産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった   作:ぷに凝

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29 すごくえっちな話になってきた

「お前に寄生したのは“堕落蟲(だらくちゅう)”。人を“魔性化”させるモンスターだ。ま、モンスターにするモンスターってとこだな」

「モンスターにするモンスター……」

「ちなみに堕落蟲ってのは通称だ。正式名称は“魔幼虫”」

 

 ベッドの端に腰をかけながら、真剣な声でそう語る銀髪少年。

 

「主に冒険者を捕まえて、体内に毒液を噴射する。毒は数分で体を回り、発熱や疲労、気絶などを引き起こす。この時点ではまだ症状は軽いが、問題はその後だ」

「その後……」

「2週間程度の時間をかけて、ゆっくりと冒険者を“魔性化”させていく」

 

 ヒロトはとりあえずと渡されたバスローブを体に纏いながら、自分の体を見下ろす。

 

 元々白かった肌は、より透き通るような透明感が増していて、我ながら手で触れたくなるような魔性を持っていた。

 

 スレンダー気味だった今までの体型とは、目に見えて女性らしく曲線を描いて変化していて。

 

 なんというか、その。

 

「胸とケツやば……」

 

 また、体が成長してしまった。

 

 ゆったりとしたバスローブを身につけているのに、その下のボディラインがハッキリわかるぐらいには体型が変化している。

 

 男だった時のヒロトなら……というか今も一応、男ではあるけど。

 

 間違いなく、街で見かけたら二度見三度見するくらいの見た目になっていると思う。

 

「肉体の変化も魔性化の影響らしい。お前はだいぶ症状の進みが早い方だ。一晩でそこまで変わるのは珍しい」

「一晩って、あれからもう1日経ってるの……?」

「そうだ。ここは今の俺の寝床だ。と言ってもボロ屋を借りてるだけだがな」

 

 少年はそう言いながら、シュボッと指先に炎を灯して……タバコに火をつけた。

 

 喫煙者かよ、そのナリで。

 

「俺はカナト。あんた、名前は?」

「……ヒロ。大森ヒロ」

「そうか。連れのガキは別の部屋で寝てる。男の方は熱が酷かったんで、俺の連れが看病してるよ」

「あ、ありがとう」

 

 初対面のこの少年に対する印象は決して良くはなかった。

 

 当たり前だ。いきなり体触られるし、変な格好だし。

 

 けど、そこまで悪い人ではないのかもしれない。

 

「で、本題なんだが」

「う、うん」

「今のお前、そのまま放置しとくとまずい事になるぞ」

「……そんなに?」

 

 ヒロトは苦笑いしながら言った。

 

 い、いやなんとなく分かってはいる。あんなキモいモンスター……“堕落蟲”とやらにヤバい毒を噴射されて、カナトの話ではモンスター化? してるらしいし。

 

 明らかに非常事態だ。

 

「まぁ、なんというか……淫魔は知ってるか?」

「い、一応」

 

 見たことはないけど。

 

 なんでも深層に生息しているモンスターで、冒険者の夢に干渉して出てくる。

 

 それもとびっきりの美女として。

 

 その夢の中で、美女と……その、エッチなことをしてしまうと。淫魔に精を吸い取られて、最後には衰弱死してしまう。

 

 うん、知らないわけがない。

 

 だって地上じゃ大人気のエロモンスターだし。

 

「放っとくと、多分お前はそいつになる」

「へぇ……」

 

 “淫魔”にねぇ……。

 

 ……。

 

「はぁ!?」

「お前の体に起きてる変化は、まず間違いなく淫魔系列の特徴だ」

「え、えぇ……?」

 

 自分の体を見下ろして、半信半疑。

 

 確かにこうして目に見える形で変化してしまっている以上は、ある程度信じざるを得ないんだろうけど。

 

「あれって、人間が変化したモンスターだったってこと……?」

「そうじゃない個体もいるらしいが、大体はそうだ。悪魔に魔性化する中でも、女は淫魔になりやすいらしい」

「お、男はどうなるの?」

「他の悪魔になるか、“魔幼虫”の巣になる」

「えっ」

「卵を産みつけられ、淫魔幼虫が繁殖するための巣にされる。だからダンジョンにはサキュバスより虫の方が多いんだ。察するに、あの洞窟の中にいたのも元は冒険者の男だろうな」

「うげ……」

 

 聞かなきゃよかった。

 

 想像以上にエグい生態してるな。

 

「だが、変化を止める方法はある」

「えっ、そうなの?」

 

 カナトの言葉に希望を見出す。

 

 なんだ、だったら別に心配すること……。

 

「男から精を吸収するんだ」

「は?」

「言っちまえば、セ──」

「却下で」

 

 ヒロトはキッパリと言った。

 

 論外だ。無理に決まってる。

 

「ってか、それむしろ止まるどころか悪化するんじゃないの?」

「常に欲求を満たしておけば予後は悪くない。せいぜいちょっと色情魔になるくらいだ」

「めちゃくちゃ予後悪いじゃん!?」

 

 尚更ダメだろ。

 

