ハァイ、南雲原。サッカー楽しんでる?   作:エヴォルヴ

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禁断の最新話二度打ちッッ!!


かかったな阿呆が!!

 フットボールフロンティア二回戦、南雲原が戦うことになったのは九州でも指折りの実力者が集う学園、パーフェクトサッカーの北陽学園だ。

 

 非合理の一切を排除────とは言わないけれど、合理的なトレーニングと戦術によって組み上げられたチームプレーが特徴で、それらを完璧と言っても過言ではないレベルで指揮するのが北陽学園のエースにしてキャプテン、空宮(そらみや)(せい)の存在が北陽学園を更なるレベルに引き上げているらしい。

 

 雲明君と壬為夢君の見解では、相手キーパーの必殺技である【グラビティデザート】を突破することは、現状の南雲原では不可能であるらしい。壬為夢君を投入すれば全てを粉砕することも可能みたいだけれど……それをしてしまったが最後、ウチ達は壬為夢君に依存したチームになってしまう。それだけは絶対に避けたい。そうなってしまっても彼は笑うのだろうけれど……

 

『あっ、そっかぁ…………つまんね

 

 そう言ってウチのことを何もない顔で見てくるのだろう。今までの交流とか、関係すらなかったことにして。家族ぐるみでの付き合いが始まった少し後に見たことがある、あの失望と虚無が入り混じった目を向けられるのだけは嫌だ。きっとウチは────いいえ、サッカー部の誰もが耐えられない。

 

 薄々と、ではあるけれど……サッカー部の皆も壬為夢君がウチらのことをどういう目で見ているのかを理解していると思う。壬為夢君は基本的に楽しいことが好きだ。だからなのか、関わる人間に対してもどこか期待をする。「次はどんなワクワクを見せてくれるの?」、「次は何を見せてくれるの?」という、右も左も楽しいものばかりのテーマパークに来てはしゃいでいる子供のような目で、ウチたちを見ている。本人がそれを自覚しているのか、無自覚なのかは……分からないけれど、とにかく彼はそういう目でウチを、サッカー部を見ている節があるのだ。こういう目で見てくるのも、雲明君を含めた人達に神話生物なんて呼ばれている要因の一つ……なのかも?

 

 まぁ、それはそれとして。北陽学園の【グラビティデザート】を破るには桜咲君の【剛の一閃】、忍原さんの【ぐるぐるシュート】、柳生君の【天空サンダー】……そのどれもが威力不足だった。だった、というのは先日、北陽学園の生徒とミニゲームをする機会があって、その際に必殺技が全く歯が立たなかったのを目撃したから。

 

 自分達の技が通用しないと分かれば、新たな必殺技が欲しい────そう思って壬為夢君に相談して特訓を開始したわけだけれど……

 

「しゃあっ、【サイドワインダー】&【デスソード】ッ!! 

 

「参考にならないのはルールで禁止だよね?」

 

「超次元サッカーにルールは無用だろ」

 

「参考にできるのをやれってんだよ!」

 

 本当に参考にならないわね、彼。なんでシュートしてからシュートに追いついてシュートチェインしてるのかしら。しかも技を塗り替えるのではなく、掛け合わせてるし……まるでフランベルジュみたいな【デスソード】ね……剣城選手もこれを見たら思わず笑うんじゃないかしら。

 

「あっ、そっかぁ……」

 

「「じゃあ分身しまして」」

 

「「「!?!?!?!?!?」」」

 

 一瞬目を離した瞬間に壬為夢君が増えた……!? どういう原理なの、それは。本人は「しゃあっ、マイティ―ブラザーズXX!」と言って笑っているが、恐らくあれは分身フェイントなどの必殺技による分身ではなく、本当に二人に分離している。……多分、黒い影がチラついているのが分身体……なのかしら。

 

「俺のターン! 俺は、サッカーボールにスピンキックをチューニング!!」

 

「集いし結晶が、春風と共に雷鳴を呼ぶ!!」

 

「光さす道となれ!!」

 

「「アクセルシンクロォオオオオオオッッッ!!」」

 

 そう言って分身した壬為夢君の一人が強烈な回転をかけたシュートを放ち、残る一人がそれを追いかけていく。強烈な回転がかかったシュートに追いついた壬為夢君が地面に叩き付けるように全力のシュートを放った時、紫紺の閃光が生まれ……ゴールネットを強く揺らした。

 

「……とまあ、これが丈二と来夏ができそうな技だな。土煙が立ち込めるとなおよし」

 

「これってもしかして……」

 

「おう(威風堂々)。先の試合でお前らが見せたシュート。雲明に言われてちょっとあれこれ考えたらこうなったってワケ」

 

