産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった   作:ぷに凝

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22 再会

「いつもすまないね、セラフィナ嬢」

 

 暖炉の火が照らす薄暗い室内。

 

 そこで、二人の男女が密会をしていた。

 

「構いませんよ。聖女としての務めです。誰であろうと、救いの手は差し伸べられるべきですから。ただ……」

「んーッ!! んーーッ!!」

「蘇らせた人をその場で吊るされたのは、初めての経験ですね」

 

 ジャラ、ジャラと。

 

 鉄の鎖と拘束具が立てる音が不規則に鳴り続け。

 

 その鎖に繋がれ、天井から逆さまに吊るされた男……カスパルが、目を剥きながら暴れていた。

 

「はは、うるさくてすまないね。この男は忠誠心が強く、優秀なのだが今回は失敗してしまってね。おかげで、カワサキダンジョンの迷宮騎士団は人員再編を余儀なくされてしまった」

「それでこの見せしめですか?」

「まさか。これから水責め、火責め、鞭叩きと罰はいくらでもある。こんなのただの序の口さ」

 

 笑いながら言う目の前の男に、聖女セラフィナは何も言わない。

 

 大きな火傷を負った左手でワインを口に運び、無表情で飲み下す。

 

「ルシファー、あなたの趣味に口を出すつもりはありませんが……わかっていますよね? 遊んでいる時間はあまりないですよ」

「あぁ。だからこそ、今回の件で例の魔法少女……プリムノヴァに警戒されてしまったのは痛手だったと言えるね」

 

 プリムノヴァ、とセラフィナは口の中でその言葉を転がす。

 

「突然現れ、脅威的な実績を上げ続けている冒険者だ。私の部下の中でもかなりの実力者であるカスパルも下した。世間には知られていないがね。そして、直接会ってみた感覚としては……」

「期待できそうですか?」

「そんなものじゃない。あれはまさしく、人類の希望になるよ」

 

 セラフィナは目を見開き、驚く。

 

「あなたがそこまで個人を高く評価するとは、意外ですね。もしかして少女趣味ですか?」

「ふふ、そうだったら話は簡単だが……彼女はね、ユニークモンスターのコアを直接体に取り込んだのだよ」

「……は?」

 

 セラフィナが唖然とした顔で固まる。

 

 何を言われたのか分からなかったからだ。

 

「ま、待ってください。コアを取り込んだ……? それでまだ彼女は生きていると?」

「それだけじゃない。そのコアの力を取り込み、スキルを進化させたんだ。そして飛躍的な能力の向上を見せたんだよ」

「……にわかには信じがたいです」

 

 セラフィナが深刻な顔で考え込む。

 

 その話が本当なら、世界の常識を覆すことになる。

 

「それなのに軽はずみな行動をとって、敵対したのがこのカスパルなんだ。まったく頭の痛い話だよ。彼女と友好的な関係を築けていれば、今頃どれほどの利益を得られたか」

「そんなことを言って、どうせ彼の動きには気づいた上で黙認していたのでしょう? プリムノヴァを連れてくることが出来るならそれでいい、と」

 

 セラフィナの対面に座る、金色の長髪を肩から流す細身の男……ルシファーは肩をすくめた。

 

 女性と見紛うほどの美貌と、甘い声。冒険者としての圧倒的な実力。彼に入れ込み破滅する女性が多いという話も頷ける。

 

 そこには容姿だけじゃなく、彼の持つ『スキル』も関係しているとセラフィナは睨んでいるが。

 

 彼は自分の能力を決して他人に漏らさないことでも有名だ。それこそ、部下にでさえ。

 

「ともかく、プリムノヴァは是が非でも我が陣営に引き込みたい。彼女を囲った者が冒険者として大きくリードを取る。そういう段階だよ今は」

「……それを、“勇者の妻”である私に話すのですか?」

「ははっ、面白いことを言うね」

 

 ずいっとルシファーは身を乗り出した。

 

「彼はもう動いているだろう? プリムノヴァを獲るために」

「……」

「一手、遅れを取ったことは認めよう。だがすぐに取り戻すさ」

 

 ルシファーは立ち上がり。

 

 セラフィナの無傷な方の肩に手を置いて去っていった。

 

「勇者によろしく言っておいてくれ、奥さん」

 

 カツ、カツと地面を叩くブーツの音が消えて。

 

 静かになった。

 

「……ふぅ」

 

 それを確認して、大きく息を吐くセラフィナ。

 

「コッワ〜……あとでまーくんによしよししてもらお」

「んーッ!!」

 

 セラフィナの憂鬱なため息と。

 

