産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった   作:ぷに凝

23 / 23
23 はじめてのだんじょん

「二階堂さん、お聞きしましたよ! あなた、プリムノヴァに出会ったことがあるんですよね!? 噂では最近のプリムノヴァは少し姿が変わったとか!? いやぁ見たいなぁー! あ、ちなみにプリムノヴァが使用している武具ですけど、あれ実はとある優秀なエンジニアが開発したものだって知ってます? いやー、誰なんでしょうねーあんなデザイン的にも性能的にも彼女にピッタリのものを作ったのは──」

「ウン、ウン、スゴイナ」

 

 ダンジョン見学が始まって早々。

 

 ヒカルくんはキラキラとした目でジンに近寄ると、ものすごい勢いで話し出した。

 

 ジンは笑顔を貼り付けながら死んだ目でヒカルくんの話を聞いている。

 

 ヒロトの存在……というか正体には気づいていないようだったので、遠くの方からバレないように二人の様子を見ていた。

 

「ヒカルくん元気そうだなぁ」

 

 神谷(かみたに)ヒカル。

 

 多数の大手企業の経営を担う“神谷グループ”の御曹司であり、ヒロトにプリマスターフィストとプリマスターロッドの二つの武器を譲ってくれた恩人でもある。

 

 なお、小学5年生だ。

 

 東迷宮小学校だったとは知らなかったけど。

 

 ぶっちゃけ、いつかお礼をしたいとは思っていたんだけど、本人のプリムノヴァへの熱が凄すぎて中々近付くタイミングがなかった。

 

 あの時はまだ10分しか変身時間がなかったし。

 

 だけど今日は話す時間も取れそうだし、改めて前のことについてのお礼を言っておこう。本人もプリムノヴァに会いたがっているようだし。

 

 ……時間内で話を終えられるかは微妙だけど。

 

「おい、そこの女冒険者」

「……」

「聞いているのですか? それとも、耳にカスでも詰まっているのですか?」

「え、私?」

 

 そんな風にして歩いていると。

 

 ヒロトのそばに、いつの間にか小さな女の子が立っていた。

 

「お前以外に誰がいるのですか? 女、かつ冒険者の条件に合致するのはお前だけなのですよ」

「はぁ……」

「全く論理的じゃないのです、お前。そんなんで冒険者がやれるのか心配なのですよ、お前」

 

 な、なんだろうこの子。

 

 迷子?

 

 白衣を着て、髪をアップにまとめている女の子だった。

 

 そして、言動がクソほどムカつく。

 

 これはいわゆるメスガキってやつ? よく知らないけど。

 

「お前、ひーくんと話してるあの冴えない感じの冒険者とはどういう関係なのです?」

「ひーくん?」

 

 誰のことだろう。

 

「ひーくんはひーくんなのですよ、お前」

「あ、もしかしてヒカルくん?」

「そうなのですよ、お前。ワタがつけた素敵な呼び名なのです、お前」

「ワタ」

 

 なんか、胃もたれしそうなくらい濃いキャラ付けをしてるなぁ。

 

「君は?」

「ワタは博多瀬奈(はかたせな)なのです。ハカセと気軽に呼ぶことを許すのですよ、お前」

「ハカセ。白衣着てるから?」

「着眼点がいいのですよ、お前。この白衣は博識の証なのです、お前」

 

 むふー、と鼻息を吐いて自慢げなハカセを名乗った女の子。

 

 この子も東迷宮小学校なんだろうけど、ヒカルくんといい、この子といい。

 

 最近の小学生は皆こんな感じなのか?

