”ひとつなぎの大秘宝”なんかいらないわ、それよりケーキバイキングよ!   作:mooma

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らくじつ


トワイライト

あの後、オレたちはそのままセーフハウスに住む事に決め、

 

そして、

 

父が望んだような“慎ましい”生活が始まった…

 

 

 

この新しい家は海に近いため、魚なら比較的簡単に手に入る

 

魚釣りなんて悠長な事は父上に任せ、オレはロシィと一緒に食べられる植物を探して森に入り、母上には飲み水の濾過・蒸留を頼んでおいた

 

別に父上に出来るのが魚釣りだけだったとか言うわけではなく、いや、まあ、確かに先の選択肢の中では釣りしかできないのだが、森の中で身を隠すことや地の利を考えるとオレとロシィの方が森に入るのに適していただけなんだ

 

「兄上、これ食べれる?」

 

そう言ってロシィが持ってきたのはオレの握り拳くらいの大きさの木の実だった

 

「ああ、この実は甘くて美味しいらしい…ん、大丈夫そうだな…ほら」

 

それを服で擦って汚れを落とし、味見の為に少し齧れば口に広がる甘酸っぱい味

 

これなら大丈夫だろうとロシィの口に寄せればそのままパクついて、ぱぁぁっと色づく笑顔

 

「はむ…、!本当だ!甘くておいしいね、兄上!母上にもいっぱい持って行こう!?」

 

ぐいぐいと見つけた方に連れて行こうとするロシィを抑えつつ、足元の安全を確認しながら進んでいく

 

ロシィは今日も既に何度か転んでいるため色んなところが泥だらけだけど、最近痛くない転び方を覚えたらしく、転んでも泣かなくなっていた

 

…そこで転ばないように歩く事を覚えないのが、ロシィの天使たる由縁だな!

 

「いっぱいはダメだぞ、ロシィ。ここはみんなの物で、動物達も食べるからな。来年もここで見つけられるように自分たちが食べる分だけ、欲張らないで持っていくんだ」

 

「…うん…わかった…」

 

オレが欲張りはいけない事だとロシィを窘めれば、しょぼ~んと影を背負って落ち込まれてしまった

 

でも、この天国から地獄への大転落にも関わらず、健気に頑張っているロシィにはご褒美があってもかまわないよね?神様

 

「他にも生ってるとこを見つけて、数箇所から少しずつ採っていけばいっぱいになるから頑張ろう?」

 

「うんっ!あ…でも、ほんとにいっぱいいっぱい取ったら食べる前にダメになっちゃうね?」

 

最近、ロシィは普通の人の感性への調整も進んでいて、こうして時折オレが驚く様なことを言い出すようになってきた

 

それを実感しては、子供の成長って早いなぁ…って思ってしまうオレです

 

「その時は母上に頼んでジャムにしてもらえばいいんだよ。ジャムなら長持ちするからさ」

 

「ほんと!?えへへ…兄上はいろんなこと知ってるね。ぼくも早く兄上みたいになりたいなぁ…」

 

そんな可愛い事言わないで下さい、熱い情熱(パッション)がこぼれちゃいます…!!

 

いくらか木の実を摘みながら籠の中身を確認すれば、三日、四日分くらいにはなりそうなほど山菜や果物が大漁だった

 

「今日はこれくらいにしておこう…帰るぞ、ロシィ」

 

「は~い!」

 

森の中ではウサギやイノシシ等の食用になりそうな動物も見かけることがあるけど、さすがにそういった狩りを行なうつもりはまだ、ない

 

ジビエは食べた経験はあっても調理の経験は無いし、血抜きとかの処理の仕方を教えてもらう必要がある

 

そして何より、うちの家族がみんな卒倒しそうで怖い

 

父上なんかは生きた食材を見た瞬間にベジタリアンになるかもしれないし…

 

魚の方は船旅の経験もあったからか、あんまり問題がなかったけど

 

「ぬあぁぁ!?か、海王類だとぅ…!?おのれ…!子供達のご飯は私が守ぉるッ!さあ、掛かってくるがいい!!全力で相手をしてやろう…!!…、…ふぎゃぁぁ…!?」

 

…なぁんか遠くがうるさいけど気にしないことにしよう!

