”ひとつなぎの大秘宝”なんかいらないわ、それよりケーキバイキングよ! 作:mooma
夜は明け、天気は皮肉なまでの快晴
でも天を仰げば風が狂ったように吹き荒んでいるのがわかった
これじゃあ雲があったとしても糸は掛けられない…
処刑までの残り時間は、刻一刻と迫ってくる
広場にはたくさんの人間が押しかけていて、ロジャーの死をその眼で見ようとしていた
処刑を見ようだなんて、正気が疑われるな…
そうは思っても、オレ自身ロジャーの最期に立ち会おうとこの場にいるのだから、何も言えないのかもしれない
そもそもエースが処刑されそうになるなんてことはぶち壊そうと思っているけど…
念のため、この処刑時独特の雰囲気だけでも知っておかないと、マリンフォードが起こってしまった時にドジしそうだし…
予想外のことや覚悟していないことに直面すると、ドジをしやすくなる自分が恨めしい
実際、考えるだけじゃ、本当に起きた時に対応しきれない部分もあるわけだし
あえて“
さすがにオールナイトした後じゃあ、制御ミスりそうだし…
“
顔を隠しながらあたりを見渡せば、見物客の中に前世から知っている人たちも見受けられる…
海賊のクセによく今此処に来れるよなぁ…オレにも言えることだけど
ああ、でもオレがもう海賊だからって彼らももう海賊だとは限らないんだっけ?
それに、今はみんなロジャーにかかりきりだから、捕まる可能性も低いと踏んでいるのかもしれない…
人探しを続けているうちに、とうとうロジャーが出てきた…
処刑台に上がるまでの道すがら、一度だけオレと視線を合わせてにぃっと笑ったのを見て、オレはふわりと笑顔を返そうとしたけど…それが出来たのかどうかは自信がない
みんながみんな、食い入るように処刑の流れを見つめていて…
「おれの財宝か?…欲しけりゃくれてやるぜ…!」
ぴしり、殻が割れるような音が聞こえた気がした
「探してみろ!この世の全てをそこにおいてきた!!」
轟くような喊声にかき消されながら、ザンッ!と響いた剣の音
糸を通じて聞こえる、悲痛な叫びは誰のものか…
最期まで笑って逝ったロジャーに、せめてその死後が安らかであるよう、天に祈る
そして、まるで、ロジャーの死が引き金であったかのように、ポツ、ポツと降り出した雨
急激に発展していく雲に、嵐に、まるで天も泣いているようだ
いいや…さっきの叫びは…半身を亡くした嵐のものだ…
ダァーン!と落ちた雷に、このままでは危ないからと人々が広場を出ようと押し合って…
人波にもまれ、吹きつけた風に被っていたローブのフードが取れてしまい…髪が風に攫われる…
「!!貴様は…!!!」
海兵が叫ぶ声が聞こえた
まさか…バレたのか!?
いいや…いつものサングラスもコートもないのにオレがドンキホーテ・ドフラミンゴだと気付けるのは実弟であるロシナンテや
そう思って、警戒に固まった身体を解そうとしたのに…
「長い金髪の女…!!!ロジャーの嫁だぁぁあ!!!!ロジャーの嫁が来てるぞぉぉぉおおお!!!!」
「ふぁ、せ、んな、ふじこッ!?テメェの目は節穴かぁぁぁぁ!!」
皮肉な事にオレの突っ込みは雷にかき消され…
誤解だ!冤罪だ!!人違いだぁぁぁ!!!
