今回からシリアスが入ってきます。
プラス原作崩しも。
ブリッグスでとんでもないことに気付いたヴァルトルートです。
あれから少し頭を抱えましたが、流石に十年近く経っているから向こうも流石に覚えてはいないだろうと気持ちを切り換えて日々を過ごしております。キャスターの視線がなんか生暖かいけど。
キャスター、お願いだからそうであると思わせて。
ブリッグスでの環境にも慣れてきて、要塞の人達とも顔見知りになりました。バッカニア大尉――今はまだ少尉だけど、やっぱりデカイですね。要塞の中で出会うと、よく頭を鷲掴みにされて撫でているつもりなのだろうけど、結局は髪をぐしゃぐしゃにされます。
この時はまだマイルズ氏はいない。だってオリヴィエ姉さんの副官ポジになるの確かイシュヴァール殲滅戦の前後辺りな気がするし。
そんなこんなで日々を過ごして半年の半分位が経った頃、ブリッグス要塞に激震が走った。
北の大国ドラクマが要塞に向かって進軍してきたのだという。
士官学校でも課程に戦場に実習に行くというものがあるが、オリヴィエ姉さんによってブリッグスに出向して来ている私は直に身を置いていることになる。普段見慣れた要塞の空気がピリピリしているのが分かる。
士官生で実戦経験もないまだまだヒヨッコな私は自然と衛生兵の手伝いに入るのだが……………
「あの…、アームストロング大佐?これは一体……?」
「そのままの意味だ。さっさと支度して付いて来い」
テントで衛生兵の手伝いをしていたはずが、オリヴィエ姉さんに連れ出され(責任者に話はつけたとのこと)、軍服と雪国仕様の上着とサーベルを手渡されました。今戦中ですよね?と思いながら尋ねたら、支度しろと言われました。
マジですか。
いや確かにオリヴィエ姉さんエドワード達にもこんなことやってた気がするけどさ、今敵国が攻めて来てるんだよ?!んなことやるか?普通!
声に出しても無駄であると既に察しているので言われた通りに支度する。
『とんだ災難ですねご主人様………』
『……この前私の切実な思いを生暖かい目で見ていた人に言われたくないよ』
キャスターだから何かしらの操作は出来るだろう?ドラクマの兵を追い返すとか………
……………ん?
確か此処も国土錬成陣の血の門の一画だったはず。もしかしたら……
『キャスター、この辺を地理・霊的関係なく徹底的に調べて』
『…解りました。お気を付けくださいませ』
キャスターも私の言わんとしていることが分かって、私の傍から離れた。
こんな時に思い出すなんて、私も随分平和ボケしていたのね。
「いい加減夢から醒める時なのかもね」
そもそもこの世界には目的があるのだから。
手に握り締めたサーベルを鞘から抜き放つ。
“コレ”を使ってしまえば、もう後戻りは出来ない。楽しかった過去や思い描いていた未来も、手にできなくなる。
それでも。
「
その詠唱を唱えた途端、刃に光が走る。刀身には戦雷の聖剣の意匠が浮かんでいる。その手の人間が見たのなら錬金術だと思うだろう。
だがこれは錬金術にあらず、人間の魂を糧として力を奮う複合魔術・
本来エイヴィヒカイトは聖遺物を触媒として運用するが、ヴァルトルートは魔術を研鑽していく中で、聖遺物を具現化せず聖遺物の力を代用品に憑依させてそれを触媒として運用する方法を確立させたのだ。
これならば使う得物は共通の物ながらエイヴィヒカイトを扱えるという利点があるが、欠点も存在する。
元々エイヴィヒカイトは水銀の蛇・メルクリウスが組み上げたものであり、聖遺物を人間の手で取り扱うための魔術であるため人間の魂を糧にしなくてはいけないこと、この術の使用者は魂の回収のために慢性的な殺人衝動に駆られるようになること、などがある。
幼少の頃から聖遺物を所持していたヴァルトルートがそのような行動を取らなかったのは、転生される際に限定的に魔力でもエイヴィヒカイトを運用できるようにしてもらったからである。だがこれからは魔力だけでは圧倒的に足りなくなる。必然的に魂の蒐集をする必要がある。
だからこそ、ヴァルトルートは今までエイヴィヒカイトを本格的に使わなかったのだ。
幼い頃の誓いを思い出す。
例えこの手が血に濡れ、この身が人で無くなったとしても、弟を、弟が生きる世界を守る為に、どんな手も尽くしてやろう。
――――――――――
SIDE:Olivier Mira Armstrong
別室でヴァルトルート・ヒューズの支度を待っていた私は、部屋に入って来たヴァルトルートを見て思わず息を呑んだ。
手渡した装備を身に着けたヴァルトルートは見た目こそそれまでとあまり変わらないが、その身に纏っていたのは狂気に近い気配。
だがその表情は正気であると直感で分かった。士官学校で彼女を見掛けた時と同じ眼差し。確たる信念を宿したそれだ。
それを見て、私は理解した。
コイツは戦場に立つ覚悟を既に持っている。
以前稽古付けた時と言い、何を抱えているかは知らないが浮足立って役に立たないよりかは頼もしい。
「準備は出来たな?行くぞ」
「はい」
そうして、私はヴァルトルートを連れて戦線へ向かった。
思えば、この時に気付くべきだったのかもしれない。
もし気付けていたなら、あんなことをさせなかったのに、と。
ブリッグスにて止まっていた時間(ヴァルトルートの使命)が動き出しました。
最後のオリヴィエ姉さんの独白、理由は作者にも分からない(←え
なんてことはなくちゃんと考えています。
エイヴィヒカイトにちょっとしたオリジナル要素を入れました。
エイヴィヒカイトを運用するための触媒である聖遺物の力を代用品に憑依させることで、聖遺物を具現化しなくても運用できる………のだが、元々神秘を宿した聖遺物の力に代用品が耐えきれるはずもないので、使い終わった代用品は大体破棄される。
幼少時から魔術を研鑽してきたヴァルトルートが前世で見たキャラの技術を参考に組み上げた。