産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった   作:ぷに凝

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20 なに言ってんの?

「“代表”の件は許可しよう。むしろ、こちらからお願いしたいくらいだ。あのプリムノヴァに直接やってもらえるなら、こちらとしてもありがたい」

 

 茶を飲みながら、誠也さんはあっさりと今回ヒロトとジンが訪問した理由を承諾してくれた。

 

「いいのかよ?」

「ただし、だ。これはヒロさんよりも……ジン。お前の責任が増えるという話なんだからな」

「?」

 

 ヒロトは首を傾げる。

 

 “代表”になるのはプリムノヴァ……もといヒロトだ。それがなぜジンの責任が増えるという話になるんだろう。

 

「ジン、お前がこの話を持ってきたということは、当然ヒロさんとはパーティを組んで一緒にやっていくということだろう?」

「え?」

「当たり前だ。こいつ一人にやらせるなんて危なっかしい真似出来るか」

「えぇ!?」

 

 初耳なんですけど。

 

「話に聞く限り、ヒロさんは冒険者としてとても強い。それにお前のような半端者がついていけると思っているのか?」

「……これから強く」

「“これから”? なにを寝ぼけたことを言っている? もう彼女は冒険者として立派にやっているんだぞ? なのにお前は“これから強くなります、頑張ります”か? 話にならん」

 

 ジンがわずかに目を伏せると、誠也さんが身を乗り出してあまりにも辛辣なことを言い出したのでギョッとする。

 

「ジン。彼女を狙っているのが誰かお前はわかっていない。強さ、権力、影響力。それら全てをすでに持っている男だ。そんな男に“欲しい”と思わせるのが彼女なんだぞ?」

「……」

「半端な覚悟で言ってるなら、もうお前はヒロさんには関わらない方がいい。大人しく力のある大人に任せて指をくわえて見ていた方がマシだ。彼女が駆け上がるのをな」

「ちょ、ちょっと誠也さん? 流石に……」

「すまないが、ヒロさん。口を挟むのはよしてもらおう」

 

 流石に言い過ぎ、と割り込もうとして。

 

 温和な言い方に反して鋭い目つきの誠也さんに睨まれて硬直する。

 

「この半端者を助けていただいたことについては、感謝の念に絶えません。必ずやなんらかの形で、このご恩は返させていただきたい。ですが、ただ助けられただけで飽き足らずあなたの人生に関わりたいというなら話は別。覚悟がなければいけません」

「た、ただ助けただけじゃ、ないです。ジンには私も助けてもらって……!」

「やめろ、ヒロ。親父の言う通りだ」

「ジン?」

 

 “プリムノヴァに一方的に助けられただけで、ジンは何もしていない”。

 

 言外にそう言われた気がして、流石にムッとしたヒロトは誠也さんに反論しようとして。

 

「そうだ。俺はしょうもない人間だ。プリムノヴァの人気に嫉妬して、親父のダンジョンを自分で盛り上げられないのが悔しくて……だから、プリムノヴァを見つけてこう言ってやるつもりだった。お前は大したことないってな」

「え、そうだったの?」

 

 初めて聞いたんだけど、その話。

 

「……自分の愚かさを正直に認めたことは評価してやろう。だが、認めただけでは何も変わらん。立場を弁えただけのこと。普通の人間はそこで終わる。住んでいる世界が違うと実感して終わりだ。それで? お前はどうする?」

「……プリムノヴァを支えたい。こいつが冒険者として活動する手助けをしたい」

「それはさっき聞いた。身の丈に似合わん野望だな。で? 実力も、知識も、経験も足りない。これからそれらを補うのでは間に合わない。話の繰り返しだな? あとは覚悟の話だが、お前にどれほどの覚悟が……」

「プリムノヴァに、人生を捧げる」

 

 そう、ジンが言った瞬間。

 

 しんと室内が静まり帰った。

 

「えっ」

 

 一瞬遅れて、ヒロトは言葉の意味を理解する。

 

 い、いや理解はできてない。今なんて……。

 

「俺の人生をこいつに捧げる。あらゆる人生の時間を、こいつのためだけに使う」

「……言ったな?」

 

 誠也さんがニヤリと笑った。

 

 なに笑ってるんですか?