オレを追いかけてくる海兵から逃げようと、人波を掻き分けて進む…
それでも逃げるスピードより追うスピードの方が速いから、諦めてもっと確実なルート…人波の上を通る事にする
「ごめんね!?」
身長の割には体重のないオレくらいなら問題ないだろう…目の前の男の背を蹴って、人々の頭の上に出る…
体格の良い、鍛えていそうな人を選んで、肩や頭を足場に使わせてもらえば、糸を使わない空の道が出来た
そうして人々が邪魔にならない程度の場所まで出てから、再び地面に降りる
さっと後ろを確認すれば、少しは距離を稼げたようだ
有事の際のために走りやすい靴にしておいて良かった…でも、土地勘のないオレではどれほどの間逃げ続けられるのか…
頼みの綱となる、本当の空の道は嵐のせいで使えない
つまり、オレはこいつらを振り切った上で、嵐の影響を避けるため、最低一晩は此処か近くの島に滞在しなきゃならないって事で…
糸を使っていない分、まだいくらか余裕はあるけど、そもそもどちらかと言えば身体の弱いほうの部類であって、さらに性別が女性でもあるオレが、軍人として鍛えている男性から逃げ続けるのは圧倒的に不利なんだ
せめて土地勘があったなら、小回りを利かせて振り切る事も出来たかもしれないのに!
そう思いながら、またひとつ、角を曲がった瞬間だった
「!?」
突如腕を引かれ、路地裏に連れ込まれた
ご丁寧に口を塞いでだ
口を塞ぐ手を退けようと、噛み付くつもりで口を開けば、歯と当たる金属の音がして…
嫌味な事に噛み切れそうな位置にある指には全て金属の指輪がはまっているようだ…
これじゃあ噛み切るのは難しいな、と思って抵抗の種類を変えようと身を捩れば、
「シッ!静かに…俺は敵じゃねぇ…おまえを助けたいと思ってる…解ったなら頷いてくれ」
耳元で囁かれた声に、ふるりと、身体が震えた
こくりと小さく頷けば、強くオレを抱きこんでいた腕が緩められて、口を塞いでいた手も退けられた…恐る恐る振り返れば、そこにあったのは、真摯にオレを見つめる、金の瞳…
「…おまえが…海賊王の嫁だと言うのは…本当のことか…?」
そう、尋ねられるまで、息をするのも忘れていたような気がする
「…いいえ、人違いよ…彼女との類似点なんて、この豊かな金色の髪くらいなんだけど…でも、助けてくれようとしてありがとう…」
今のように覆い被さられるとオレの姿なんて向こう側からじゃあちっとも見えないだろう
それがオレを隠すためなのか、オレが雨に降られないようにするためなのかは、わからないけど…
「そうか…なら、宿まで送って行こう…別人だと証明できる人間が居た方がいいだろうしな…何処に泊まっている?」
彼の向こう側から聞こえてくる喧騒が、とても遠く聞こえて…
あまりの近さに、彼と雨の香りしかしない…
「えっと…宿、今夜はまだ借りてなくて…このまま帰るつもりだったから…」
どうしよう…なんか恥ずかしくなってきた…うちのメンバーはもっと近くにいても気にしたことなんかなかったのに…!
「なら……俺のとこにくるか?」
どういう意図でそれを聞いてきたのかは、わからないけど…頭に手を添えて上を向かせながら言われると…!ああああ~ッ!!
ダメだって告げてる部分と、このまま身を任せてもいいと思ってる部分が鬩ぎあっていて…
でも、その金の瞳に、まだ映っていたいのだとわかった瞬間、
「つれてって」
彼のコートを掴んでいたオレがいた
「くくく…同意したのはおまえだ…どうなっても知らないぞ?」
悪い顔で笑みを浮かべている方が、なんだか、らしいなと感じられて…
「誘ったのはあなたでしょう?…でも、おねがい、ひどくしないで…やさしくして…」
なんだってそんな誘い返すような言葉が口からこぼれたのか…!
