ハァイ、南雲原。サッカー楽しんでる?   作:エヴォルヴ

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この作品は深夜テンションによるノリと勢いで書かれているんだ。だから誤字脱字はあるし、文法は滅茶苦茶だったり、時間がぶっ飛んだりするんだ。悔しいだろうが仕方がないんだ。


(サッカー部のために)お前も頑張んだよ!!

 一人潰しの必殺タクティクス、【ブロック・ザ・キーマン】習得のための特訓は熾烈を極めた。ギアを上げろと雲明から指示を受けたミームの動きが意味不明だったこともあって、初日は全員が動かぬ屍のような状態でおでんを食べさせられ、次の日はなんとかついて行けるようになったところで雲明からの緩急のギアチェンジの指示が入って動きがまさしく獲物を追いかける猫の如くと化して白目を剥きながらおでんを食べさせられ────決闘まで残り一日となってようやくボールを奪い取ることができた。

 

 なお、必殺タクティクスを習得したその日も汗だくになりながら青春おでんを食べさせられたことにより、サッカー部(仮)のメンバーは熱々の青春おでんが若干のトラウマになりかけていた。袋叩きにしてやろうかとも思ったが、避けられて熱々の卵を口に捻じ込まれるのがオチだと理解して止めた。そして必殺タクティクス習得を祝してミームが用意したジェラートで和解した。青春とはかくもあはれなり。

 

「お、空いてんじゃーん」

 

 そして時は流れて南雲原中学校の放課後、グラウンド付近。桜の木の下のベンチに陣取ったミームは、過去最多となる人数の居残り生徒達と共にその時を待っていた。

 

 一躍有名人となったえらいハリキリ☆ボーイこと笹波雲明率いるサッカー部(仮)と、南雲原の花形部活である野球部によるサッカーバトルという名の神聖な決闘の結末を見届けるためだ。相も変わらずミームは懐からサラダチキンを取り出して貪りつつ、サッカー部(仮)と柳生駿河率いる野球部が対面している場面を眺めている。周囲で野次馬をしていた居残り生徒達も決闘が始まるその瞬間を今か今かと待ち望んでいる。

 

「ここだけの話、野球部よりもサッカー部を応援しているのは……俺なんだ!」

 

「僕もサッカー部の情熱を感じて応援したくなったんだよね、凄くない?」

 

「野球部も頑張ってほしいけどなー、俺もなー」

 

「ちくわ大明神」

 

「誰だ今の」

 

「忍原先輩頑張れー!!」

 

「忍原先輩こっちにファンサしてー!!」

 

(案外いるもんだな、応援してる人)

 

 南雲原のアイドル、忍原来夏の応援も含めてサッカー部(仮)の応援であると認識したミームは、南雲原の中にサッカー部を受け入れる下地が生まれていることを感じ取っていた。少し前までサッカーが忌避されていたとは思えない程の応援の数である。

 

「隣、いいかしら」

 

「あらいらっしゃい! ご無沙汰じゃないっすか!」

 

「先週一緒に買い物行ったわよね?」

 

「ポッチャマ……(痴呆)」

 

 胡乱な言葉を吐き続けながらもサラダチキンを貪ることを止めない戯けの隣に座ったのは、長い金髪を後ろで三つ編みにしてまとめている少女、小太刀鞘。剣道部のエースオブエースであり、数々の大会で優勝してきた猛者だ。

 

 そしてミームとは家族ぐるみの付き合いがある腐れ縁でもある。雲明の腐れ縁レベルが50であるのなら、彼女とミームの腐れ縁レベルは60……そこまで変わっていない? レベル差10は大きすぎる。腐れ縁同士の交流もあったりするのだが、それはまた別の話。

 

「サッカー部の加勢、しなくていいの? 君のお気に入りがいるみたいだけれど」

 

「サッカーは皆でやるから尊いんだ。絆が深まるんだ」

 

「……そう、何かあるのね」

 

