麻美アンチの俺が転生したら麻美ちゃんだった件 ―原作通りに進めようとしたら世界が狂った―   作:甲楽わん

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麻美アンチ、麻美になる。

満足度5


転生と彼女⑤ ムスカ

5. ムスカ

佐藤への返答は適当に濁しておいた。

翌日、若干罪悪感があったが、また彼にドイツ語を教えてもらった。おかげでドイツ語の基礎から例年の出題傾向まで掴むことができた。

朝、スマホのアラームが鳴り、眠い目を擦りながらベッドから起き上がる。

ついに、墨とのデートをかけたテスト当日を迎えたのである。

教授の嫌がらせなのか、テストは1限から。

簡単に朝食を済ませ、缶コーヒーを買って大学へと向かった。

テスト会場の講義室に到着。中央の演台では禿げ頭のモウロ将軍が睨みを利かせており、考査前特有の緊張感が広がっている。

普段仲良くしている女子仲間たちが前方の席に陣取っているようだ。その他の同級生も2、3人で小島を作り着席し始めていた。

「七海さん、おはよう」

声をかけてきたのは佐藤だった。

「おはよ。昨日はありがとう。今日は頑張ろうね」

手を振って挨拶をした後、俺は佐藤の後ろの席に付くことにした。

「席に付いた学生は、携帯電話・スマートフォンをカバンにしまいなさい。一切の不正行為は許されないぞ」

試験開始時刻が近づき、モウロ将軍の手から試験問題が配られ始めた。

ここまで来ると、俺には一種の充実感があった。高校と大学を合わせてもこれほど必死で試験に臨んだことがあっただろうか。

全力を尽くした。その事実が俺に自信を与えていた。

試験が始まった。俺は学生番号と名前を記入すると早速問題に取り掛かる。

最初はリスニング。モウロ将軍の読み上げた単語を聞き取って書き込んでいく。

続いては基礎的な文法の問題だ。分かる、分かるぞ。すらすらと解答用紙を埋めて行く。

はははっ!舐めんなよ!こっちは墨ちゃんとのデートがかかってるんだ!ここ二日間本気で勉強してきたんだぜ!俺の愛はもう止められねーぜ!

ところが、第3問に入った途端、俺のシャーペンが動かなくなってしまった。

【問3】

次の数をドイツ語で書け。

1. 110(   )

2. 1,200(   )

3. 3,205(   )

4. 20万(   )

5. 13億3千(   )

待て。100までしか習ってねーぞ。全然分からないんだが…?

これひとつに構っていられない。ここは飛ばすと決めて、次の問いに移る。

【問4】

次の状況に合うようカッコ内の動詞をドイツ語の命令形で書け。

…命令形?そんなのあった?

そうだ。確か佐藤から『過去問ではほとんど出てないし、教授も一言触れていたくらいだから、捨てて良いよ』って言われていた奴。

1, 2, 3…15問!?なんでそんなに?

俺の額からびっしりと汗が噴き出してきた。このままではマズイ。

しかし諦めるわけには行かない。墨とのデートがかかっているのだ。大丈夫だ、俺!残りを埋めれば勝機はある!

【問5】

1. ドイツの祝日“Tag der Deutschen Einheit”の日付を答えよ。

2. ドイツの主要都市を人口の多い順に3つ答えよ。

3. ドイツ北部の伝統料理「Labskaus」について、主要な材料と一般的な作り方を説明せよ。

はぁ?ドイツ語関係ねーじゃねーか!?教科書の隅っこに載ってたコラムから出題するなよ!

クッソ!ダメだ!分からねー!

思考を巡らせるが、全く手を付けていない内容ばかりで、解答のしようがない。

手が止まったまま、試験時間は刻一刻と減って行った。

このままでは、泣く泣く墨とのデートを諦めるか、地獄の補習を受けるか、留年するかである。

皆も同様なのだろう。あちこちから諦めモードのため息が漏れ、もはや講義室は通夜状態。

「残り15分だ」

モウロ将軍がカウントダウンを始めた。

見ると、奴は右手で顎を摩りながらほくそ笑んでいるではないか。

学生の解答を確認してはニヤリ、また確認してはニヤリ。とうとう笑いを堪え切れずクスクスと吹き出した。

そうか。異常に難易度の高いテストは、モウロ将軍の策略。奴は大量の学生を追試送りにし、見せしめにする気だったのだ。

クッソ!さては、モウロのハゲ!わざと解けない問題を出しやがったな!なんて卑怯な!