 

 

その夜帰ってきた父は傷だらけになりながらも満足そうな顔で魚の入ったバケツを差し出してきたのだった…

 

父上……ハァ…

 

 

 

 

 

 

 

季節は移ろい、冬が来た…

 

「やはり、海軍の誰かに連絡し、謝罪し、他の土地に移れないかどうか相談するべきではないのか…?このままでは、冬を越せるのかどうか…」

 

町で性質の悪い風邪が流行っていたらしく、先日町に買い物に行ってきた母とロシィがその煽りを受けて倒れてしまい、現在進行形で苦しんでいるのを見て、父が嘆く…

 

「オレは連絡を入れるだけでも危険だと思います…政府の関係者に我々が生きていると知られればあの襲撃のような事がまたあるかもしれません」

 

「だが!それでは苦しんでいる家族を助けられないではないか!!」

 

オレと一緒に森を駆け回っていたロシィには体力があったためかまだそれほど酷くはなってないけど、それでも熱で寝苦しいのか、ずっとグズっているから見ていてとても辛い…

 

母上の方はもっと重篤だ

 

元々が天竜人の姫君という深窓の令嬢だったこともあって普通の女性よりは体力が無い上に、昔と比べて栄養状態も悪ければ衛生状態も悪いような今の生活は負担が重かったのだろう…

 

息も絶え絶えといった様子で、熱が下がらないし、ここ数日は水分以外口にできていない

 

せめてもの民間治療で温かいレモネードを飲ませているけれどそれもいつまで保つか…

 

今にも殴りかからんといった剣幕の父に、オレは危険を承知で賭けに出ることにした

 

「父上。オレたちはいま、普通の人間として暮らしています。なら、普通の人間のように医師にかかりましょう。幸い、襲撃の際に持ってきた宝石類にはほとんど手をつけていなかったので、医師を頼む金や薬を買う金はあります。オレが街から医者を呼んでくるので…それまでの間、母上とロシィを頼みますね?父上」

 

「……わかった…気をつけて、行ってきなさい」

 

苦渋の決断だったのだろう…

 

父上は苦々しい顔で、けれども決意ある男の顔でオレを見送ってくれた

 

これから…戦いに赴くオレのことを

 

 

 

オレがそいつに出会ったのは、森での食料採取をロシィに任せ、オレ自身は換金目的で廃品を漁ってはまだ使えそうなモノを街で売り始めた頃だった

 

オレたちの家から程近い町ではなく、少し離れた所にある街は大きく、人も多いがその分治安の悪さが目立っていた

 

換金の帰りに襲われるのは当たり前、襲われない事の方がむしろ稀だった中で、一人だけ異色を放っていた襲撃者…それが、彼だ

 

「どうした、ドフィ。お前がおれを頼るなんて天変地異の前触れか?」

 

機械のように冷静に、徹底的に、無感情に組織(ギャング)の裏切り者を処理する処刑人

 

「煩い、ストーカー。オレはテメェのボスに会いてェんだよ。連れて行ってくれたら、そうだな…お前に殴られてやってもいい」

 

鉄砲玉どころか中堅の奴らが襲撃に行っても一向に成果(カネ)出せ(うばえ)ない獲物を狩れと命じられて、オレを襲ってきたソイツは、オレにボコボコにされたというのに、その日からオレが街に来るたび追いかけてくるようになった

 

何度ノしても諦めずに追いかけてくるソイツに好奇心がそそられ、つい、聞いてしまったのだ、『なんで殴られるってわかってんのにオレを追いかけてくるんだ?』と

 

ああ…うん…

 

正直その時のオレは早まったんだと思う…

 

だってソイツ…

 

「本当か!?本当におれに殴られてくれるのか!?」

 

SM拗らせた危険すぎる性的倒錯者だったんだもん…!

