ハァイ、南雲原。サッカー楽しんでる?   作:エヴォルヴ

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じゃあ特別な稽古つけてやるか(秘伝書)

 かつて野球部が使っていたため野球グラウンドだった校庭が御立派ァ! な芝生が生い茂るサッカーグラウンドと化した某日。ミームはえらいハリキリ☆ボーイ雲明によるサッカー面接を突破した新規メンバーと会話に興じていた。

 

(ほし)美哉(みかな)、ロックな少女と聞いています。破天荒の衣を纏っていると」

 

「相変わらず何言ってんのか分かんねぇなお前。褒められてんのは分かるけどよ」

 

「YOUはどうしてサッカーに?」

 

「笹波雲明の魂にロックを感じたからだな」

 

「お、そうだな」

 

 軽音部であったが、スカウトを受けてサッカー部へと入部した少女、星美哉。ピンク色のツインテールとつり目が特徴的な少女である。

 

 ミームの身長が171cmということもあってとんでもない身長差がある組み合わせだが、ミームが芝生の上に座ってサッカーボールやシューズを磨いていることもあって、若干ではあるが美哉がミームを見下ろす構図になっていた。

 

 一応、美哉とミームの付き合いは同級生ということもあって少なくはない。波長が合う、というわけではないが、いきなりギターを弾き始めることがある彼女と、常に胡乱な言葉を吐くミームは比較的相性がいいのだ。美哉的には不本意かもしれないが。

 

「にしても、お前もサッカー部だったとはなぁ。普段はサッカーなんて興味ありませんみたいな顔してたくせによ」

 

「サッカーは好きだぞ。それ以上に雲明のいないサッカーに興味ねぇの」

 

「お、おお、そうか……お前がそう言うなら期待して良さそうだな」

 

「オッス、お願いしまーす」

 

 一瞬だけ滲み出た激重感情に引き攣った表情を浮かべた美哉を気にした様子もなく、固い握手を交わすミーム。土日祝日などで一日中練習する際に作ってくる弁当の献立を正確なものにする、身長体重を理解するための握手である。

 

「ミーム先輩! お久しぶりです!」

 

 がしっ、という効果音が聞こえてきそうな固い握手をミームと美哉が交わしていると、校舎の方から元気な声と共に走ってくる少女の姿があった。

 

 短めに整えたウルフカットっぽい髪型の青髪と、水色の瞳が特徴的な少女の名は古手打(こてうち)七南(ななみ)。南雲原中学校一年生で剣道部期待の星であった少女だ。ミームとは腐れ縁レベル60の鞘と交流する中で知り合った少女である。

 

 腐れ縁レベルは30とまあまあ高め。たまに鞘と共にミームにスイーツを集りにいく(風評被害)こともある。

 

「お、七南じゃん」

 

「知り合いか?」

 

「雲明と一緒にレスバして強奪予定だったやつその2」

 

「剣道部泣くぞ」

 

 パッシブスキルで1d100のSAN値チェックを要求してくる神話生物とえらいハリキリ☆ボーイが手を組んでレスバするなど、剣道部に何の恨みがあるのかと問いかけたくなるような外道スタイルである。

 

「ところで七南、YOUはどうしてサッカーに?」

 

「再始動したサッカー部に、自身の進む道があるという予感があったからです! あと、自分という剣がどこまで通用するのか見てみたいからですね!」

 

「なるほどな……(源ちゃん並感)」

 

「あと、ミーム先輩が楽しそうにしてるって鞘先輩から聞いてたので、サッカーってどれだけ楽しいのかなって!」

 

「じゃけん今日から頑張りましょうね~」

 

「はい! よろしくお願いします!!」

 

 その快活さで男女問わず人気を集めていそうな七南の笑顔を真正面から受けても、神話生物であるミームは変わらない。恐らく旧支配者と肩を組んでゲラゲラ笑っていても違和感がないと思われる。

 

「で、残りの三人は誰なんだ?」

 

「えーと、確か……」

 

 早朝、随分と気合が入っていた雲明から手渡された名簿を取り出して、新入部員の名前を確認しようとしたミームの背後に迫る影があった。

 

「僕だよ」

 

