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ヴァルトルートは混乱していた。
確か自分は今日も授業が終わったら剣術鍛練をしようと思ったが、視察に来る人間に警戒するようキャスターに言われたので授業が終わった後はそのまままっすぐ寮の自室に帰って座学の方の復習と予習をしていた。
そしたらクリステルが慌てて部屋に入ってきて、自分に理事長室に行くように言った。理由を尋ねたが、クリステルも自分を呼ぶよう言われただけで詳しくは知らないとのこと。
このままでは埒が明かないので理事長室に向かう。念の為キャスターも霊体化して来てもらってだ。
理事長室の前に着き、ドアをノックしてから部屋に入った。
室内には、この部屋の主である理事長と、もう一人いた。それは、ある意味この世界で遭遇することを避けたかった人物だった。
(なんで、オリヴィエ姉さんがいるのよ………)
基本ブリッグス要塞にいるこのお方は、こんな所の視察なんて行かないはずだ。
自分が呼ばれる理由も分からない。授業が終わってからはさっさと自室に引き篭ったから特に騒ぎを起こしてはいないはずだ。仮にあったとしても、ブリッグスの女王の前で言うか?
そんな彼女の思考は、理事長の言葉で中断された。
「呼び出して悪かったね、ヴァルトルート・ヒューズくん。実は――――」
その傍らでオリヴィエはまっすぐヴァルトルートを見詰めていた。その視線を受けながら理事長の言葉を聞いていたヴァルトルートはその内容に言葉が出なかった。
食堂――――
多くの学生が食事を摂っている中、クリステル・マース・ロイ・ヒースクリフの面々は食事に手を付けずにいた。
「ルート、どうしたんだろう……」
クリステルは呼び出しを受けた友を案じていた。
校内を歩いていたら教官の一人に呼び止められて、急いでヴァルトルートを理事長室へ向かわせるように言われた。教官の必死な表情を見て思わず承諾してしまったが、今になってみると断れば良かったのではないかと思う。
「その……ヴァルトルートさんは、特には問題は起こしてないんだろう?だったら、心配はいらないんじゃないかな?」
ヒースクリフはヴァルトルートと数える程度しか会ったことがないが、彼女の弟であるマースと彼女と何度も面識のあるロイによく聞かされていたので、彼女については大まかに知っている。
落ち着いた性格で、文武両道と称され、話しかければ親しく相手にしてくれる。成績も優秀で、問題もないことから教官達の間でも好印象を持たれている、と聞いている。
「だと良いんだけどさー……」
「ッ、……?」
「どうした?」
マースが不意に自分達が座っている場所に近い入口の方を見たので、ロイが問いかけた。すると。
カチャ………
噂をすればなんとやら、ヴァルトルートが扉を開けて入ってきた。だが、その表情は彼らが見たことがない程暗かった。
「ちょっ、どうしたのルート、何かあったの?!」
クリステルがヴァルトルートの前に立ち、両肩を掴む。ヴァルトルートは若干下に向いていた顔を上げた。微妙に引き攣った笑みを浮かべて。
理事長室を出て行ったオリヴィエはその表情に笑みを浮かべながら歩いていた。
ヴァルトルート・ヒューズ。理事長室に呼び出した彼女を間近で見て、自分の思い違いではなかったと確信した。
本来オリヴィエは権力を行使してまで何かをするということはほとんどないが、今回ばかりはそうではない。
後は諸々の準備をしなくてはならないな、と考えながら去って行った。
ヴァルトルートを半年間ブリッグスに出向させるという、決定事項を抱えて。
「そ、それは……」
「良いことなのか、そうでもないことなのか……」
「一応、大佐殿直々の引き抜きなんだろう?期限付きとはいえ」
「ちゃんとカリキュラムのことも考えて、あっちでも必要な概要を教えてくれるみたいだし、良いんじゃないかな……?」
そのことを聞いたクリステル達の反応は様々だが、当の本人はというと。
「むぐむぐ、はぐっ!!」
ヤケ食いの真っ最中だった。
実際はどうか分からないけれど、士官生のルートさんはオリヴィエ少将に連れられてブリッグスに行くことになりました。
次の話はブリッグスに行ってからの内容です。
アンケート、活動報告にて回答を待っています。