 いやあ、ちょっと苦労したよね、と楽しそうに笑っている壬為夢君。……確かに、今のシュートは1人で打つシュートとは比較にならないほどの威力を秘めていた。この必殺シュートが完成すれば、間違いなく北陽学園の【グラビティデザート】を突破することができる。

 

「……ん? 寝戸、これお前が知ってる必殺技じゃないのか?」

 

「そうだよ(肯定ペンギン2号)。誰も知らない、お前らが初めて使うであろう必殺技さね」

 

 今スタメンでシュート技を持っているメンバーの技は、壬為夢君の知っているシュート技ではなく、アレンジ技だったり、インスピレーションを受けて習得したオリジナル技だったりする。妖士乃君のシルバーウルフレジェンドや柳生君の天空サンダーなんかがいい例ね。ウルフレジェンドは分かるのだけれど、柳生君は何を見てインスピレーションを得たのかしら。

 

「名付けるのなら、【春雷】────【グラビティデザート】を突破する鍵の一つネ」

 

「これって、柳生でもできるんじゃないの?」

 

「いやっ、聞いてほしいんだ。駿河はどちらかと言えば単独での空中戦が得意なんだ。天空サンダーがいい例だな」

 

 柳生君は恵まれた体躯を駆使した突破力が目立つけれど、言われてみると空中戦でのボールセーブ能力が凄く高い。練習で時折行うミニゲームでも、柳生君を空中に行かせると邪魔が出来ずにシュートされてしまうことが多い気がする。

 

「逆に、コンビでの動きは二人に軍配が上がる。そしてこの技に必要なのは強烈な回転と、それに追いついてぶち抜く脚……!」

 

「なるほど……スピンシュートは私の得意だし、それに追いつく脚となれば……」

 

「俺ってわけだな」

 

「ただしこの技は帝国学園の十八番、皇帝ペンギン2号級の習得難易度と言っていい。覚悟はいいか?」

 

「「上等ッ!」」

 

 まぁ、これだけ期待の裏返しみたいなことを言われて燃えない二人じゃないわよね。壬為夢君から詳細の説明を受けて、早速シュートの練習を始めた。息の合ったコンビネーションが必要となる春雷……皇帝ペンギン2号級の難易度と言われても頷ける必殺技だ。

 

「それで、壬為夢君。ウチは?」

 

「鞘ちゃんねー……【伝来宝刀】は使えるっしょ? 七南と一緒に覚えたもんね」

 

「ええ。……ただ、あれを【伝来宝刀】と呼んでいいのかしら?」

 

「うーん……まぁ、どっちかと言えば伝来双刀?」

 

 壬為夢君の言う通り、ウチと七南は伝来宝刀を習得している。ただ、一人で打つと威力がそこまで出ないため、運用するなら七南と同時に打つ二刀の伝来宝刀────名付けるなら【伝来双刀】となってしまう。しかもこれを使うということは、DFが一枚前線に上がってしまうため、相手につけ入る隙を与える可能性がある。

 

 確実に入る、という確信があれば使えるのだけれど……今そういう自信があるとは言えないのが現実だ。雲明君からも運用するにはメリットよりもまだリスクが勝ってしまうと言われたし。

 

「というわけで鞘ちゃんにはね、これを覚えてもらおうかなって」

 

「これ?」

 

「これは、【アーチ】だ」

 

 現れたのは七本の剣────グラディウスと呼ばれる剣が壬為夢君の周囲を飛び交う。彼がよく爪楊枝に使っている必殺技、【グラディウスアーチ】。

 

「ムフフ、デスソードとか、伝来宝刀の方が一発の貫通力はあるけど、こっちの方が使い勝手がいいのん」

 

「その理由を聞いてもいいかしら」

 

「これ、多段ヒットするのよね」

 

 剣が七本、ボールと一緒に飛んでいくのだから当然ではあるけれど、この必殺技は相手に七つの衝撃を叩き込むことが可能らしい。しかも使いこなせば剣の軌道を変えて直角カーブシュートなんかにもできる……とのこと。

 

「一発目、止めたと思った矢先に二発目、三発目と衝撃が伝わることでゴールの確率を高めるのだ」

 

「シュートブロックをされても、第二、第三の刃が向かうのね」

 

「YES! YES! YES!」

 

 初撃の威力ばかりに目移りしていたけれど、二の太刀、三の太刀と波状攻撃を行うやり方でゴールを奪うというやり方もあるのね。

 

「鞘ちゃんと七南はスタイルが似てるようで似てないからね、仕方ないね」

 

「君から見てウチはどういうスタイルに見えているの?」

 