 

「それで? 答えるのですよ、お前。あの男とどういう関係なのです」

「どうって……友達兼、仲間って感じかな」

「ふむ。彼氏ではないのですか」

「違うよ?」

「なんだ。紛らわしいのですよ、お前」

 

 がっくりと肩を落とすハカセ。

 

 紛らわしいって言われてもね。

 

 そもそもヒロトは男だし、ジンも男とわかってる相手と付き合いたいとは思わないでしょ。

 

「ひーくんがあの男とばっかり話すから、ワタは退屈なのです。モンスターも全然出ないし、デートだと思ったのに面白みがないのですよ」

「ヒカルくんのことが好きなの?」

「は? ただの友達なのですよ、お前」

 

 髪をファサッとかき上げて言うハカセに、ヒロトは苦笑してしまいそうになった。

 

 言動は少しおかしいが、この辺は年相応らしい。

 

 どう見ても好きなのに、ただの友達って言い張ってるなんてね。

 

 そんなんじゃそのうち誰かに取られちゃうよ?

 

「お前があの男の気を引いてくれれば、ワタがひーくんと話せたのですが……アテが外れたのです。お前を見る視線がいやらしかったのでそういう関係かと思ったです。ただのエロ男だったのです」

「ヒカルくんと話したいなら……プリムノヴァの話すれば? その話題なら喜んで話してくれそうだけど……」

「あのババアの話をすんじゃねーです!」

 

 その方がこの後の展開も盛り上がるだろうし、と打算込みで提案すると。

 

 予想外の罵倒を喰らって体がピシリと硬直した。

 

「バ、ババア……?」

「そうなのです! プリムノヴァとかいうあのババアは、ワタからひーくんを奪いやがったのです! 冒険者のくせに、あんなヒラヒラの服着て……! 気持ちわりぃんですよ!」

「き、気持ち悪い……」

 

 グサグサ、と言葉の暴力が突き刺さる。

 

 いや、まぁ確かに最初はヒロトも頭おかしいんじゃないのかこの服とは思ってたけど。

 

 こ、子供ゆえに遠慮がない直接的な罵倒が……。

 

「まさか、お前もあのババアのファンなのです?」

「え? い、いや。私は……どうかなぁ……?」

「忠告しといてやるのですよ、お前。あの女は絶対性格悪いのです。どうせ裏で色んな男引っ掛けて遊びまくってるに決まってるのですよ。ビッチなのです、ビッチ」

「は、はは」

 

 ものすごい言われよう。

 

 なんか、この感じ最初のジンを思い出すなぁ。

 

 っていうかこの子、語彙豊富だな。ヒロトより悪口のレパートリー豊富なんじゃないか。

 

「大体、プリムノヴァは強いって話なのです。このダンジョンにいる他の冒険者よりずっと」

「まぁ、そうみたいだけど」

「それなら、なんで姿を隠しているのです? 他の冒険者と協力すれば、もっと効率的にダンジョンを攻略できるのです。力を持っていてもそれを自分のためにしか使わない、所詮は偽善者なのですよ」

「……」

 

 偽善者。

 

 その言葉に、思わず言葉が詰まった。

 

「チヤホヤされて、気持ちよくなってるだけなのです。本物の冒険者ではないのですよ。なのに皆、あんな女をすごいすごいと持ち上げて……下らないのです」

「……そうかもね」

「おっ、お前もそう思うのです? 中々見所があるのです、お前」

 

 腰に手を当てて笑うハカセを見ながら、ヒロトは自分の手のひらを見つめる。

 

 武器なんて持ちそうにない、細くて綺麗な手がそこにあった。

 

「本物の冒険者じゃない、ね」

 

 

 今から数百年前のこと。

 

 地表にはいくつもの大穴が開き、そこから大量のモンスターが湧き出て地上を埋め尽くしたという。

 

 人類が使う科学兵器は、モンスターに対して無力だった。

 

 たちまち、それまで地上を制覇していた人間の勢力圏は当時の10分の1ほどまでに削られ、数十億と言われた総人口は1000万人程度まで数を減らした。

 

 人類史の暗黒時代だ。

 

 モンスターに追い詰められ、希望もなく、助け合うどころかわずかな食糧や資源を奪い合って数を減らしていく人類。

 

 その時、モンスターを倒す力を持った一人の英雄が立ち上がり、絶滅寸前にあった人類を導いたという。

 

