『Kölsch -盟友、再び』   作:ゆらNari

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第3話です。
ところで皆さんはDollsNest Orphans、楽しんでいるでしょうか?
僕個人としては凄く楽しいですし嬉しいです。何より第一話のメカバレが素晴らしい。

閑話休題、是非楽しんでください。


『強襲』

「うぐ⋯⋯っ!?」

 

ピルス__テトリーの顔を見た瞬間、ケルシュはゆっくりと近づき、彼女の顔を殴打した。

 

「隊長!?何を__」

 

「今すぐにそいつを拘束しろ!!」

 

普段のケルシュとは全く違う、明確な怒気をはらんだ声に兵士達は目を丸くする。

 

そんな彼女たちを他所に、ケルシュはテトリーの胸倉を掴む。

 

「何故今になって現れた!!」

 

「お、おいおい、いきなり殴るのは⋯⋯」

 

「今度は何を企んでいる!!」

 

誤魔化そうとする彼女を、ケルシュはさらにまくし立てる。

 

「ここのニンフを騙して貶めるのか!この平和なコロニーで戦争でも起こす気なのか!!」

 

テトリーは答えない。ただ、意外そうな表情でケルシュを見つめるのみだった。

 

「クソッ!!」

 

ケルシュは乱暴にテトリーを掴んでいた手を離す。彼女は大きく転び、倒れたところを兵士達に拘束された。

 

「か、確保!確保しました!」

 

ケルシュは息を整え、大きなため息をつく。

その後、頭を抱えながら兵士達に答える。

 

「そのまま牢に連れていけ。私も行く」

 

テトリーの左右を兵士が固める。

二人の兵士を煩わしそうに睨みつけるテトリーだが、ケルシュを見るとその表情を少しだけ緩めた。

 

__今のは、何だ。

 

ケルシュは眉を顰める。

だが、それ以上考える余裕はなかった。

 

 

道中、コロニーのニンフ達は捕まったテトリーを物珍しそうな表情で眺めていた。

 

ケルシュや兵士と同じ服装なのに捕まっていることや、いつにも増してケルシュの表情が険しい点が特に気になっているようだ。

 

コロニー内であるため、ケルシュ達は鎧殻を外している。

 

「あの頃を思い出すなぁ。大橋の戦勝パレードみたいだ」

 

「⋯⋯黙ってついてこい」

 

懐かしむテトリーを、ケルシュは静かに咎める。

 

「そんな寂しいこと言うなよな。私とお前の仲じゃないか」

 

彼女は周囲だけでなくどこか遠くに視線を据えながら返す。

 

「お前⋯⋯隊長に気安く話しかけるな」

 

「はいはい」

 

兵士の言葉を軽く流し、テトリーは再びケルシュに話しかける。

 

「戦勝パレードのこと、覚えてるか?」

 

「⋯⋯覚えてたらなんだ」

 

「あの日の花火は、とても派手だったなぁ。ギプロベルデの火砲まで利用してさ」

 

ケルシュの眉が少し動いた。

 

「何?」

 

「確かこんな風に⋯⋯な!!」

 

その言葉をなぞるように、遠方で爆炎が花開いた。

 

その音にニンフ達は驚き、悲鳴と共に周囲に逃げ惑い始めた。

 

「なんだ⋯⋯?ぐあっ!?」

 

呆気にとられた兵士の一人にテトリーは無理やりぶつかり、その拍子に飛んだ鍵を口に咥える。

その鍵で手錠を外しながら、テトリーは走った。

 

「待て!!」

 

ケルシュは走るが、すぐにその足を止めた。止めざるを得なかった。

 

「動くなよケルシュ」

 

テトリーはパナシェの首元にナイフを向け、振り返っていた。

 

「また、裏切るんだな」

 

ケルシュは身構える事なく、ただ尋ねた。

 

「……やれと言われたんだ、やるしかないだろ」

 

テトリーはひどく沈んだ声で呟く。

そしてゆっくりと後ずさり、リフトを操作し始めた。

 

「相変わらず真面目だな、お前は」

 

ケルシュは悲しげに呟く。

それを聞いたテトリーは、歯軋りをした。

 

無機質な音が響き、リフトが降りる。

 

「来い。決着を付けよう」

 

彼女はパナシェをケルシュの前に突き飛ばす。

小さな身体がケルシュに当たり、その隙にテトリーは颯爽とリフトに乗り込んだ。

 

