薬指身体派っす。婚活中っす。   作:薬指身体派

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ラクシアの想起──語らないことによって語られるということ──っす

 

 カリスト先生マジ格好良い。超リスペクト。

 てわけで薬指身体派スチューデント、ラクシアっす。

 

 いやー両親死んだ時は人生終わったと思ったっすけど、薬指に保護してもらえて本当助かったっす。

 てか何なら芸術とか好きだったし?

 意外と良いとこ行けるん?みたいな。

 

 カリスト先生の腕のデザイン超良いんすよね。

 生で見たらマジ凄くて、前腕骨を模した金属フレームが腕の回転に合わせて滑らかに捩れる様!

 

 人体の中で合理性を教えてくれる最も明瞭でキッチュな部位であるそこを骨格のみで表し、金属の滑らかさと光沢で”回転”を艶美に見せつけるデザイン!

 

『肉体には不要な装飾があまりにも多い』としたカリスト先生の美観を示す素晴らしいものでしたっすねえ!

 

 しかもあれ、最高傑作ティビアの額縁に過ぎない義体であれっすよ!

 マジヤバいっす!

 

 ちなみに違法建築物のセンスは最悪っす。

 なんだあの屠殺。

 

 でまあ薬指身体派なんすけど。

 薬指ってのが芸術を求めて人体作品とか実験とかしてるとこで。

 身体派ってのが人体わちゃわちゃして作品を作ろうねーって派閥なんすね。

 

 で身体派って落ち目の派閥なんすよね。

 もう滅茶苦茶斜陽。

 なんで凋落中の身体派になったかって?癖っす。

 

 あ、材料発見。

 

「お姉さん美人っすね。

 こっから飯行くんすけど一緒にどうっすか?

 できれば沢山会話して分かり合いたいなーみたいな」

 

「それで良い感じになって付き合って、まあ喧嘩とかも沢山するっすよね。

 でも結局仲直りして。

 そのうち良い感じになって結婚したりして」

 

「そんでもってある日俺が不幸な事故で死ぬ方がマシな感じになるんで、お姉さんは俺を加工して武器にして、ずっと一緒に戦うんすよ。どうっすか?」

 

「あ、逃げるなっす。

 お姉さんが傷むじゃないっすか。

 綺麗な脚なのに……」

 

「捕まえたっすよ。

 嗚呼、素敵な笑筋が台無しっすね……。

 大丈夫。まだ美しくできるっすからね。

 一旦寝るっすよ。」

 

「んしょ。なんで婚活うまくいかないっすかね……」

 

 いやー婚活駄目駄目っすね。

 何が悪いんすかね。まあ材料増えたんで良しっす。

 プロフ悪くないと思うんすけどね……。

 

 

  名前:ラクシア

  年齢:推定10代後半

  職業:薬指身体派スチューデント

  趣味:声帯の摘出

 その他:顔はカリスト似ってよく言われるっす。

     趣味重視!

     俺を武器にしてくれる人だと良いな。

 

 

 何が悪いんすかね?

 やっぱ戦える子限定なのが高望みっすかね。

 でも俺が死んだ後武器にして欲しいし。

 

 自分を使った作品はよくやるっすけど、愛した人に加工される痛みと喜びを脳で感じたいんすよね。

 できたら生きている状態で加工して欲しいっすね。

 

 あ、悲しんで涙とか流してくれたら最高っす。

 外気に晒された肉の痛みと、そこに溢れた涙が沁みる言い難い喜び。

 いつか、いつかそんな日が来たら嬉しいっす。

 

 薬指で婚活できたら楽だったんすけどね~。

 なんせ時代遅れの芸術の派閥っすから。

 

「ねえねえホントに身体派なのー?」

「そうっすよ」

「キャッハハ聞いた聞いた?身体派だってー!」

「ウケるー!もう終わりの潮流なのにねー?」

「ちょ言い過ぎー。でも試験突破したんしょ?作品とか見せてよー?」

 

 みたいな扱いっす。

 折角なので手持ちの材料に加えて彼女の少し飛んでいた唾液と毛髪で即興作品を作って

 

「タイトルは君達の名前っすよ」

 

 って渡してから距離遠くなったっすね。

 後日聞いた感想は悪くなかったんすけどね。

 

「美観は分かりました。生理的に無理ですが、芸術的には評価します。なまじ捨てられないのが苦痛です。ラクシアさんのギャラリーに置いてください。タイトルは変えて」

 

 それからずっと敬語っすよ。

 やっぱ身体派ってだだけで距離置かれるんすよねー。

 

 じゃあ身体派で婚活すればって?

