嫌がらなくても良くない?」
いつの間にかベンチに座ってさりげなく肩を組んできていたその男の横腹に肘を叩き込む────全く効いていないが────雲明は素でドン引きしていた。腐れ縁の男の異常さは付き合いの長さから理解していたつもりだったが、そんなことはなかったのだ。まさか人を見て、軽く触るだけで身長体重を算出するような変態的な技を持っていたとは思ってもみなかった。
「うわっ、素で引いてる」
「当たり前の反応ですが?」
「けどお昼ご飯は食べなきゃダメだぜ。まだまだ育ち盛りの食べ盛りで甘いものばっかり食べて茶いけないんだし」
いきなり真面目ぶった表情で弁当の包みを開いて中身を見せてくる男。主菜、副菜、主食がバランスよく盛りつけられた、焼き魚弁当は食欲をそそらせる見事な出来栄えであった。特におまけに付いている黄金の卵焼きが雲明の目を釘付けにする。甘めに仕上がっているであろう厚焼きの卵焼きの味はよく知っているのだ。
「あと張り詰めすぎても人生上手くいかねぇもんよ」
「……」
「だから君、昼飯を拝領したまえよ」
「キャラブレてませんか?」
「人生ってのはブレてブレての連続なんだぜ、雲明。最後の最後にこう、ブッピガンって道が繋がる感じで」
今日の格言来たなガハハハッ、と笑いながらサラダチキンを貪り始めた男に呆れながらも弁当を受け取って一口食べる雲明。相変わらず美味しいが、こんなやつが家事全般を極めていると思うと少々……いや、凄く釈然としない。今でも隣で化粧品を用いて千変万化している這いよる混沌よりも質の悪い変態が下手な執事よりも仕事ができるなど、誰が思うだろうか。いや、誰も思わない。
「ミーム」
「どした」
ミームと呼ばれた男は、どうやったのか分からない速度で化粧を落として雲明を見る。常に胡散臭い笑みと溶鉱炉のような赤々とした瞳からは、何が始まるんです? と言わんばかりの期待が滲んでいた。
「聞いていると思いますが、僕は、僕達は野球部と決闘を行います」
「決闘、聞いています。厳しい戦いになると」
ミームと呼ばれた男は雲明の言葉に頷き、耳に挟んだ話を思い出していた。
とにかく現在の南雲原では野球部VSサッカー部(仮)の決闘がトレンドランキング1位を掻っ攫っているのだ。
「決闘まであと数日……時間は有限です」
「タイムマシン欲しいよな。喋るぬいぐるみ付きならなおよし」
「……決闘ではある必殺タクティクスを使うつもりです。それを習得する特訓に残りの数日を使いたい」
そう言って手渡されたノートに目を通すミーム。ノートを数分確認し終えた後、彼は口を開く。
「つまり野球部に対して────というか、柳生に多勢に無勢だ、いっけぇってやる感じね。やはり(数の)暴力……! (数の)暴力が全て解決する……!」
「言い方はアレですが大体合ってます」
「てかそんなことせずとも勝てるだろ、多分」
お前が鍛えるなら問題ないだろ? そう言わんばかりの視線を向けてくるミームに対し、雲明は首を横に振る。
「それじゃあダメなんです。柳生先輩には一人の無力さを理解してもらわなくてはいけない」
「へー……ま、いいんじゃねぇの? 柳生ってばいっつも息苦しそうだし」
ボコボコにしてやった方が逆にスッキリするんじゃねぇかなぁ、とサラダチキンを貪るミームが呟く。人間とは思えない挙動を見せたり、ふざけた戯言ばかり吐くような男だが、出会って腐れ縁になるまでの付き合いで理解していた通り、本当に人のことをよく見ている。
「で、俺は何すればいいわけ?」
「サッカーしてください」
「決闘に参加しろ……ってコト!?」
「違います。特訓に付き合えという話です」
「理解した……俺の役割」
本当に理解してんのかこいつ……そんな思いを込めた視線を受けてもミームは全く怯まない。いつも通り笑っている。雨にも負けず、風にも負けず、嵐、竜巻、ハリケーンにも負けないどころか災害を引き起こしたやつを逆に汚染してくる天変地異のような存在はいつも通り、雲明と出会った時から変わらぬ笑みを浮かべている。
「サッカーを、贈ろうか」
「思い出の中でじっとしててください」
「俺は、思い出にはならないさ……」
思い出の中でじっとできないどころか思い出から飛び出して宇宙の彼方まで走っていく男であるミームはにっこり笑って、いつの間にか空になっていた弁当箱を回収して立ち上がる。
「じゃ、放課後に。うどん屋の裏でいい?」
「はい、そこでまた」
「オッケー、また会おう!」
ニッコリと笑って雲明を指差してから校舎に戻っていくミームと呼ばれた男。
彼の名は
* * *
放課後、サッカー部(仮)のメンバーは野球部との決闘へ向けての最終訓練として、客引きの勢いが凄いうどん屋の裏手にあるグラウンドに向かっていた。ここに来た理由は、サッカー部(仮)の中心人物であり、えらいハリキリ☆ボーイである笹波雲明から決闘前の最終訓練はここで行うと伝えられていたからだ。