強引に、でも、壊れ物を扱うかのようにオレを抱き寄せた彼は手馴れているようで…
それもそうか…見た感じ海賊だし、オレよりは確実に年上そうだ
それに、男の人には生理現象もあるから、そう言う店に行くんだって事は知っている…
オレを片腕で抱き上げた彼はそのまま路地裏の奥から屋根へと登っていき…
「被ってろ…女が身体を冷やすもんじゃねぇ」
上質そうなコートを肩から外して、オレを隠すように包んだ彼は、そうとだけ言うと何処かへ…多分彼の泊まっているホテルへと向かい始め…
外の様子がわからないオレには今自分が何処にいるのかもわからないけど…
それでも、もう少しだけ長く、この時間が続くよう願っている自分がいた
「もう着くぞ…部屋に入るまで大人しくできるな?」
まるで子供に言い聞かせるような声色に、少し不満はあったけど、オレが年下の、乳臭さが抜けてないようなガキだというのはまあ、ある意味当たっているから、仕方がないか
「わかった。声は出さない、なるべく動かない…それでいい?」
「ああ…十分だ」
おそらくオレを連れ込んだことを知られたくないんだろう…
代金は部屋ごとの固定で、何人同じ部屋で寝ても変わらない場合が多いとはいえ、追加料金を取るところもあるにはある…
それにオレは今海軍に探されているから、余計な面倒に巻き込まれないためにも、必要な処置なんだろう
「おや?もう、お戻りですか?」
「ああ…雨に降られてな…」
「それはそれは…」
ホテルの人間が顔を覚えているなんて…余程の有名人か、あるいはここがお高いホテルなのか…
高いホテルなんてマリージョア時代ぐらいしか使ったことないし、オレは田舎者だからここいらの有名人は知らないし…
…よくわからないし、考えるだけ無駄か…
その後割とすぐに部屋についたみたいで、オレは床に降ろされて
「シャワーと風呂はあっちだ。雨で冷えた身体を暖めてこい…着替えはあるか?なければ持ってこさせるが…」
オレは彼の指示に耳を傾けながらも、彼が水の滴る髪をかきあげる仕種に目を奪われていた
なんでこんなに色っぽいんだよ、クソ!
「着替えは大丈夫、持ってるから…あなたは温まらなくて平気なの?」
腰に巻いたバッグに下着類は入っているし、こうして出張している間はスペース削減のためにも洋服は
「ああ…すぐに乾く」
そう言った彼の言い方はどこか釈然としなかったけど…
今はまだ突っ込むべき時じゃない気がして、オレはそのまま風呂場へと向かう
さすがに、お高い疑惑があるホテルだけの事はあった
アメニティは充実していて、おいてあるものはむしろ普段使ってるものよりも上等なんじゃないかと思われて…
大きなバスタブにお湯を張りながらシャワーで体を洗い、バスタブに十分にお湯が溜まったところで、身体を沈める…
今はお湯でも水に浸かっているせいで身体から力が抜けるけど、この脱力がクセになるんだよね…あの、お風呂のあ゛~って言うのが更に心地よく感じられるから
身体はそこまで冷えていなかったから温まるのにそんなに時間は必要なくて
お風呂から出て、身体を乾かして、髪を乾かしながら下着をつける…服は考えるのも面倒だからとりあえず無地のTシャツとゆったりめのズボンでいいや
半渇きの髪を糸で作ったリボンで軽く結わえ、風呂場を出る
あの人も雨に濡れたんだし、身体を温めてくるべきだと思ったから、あまり時間はかけなかったつもりだったんだけど…
「…早かったな」
ソファに座って本を読んで待っていたらしい彼には雨に降られた形跡がなく…
あれっ?と思って彼のコートを見れば、確実に同じコートなのにもう既に乾いていて…
「…どうしてもう乾いてるの?」
思わずポツリと呟いた言葉は彼の耳にも届いたらしく
「俺はスナスナの実を食べた砂人間…渇きを与える存在だからな」
そう答えてきた彼は自嘲とも取れる笑みを浮かべていて…
「…能力者…」
「逃げるなら今のうちだぞ?俺の手にかかればおまえもあっという間にミイラだ」
手をひらひらとさせながら嗤う彼は、何処となく寂しげに見えて…でも、もう、折り合いはつけているのかもしれない、あまり悲愴さは感じられなかった