「……言っとくが、他に方法はないぞ。紋章は応急処置で、今のお前の状態を放置しておけば、どんどん症状は悪化するんだからな」

「で、でも……やっぱり、それはちょっと……」

「好きな男がいるのか?」

「えっ、いないけど」

 

 ガクッと今度はヒロトが項垂れる番だった。

 

「……俺も専門じゃない。だからあくまで推測だが、経験上、早めに手を打たなかった場合は後で悲惨なことになるぞ」

「そ、そんなこと言われても……」

 

 無理なものは無理だ。

 

「……わかった。別の方法を考える。明日まで待ってくれ」

「あ……別の方法でいいんだ。体触りたいだけなのかと思ってた」

「……あのな、俺も別に好きでこんなこと言ってんじゃない。むしろ飽き飽きしてんだよ。本当ならやりたくないくらいなんだ」

「飽き飽き……えっ、じゃあもしかして私以外にも……」

「カナくん、あの子の相手、もう終わったぁ?」

 

 ヒロトがカナトに詰め寄ろうとした時。

 

 部屋の扉がガチャリと開き、そこから一人の女性が姿を現し……って。

 

 エッッッッッッッッロ!?

 

 な、なんだこのエロい姉ちゃんは!?

 

 乳デケェし、服もほぼスケスケで……!

 

「ああ、ユウナ。まだこいつは……んむっ」

「ん、んちゅっ、ちゅうぅぅ……」

「ええぇぇぇぇっ!!?」

 

 そしてそのエロい姉ちゃんが。

 

 突然、カナトを押し倒してめちゃくちゃエロいキスをし出した。

 

「……っ、おい。まだ人いるって……」

「いいじゃない。この子もそうなんでしょ? 三人で楽しみましょ?」

「いや、こいつはその気がないって……んっ」

「でもカナくんはそうじゃないでしょ? んんっ」

 

 オイオイオイオイオイオイオイオイオイ。

 

 ヒロトがいる横で、話も聞かずベッドでもつれあいながらおっぱじめる二人。

 

 こ、これは……。

 

「……失礼しましたー」

 

 声を小さくあげながら。

 

 ヒロトは逃げるようにその場を後にした。

 

 

「あ゛ー、マジビビったぁ……」

 

 まだ心臓がバクバクしてる。

 

 顔もアツいし、あの部屋の狭さのせいか息も苦しい。

 

 全く、まだ私がいる前であんな……。

 

 あん、な……。

 

「……」

 

 ……唇に、指を這わせる。

 

 ぷるんとした感触が指を押し返した。

 

 ……ちょっとだけだけど。

 

「気持ち良さそうだったな……」

 

 あんなすごいキスしたら、どうなっちゃうんだろ。

 

 でも、出会ったその日のうちになんて、絶対無理だ。

 

 あんなことしてもいいと思える人なんて……。

 

「……」

 

 ふと、視線を右側に移すと。

 

 簡素なデザインの鏡があった。

 

 鏡には、また様変わりした見た目のヒロが立っていた。

 

 魔性化の影響か、以前より確実にヒロトはより女性らしく、より美しい姿になっていた。

 

 見た目だけなら、男目線でヒロトが見てきた女性の中でも……一番美人だと確信を持って言えるくらいの美貌。

 

 っていうか。

 

「……“淫魔”」

 

 そう言われても納得できてしまう、まさに“魔性”の体。

 

 もし。

 

「ジンに見せたら、なんて言うかな」

 

 ふと頭によぎる。

 

 地上で、ヒロトの帰りを待っているはずのジン。

 

 深層で早々ドジって、こんなことになってしまったヒロトを知ったら。

 

 ジンはどうするんだろう。

 

「……」

 

 なんか、ジンと再会した時のこと考えたら。

 

 だんだん、頭がボーッとしてきて……。

 

「ヒ、ヒロ!?」

「!」

 

 伸びかけた手を、ヒロトに呼びかける声が止めた。

 

「ヒロ!」

「わっ」

 

 声の方に振り向くと。

 

 胸の中にハカセが飛び込んできた。

 

「ヒロ……! よかった、無事だったのです……! 本当に、よかった……」

「……ハカセ。ごめんね、心配かけちゃった」

 

 飛び込んできたハカセをぎゅっと抱きしめる。

 

 無事とは聞いていたけど、こうしてハカセの姿を見てヒロトも安心できた。

 

「むぎゅっ」

 

 しかし、ヒロトが抱きしめた途端、ハカセが苦しそうな、潰れたような声を漏らす。

 

「ヒ、ヒロ。ちょ、ちょっと緩めてほしいのです」

「えっ、う、うん」

「ぷはっ」

 

 言われた通りに抱きしめる力を緩めると、ハカセが胸の中に埋めていた顔を引く抜いて、信じられないような目でヒロトの体をまじまじと観察し出した。

 

「ど、どうしたの?」

 

 そのあまりに真剣な眼差しにヒロトが困惑していると。

 

「……ヒロ、なんか太ったのです?」

「おい」

 

 あり得ない再会の一言が。

 

 ハカセの口から飛び出したのだった。

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