「そうだよ」

 

「なら見守りましょうか。……飲み物とかある?」

 

「アイスティーしかなかったけど、いいかな」

 

「ありがとう」

 

 ミームが放つ胡乱な言葉から何らかの意図を感じ取った鞘はそれ以上は追及せず、彼が魔法瓶に入れて持ってきていたらしいアイスティーを受け取って口に含む。涼やかな紅茶の香りが通り抜け、飲んだ後の余韻も素晴らしい。

 

 アイスティーを飲みながら試合開始を待っていると、ルール説明が終わったらしいサッカー部(仮)と野球部が配置に付いた。サッカー部(仮)は制服のままで、野球部はユニフォームという違和感マシマシな状態ではあるが、お互いにやる気に満ちている。

 

「……やってみせろよ、サッカー部」

 

 ミームの呟きが風に消えた瞬間、審判役の生徒がホイッスルを鳴らして決闘が始まった。

 決闘を見守る生徒達が声を上げて盛り上がる中、野球部が動き出した。やはりと言うべきか、雲明から教えられていた通り野球部は駿河にボールを回し、サッカー部(仮)のいるフィールドへと突き進んでいく。

 

「ほう……向かって行くのか……逃げずに一人でサッカー部へと向かって行くのか……」

 

「近付かないとゴールできないからじゃない? というか野球部全体で向かってるけれど」

 

「柳生一人だけだよ」

 

「……?」

 

 胡乱な言葉ではない、真面目ぶった声音で吐き出された言葉に首をかしげる鞘を他所に、駿河が恵まれた体格と見事なボールコントロールでサッカー部(仮)の防御を掻い潜り、早くもゴールチャンスを迎えていた。

 

「まずは一点! 貰ったぜ!!」

 

 駿河がそう叫びながらシュートを放つ。真っ直ぐで、速く、そして力強いシュートはゴールへと向かっていき────

 

「寝戸君の動きに比べれば────分かりやすい!!」

 

 我流が飛んでくるボールの真正面に立って、しっかりとキャッチした。

 

「なっ……!?」

 

「寝戸君の悪意しかないシュートに比べて正直でいいシュートだった……!!」

 

「ッ……!」

 

 駿河を含めた野球部は今のシュートが先制点になると思っていたが、得点ならず。それどころかいいシュートだったと相手から褒められるという謎状況に歯噛みしていた。

 

「ククク……酷い言われようだな。事実だから仕方ないけど」

 

 グラウンド近くのベンチに座っていたミームは、己の耳に届いた我流の恨み節に堪えた様子はなく、むしろ楽しそうに笑っている。

 

「何をしたの、君」

 

「チキチキ! 右か左か正面かひとりワンツー(シュート)黄金長方形選手権」

 

「なんだかよく分からないけど、悪意しかないシュートをしたのは分かったわ」

 

 特訓中のミームが我流に叩き込んだシュートは悪意が込められたシュートであった。ゴール付近でバウンドしたと思ったら強力な回転を帯びて右に曲がったり左に曲がったり、ゴールポストに激突して不可思議な挙動でゴールネットを揺らしたりと、とにかくおちょくってるのかと思うようなシュートばかりであった。これには雲明も呆れてお説教をする────と思いきや、未来を見据えた必殺技対策と称して悪意あるシュートを打たせ続けたのだ。雲明は恐らく心の中にサディストを何体も飼いならしていると思われる。

 

 雲明の内なるサディストはともかくとして。我流の見事なキャッチによってボールがサッカー部(仮)のものとなった瞬間、雲明が手を上げて必殺タクティクスの発動を指示する。

 

「出るか……! 雲明考案の……」

 

「これは……」

 

 合図と共に行われたのは兵太、亀雄、来夏による一人潰しの必殺タクティクス。我流からパスを受け、前線を駆け上がる桜咲を駿河は止めることができない。どうにか抜け出そうと動くが、初動をことごとく潰されて動けない駿河の顔には焦燥と苛立ちが滲んでいた。