「なぁ、グラウンド集合ってことは試合でもすんのかね?」
「前に言っていた南雲原のサッカークラブとの練習試合ですかね?」
「ここに至るまでの特訓を考えると、何が来てもおかしくはないね」
今日に至るまでに、サッカー部(仮)のメンバーである木曽路兵太、桜咲丈二、四川堂我流、忍原来夏、古道飼亀雄は厳しい特訓を積み重ねてきた。
基礎練習の他に、百目階段往復ダッシュ、ドローンと鬼ごっこしながらのドリブル&リフティング練習、的当て、タイヤ引き、百本ノックetc.とにかく地獄のような特訓を積み重ねてきた自負がある。そんな自分達に課せられる最後の訓練とはどんなものなのか────ワクワクする気持ちよりも戦々恐々とする気持ちが勝っている中で、思った以上に立派なグラウンドに辿り着き────
「大根、こんにゃく、卵、ニンジン、牛すじ……ククク……青春おでんは様々な栄養素を確保できる万能食だぁ……」
「コートのど真ん中で作る必要性は?」
「それが全く無いんだよね。怖くない?」
「ええ、ミームの頭の中が心配になるくらいには怖いですね」
グラウンドのど真ん中でおでんを作っている変態とエンカウントした。何を言っているのか分からないと思うが、サッカー部(仮)も何を見ているのか理解していない。そしてその変態の横で「なんだいつものパターンか」と言わんばかりの表情で応対している雲明がいる。
「────お?」
変態と目が合った。サッカー部(仮)のメンバーがどういう状況なのかと混乱している中で、変態がまるで梟のようにグルン、と首を後ろに回してこちらを見てきたのだ。トテモ=コワイ。
「ハァイ、丈二ィ。青春おでん食べる?」
「食わねぇよ」
「Oh……美味しいのに。味が染みてるぞ?」
ミームが器によそった大根は、おでんの出汁を吸って濃い茶色になっている。寒い冬などに食べたのならば間違いなく体に染み渡る美味さだろう。
「練習前に食うもんじゃねぇだろ」
「確かに熱々のおでんを食べるのはきついかもしれない。けどかつてイナズマジャパンもおでんを食べて世界に挑んだんだから由緒あるサッカー飯だぞ」
「かもな。とりあえずウォームアップするからどいてくれるか?」
「
クラスが同じである丈二と漫才を繰り広げるミーム。札付きの不良をやっていた丈二にすら無遠慮に踏み込んでくるあたりが、ミームの凄まじいところなのだ。具体的には地雷原でタップダンスして、地雷を踏み抜かずに切り抜けていくような対人スキルがある。真面目に生きていればモテるだろうが、そんな未来はなかった。
「あ、なんか見覚えがあるような……?」
「何? 変態?」
「言ってないですけど!?」
「僕達と同じ2年生の寝戸壬為夢君だね。常に暴走している機関車みたいな人だと生徒会の忍びから聞いているけど……」
「やぁダニエル! 君を助けに来たんだ!」
「四川堂だよ。……というか、助けにって一体……?」
我流がサッカー部(仮)のメンバーの言葉を代弁したところで、雲明が手を叩いて視線を集めた。
「皆さん揃いましたね。これから数日後の決闘に向けて最後のテコ入れを始めます。そのテコ入れを協力してくれるのが────」
「ワムウッ!」
「不本意ながら僕の腐れ縁のミームこと寝戸壬為夢です。戯言は無視して結構です」
まともに相手していたら精神が汚染されるので気を付けてください。
雲明のぞんざい過ぎる紹介に若干引く表情を浮かべるサッカー部(仮)のメンバー達。そしてそんなメンバーの視線を受けながらも、柱の男のようなポーズを決めるミーム。我が道を行くというレベルではない。
「確かに寝戸のやつが目をかけてるっていうやつがいるのは、本人から聞いてたが……で、協力ってのはあれか? こいつが新メンバーってことか?」
「いえ、ミームには今後サッカー部に加入してもらうつもりではありますが、今回は違います」
「えっと、じゃあ今回は?」
「この戯けとサッカーをしてもらいます。1対5……一人潰しの必殺タクティクスを習得してもらうために」
「多勢に無勢だ、いっけぇ!!」
「「「「「………………え?」」」」」
数的不利が過ぎる、そんなことをサッカー部(仮)の誰もが思う中、おでんをスープジャーに詰め終えたミームが雲明から指定されたであろう場所に立って準備運動を開始した。その立ち振る舞いは今から戦います、という感じではなく、むしろショッピングモールに買い物に行く時のような緩やかな気配を漂わせている。片手にはどこから取り出したのか分からないサラダチキンが収まっている。
何が何だか分からないままのサッカー部(仮)ではあったが、雲明の有無を言わせぬ気配からこれが本当に必要なことであると察して彼に叩き込まれた配置に付く。
「今回の特訓はこれまでのおさらいと、必殺タクティクスの習得が目標になっています」