 

泣きたい…

 

「一発だけだけどな。家族に心配かけたくないから見えないところで頼むぞ?」

 

傷つけられる事で愛情を感じるようになった理由は色々と想像がつくが、彼がオレを気に入った理由は至極単純だった

 

オレがコイツに殴られて、殴り返した、いや、殴り返せたからだ

 

「ああ、当たり前だ!愛し合う二人の愛の証は秘匿しておくのがマナーだろう?さあ、ドフィ、こっちだ」

 

パワー馬鹿なコイツの一撃は、壁さえ粉砕するもので、当たったときはトラックに突っ込まれたかと思ったほど痛かった

 

そんな威力では大概の人がオチる

 

そんな中で、オレだけが殴り返してきただけでなく、意識をトばすほどにボコしてきたとあって、コイツは『あの日、おれの目の前に神が降臨した…!その神が、ドフィなんだ…!』と感激してしまったそうで…

 

どうして…こうなったんだよ…!?

 

フッ、フフフ…

 

ホント、泣きたい…

 

「ああ、頼んだぞ、()()()()

 

 

 

 

 

 

 

『取引をしよう…腕のいい医者を紹介して欲しい。金はある。実力もあるし、知識もあるつもりだ。家族に心配をかけない限りなんだってする。一番いい医者を紹介してくれ、頼む』

 

賭けは多分、オレの勝ちだった…

 

『そ~~だねー…それが、そのキレェな眼が欲しいってことでもいいのかァ?』

 

『…抉ればいいのか?防腐処理はどうする?片方でいいのか、それとも両方欲しいのか』

 

『ちょ、ちょッ!?抉らなくていい、抉らなくていいから抉る準備を始めんなァー!!?』

 

取引は成立、オレが定期的に街に行ってアイツらと遊べぶだけでいいという破格の条件で、この国一番の医者を紹介してもらえた

 

『あ゛~…最近のガキってのはなんだってこう、ぶっ飛んでるのしか居ンねーんだよ…』

 

『ぶっ飛んでないと生きてけねェんだよ、この国じゃ』

 

『ドフィの言う通りだ』

 

でも、もう、すべて遅かった…!!

 

雪のように、白く、儚く散っていった、愛しい女性(ヒト)

 

棺の中に眠る母は、とても穏やかで…

 

『んねー、ドフィ…その、葬式、するんなら必要だろォ?』

 

エンバーミングが施された死体()はまるで眠っているようだった…

 

最期だから母に花を供えたいと雪の中手の感覚がなくなるまで探し続けても見つからなかったのに、アイツらは何処かからか母の好きな花を見つけてきてくれて…

 

ああ…母を呼び、泣き叫ぶロシィの声がする…

 

 

 

()()の冬…オレは、母を亡くした

 






ドフラミンゴ(♀)

金髪紫眼の悪魔あるいは魔女。
アルビノによる紫眼のため、羞明対策にサングラスが手放せない。
生活には支障ない程度の弱視も併発しているが目以外に症状はない。

まだまだパッと見だけでは性別がわからない年齢なので、口調の荒さ等も関係して周りからは当然のように男だと思われている。
男バージョンと比べると少しだけ髪の毛が長いが、それでも普通に男でも問題ない長さ。
転生者故の知識により男ではなく女だということを知っているが、両親は男として育てている上、まだ女だということを言ってきていないので、男として振舞っている。


他の人たちの設定は、男バージョンとあんまり変わらない。
幼少期には男女間での設定の大きな変化は無い予定。


ロシナンテ

兄が実は姉である事はまだ知らされていない。
でも町の子達のように兄弟で一緒にお風呂に入らなかったり、兄弟で一緒に水浴びをしたりしないのは変だな?とちょっと思っている。


ホーミング聖

男バージョンと比べると、“ヤツ”の関係で心労もあったため視界は広め。
ただやっぱり見通しの甘さは残っている。
嫁さんとの間には、それはもうハーレクイン的なロマンスがあったが、需要がなさそうなので割愛させていただきます。


ドゥルシネーア宮

名前は小説『ドン・キホーテ』繋がりでヒロイン?から(Wiki参照)。
見た目だけはほわほわしている儚げ系美人だが、実は腹黒で、いざとなれば手を出したりもする人。
ロシナンテが父親似ってことは、ドフィは母親似?と言う理由で、ドフィの黒さはこの人からと言う捏造設定。
時々発言が原作ドフラミンゴみたいなことになる。
今回の話で亡くなったためこれから先の出番は無いかと思いきや、あとがきの小話であの世から色々ツッコミを入れたり暴れたりさせたくなったので、これから先も出番があることが確定している。
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