「スナスナって事は
からかうようにそう答えれば、一瞬呆気に取られたような顔をされて
「…なんの能力だ?」
「イトイトの実の糸人間…
指を合わせて、綾取りをするかのように糸を出して見せれば、ほう?と少し声が漏れた彼
多分どうしてオレが勝てはしなくても負けないと言ったのか考えているのだろう…ほんの少し、眉間に皺がよっていた
辺りを見回すと、コーヒーコーナーがあるのが見えて、そういえばお昼を食べていないことに気付く
今外に出るのは海軍に捕まりに行くような自殺行為だし、雨もまだ止んでいないようだ
…コーヒーだけで我慢するか…
「コーヒー飲んでいい?」
「あんまり美味しくなかったぞ」
尋ねたオレに、チラリとそちらを見て少し不機嫌そうに顔を歪めたのがなんか可愛くて
本当はオレが思ってたより、年は離れてないのかもしれない…
「そう?こう言うのはコツがいるって教えてもらったけど…あなたも飲む?」
「…不味かったら飲まないがな」
「はいは~い」
うちではジョーラやセニョールがコーヒーに煩いせいで、こういうのは一通り身についてしまった
二人以外にはオレが紅茶派で、ラオGが緑茶派、パンクと呼ばれていた少年改めグラディウスが炭酸系派、その他のみんなにはこだわりがないって感じだ
ディアマンテなんかは一時期アルコールなら何でもいいと言っていたが…お酒ばっかりは身体に悪いからね、教育的指導が入りましたよ、オレとジョーラから
朝からお酒飲もうとするとか…!!
なんなの?カッコイイと思ってんの?それとも剣士のたしなみかなんかなの??
剣士には酒呑みが多いらしいけど…うちでは、絶対許しません、絶許です!
子供達に悪影響だしな!
インスタントの粉ではなく、豆を挽いたものをおいてるあたり、やっぱりお高いホテルだな…でも泊まってる人が正しい淹れ方知らなかったら意味ないよね?
備え付けの紙フィルターではなく、オレの能力でフィルターを作ってそこに豆の粉を入れる
紙フィルターって、独特の味がつくことがあるから、人によってはその味がイヤだって人もいるらしい
お湯を沸かしている間に色々漁ってみると紅茶の茶葉もあったけど、紅茶よりはコーヒーな気分だし、これは後でにしておこう
お湯の湧いたケトルを持って、フィルターに入れた豆をちろっと濡らす…こうして粉をちょっと濡らして蒸らしておくのが大事なんだとか
待つことおよそ20秒…蒸し終わったコーヒーに、今度はゆっくりとお湯を回しかけていく…
この時、周りにできるコーヒーの壁を崩さないようにするのが正しい手順らしい
二人分のお湯を注いで、ドリップが終わるのを待つ…お湯を注ぎ終わったコーヒーの上に白い泡が残ってればオーケー!
この泡は灰汁だから残っててくれないとコーヒーが美味しくならないのだ
うん、上出来!
「できたけど、ミルクと砂糖は?」
「いらねぇ」
「わかった」
オレの分にはミルクだけ入れて、彼の前に淹れ立てのコーヒーを置く
「はい、どうぞ」
「ああ」
コーヒーを片手に、彼の向かいに位置するソファに腰を下ろす…ちょっとお行儀は悪いけど、足を上げてソファの上で体育座りの格好になる
普通のソファよりは余裕のある大きなものみたいで、身長の高いオレでも余裕を持って座れるんだけど?
トトロと同じぐらいの身長のオレがだよ?
「…」
一口、コーヒーを口に含んでから、もう一口飲んだあたり、彼にも不味くはないと思ってもらえたのだろう
しばらくはページをめくる音と外の嵐の音だけが部屋に響いていて…
うちにいると、こんな静かな時間はないから、なんか変な感じ
「…他の服はないのか?」
「ふぇ?」
急に話しかけられて、ボーっと外を見ていたオレは反応が遅れてしまった
「夕飯の話だ…食いに行くとしてもまともな服がないんじゃな…」
「ああ、なるほど…」
オレたちが行くような大衆酒場なりならこの格好でも問題はないんだけど…目の前の彼はどちらかと言えばもっとお高いトコに行きたいようで…
ドレスコードあるしなぁ…マナーにも煩いしなぁ…
未だにマナー自体は染み付いてるようだけど、最後にそういう食べ方したのいつだっけ?十年近く前になるのか??