 放置された鎖の音が、部屋に響いていた。

 

 

「ぶぇっくしょん!」

 

 盛大なくしゃみ。

 

「どうしたヒロ。風邪か?」

「誰かが噂してる〜……」

「まぁ、それはそうだろうな」

「否定して!?」

 

 ずびび、と鼻をかみながらジンのツッコミにゾッとする。

 

「そ、そっか。そりゃ噂はされるか……なんか怖いんだけど」

「慣れとけ。どうしたってお前は注目される」

「やだなぁ〜」

 

 げんなりとしながら、フードを被る。

 

 ダンジョンに潜る時は定番の、いつも通りのパーカー姿。

 

「うん?」

 

 だったのだが。

 

「な、なんか……キツイんだけど……」

「そりゃお前、前より背伸びたしな。サイズ合わなくなってんだろ」

「いや、背伸びた後に新しく買ったんだよこれ? なんで急に……」

 

 スキル進化の影響で身長が伸びてから、女性用の服をいくつか買った。

 

 それらは全て今に体型に合わせて買ったものだから、キツくなるなんてことないはずなんだが。

 

「……ヒロ、お前さ」

「え、なに?」

 

 ジンがじーっと私の全身を眺めて。

 

 口をもにょもにょと動かした。

 

「言いづらいんだが」

「いや、そこまで言ったなら言ってよ。気になるじゃん」

「……怒るなよ?」

「怒んないよ?」

 

 ジンが意を決したように口を開く。

 

「胸の辺り、苦しくなってねぇか?」

 

 ……。

 

「は?」

「怒んないっつったろ!」

「程度によるだろ……」

 

 拳を握り締める。

 

 このジンとかいうセクハラ男に、怒りの鉄槌を……。

 

「……」

 

 の前に、一応確認がてら自分の体を見下ろす。

 

 押し上げられたパーカーが、足元を隠していた。

 

「えっ」

 

 驚き、ヒロトは慌ててパーカーの前のファスナーを開けて確認する。

 

「うおっ」

 

 ジンが驚く。

 

 そこには。

 

「……おっきくなってる」

 

 シャツを押し上げて、明確に丘の形を形成している胸部があった。

 

 この前までは、服越しに僅かに膨らみがあることがわかる程度だったのに。

 

「な、なんで急に」

「し、知るかよ。スキルの効果だろ……ってか早く隠せ! これから子供が来るんだぞ!?」

「う、うん」

 

 慌ててファスナーを閉めて体を隠す。

 

 ジッパーを上げる際、ほんの一瞬抵抗があったことは気づかなかったフリをする。

 

「お前、これからダンジョン入るのに変なもん見せるなよ……」

「へ、変じゃないし……発育良いだけだし……」

「いや、男だろお前……?」

「まぁ、そうなんだけど」

 

 そう、ヒロトは男だ。

 

「……なにか、体の成長が早まるような条件があるのかな……だとしたら原因は……」

「あっ、おい来たぞ」

 

 ヒロトが顎に手を当てて考えていると、転移門から小さな人影といくつかの大きい人影が現れた。

 

「わ〜! ダンジョンだぁ!!」

「くら〜い! ジメジメしてる〜!」

「ちょっと怖い……」

 

 小さな人影は、10歳前後と思われる子供たちが5名。

 

「あっ、二階堂さんでしょうか?」

「はい。東迷宮小学校の皆さんですね。初めまして、冒険者の二階堂仁です」

「大森ヒロです」

「初めまして。5年2組の学級担任を務めております。坂井です……お二人とも、随分お若いんですね?」

 

 大きな人影は担任の先生。優しそうな男性教諭だった。

 

「えぇ、確かにまだ未熟者ではありますが、仕事はしっかりとさせていただきますので、ご安心ください」

「是非お願いします。現役の冒険者の方が守ってくださるなら心強い。特に、そちらの……」

「? 私ですか?」

「はい。あなたが、もしかして……?」

 

 坂井さんが期待を込めたような目で見てくる。

 

 なに?

 

 なにのなに??

 

「はい。彼女がプリムノヴァです」

 

 あ、そういうことか。

 

「おぉ……! この子達は、プリムノヴァが本当に大好きでして。お会いできて光栄です」

「アッハイ」

 

 差し出された手を握って握手する。

 

 ……なんか、すっごい照れるんですけど。

 

 てゆーか。

 

「あぁ……プリムノヴァ、今日は何をしてるんでしょうか……!」

 

 約1名。

 

 見覚えがある人がいるんだけど。

 

 何してんの、ヒカルくん??

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