「お姉ちゃん……」

 

ケルシュは怯えたパナシェを優しく撫でながら、無言でリフトの先を見る。

 

「ああ……今度はお前を撃つよ」

 

視線を、パナシェに落とす。

小さな身体がかすかに震えていた。

 

「立てるか?」

 

「⋯⋯うん」

 

「よく我慢した。シェルターまで走れるな?」

 

彼女は小さく、そして何度も頷いた。

ケルシュは「よし」と呟いた後彼女の背中を押し、そのままリフトへと駆け出した。

 

リフトが上がりきるのを待たず、ケルシュは兵器庫へと駆けた。

 

だが、兵器庫の扉より黒煙が漏れていた。

 

「まさか⋯⋯!」

 

扉を蹴破る。

 

黒煙の奥では、ケルシュの実戦用多脚鎧殻が徹底的に破壊されていた。

 

「⋯⋯やられたか」

 

使えそうなのは教導用の旧式と、辛うじて破壊を免れた一部の装備のみだ。

 

鎧殻を一瞥し、迷わず装備する。

それは両踵に車輪の付いた、一兵卒時代に用いていたものだった。

 

狙撃銃、自動小銃など雑多な銃器、それと射突杭を手に取り、ミサイルを積載する。

 

「⋯⋯?」

 

ふと地面に目をやると、蓄光石が幾らか転がっていた。

 

その光は、途切れ途切れに続いていた。

まるで、道のように。

 

「……誘っているのか」

 

蹴破った扉から勢いよく出ると、ケルシュは再び走った。

 

「こちらケルシュ、状況はどうなっている!」

 

通信機に耳を当て、叫ぶ。

 

『隊長!アルカンドです!!上のカルト連中が!!』

 

「アルカンド⋯⋯?」

 

ケルシュは眉を顰める。

どうやって来たのかはわからない。

だが、テトリーがいる。アルカンドが襲撃してきたのかは確かだ。

ここは深層。上層からであれば用意できる戦力は大幅に限られているはずだ。

 

「分かった。ナレフカ新司令にも連絡しておけ」

 

『隊長は!?』

 

「私は⋯⋯侵入者を片付ける⋯⋯!」

 

『了解!ご武運を』

 

通信が切られると、ケルシュは広間へと走った。

 

 

蓄光石を辿った先は、市街の大広間だった。

 

狙撃銃を構え、周囲を一瞥する。

 

「あれは⋯⋯」

 

広間の中心に、テトリーが連れていた自動機械がいた。

その背には未だに大型コンテナが乗せられている。

 

警戒しながら、ゆっくりと進む。

 

突如、自動機械が爆ぜる。

と同時に、コンテナを突き破り、小型の自律ドローンが姿を現した。

 

「何⋯⋯っ!?」

 

ケルシュは自動小銃に持ち替え、高速で動きながらそれを一つ、また一つと撃墜していく。

 

「そこにいるのか!!」

 

ドローンを落としたと同時に、コンテナに向けてミサイルを数発撃ち出す。

が、複数の熱塵の光がコンテナを再び突き破り、発射されたミサイルとケルシュの副腕武装の一つを吹き飛ばした。

 

「⋯⋯!!」

 

即座に破壊された武器をパージし、ケルシュは伏せる。

パージされた武装は残っていたドローンと共に爆発した。

 

その光と同時に、コンテナの上部が突き破られ、重武装のニンフが空に姿を現した。

その鎧殻には、アルカンドの教会長、イーデンのものと同様の装備も使われていた。

 

「よくかわしたな、ケルシュ!」

 

聞き慣れた声がケルシュの耳を刺激する。

 

「ピルス⋯⋯!」

 

「初撃で仕留めるつもりだったが」

 

テトリーは音もなく着地し、銃を向ける。

ケルシュもまた、狙撃銃を構えた。

 

「来たのは私一人だ。感謝しろよ、決闘だ」

 

「……お見通しか、嫌になるな」

 

テトリーは苦笑し、肩をすくめた。

 

「パナシェをすぐに解放したんだ。まともな兵士なら最後まで利用する……投降しろよ、今ならまだやり直せる」

 

次の瞬間、テトリーの熱塵砲が火を噴き、ケルシュの頭環を掠める。

 

「侮るなよ、私はアルカンドの近衛騎士だ……!お前たち蛮族には理解出来ないさっ!!!」

 