「そうですね……やっぱり(鞘ちゃんは)王道を往く……ウイングですかね」

 

 前線左右のサイドで攻撃を活性化させて、得点機会を増やす……どちらかと言えばウイング向きのサッカースタイルに見えているらしい。

 

「鞘ちゃんって多分、あ、ここに隙ができてるから通せるなぁ、とか見えたりするでしょ?」

 

「……まぁ、剣道でそういう隙を見つけて一本を取るやり方をしてたから」

 

 常に型が変わるようなあなたには、全くとは言わないけどあまり通用しないやり方だったけれど。……そういえば七南と仲良くなった理由も、スポーツチャンバラで壬為夢君に一本取るにはどうしたらいいのか考えていた時だったわね。私と彼の攻防を見て目をキラキラ輝かせてたのをよく覚えている。

 

「で、七南はカウンタースタイルのDF。剣道の方で覚えあるでしょ?」

 

「ええ。防ぎ続けて一本取るのが得意な子よ、七南は」

 

「鞘ちゃんが自ら攻めてチャンスを作る剛の一刀なら、七南は相手の攻撃を凌いでチャンスを作る柔の一刀なんだよね」

 

 本当に、よく見ている。昔からずっと変わらない。初めて会った時から、人のことをよく見ている。私が剣道を始めて、たくさんの大会を制覇して────いつの間にか一人になって、誰もが挑むのではなく、期待や妬み……様々な感情を向けてきた時も。

 

 

 

『驚いたねェ、鞘ちゃん。奇しくも同じ構え(暇人の隠喩)だ』

 

『俺もサッカーから離れててさー。暇してんの。だから雲明と一緒にこうしてぶらり二人旅してんだけどね』

 

『ところで鞘ちゃんさ、最近剣道楽しい? …………あっはっは、ごめん。分かってて聞いた。つまんないでしょ』

 

『それはさ、ライバルがいないからじゃない? 強すぎて手こずれねぇってのはつまらないよねぇ』

 

『しょっぱい試合にご不満のようだぜぇ? ってやつだな。最近の鞘ちゃん笑ってないもんね』

 

『というわけで異種格闘技頂上決戦、剣道VSスポーツチャンバラを開始する!!』

 

決闘(デュエル)開始の宣言をしろ、雲明ィ!!』

 

『参ります。楽しんでください(JP並み感)。オーバザリミッ』

 

『オオン!? あっぶえ!?』

 

『ふひっ……! ああ、楽しいなぁ! 楽しいよなぁ、鞘ちゃん! 笑ってるぜ!!』

 

『どんな鞘ちゃんも好きだけど、やっぱり楽しそうにしてる鞘ちゃんがいっちゃん好きだなぁ、俺!!』

 

『う あ あ あ あ あ』

 

『雲明貴様何をするだー!? 天然ジゴロクソボケ神話生物ってなんだ!?』

 

 

 

 

「…………鞘ちゃん、どったの? 具合悪い?」

 

「っ! ごめんなさい、ぼんやりしてたわ」

 

「あっ、そっかぁ……」

 

 昔のことを思い出していると、ニコニコと笑う壬為夢君がウチのことを覗き込んでいた。

 

「というわけで、鞘ちゃんには是非とも【グラディウスアーチ】を覚えてもらいたい。七南にはそのうちアトラスソードとか覚えさせます(確固たる意志)」

 

「それ、七南に使いこなせるものなの?」

 

「まぁ、それができないならアトラスソードから別の必殺技を獲得してもらうんで。必殺技が足りないんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ」

 

 どうあっても七南にも剣に関係した技を覚えさせることは壬為夢君の中で確定しているらしい。他のメンバーの必殺技についても相談を受けているところを見るけれど、本当にどれだけの引き出しがあるのかしら、この子。

 

「では行こうか……」

 

「ええ。……壬為夢君」

 

「どした」

 

「ありがとう」

 

「お礼を言うのはこっちの方なんだよなぁ……」

 

 どうしてウチにお礼を言うべきだと思っているのかしら、彼。ずっと昔から助けられているのはウチの方なのに。




ミーム
必殺技の引き出しが国立図書館の神話生物。
必殺技を日常的に使う【異 常 サ ッ カ ー 愛 者】の称号を持つ。恐らく教祖とくるくるトンマもその称号を持っていると思われる。
御恩人の枠に前話で語った人たちの他に雲明と鞘がいる。


神話生物に結構大きめの矢印を突き立てている子。
誰が悪いって……まぁ、神話生物ですね。

丈二
春雷特訓開始。ところでさっきの分身なんだったんだ

来夏
春雷特訓開始。分身よりも神話生物と鞘のアレコレに興味がある年頃。
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