 それも身体派の凋落のせいで駄目なんすよ。

 身体派って同期に俺入れて二人っすよ二人。

 

 まあ同期のアルビナちゃん可愛いんすけど、色々あって俺のこと材料としか見てないし。

 初対面で偽名教えてくるし。

 

 それにあの子の美観で、あの子が作りたい作品を作っちゃうだろうから。

 

 勿論、愛した子の美観で作られるのは受け入れる度量は持ってるっすよ。

 でもアルビナちゃんはアルビナちゃんで作る武器が第一になるっすから。

 俺はサブウェポンになっちゃうっす。

 しかも作成中に悲しんでくれない。

 

 婚活って難しいっすねー。

 

 

 

 

 

 

 着いたっす。

 ここが俺のメインのアトリエっすよ。

 カリスト先生から借りてるっす。

 

 やっぱアトリエは白に限るっすねー。

 血の色が映えて材料の持ち味を吟味しやすいっす。

 最初に材料を連れてくるなら絶対白い部屋が良いっすよ。

 

 興味深い素材は黒いアトリエにも持っていって陰影の混ざった感じとか見るっすけど、今日の素材はどうなるっすかね。

 

 んー。やっぱ足と笑筋は良い感じっすね。

 この感じの足は重い物振り回すタイプっす。

 今は動いてないっすけど、逃げ始めの筋肉の躍動は素晴らしかったっす。

 

 眼も良いっすね。チープっすけど。

 ただ眼球としての美しさってよりは、まぶたの形を含めて平面的に評価した時の良さって感じっす。

 

 人体って立体っすから、これをどう平面として見せるかは腕の見せどころっすよ。

 

 後は、触った感じ背中は期待大っすね。

 僧帽筋が発達してると力強い作品に仕上がりやすくなるっす。

 

 勿論、あえて嫋やかな雰囲気を演出する方向でも良いっす。

 その場合は背景的な使い方っすね。

 面積が広いって良いことっす。

 やっぱ平面向きの素材っすね。

 

 じゃあちょっと製作工程見せちゃうっすよー。

 まずは檻に突っ込むっす。

 で自然な目覚めを待つ。

 

 待ってる間は、基本的に檻の前の椅子に座って材料を見てあげるっすね。

 材料を線で見たり、平面で見たり、陰で見たり、ちょっと観念的に捉えたりするっす。

 

 ここで拡張義体の出番っす。

 第三の目みたいなもんっす。

 身体派は義体が多いっすけど、俺は普段は生身っすから、拡張義体を使うっす。

 

 この義眼のヴィ君が空中に浮くっすから、色んな角度から見られるってわけっす。

 視覚だけじゃ材料の観察として十分じゃ無いっすから、もう少し作品が売れたら嗅覚と聴覚も足したいっすね。

 

 あ、そろそろ起きそうっすね。

 

 まぶたが上がってすぐに腰を触ったっすね。

 動作としてはちょっと良い感じっす。

 見たっすか今の足!

 あの足全体が力強い印象を与えるっすね。

 素晴らしい。

 

 ふむ。考えるときはこのポーズなんすね。

 下を向いて口に力を入れてるっすね?

 あ、まずいっす。

 

「ああもう駄目っすよお姉さんー。

 舌を噛み切っちゃったんすね。

 本当に勿体ない。駄目っすねこれは。

 お姉さん舌治したら眼を潰すタイプっすか?」

 

「嗚呼本当にやるんすか。

 これじゃ無理っすね。解体っす。

 あ、その勝ち誇った感じの顔、美しいっすね」

 

「ほら暴れないでくださいっす。

 我慢っすよー。

 血が余計に出ちゃうじゃないっすか。

 ほんとベッドの上で解体できて良かったっす。

 柔らかくないとぶつけて傷んじゃうっすからね」

 

「カリスト先生は解体と製作を一工程の内にやるっすよ。

 バラしながら組み立てるっす。

 これが出来ると鮮度が落ちず、かつ沢山作品を作れる。

 暴れて傷んだ素材が出来たら、すぐにそこから別の作品に変えられる。

 写真みたく、一瞬一瞬を切り取るように作品に落とし込むっす」

 

「開いてみたら胸水素敵っすね。

 丁度作品の装飾が足りていなかったんすよ。

 やっぱお姉さんだけで構成できるとナラティブが強いと評価されるっすからね。

 俺としてはナラティブは要らないっすけど、売れなきゃやっていけないとこはあるっす」

 

「やっぱ無しっす。ナラティブ気にせず行くっす。

 ナラティブなんざ無かろうが、美しいものは美しい筈っす。

 惰性の作品は駄目っすね。

 作品の一部が言葉に変わってしまうなんて、俺は許さないっす。

 作品を作品以外が語る必要は無いんすから」

 

「余計な装飾なんて無くても美しいものに、して差し上げるっすよ」

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