 

「数の暴力による行動制限はその性質上、圧迫感が凄まじい。時間制限もあるこの状況ではとんでもないストレスとなり、集中力を削られる」

 

「間違いなくキツイでしょうね。一対一の剣道でも消耗が激しいことがあるのに、多対一ならもっと」

 

「さらに言えば抜け道を一つ用意して、そこに誘導してから止めることでさらに圧をかけている……これこそが必殺タクティクス【ブロック・ザ・キーマン】よ」

 

 まぁ、抜け道へ誘導してその道を潰すというのは、ミームの馬鹿みたいな動きを制限するためにサッカー部(仮)が自力で見出したものであって、本来の【ブロック・ザ・キーマン】とは違っているのかもしれないが……今この瞬間、必殺タクティクスは間違いなく刺さっていた。

 

 駿河が食い止められている状態に混乱していた野球部の防御を見事な動きで突破した丈二が、雲明が絶賛していた脚力を十全に発揮したシュートを打ち込む。そのシュートは駿河が放ったものよりも力強く、一本の剣の如き鋭さを持っており────野球部のキーパーがそんなシュートを止めることは不可能であった。

 

「サスガダァ……!!」

 

「……少し、分かった気がするわ」

 

 サッカー部(仮)の先制点によって大きな歓声が沸き上がる中、ふと、鞘が呟いた。

 

「何が?」

 

「柳生君一人だけ、君がそう言った理由が」

 

 先程の駿河率いる野球部の動きや、再開した試合で再び駿河が囲まれてしまった状態に慌てふためく野球部を見ながら、鞘は言葉を紡ぐ。

 

「野球部は柳生君にボールを集中させて点を取ろうとしていた。効率的、と言えばそうかもしれない。自分達の本職は野球であって、サッカーは初心者に毛が生えた程度。経験者に任せた方が勝てる確率は上がる」

 

「お、そうだな」

 

「けれど、それは自分達で点を取りに行く────全員で勝ちに行く意識に欠ける、という意味でもある……」

 

「そうだよ(肯定ペンギン)」

 

「だからこそ、ああも混乱する。柳生君にボールを回せば勝てると思っていたからこそ、彼の動きが封じられると動きに迷いが出る」

 

 どう動けばいいのか、どうすればいいのかという迷いが生じている野球部を他所に、ボールは再びサッカー部(仮)のものとなった。

 

「逆に、サッカー部は一人一人の動きが勝利に繋がると信じている。全員で勝ちに行くという意識が彼らにはある」

 

「YES! YES! YES!」

 

「けれど解せないことがある。これだけ徹底して柳生君を潰しにかかる理由は何? それをしなくても勝ちは掴めるでしょう?」

 

「……さっきも言っただろ、鞘ちゃん」

 

 溶鉱炉でドロドロになった灼熱の鉄の如き真っ赤な瞳が、囲まれた状態で雲明と会話をしている駿河を射抜く。

 

「サッカーは皆でやるから尊いんだ。絆が深まるんだ。接待や忖度など、上等な料理に蜂蜜をぶちまけるが如き行為ッッッ」

 

「…………そう、彼も苦労している人間だったわけね」

 

 柳生駿河に悲しき過去……それは幼少期から”大物政治家の息子”だからという接待、忖度の数々。望んでもいない、与えられただけの活躍の場。それが嫌だから彼はサッカーというスポーツから抜け出し、野球を始めたのだ。

 

 だが、戦うフィールドを変えても柳生という名がチャンスを回す状況に変化は無かった。チャンスとは与えられるものではなく、自分で切り開くものだというのに、周囲の人間はことごとく駿河本人の思いを、心を、無自覚に踏み躙り続けた。

 

 チャンスを与えられ続け、期待が集中することで点は取らざるを負えない、取らなければならない────まるでチャンスの奴隷となってしまったかのような、生き地獄。雲明は常に目の前にあるチャンスに応えて、結果を出すしかなかった状況を「拷問のようなスポーツ」と称した。