「一人潰しの必殺タクティクスってこと?」
「はい。四人で一人の動きを封じる【ブロック・ザ・キーマン】の習得が今回の目標です」
「普通にやったら勝ち目がねぇから柳生を潰して戦えってことか?」
「いえ、そういうわけではないですが、柳生先輩にはそれが必要です。詳しく話せませんが必要だからやるんです」
「柳生駿河に悲しき過去……」
詳細を説明するつもりはないらしい雲明と、何か呟いたが何と言ったかサッカー部(仮)には分からないミームの言葉。とにかく習得しなくてはならない、ということだけは理解したサッカー部(仮)のメンバーが頷くことで了承の意を示すと、雲明が続ける。
「ルールですが、そこの戯けが点を取りに来るので、完全に封じ込めてください」
「……それだけ?」
「それだけです。…………始めますよ」
ミームの準備が整ったのを確認した雲明がフィールドから離れ、それを見たミームが笑う。
「
「言われなくてもしますよ。……最終特訓、開始!!」
ピィイイッ! とホイッスルが甲高い音を発して、特訓開始の合図が上がる。ホイッスルの音を聞いたサッカー部(仮)にスイッチが入ったのも束の間。
「イクゾー! デッデッデデデデ! (カーン)」
妙に活舌の悪い言葉遣いと音楽を口ずさみながらミームが動き出した。その動きは早いとは言えず、むしろ遅いくらい。全力疾走しているわけでも、ランニングをしているわけでもない、軽く小走りしている程度の速度だ。
この速度で突っ込んでくるなら、簡単にボールを奪うことができるだろう。四人で囲んで動きを止める必要もないくらいだ────なんて、サッカー部(仮)が思っていると。
「まあ、やるからには本気でやろうか? その方が楽しいだろ」
「「ッ!!?」」
気付いた時にはFWの目の前にミームがいた。さっきまで少し離れた場所にいたはずなのに、いつの間にか目の前に現れた男に瞠目していた丈二と来夏だが、すぐに切り替えて動き出す。伊達に雲明の特訓を耐え抜いてはいないのだ。
「スロー、スロー、クイッククイックスロー……」
「くっ……!」
「この……!?」
だが、それだけで食らい付けるような人間が雲明の用意した最終訓練の相手に選出されるはずもない。まるでスケートリンクで滑るように、ダンスでもするかのようにコートを動き回るミームに翻弄されるFW陣二人。
「素敵なステップです、ご友人!」
「煽ってんの!?」
「いや、真面目に。雲明に鍛えられてるだけあるよ。予想以上に動けてんね」
翻弄されながらも食らい付いてくる二人に、胡乱な言葉遣いを捨てて称賛するミーム。
「行かせな────うおええいっ!?」
「ど、どういう動きして……!?」
そんな彼の背後に迫るのはMFの兵太とDFの亀雄。ミームを取り囲むように陣取った二人ではあったが、瞬きをするようなほんの一瞬で、密林を縦横無尽に動き回る蛇のような、液体と表現される猫の如きしなやかな動きで突破されてしまう。
「なんとかなれーッ!!」
「それはこっちのセリフ────ああっ!?」
防御を突破してきたミームのシュートが、ゴールを守る我流の指先を掠めるようにしてゴールネットを揺らす。
それと同時にゴールしたことを伝えるホイッスルが響き渡り────ミームはホイッスルを吹いた雲明を見て笑った。
「雲明自らが(鍛えた選手凄いな)!? サスガダァ……」
「当然です。それとギア上げていいですよ。限界ギリギリまで扱き上げます」
「ヤァァハァァァッッ!!」
「誰が言葉を失えと言いましたか?」
奇声を発したミームは立ち尽くしているサッカー部(仮)の方へと向き直り、サムズアップしながら笑って口を開く。
「ハァイ、南雲原。サッカーやろうぜ?」
(属性相性が)分からない……俺は雰囲気でイナズマイレブンをプレイしている……ごめんよ……熱がね、溢れたんだよ。溢れて深夜テンションで生まれたのがこれなんだ。すいませんイジメヌンデクダサイ何でもしますから(なんでもするとは言っていない)
寝戸壬為夢(ねとみいむ)
深夜テンションで生まれたこの産物の主人公。ネットミームの権化。口を開けば基本的にネットミームか語録しか吐かない。化身かソウルは多分スペースキャット。止まらないミームBB。
笹波雲明の腐れ縁。
無属性。
「ハァイ、南雲原。サッカー楽しんでる?」
笹波雲明
イナズマイレブン~英雄たちのヴィクトリーロード~の主人公。サッカー魔王。
這いよる混沌と肩組んでゲラゲラ笑って止まらないミームBBとかやっているような神話生物(人間)と腐れ縁となってしまった少年。そのうち鋼鉄のハリセンを持つかもしれない。
この作品ではイマジナリー円堂ハルだけではなく、イマジナリー(本物かもしれない)ミームも宿してしまっている。その変態はイマジナリーから追い出しておけ。
「楽しむために頑張ってるんですが?」