「どんなドレスがいい?イブニング?カクテル?夕飯ならアフタヌーンドレスは避けるべきよね…」
こういう時は一緒にいる男性に合わせてしまったほうが簡単だ…
あ…どうしよう、女性側のマナーなんて知らないんだけど!?
昔一応習ってたのは男性側のだったし…リード、してもらえるんだよね…?
なんかドジりそうで怖いんだけど~!!?
俺の憧れでもあった海賊王の処刑のあと、その嫁と疑われて追われていた女を拾った
雨が降り始めたせいで能力を使うのが難しくなってきた中、能力を駆使し路地裏に先行して引きずり込み匿ったが…濡れた金の髪と見上げてきたスミレ色に、まだ荒削りながらも上等な宝石を飾った装飾品を思わされ…
送っていくつもりだったにも関わらず、宿がないと言われ…連れ帰ってしまった
あの宝石を俺好みにカット出来れば…そう思う自分がいることに驚きながらも、同時にその荒削りさも捨てがたく思え…
風呂場から出てきた女を見て、その気持ちは更に強くなる
何の飾り気もない格好だと言うのに、一流品で飾り立てた美女と並べても見劣りしそうにないのが、不思議で仕方がない
「コーヒー飲んでいい?」
男とホテルで二人きりだというのに、変に緊張するわけでもなく、変に媚びるわけでもなく、ただ自然体のままの女も能力者だというのには驚いたが…
本当に、俺に負けないと思っているのか?
女の考えが読めず、どうせ泊めるのなら夕飯も連れて行くべきかと声をかけた
「…他の服はないのか?」
「ふぇ?」
気を抜いていたらしい女は変な返事をしたが、まあ、まだ子供の域をでない年頃だろうからな…
「夕飯の話だ…食いに行くとしてもまともな服がないんじゃな…」
「ああ、なるほど…」
ドレスを買い与えて着飾らせてみるのも悪くはない…そう言った想いもあったのは否定できないが…
「どんなドレスがいい?イブニング?カクテル?夕飯ならアフタヌーンドレスは避けるべきよね…」
予想外にも、女はそれなりに知識があったようで…
ただの海賊娘じゃなかったようだな
「カクテルよりはイブニングだな…見せるのは肩と背中ぐらいが良い」
ドレスを持っているようには見えなかったが…調達してくるつもりか?
「色は?あなたの格好に合わせて黒ベースの方がいいかしら?」
俺の格好を確認してそう聞いてくるあたり、かなり手馴れているようだ
…誰かの愛人か何かなのかもしれないな…
「ああ…だが暗めの赤も悪くない」
「オッケ、わかった。ちょっと待っててね」
そう言って女は風呂場に入って行き…ちょっと待て、何で風呂場に…?
「こんな感じでどう?」
そう思ったが、出て来た女を見て、疑問は解けた
布は糸で出来ていて、こいつは糸を作れる能力者ならこんな事も出来て当然か…
髪型こそは変わらないものの、赤を透かした黒いレースのドレスを纏った女がそこにはいて…
「…少しプレーンすぎないか?もう少し模様があったほうが良さそうだが…」
「模様?う~ん…考えるの面倒だから薔薇でいいか」
そう言って女が指を回せばドレスの裾から薔薇が弦を這わせて伸びていき…俺の目の前ですぐにレースに刺繍が施されていく
…便利な能力だな
「凄いな…ドレスはそうやって好きに変えられるのか?」
「え?うん。基本的にオレの格好は全部好きに変えられるよ?今一端引っ込んだのは下着脱がなきゃだったからで…」
「ぶ…ッ!ぬ、脱いだのか!?」
聞いた俺も悪かったかもしれないが、男の前で堂々と下着を脱いだとか口にして、この女は危機感ってものがないのか!?
