”ひとつなぎの大秘宝”なんかいらないわ、それよりケーキバイキングよ! 作:mooma
いとせずに
ふと、目を覚ますと、そこはオレの知る場所ではなかった
思い返せば、たしか、オレは院のチビたちをちょっと離れたところにある無料の動物公園に連れて行った帰りで、一時間はミニバスに乗りっぱなしのチビたちの為に道の駅で一息吐いた後、チビたちを院に帰して自分も好意に甘えて院で休んだはずだ
チビたちのトイレ休憩兼オレの一服で10分15分くらい道の駅で足を伸ばそうとしたのはいいが、一日中動物公園で楽しんできた後だからみんな大分疲れてて注意力散漫になってたんだっけ?
そんで階段から落ちそうになってたやつを庇って、オレが落ちて頭を打って、院に帰ってからも頭が痛かったから、ママさんの好意に甘えて早めに休ませて貰ったんだんだったな…
一人暮らしじゃあ何かあったときに困るでしょう?って客間を貸してくれたはずなのに、ここはどう見てもその客間じゃない
覚えていないだけで夜中に頭痛が悪化して病院に運ばれてきたっていう可能性も、微妙だな…
どっからどう見ても、この真っ白い空間は病室には見えない
第一、ベッドで寝ているわけじゃなく、目が覚めたときに立っているとか、どう考えてもおかしい
ああ、コレはもしかして暇つぶしで読んでた二次創作的なアレなのか?
頭結構強く打ってたし、脳内出血でも起こしてたのかも知れないな…
あたりを見渡しても人影はないけど、これは真後ろに幼女みたいな女神様が現れるパターンか!?
〔…聞こえるか…聞こえているか…人間よ…私は輪廻を担当する神だ…いま、直接おまえの魂に語りかけている…〕
あ、そういうパターン?
〔…おまえは部下の起こした事故のせいで…魂魄エネルギーが極めて高い状態のまま死んだ…そのせいで、おまえを普段通り…記憶を消して、そのままおまえの世界へと…転生させる事ができない…すまないが…おまえには記憶を保持したまま…異世界へと転生してもらうことになる…〕
「そう、ですか…わかりました」
普通なら取り乱したりするだろうに、自分でもおかしいと思うほど、やけに落ち着いている…
なんていうか、ただただ神々しさを受け入れる事しかできない、そんな感じだ
〔…詫び代わりに…ひとつだけ…おまえに能力を与えてやろう……アニメなり…漫画なりから…好きな能力を言え…〕
「あ…その前に、ひとつ、お願いしてもいいですか」
〔……なんだ…?〕
「オレが死んだことでチビたちが苦しむのは嫌なので、オレの死因を階段から落ちて頭打ったこととは関係ない死因にしてもらえませんか?」
〔…それは問題ない…おまえの死はこちらの都合によるものだから…原因不明の突然死となる……頭を打ったことは関係していないと証明されるだろう…〕
「そうですか…ならよかった」
助けたチビが、自分を助けたからオレが死んだんだと思って苦しむのは見たくないもんな
〔…では…能力だが…〕
「えっと…うん、なんでもいいなら、蜘蛛の糸のような糸を自在に生み出せて、自分で生み出したその糸を自在に操れる能力がいいです、ジョジョに出てくるストーンフリーみたいな感じで」
糸なら攻撃に使えるのは勿論のこと、傷口を縫い合わせて回復能力に代えられるし、他人を捕らえたり縛ったり、編みこんで服をつくったりと補助にも使えるはず…
何より、蜘蛛の糸は鋼のように強いのに、伸縮性にも優れていて、さらに耐熱性まであるという、とても優れた能力を持っているのだ
正直、蜘蛛の糸を生み出せるだけでも十分に凄い能力だと思うんだが…
〔…糸の能力か…いいだろう……おまえが幼い内に能力を手に入れられるよう、手配しておく…〕
「ありがとうございます」
てっきり強すぎるとか言われてダメだしされるかと思ったんだが、ありなのか、これ
ああ、でも王の財宝とか無限の剣製とかそう言うのもリクエストできるかもしれない事を考えれば、蜘蛛の糸はまだ良心的なのか?