向こうが卑怯な手を使うなら、それを黙って受け入れるほど俺は馬鹿じゃない。

問題用紙の端を切り取って消しゴムのカバーの下に挟み込むと、それを前の席の座っている佐藤めがけて投げ込んだ。

肩に当たって、床に転がる。

振り返った佐藤に、片目をパチリ。麻美ウィンク♡

それを拾え、佐藤!と念を送る。

「すいません、消しゴム、拾っていいですか」

佐藤が手を挙げて許可をもらい、床に転がったその消しゴムと拾い上げた。

よし!とりあえず第一関門突破である。

紙を開け。俺からのメッセージだ!

《佐藤くん、カンニングさせて♡七海麻美より》

『それは無理だって!』と言わんばかりに佐藤が首を真横に振る!拒否は明確だ。

クッソ!イケメンのくせにケチくせーなぁ!?モウロのハゲの卑劣なやり方に屈するわけいかんのだ!

仕方がない。第2投だ!

次はペンにメモを挟み込み投げ入れる。

《今度デートしてあげるから♡》

またしても、佐藤が首を真横に振る!

クッソ!こういう時に限って無駄に固い奴だな!仕方がねー。これでどうだ!?

第3投!

《水着も着ちゃうぞ!プールデートしよ♡》

佐藤が首を縦に振った!

よしっ!まだ間に追う!

佐藤は周りの様子を一度気にした後、後ろ手に俺に解答を回してくれた。

どりゃー!

一心不乱に佐藤の解答を写す。

佐藤の長身も良い感じに死角を作り、俺の手元はうまいこと隠れている。

よし、行ける!行ける!

FINISH!

残り3分を残して、俺はなんとか解答を埋め終わった。後は早く解答用紙を佐藤に返さなくては。

そう思ったとき、おもむろにモウロ将軍が演台を降り、こちらに向かって進んできた。

奴と目が合い、咄嗟に佐藤の解答用紙を答案用紙の下に滑り込ませた。

は?何で?まさかバレた?

俺の席の真横までたどり着いて、その冷酷な目で上から俺を見下してきた。

一気に冷や汗が溢れ出す。…バレてる、バレてる!

前方の佐藤も気づいたようで、チラリ振り返りモウロ将軍に目をやった。

モウロ将軍は咳払いをし、講義室の中央に設置された時計に目をやった。

いや、違う。そうか。コイツは一番後方の俺から順に解答用紙を回収する気なのだ。

カンニングがバレたわけではなかった。しかし、佐藤の解答用紙はまだ手元だ。

このままでは俺が佐藤の解答用紙を持っているとバレてしまう。

となれば、佐藤もろとも不正行為で試験はパー。追試どころか補講許可も怪しい!

モウロのハゲ!頼むから向こうへ行ってくれ!こっち見るなハゲ!

しかし、講義室中央に設置された時計の針はどんどん進み、残り一分。

もうヤバい。

モウロのハゲは相変わらず俺の横で腕を組み、視線を上げて不正行為を見張っている。

ぐぬぬぬ。かくなるうえは、奥の、奥の、奥の手しかない!

シャーペンを手に取ると、それを足元に転がした

「教授、足元に筆記具が落ちたみたいで。拾ってもらえますか♡」

手を挙げ、教授に目いっぱい笑いかけた。

奴の視線を誘うようにミニスカートの両脚を組み直す。

むふふふふ♡七海麻美のお色気作戦だ!スカートの中だろうが何だろうがサービスしてやるよ!

一瞬で良い。モウロ将軍が目を離した隙をつくしかねー!

焦るな、俺。感情を表に出すな。完璧に演じるのだ。不正行為をしているわけではない、単に筆記具を落として困っているだけの女を。純粋無垢な少女の微笑みを貫くのだ。

「学生番号書き間違えちゃって。早く拾ってもらえますか。教授♡」

「うむ、仕方がない」

教授が俺の足元を覗き込み、頭を下げた。

今だ!

前方の佐藤目掛け、解答用紙を掴んだ右手を目一杯に差し出した。佐藤!ありがとな!受け取ってくれ!

佐藤がそれを掴む。

「教授、ごめんなさい。私の勘違いでした。てへっ♡」

「いや、いや。見つかるまで探さなくては」

このエロ親父は椅子の下に頭を突っ込んだまま中々出てこない。しかも、床に手をついたまま俺の太ももをじろじろと覗き込んでやがる。

君のアホ面には心底うんざりさせられる!(byムスカ)

俺はその手のひらを目掛け、ヒールの踵を振り下ろした。

見せてあげよう、ラピュタの雷を!

「ぎゃああああああああ!」

「ごめんなさーい。教授♡」

ざまぁみやがれ。

こうして俺は、なんとかこのモウロ将軍の理不尽なテストを乗り切ることに成功したのだった。

 




良いように使われる佐藤が可哀想。
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