……おや?
あなた、『Kölsch -盟友、再び』の第4話と前日譚を読んで、「ウィッターなんて主教とか大それた肩書の割に大したことねぇなぁ」なんて思っていたりしていませんか?
まったく、これだからアルカンド以外のニンフは嫌いなんですよ。
まぁ良いです。
本来であれば、主教猊下の尊さを理解できない不心得者など、聖典の角で頭を殴ってやりたいところですが、今回は特別に、この私が教えて差し上げましょう。
ウィッター卿、いえ、ウィッター主教の強さと素晴らしさについて。
あのテトリーやチェルシー、新参の近衛騎士連中よりも長くお仕えしている私、セイロンがね。
……本作では「士官」名義の登場となりましたが、その私が、懇切丁寧に、そして慈悲深く教えて差し上げます。
まず前提として、ウィッター主教は真正面からの戦闘であれば、たとえこちらが数で劣っていようとも勝ち筋を作れるだけのお力を有しています。
基本となる戦法は、正面からの火力投射です。
まず、敵に向かって突撃しながら、槍のような長大な圧縮熱塵銃「Jefty」による精密射撃を行います。
これは単なる銃ではありません。
遠距離から敵の指揮官機、重装鎧殻、大型兵器の関節部を撃ち抜き、敵の戦列そのものを崩すための神聖なる一撃なのです。
さらに左右に装備された電磁ミサイル「Cetus」による面制圧。
着弾と同時に発生する電磁衝撃は、敵の装備や照準機構を乱し、次の一手を封じます。
つまり、ウィッター主教が戦場に現れた時点で、敵はすでに「撃たれる」「崩される」「焼かれる」の三択を押し付けられているのです。
そ、の、後!
我らアルカンドの傑作サブマシンガンである「Fams」を手に取り、その高機動と瞬間火力をもって残存兵力を一網打尽にする。
これこそが、あのお方の強さであり、気高さであり、主より授かった戦場の美なのです!!
あのお方さえ万全に戦えるならば、あの種子殺しやリアーヴドの継ぎ接ぎ部隊すらも敵にはなりません。
少なくとも私は、そう断言しますがね!!
前時代の騎士、そして白馬を思わせるその多脚鎧殻のお姿は美しく、見る者を圧倒します。
無骨なだけの中層兵器とは違います。
ただ火力があるだけの野蛮な兵装とも違います。
あれは信仰と技術と美意識が一体となった、アルカンド航空騎士団の理想そのものなのです。
さながら、聖典英雄記-第三章-に記された根の国の英雄のようなお姿には、誰もが目を引かれることでしょう。
あぁ、仰らないで。
言いたいことは分かります。
「その気持ち、わかるわ」でしょ?
あぁ、言わないで結構。
あなた方にウィッター主教の魅力をそう簡単に分かってほしくありません。
分かられてたまるものですか。
こちらは何年も、何十年も、あの大宣教のときからあのお方の背中を見てきたのです。
ぽっと出のニンフに「わかるー」などと軽々しく言われても、少々困ります。
ですが、誤解は正さねばなりません。
確かに、あのお方はあまり鎧殻をつけたままいることを好みません。
普段は身軽な姿で祈り、考え、我々に言葉を授けてくださるお方です。
そして本人も、これまで本格的に邪魔されたことが少ないせいか、敵襲を受けてから鎧殻を纏うことが多いのです。
場合によっては、その隙を突かれ、何もできず……という可能性もあるでしょう。
ですが!
そのための私達アルカンド航空騎士団なのです!!
あのお方が鎧殻を纏うまでの時間を稼ぐ。
あのお方が戦場に立つまで敵を押し留める。
そして、あのお方が万全の姿で降臨なされた時、我々は勝利を確信する。
それこそが臣下の務め。
それこそが騎士の誉れ。
それこそが、主教に仕える者の幸福なのです。
あのお方さえ万全ならば、我々の士気はカンスト!!
まさに万夫不当、完全無敵の騎士団となるのです!!
そう、あのお方さえ、万全ならね……。
本作では鎧殻を付ける前に足を切られて、頭をぶつけて、何やら情けない姿を晒したように見えたかもしれません。
ですが、分かりましたか?
あのお方は弱いわけではないんです。
強いて挙げるなら、相手が悪かった。
場所が悪かった。
タイミングが悪かった。
ついでに言えば、あのお方の近くに私がいなかったのも悪かった。
……いえ、いましたね。
いましたけど。
少なくとも、心は側にいました。
若い騎士たちにとっても憧れの的。
多くの巡礼者にとって導きの星。
そして私達にとっては、信仰と武勇を兼ね備えた理想の主教。
それが我々のウィッター主教なのですよ!!
わかりましたか?
あのお方が!
弱くないってこと!!
「なんで死体が喋ってるの?」
えっ、あ……えぇ?
もう私、死んでるの?
というか、だ、誰?
「あなたはこっちだよ」
ちょ、やめ!
まだ語り足りないんです!
Famsを構えた時のあのお方の肘の角度とか、あのお方の美しい瞳、おみ足!胸!!服脱いだときの横乳!!!まだ何も語れてないんですけど!?
「長いね」
長くありません!
ウィッター主教について語るには、むしろ短すぎます!
最低でも聖典英雄記の第三章から引用を――
「早くこっちに来なさい」
あっ、ちょっ、引っ張らないで!
せめて最後に一言だけ!
ウィッター主教は!!
弱く!!
ありませ――
「あぁ……あなたはまだ、こちら側のニンフではないのね」
「行って」
◆
「……ッ!!」
「……なんだ、夢か」
リエルはそう呟くと、再び目を閉じた。
本作はこれて終了となります!
ご愛読ありがとうございました!!
あと!ここから初めて読んでくれた人は、Steamから是非DollsNestをDLしてみてくださいね!!