彼女は絞り出すように叫び、その場から跳躍した。

 

「この決闘を神に捧ぐ!アゥラムッ!!」

 

テトリーは熱塵銃を構え、左右の誘導兵器を同時に解放した。

 

ケルシュは背嚢のフレアを展開し、その射撃を車輪による高速機動で避ける。

 

誘導兵器は展開されたフレアに向きを変え、その場で爆発した。

 

「もっと気楽に生きろよ!″テトリー″っ!!」

 

ケルシュは狙撃銃を構え、照準を合わせる。

が、指を引く間もなく狙撃銃にナイフが突き刺さった。

迷いなくそれを投げ捨て、自動小銃を取り出す。

 

「お前はっ……!!私の気も知らないで!!!」

 

テトリーは左手に、扇状に複数のナイフを握り締め、投擲する。

 

「知らないさ!黙ってたんだろ!!」

 

しかし、その初動をケルシュの自動小銃が撃ち抜き、ナイフは宙に舞う。

 

「望み通り、あの日のけじめを付けてやる!!」

 

脚部の車輪が唸る。

小銃とミサイルで弾幕を叩きつけながら、ケルシュは真正面からテトリーへ突っ込んだ。

 

テトリーは腰のレーザーブレードを2本、同時に引き抜いた。

 

振るわれた刃が、飛来する弾丸を次々と斬り落とす。

火花が散る中、彼女は速度を落とさない。

 

「やってみせろよ!ガーディナを裏切った者同士の潰し合いだ!!」

 

弾幕を切り裂き、そのままケルシュの目前へと迫る。

互いの距離が近くなったとき、テトリーは違和感を感じていた。

 

__ケルシュがそう簡単に自分をここまで近づけるだろうか

 

そう思った瞬間、体を反らす。

ケルシュが隠し持っていた射突杭が彼女を掠めたのは、ほぼ同時だった。

 

「チッ!」

 

ケルシュは舌打ちしながら、反れたレーザーブレードの軌跡を軽く避け、銃を向ける。

 

その瞬間、視界外から胴体にテトリーの蹴りが叩き込まれた。

 

「が⋯⋯ッ!?」

 

吹き飛ばされたケルシュは地面を削りながら転がり、背中から壁に叩きつけられた。

 

「今のは、ちょっとばかし驚いたよ……」

 

テトリーは着地し、ケルシュにゆっくりと歩み寄る。

 

「良かったよ、あの日と大して変わってなくて。コロニー最高戦力のお前を殺せれば、手間も省ける」

 

「何⋯⋯?」

 

ケルシュはひどく沈んだ声で尋ねる。

 

壁に叩きつけられ、消沈したケルシュに、彼女は失望したような視線をやる。

 

「どうせお前は私の手で死ぬんだ、教えといてやるよ」

 

ケルシュが頼んだわけでもなく、テトリーは続けた。

 

「本命は外の部隊さ。私はここの最高戦力(おまえ)と一騎討ち。その隙に本隊が烏合の衆となったコロニーの兵士達(雑魚ども)を蹂躙、見事このコロニーを私達のものにする⋯⋯って寸法さ」

 

「そうなのか……」

 

それを聞いたケルシュは、勢い良く飛び上がり、テトリーの腹を蹴った。

 

「うぐっ……!」

 

不意の一撃に彼女の身体は吹き飛び、近くの家屋に激突する。

 

「喋ってくれてありがとう。それと残念だが、ここの隊長格じゃ私が1番弱い」

 

崩れた家屋からテトリーが飛び出し、ケルシュを睨む。

 

「私を、騙したな……!!」

 

「これであいこだよな!!」

 

テトリーは舌打ちし、熱塵砲を構える。

しかしケルシュはそれを小銃で撃ち抜いた。

 

「はは……ぐふっ」

 

ケルシュは苦しげに血を吐き、不敵に微笑んだ。

 

「……私達の司令を、舐めるなよ?」




読んでくださりありがとうございました。
次回は6/14(日)12:00予定です

ケルシュ(VSテトリー装備)
https://docs.google.com/document/d/1Hi6tjT-w2AGwu9HVfqbtUTyiERyeloYelglLyIcGn-4/edit?usp=drivesdk

テトリー
https://docs.google.com/document/d/1k2LF6k4v_tMO2lmYyd3Hx9dPsBGBciAArlBRX8jGUsQ/edit?usp=drivesdk
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