 

「半端者の人生を捧げただけで手に入るほど、彼女は安くないぞ?」

「知ってる。こいつよりいい女を俺は知らない」

「ぶふっ!?」

 

 なに言ってんの??

 

 ねぇ待って。マジでなに言ってんの??

 

「随分惚れ込んだみたいじゃないか。今まで愚直にダンジョンに潜るしかしてこなかった男が。そんなつまらん男にヒロさんのような魅力的な女性が、いつまでも付き合ってくれると思うなよ?」

「わかってるっての。みなまで言うな」

「わかっていないさ。わかるのはこれからだ」

 

 さっきからずっと、この二人は何の話をしてるんだ。

 

「だが、覚悟だけは一丁前だと認めてやろう。何もかも足らんが、足らんを補うための目標は見据えている。それを決して見失うな」

「……」

「試験を与える。今週末、東迷宮小学校の子供達が迷宮を見学する。お前とヒロさんにはその引率をしてもらう」

「引率……?」

 

 誠也さんは「そうだ」と言って一枚の紙を取り出した。

 

 “東迷宮小学校 ダンジョン見学プログラムのご案内”と書かれたしおりのようだ。

 

「潜るのは3層まで。充分なモンスターの間引きを行った状態で1時間。10名の子どもたちにダンジョンを見学してもらう。ジン、お前は“現役の冒険者”の視点から子供達にダンジョンのことを教えるんだ」

「えっ、楽しそう!」

「めんどくせ……なんでもないです」

 

 嫌な顔をしかけたジンが、ヒロトと誠也さん両方から圧のある視線を向けられて黙る。

 

「ヒロさん。あなたには前半は子供達と一定の距離を取ったまま、彼らを見守っていただきたい。ただ、プログラムの後半。アクシデントが起きてモンスターの群れが子供たちの前に姿を現します。絶体絶命のピンチです。しかし、そこに現れるのが……」

「まさか!?」

「噂の魔法少女、プリムノヴァです」

「キッター!!」

「テンションたけぇな」

 

 これでテンション上がらない奴があるか!

 

 超リアル版ヒーローショーじゃん!!

 

「実際には、モンスターはテイムされた無害な個体ですがね。モンスターを一掃したプリムノヴァには、残り時間が許す限り子供達と交流してもらいたい」

「任せてください!」

「うっかり変身時間越えたりするなよ」

「私を誰だと思ってるのかね?」

 

 今まで、仮にもリアル魔法少女をやってきた男(?)だぞ。

 

 心配ご無用だ。

 

「子供たちの夢を壊さず、かつ正体を隠し通したまま、傷一つつけず守り抜く。これが達成できたら、ヒロさんを代表冒険者として推薦し、ジンが彼女と組むことを認めましょう」

「正体を隠したまま活動を続けられるか見極めるってか」

「その通り。彼女の素顔が知られれば、私生活を普通に送ることは難しくなる。それ程までに、プリムノヴァは注目を集めてしまった」

「そんなにですか……?」

 

 誠也さんは深刻に言うが、まだ実感が湧かない。

 

「モンスターハウスも、ユニークモンスターも、別に前例がないわけじゃないし。そんなに騒ぐ必要があるとは……」

「……ジン。ヒロさんはこういう認識だ。お前がしっかりしなさい。わかったね」

「あぁ、身に染みてるよ」

「???」

 

 なんで、そんな“これだからこいつは”みたいな視線で見られる?

 

「……あぁ、そうだ。ヒロさん。あなたに幾つか許可を取りたいことがあるのですが」

「? はい、なんでしょう」

 

 下着見せてとか言われても困りますよ。

 

 面白みのないものを身につけておりますので。

 

「今後、プリムノヴァを宣伝する上でパブリックイメージは大事にしなければならない。二次創作の類はすでに散見されるが、公式に権利関係をハッキリとさせておきたいのです」

「ふむ?」

「“代表冒険者”就任後は、プリムノヴァの公式ビジュアルブック、ブロマイド、フィギュア等の立体物の商業展開も視野に入れておりまして」

「はい?」

「つきましては、今後の商品展開に関する肖像利用契約を結ばせていただきたいのですが」

「……」

「親父……」

 

 ……。

 

 なんの話??

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