 一説では、この時立ち上がった英雄──初代勇者が発揮したのが、人類が獲得した最初の『スキル』なのだという。

 

 人類は彼を旗印に結束して、徐々にモンスターに奪われた勢力圏を取り戻していった。

 

 勇者はモンスターが湧き出る大穴の上に、石と鉄で出来た塔を建てた。

 

「それが現在の“ダンジョン”となっており、我々冒険者の本来の役目とは、ダンジョンを遡って地上へと進出してくるモンスターを食い止めることに……」

「つまんなーい!」

「そんなの皆知ってるー」

 

 地面に座ってぶーたれる子供達。

 

「プリムノヴァの魅力は、なんと言ってもあの星が輝く目ですよね! 知ってます? プリムノヴァって魔力が高まるとあの目が魔力光で光ってですね、それがプリムノヴァの動体視力を向上させていると僕は睨んでいるのですが──」

 

 耳元で永遠に講釈を垂れ続ける金髪の子供。

 

「……ヒロ、助けてくれ」

 

 それらの災害に見舞われながら。

 

 ジンは、遠くからこちらを見守っているはずの少女に助けを求めた。

 

 しかし、誰も現れなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ヒロイン矯正!(作者:アールエー)(オリジナルファンタジー/コメディ)

乙女ゲームのモブ娘に転生したおっさんが、持ち前の拳法と知識を使い、平穏に生きようとしていた。しかし何の因果か同じくヒロインに転生した女の子と出会ってしまい、シナリオを知り尽くしたと思い上がったヒロインを叩き直す物語。▼ちなみに、おっさんは原作ゲームの知識ゼロ。▼性転換おっさんは作者の趣味で、必然ではない。作者の心の中では必然だが。▼精神的BLは念のため。そこ…


総合評価:528/評価:8.53/連載:39話/更新日時:2026年06月21日(日) 18:00 小説情報

TS転生美少女が男友達ムーブして幼馴染の情緒を破壊する話(作者:寿司鮓)(オリジナル現代/恋愛)

男友達だと思ってた幼馴染が実は女の子で再開したら美少女になってたムーブを自然にしてたTS転生者ちゃんさぁ。


総合評価:2258/評価:8.44/連載:6話/更新日時:2026年03月13日(金) 07:16 小説情報

TS転生外宇宙系魔法少女ダークネス・ルーシィ(作者:イア! イア!!)(オリジナル現代/ホラー)

SAN値直葬系マスコットとそれを心から愛する転生者(正気)の日常。▼※序盤とタイトルを書き直しました。▼気分転換に書いた作品を投稿欲を満たすために投稿してみます。▼続き書いたら増えます。


総合評価:1443/評価:8.47/連載:13話/更新日時:2026年06月19日(金) 18:06 小説情報

ニチアサ系世界に転生したTS魔法少女は悪の幹部をやりたくない(作者:なはた)(オリジナル現代/冒険・バトル)

▼フィジカルよわよわなTS銀髪魔法少女がクール系敵幹部を必死に装いながら魔法少女達と戦うお話。


総合評価:2610/評価:8.39/連載:9話/更新日時:2026年06月17日(水) 16:43 小説情報

ニチアサ系で禁断の『主人公勢洗脳闇堕ち全滅エンド』を目指したい(作者:匿名希望)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

ニチアサ系変身ヒロインアニメの世界に、主人公の双子の姉としてTS転生した朝霧夕陽(あさぎりゆうひ)。原作主人公勢の活躍を特等席で見ることができる! と喜んでいたのだが――悪の組織に勧誘(洗脳)されて、理性のブレーキがぶっ壊されてしまう(なお、洗脳自体はすぐに自力で解除した模様)。▼「見守りたい」という純粋な想いは歪んでいった。▼これは禁忌とされるバッドエンド…


総合評価:619/評価:8.24/連載:5話/更新日時:2026年06月20日(土) 20:05 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>