「お前だったのか」

 

「また騙されたね」

 

「全く気付かなかったぞ」

 

「暇を持て余した」

 

「神々の」

 

「「遊び」」

 

「こっち見んな」

 

 即興コントをかましたミームと、ミームの背後から現れた狼のような髪型と褐色肌が特徴的な少年。彼こそが三人目の新入部員、妖士乃(あやしの)銀郎(ぎんろう)。マジック研究会副部長であり、人を欺くイリュージョンに長けている男だ。少し前までミームからエンタメデュエルの使い手だと思われていた悲しき過去がある。なお、ミームに布教されて始めた遊戯王のデッキはギャンブル系カードをメインとしたデッキ。エンターテイナーが過ぎる。

 

「フフフ、やっぱりネット君はエンタメのことを理解しているね」

 

「ビリー兄貴が墓の中から蘇る!」

 

「誰だい、ビリー兄貴って」

 

 だらしねぇという、戒めの心、歪みねぇという、賛美の心、仕方ないという、許容の心────妖精哲学の三信(よのことわりのひとつ)を生み出した男を尊敬しているのがミームである。

 

 ちくわ大明神(それはそれとして)。入学当初からミームと付き合いがある銀郎は何となくでミームが何を伝えたいのかを理解する力を獲得している。ミーム翻訳二級ライセンス取得者なのだ。一級持ちは雲明、鞘である。不名誉かもしれない。

 

「オレが言えた義理じゃないけどさ、妖士乃はサッカーの経験あるのか?」

 

「ないよ」

 

「即答かよ……」

 

「けれど、情熱は負けていないつもりさ。彼らのサッカーがどんなイリュージョンを起こすのか見て見てみたいんだ」

 

 キラキラとした瞳で情熱を語る銀郎の言葉に嘘偽りはない。雲明がこの学校でサッカー部を設立すると宣言した時から、銀郎は雲明というエンターテイナーのファンとなっていたのだ。

 

「……そして、僕自身もどんなエンタメを魅せることができるのか。それを知りたい」

 

「あっ、そっかぁ。……なら歓迎しよう! 盛大にな!」

 

「ああ、よろしく頼むよ!」

 

 がしっ、と熱い握手を交わす二人。これで銀郎もミームに身長体重を知られてしまった。哀れなり。

 

「そんでもって、残り二人だが……」

 

「ウチよ」

 

 剣道部に挨拶してきた鞘がサッカーグラウンドに現れる。爽やかな風が吹いたこともあって中々絵になる様子だったが、ミームは何か動じた様子もなくにっこりと笑う。

 

「おはよう鞘ちゃん。一人は鞘ちゃんで、もう一人が────」

 

「私ですわ」

 

「井馬里? お前もサッカー部に入ったのか」

 

「ええ。サッカー部には上品さが欠けておりますもの」

 

「アアン? ナンデ?」

 

「手鏡はお持ちですか?」

 

 鞘と共にやってきた肩の近くまで髪を伸ばした上品さがにじみ出ている少女、井馬里(いまさと)陽愛(ひまな)。常に上品な振る舞いを心がけており、自分だけでなく周囲の気品を高めることにも努力を怠らない少女である。入部を希望した理由はサッカー部に上品さが欠けているためである。「どうしよう、否定できない」とは止まらないオルガBBと化して走っている神話生物の姿を幻視した雲明の言葉。ブーメランが飛んでいるのが雲明には見えていないらしい。

 

「時間は有限ですわ。早く練習しましょう」

 

「お、そうだな(肯定ペンギン)………………ん?」

 

「どうしたんですか?」

 

 部員が5人揃ったことで試合ができる人数が揃ったため、準備運動の後練習を始めようとしたミームが首をかしげる。揃ったメンバーと、サッカー部の初期メンバーのポジションを見比べ────

 

「DFの枠厚過ぎィ!!」

 

「そういう君はどこのポジションなの?」

 

「全部ですけど、何か?」

 

「「「「「ええ……」」」」」

 

 事実ミームは馬鹿みたいな量の必殺技の影響もあって、どこのポジションにぶち込まれても動ける存在である。だからこそ必殺技の指導を一人で行えているわけだが、異常性の一端を見た新入部員達は呆れた表情を浮かべた。