そ、それに、脱いだってことは、あの下は…やめろ俺!想像するんじゃねぇ!!
「いや、だって、脱がなきゃ背中見せられないでしょ?」
「あ、ああ…そっちか…」
てっきり下を…と思ったのは男の性か…
子供相手に何を…!と思う暇もなかったな…
「髪は上げるからいいけど…オレ、アクセは持ってないんだよね~…化粧道具もないし…どうする?」
女が一度髪を解いて上げ直すのを見ていると、女が俺の意見を聞く度にちゃんとこちらを見ることに気付いた
自分の意見をはっきり口にしながらも俺の意見を取り入れる…ただあるがままの俺を見つめる…いままで、こんな女いたか?
媚びてくる女は五万といた、俺の力を知って怯えた女が大半だった…でもどんな女も、本当の意味で俺を見ていたようには思えなかった
「…前に泊めた女が置いて行ったのがある。好きに使え」
「それ、オレ以外には言わない方がいいよ?利かないとはいえ、刺されるのだって不愉快でしょ?」
俺が指差せば遠慮なく漁りに行くくせに、俺に注意してくる女…外見だけでなく、中身まで俺の気を惹くとはな…
化粧ポーチの中身を一つ一つ確認しては顔を歪めたり、目を輝かせたり、見ていて飽きない…
このまま奪って、連れ去りたいと言ったらどんな顔をするだろうか…
「はっ!俺を刺せる女がいると思うか?」
「お望みなら刺せる女がここにいますけど~?言っとくけど、オレの仲間にも
フッフッフッと笑う女は楽しそうにしながら俺の方に顔だけを向けてそう返してきた…本当に面白い女だな
俺に勝てないと言ったくせに、俺を刺せると言って
こいつが糸を扱う際にくるくると指を回すのは癖なのか?…商売女の忘れ物を首に着けながらドレスの形を修正していく…
「それに、世界は広い…オレにも、あなたにも、まだまだラフテルは遠すぎる…
チェシャ猫のようにニヤリと笑った女はそうなる自信があるとでも言いたいようだが…
「素直じゃねぇが、可愛いこと言うじゃねぇか…俺に守って欲しいってか?」
「は!?だ、誰がそんなこと…!ちが、そういう意味じゃ…!!」
無自覚な告白を指摘してやれば、女は顔を真っ赤にして否定してきやがった
「くくく…!」
「わ、笑うなぁあ!!」
こんな面白くて、飽きなくて、可愛い女…もう、誰にも渡すつもりはない…
俺は海賊だからな、欲しいものは奪っていく…奪われてばかりで、許すつもりはないぜ?
引き寄せて唇を奪えば瞬いた目に、これからずっと俺だけを映して生きていけばいいんだ
そう、思ったのに…
ギシッとベッドが鳴る音に目が覚めた…
俺の上にあった温もりが消えていて…
「…行くのか?」
ぴくりと跳ねた影が振り返る
「あ…ごめん、起こした?」
「いや…眠りが浅かっただけだ」
「…起こしたんじゃない…」
窺うように聴いてきた声には昨夜の甘さは残っていなかったが…
僅かに差し込む光が昨夜の残り香を照らしていた…
「行くのか…?」
もう一度同じことを聞けば、今度は哀しげに微笑まれ…
「俺が、おまえを奪い去りたいと言ってもか?」
そう聞いても笑顔が深まるだけで…
「帰らないと…」
「帰るな…俺と居ればいい」
顔を背けられ、能力を使って捕まえに行けば…
「……泣いてるのか?」
その宝玉のような双眼からは銀の雫が溢れていて…
「世界って…いつも残酷だ…!今度は夢か恋かを選ばなきゃいけないなんて…!!」
震える細い肩を抱き寄せれば、身を委ねてくれ…
その両方を取ろうにも、これから荒れる時代を往くことを思えばそれは難しい…
俺にも選べないことを、こいつに選ばせるのは酷だな…
「…そうだな…なら、選ばなきゃいい」
「どうやって!?オレの夢もあなたの夢も、一緒に居たら叶えられない…ッ!」
悲痛な叫びを上げる口を塞いで、首に回される腕を感じながら、その腰を抱き寄せる
口を離せば、零れる吐息は甘く…
こんなガキに…ここまで見事に心を奪われるなんてな…
「おまえが俺に会いに来い…いや、俺がおまえに会いに行ったって良い…グランドラインで、待ってる」
夢を諦める必要はない
ずっとは一緒に居られないとしても…これならまた会えるだろう?