 

 そしてそれを見ていたミームは、「ずっと水面に上がれず溺れて藻掻いているようで苦しそう」と表現した。

 

「まぁ、それも今日で終わりさね……」

 

「それはどうして?」

 

「柳生駿河の目の前には雲明がいる。接待も、忖度もしない最高の相手が彼に勝とうとぶつかってきている」

 

 ミームがそう言った直後、何か覚悟を決めた────否、吹っ切れた表情を浮かべて駿河が吼える。

 

 

 

「やらせろ、サッカーを…………いや、違う!! 誰がなんと言おうと俺はサッカーをやる!! 

 

「俺が信じたサッカーを! 俺はやるんだよぉおおおおおおッッ!!」

 

 

 

 獅子の咆哮が如き雄叫びを上げて必殺タクティクス【ブロック・ザ・キーマン】を突破した駿河の目には涙が滲み、口には獰猛かつ楽し気な笑みが浮かんでいた。

 

「ハッピーバースデーってやつさ、駿河」

 

「野球部の動きも変わった……!」

 

 吹っ切れた駿河が野球部の意識を変化させた。接待も忖度もない、ただひたすらに自分が、自分達が点を取り、ボールを追いかけ、全員で勝利を掴み取るという意識を獲得させている。こうなってしまえば決闘のために用意した必殺タクティクスも十全に機能を発揮することはない。

 

 となれば。

 

「ここからはシンプルな殴り合いだ!!」

 

 ボールの主導権が右往左往する。サッカー部(仮)が取れば野球部が取り返し、野球部が点を取りに向かえば、サッカー部(仮)が全力で食い止める。お互いに点を取り合い、ボールを奪い合う一進一退の攻防はまさに白熱としたもので、周囲の生徒達の盛り上がりも最高潮となっていた。

 

「これだから面白いんだ、サッカーってやつは!」

 

「初心者のウチにも分かるわ。プレイしている彼らが一番それを感じているんでしょうね」

 

Yes,Indeed(そうさね)

 

 とにかく凄まじい盛り上がりを見せているサッカー部(仮)と野球部による決闘。だが、そんな楽しい時間も終わりを迎えるものだ。

 駿河からボールを奪った丈二のシュートがゴールネットを揺らした瞬間、試合終了のホイッスルが鳴り響く。スコアは5-4……どちら勝ってもおかしくはない激熱の殿堂と言っても過言ではない素晴らしい試合の勝者はサッカー部(仮)であった。

 

「次は祝勝会か……豪勢なやつを作ってやらなければ、な」

 

「パフェでも作るのかしら?」

 

「王道を行く……いちごタルトですかね。冷蔵庫に鞘ちゃんの分入ってるから(勝手に家に)入って食べて、どうぞ」

 

「そ。じゃあちょっと寄っていくわね」

 

「神の恵みを受け取れぇッ!」

 

 ポケットから取り出した鍵を鞘に手渡したミームは、お互いの健闘を讃え合いながら和解しているサッカー部(仮)と野球部────その中心となっている雲明を見て、嬉しそうに目を細めた。

 

「これでスタートラインだな、雲明」

 

 




ミーム
ふざけたやつだし、口を開けば胡乱な言葉を吐き出すヨクワカラナイ生き物だが、真面目な時もある。真面目になったと思ったらすぐにポプテピピックする。

柳生駿河
ハッピーバースデーってやつさ、駿河。グレートマックスなオレが滅茶苦茶似合う男。いっぱいちゅき。

小太刀鞘
スカウトキャラ探している時に発見し、癖にぶっ刺さったキャラ。ミームとは腐れ縁レベル60。家族ぐるみで付き合いがあることもあって合鍵を持っている。ちなみに雲明もミームの家の合鍵を持っている。いっぱいちゅき。
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