 

「ま、フットボールフロンティア一回戦は俺参加しないんだけどね、初見さん」

 

「ああ、笹波君から聞いているよ。君抜きで一回戦を勝たなければサッカー部は解散だとも」

 

「そうだよ(肯定ペンギン1号)。というわけで今日から皆には基礎を叩き込みつつ必殺技を獲得してもらいます」

 

「必殺技……! 剣城選手のデスソードとかですか!?」

 

「はい! 俺の特訓を一生懸命がんばったら剣城選手のような必殺技も使えますよ!」

 

 必殺技と聞いて目を輝かせる七南にニコニコを笑うミーム。老若男女問わず、必殺技という響きには弱い。古事記にもそう書かれているし、万葉集にもそういう詩が残っている。

 

「というわけで皆、死んでも引きずって蘇生して練習させるのでそのつもりで」

 

「待て、なんか不穏なこと言ったよな今?」

 

「大丈夫だって安心しろよ~。雲明から渡されたサッカードリームプランを元に死ぬ寸前までやるけど」

 

 張り切っていこう、と笑ったミームに青褪めながらも、サッカーという激熱の殿堂を求めてやってきた自分の心を奮い立たせて下手くそな笑みを浮かべる新入部員達。彼らの心にサッカーをやりたいという思いが宿っていることを察したミームは楽しそうに笑みを浮かべ、口を開いた。

 

「サッカーやろうぜ」

 

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 

 朝から夕方まで行われた練習でクタクタになったサッカー部が、スポーツに力を入れている南雲原のシャワールームで汗を流し、帰り道でちゃんぽんかうどんを食べようという話になったのでそちらに向かおうとしていた時のことである。

 

「なんか、音聞こえないか?」

 

 シャワールームがある校舎の中であっても聞こえてくる轟音に最初に気付いたのは、札付きの不良をやっていたサッカー少年丈二。

 

「……本当だ。何だ、この音」

 

「ボールを蹴る音、なのかなこれ?」

 

 轟音の中にボールを蹴り飛ばす音が混ざっていることに気付いた来夏が呟きと共に外を見てみると────おかしな光景を目撃した。

 

「────何、あれ……」

 

「忍原、何が見え……て……?」

 

「……壬為夢君?」

 

 サッカー部が目撃したのはやることがあるから、と雲明と共にサッカーグラウンドに残ったミームの異常な動きであった。

 

 

 

「【デススピアー】ッッ!!」

 

 

 

 真上にサッカーボールを蹴り上げると同時に天高く飛び上がったミームが両足でボールを挟み、強力な回転を加えることで禍々しいオーラを纏った槍が完成する。ギュイイイイイイッッ!! と空気が悲鳴を上げるかのような音を掻き鳴らしながらゴールネットに向かっていくシュートは────そのシュートを放った張本人によって迎え撃たれる。

 

「「「はああああああッ!!?」」」

 

 恐らくはシュートを打った後、着地したミームがすぐにゴールに向かって走ったのだろう。言葉にすれば簡単だが、行動に移すとなれば話は別。大体、デススピアーというシュートを打ったのはスタートラインの辺り。そこからすぐに走ってゴールに到達するなどあり得るのか。

 

 人間業とは思えない動きを見せつけられたサッカー部が目を見開いていると、ミームがシュートの構えを取る。高速で回転して迫りくるシュートをシュートで跳ね返すつもりでいるのだ。早過ぎても、遅すぎてもゴールしてしまうし、自身が怪我をしてしまう可能性があるというのに、ミームはそんなことを気にしているようには見えない。むしろ楽しそうに笑っているのだ。

 

 それを間近で見ている雲明も、どこか羨ましそうに、嬉しそうに、憧憬に焦がれるように笑っている。

 

 天高く脚を掲げ、エネルギーを収束させる。そのエネルギーはやがて巨大な剣となり────迫りくる暗黒の槍へと振り下ろされた。

 

 

 

「【エクスカリバー】ッッ!!」

 

 

 