「…うんッ!…会いに、行く…!ぜったい、会いに行くよ…!!」
砂糖菓子のような笑顔を浮かべてくれたことに、この選択が正しいのだと思えた
例え…二度と会えなかったとしても…
「なあ…俺たち、まだ互いの名前も知らないんだって、信じられるか…?」
「ふふふ…そういえば、そうだった…」
もう一度寄せた唇に、そう呟けば、その笑顔は困ったようなものに変わって…
「でも、このまま知らずに別れて再会できたら、運命みたいだって思わない?」
俺は、この出会いが既に運命だと思っているが…
「…わかった。いいだろう…次に会った時におまえの口から聞いてやる。その前に手配書で見つけることになると思うがな」
わがままを聞いてやるのが男の甲斐性だと聞いたことがあるからな…
何の手掛かりがなくても探し出せる自信がある俺にとって、名前を知らない程度はハンデにもなりやしないぜ?
「…じゃあ…オレ、行くから…」
「ああ…またな」
俺から離れていく中、髪を掬いキスを落とす…
朝焼けを受け、振り返って残して行った最後の微笑みは俺の渇きを誘うだけで…
すぐに見つけ出して、奪いに行ってやる
そう決め、もう一眠りしようとベッドに戻った…
僅かに残った甘い香りが…
不思議部屋改め…
この話は(略)←
ぴんぽーん!
「あら?まさか、この音…お客様?!」
ぱたぱたぱた…
「は~い、少しお待ちくださいね~!え~っと…これをこうして…開きましたわ!」
「あ、すみません。おれ、隣に引っ越してきたもので…これ、粗品ですが…」
「あら、ご丁寧に…え~っと…これはゴール・Dと読むのでしょうか?それともゴールドと読むのでしょうか…?」
「あ、ゴールです。ゴール・D・ロジャー、」
「まあ!あんまり若くなっていたから気付きませんでしたわ!さあさあ、どうぞ、中に入ってくださいな!娘がお世話になって…!あなた~!ドフィに色々お話してくださったロジャーさんがいらしてますよ~!」
「は?え?いや!?誰だよ、って、お姉さん力つよっ!?え、なに、またそういう女性!!?」
「…呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う…」
「うおッ!?え、何この人、なんでこんな闇ってか瘴気製造してんの!!?」
「まあ、あなたったら…ドフィに手を出した男が居たからってそんな…ところでロジャーさんは銀の電伝虫って何処で捕まえられるかご存知かしら…?」
「え…いや…さ、さすがに銀の電伝虫は危ないんじゃ…?」
「そうですわね!バスターコール程度では、あの男を始末できないかもしれないことを考えれば…!!やはり、ここは未来からシノクニを…」
「な…なに、なんなのこの魔窟…!ちょ、無理…!おれ、首飛ばされて死んだばっかだってのに、こんな魔窟に放りこまれるの…!?これが地獄なの!?おれが何をしたって…!!助けてルー~ジュ~~…ッ!!!」
ぴんぽんぱんぽーん…!
【一部映像に乱れが合ったことをお詫びいたします。ただいま電波の状況が酷く悪いため、映像が途切れてしまいましたので、今回の放送は此処で打ち切らさせていただきます…】
ぱんぽんぴんぽーん…!