うん、気にしないことにしよう、オレが望んだ能力が完璧にそのまま受け取れるかどうかもまだ確定してないだろうしな
オレという器のキャパシティより注がれる能力の方が量が多かったら溢れてこぼれて能力の一部が使えないって事もありえるし
〔…ではな……魂の階位が上がっているから多くの苦難に遭う事になるだろうが…安心しろ…努力を続ければ必ず報われる……おまえの旅路に良き縁のあらんことを…〕
「え?ちょ…!?」
神のその言葉を最期に、オレは眠りに落ちるように、意識を手放したのだった…
再び意識を取り戻したのは、がやがやとした音に包まれ、いろんな色が混じっている場所だった
身体もなんだか重いし、動かしづらい…
なにか甘い匂いがするなぁと思ったら身体が浮いて…
ああ、そうか
オレはいま赤ん坊になってるのか
なにかを口にしている、母親かと思われる、甘い匂いのする白い影
口になにか押し付けられたかと思うと、無意識に口が動く…
なるほど、理性よりも本能の方が強く働くのか…
チビたちの面倒を見ていたこともあったけど、実際に自分がチビになると変な感じだな…
腹が膨れると今度は優しく背中を叩かれて…
ダメだ…また、眠くなってきた…
食っちゃ寝食っちゃ寝し続けてどれほど経ったか…
オレはようやく目も耳も前と同じくらいに使えるようになって、さらには周りの人が話している言葉が理解できるようになってきた
そうして気がついた驚愕の事実…
オレは…
「ほ~らドフィ、父上だぞ~!」
ドンキホーテ・ドフラミンゴになっていた
あれ?でも…股の間に変な感触が…ないぞ?
え?
ええ??
えええ???
え?うそ、もしかしてコレ…
サラダなの!!?
なんでさぁぁぁ!!!???
これは、ドンキホーテ・ドフラミンゴ(♀)に生まれてしまったオレが、時には悪のカリスマっぽく振舞いながらも、家族仲良く幸せに暮らすため、友達と面白おかしく暮らしていくために、現代の知識を乱用しつつ頑張る話である。
…多分
「ドゥルシネーア…生まれたのは、娘であったよ…」
「ああ、そんな…あなた、どうしましょう…!?」
「我がドンキホーテ家の立ち位置では彼奴に娘を嫁にと強請られても拒否できない…ドゥルシネーア…ルシィ…っ…娘一人護れない…不甲斐ない私を、許しておくれ…!」
「ホーミングさま…!それでは…、ハッ!いいえ…、いいえ、そうよ!ホーミングさま!まだ、生まれたのがどちらかはお伝えしていないのでしょう?」
「あ、ああ…まだ、私達以外に生まれたのが娘だと知るのは我が家の者たちぐらいだが…」
「それなら逆に、生まれたのは息子だと公表なさればいいのですわ。どうせそう遠くない未来にわたくし達は此処を去る予定なのですから、それまでの間、女児だという事を隠し通せればよいのです!」
「ドゥルシネーア…!そうか…そうだな!私としたことがそのことに思い至らなかったとは…!」
「ふふふ…あなたのその時々ドジっ子なところ、治りませんのね。初めて会ったあの日から…本をばら撒けたり、花を取ろうとして池に突っ込んでいったり、風に飛ばされたしまったわたくしの帽子を取ろうとして階段から落ちたり……ふふふ、ホーミングさまは本当に可愛らしい人だわ」
「ドゥルシネーア…君も、こんな私に微笑みかけてくれた優しさは今でも変わらず…君を妻に出来た事が、私にとってどれほどの幸運であったか…」
「でも此処でドジってドフィが女の子だとバレたら即刻容赦なく離縁いたしますので★頑張ってきてくださいね、あなたさま?」
「うう…離縁だけは…離縁だけは~!!」
「ならさっさと生まれたのは男児だと発表してらっしゃい!…帰ってきたら、膝枕、して差し上げますから…」
「!ならば、頑張ってくるとしよう…」
「はい…いってらっしゃいませ、あなた」
「行ってくる…」