 アーサー王の剣を模した巨剣が暗黒の槍と激突する。威力は互角、どちらが打ち勝ってもおかしくはないシュートとシュートの激突に打ち勝ったのは聖剣。相殺されながらも残ったエネルギーを纏ったサッカーボールが高く空を舞う。落下地点に走り出したミームの体には風が纏わりつき、まるで風を味方につけているかのよう。

 

 その風による速度を維持したまま地面を踏みしめ、高く飛んだミームはもう一度シュートを叩き込む。そのシュートをまた自分で蹴り返し、落下地点に走ってシュートを決める────それを無限に繰り返すミーム。

 

 でたらめを超えたでたらめな運動量と、化け物染みた動き。さっきまで自分達の倍以上動き回っていたというのに、体力の底が見えない。そして撃ち込まれる必殺技も同じものではなく、毎度毎度別のものが飛び出してくる。大量の剣が殺到したり、恐竜が現れたり、ワイバーンが現れたり、グレートマックスなオレが現れたりと、忙しいことになっていた。

 

「……ああ、クソッ!! おい、柳生、四川堂! 行くぞ!!」

 

「ああ、火ィ着いちまったぜ……!!」

 

「ああ、もちろん!」

 

「あ、ちょ、桜咲先輩!? 柳生先輩!? 四川堂先輩も!?」

 

「どこ行くつもり!?」

 

「決まってんだろ! 練習するんだよ!!」

 

 あれだけのものを見せられて火が付かない人間はいない。ギラギラメラメラと燃え滾る炎を宿した丈二と駿河と我流が制服のまま窓から飛び出してサッカーグラウンドに飛び込んでいく。

 

「おう、寝戸! 必殺技の特訓すんぞ!!」

 

「あんなの見せつけられちゃあ、滾って仕方ねえよ!」

 

「キーパーとして、君のシュートを止められるくらいになりたいんだ!」

 

「しょうがねぇなぁ。じゃあ特別な稽古つけてやるか!」

 

 一度打ち止めにするつもりだったらしいミームが、真紅のXと共に現れた巨大な手でシュートを止めたところで乱入した丈二と駿河と我流。やる気に満ち満ちている二人に笑みを浮かべて特訓を始めるミームを見て、亀雄と兵太も動き出した。

 

「ぼ、僕も行きます!」

 

「俺も!」

 

「あ、ちょっと!? ……ああ、もう! 私も行く!」

 

「出入り口から出た方が効率的ですわよ!?」

 

「そう言いつつ井馬里も窓から出てんじゃねぇか!?」

 

「本当にワクワクさせてくれるよ……君は!」

 

「ミーム先輩の言葉を借りるなら……うどん食べてる場合じゃない! ですかね?」

 

「ふふ、そうね。柄にもなくちょっと燃えてきたわ」

 

 結局全員が制服のままグラウンドに飛び出していく。全身に駆け巡る稲妻のような熱に浮かされるように、夕日が沈んで夜になるまで特訓に励んだサッカー部は────次の日、得も言われぬ全身筋肉痛に苦しむことになった。

 

 なお、ミームは筋肉痛になることはなく、普通に筋肉躍動(マッスルギャラクシー)していた。こいつやっぱり人間じゃないのでは?




ミーム
普段からこんな馬鹿みてぇな練習をしている。自分で打ったシュートを自分のシュートで返し続ける必殺シュートラリー。一般人がやったら壊れちゃーう!こいつは神話生物だから問題なし。SSCもドン引きですよこんなの。教祖と嵐・竜巻・ハリケーンは目を輝かせるかもしれない。
「俺が! 俺達が! サッカーだ!!」

雲明
ミームの馬鹿みたいな練習を間近で見せつけられてサッカー熱がもはや核分裂レベル。……いや、元からこんな感じかもしれない。
「ああ、やっぱり凄いよなぁ、ミームのサッカー……!!」

サッカー部
ミームの練習を見て感化された結果、後日全身筋肉痛で地獄を見た。でも悪くないと思ってる。こいつらすげぇ変態だぜ?(同調圧力)
セレクトキャラは作者が初見時に選んだメンバーです。DFの層が厚過ぎるッピ!!


…………西ノ宮中はこんなやつらと戦うことになるのか(困惑)
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