産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった   作:ぷに凝

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31 そういえば私、魔法少女だった。

「お、おはようございます! プリムノヴァ!」

「お、おはよう」

 

 翌日。

 

 ヒロトとハカセは一緒のベッドで眠った。

 

 ハカセが離れたがらなかったのと、ユウナさんとカナトの方の寝室で寝るのは普通に倫理的にヤバすぎるためだ。

 

 ハカセは泣き腫らしたこともあってぐっすりと眠り、朝になってもヒロトの腕の中で目覚めなかった。

 

 一方のヒロトは、あまり眠れなかった。

 

 隣の部屋から聞こえる“騒音”のせいで。

 

 そして、気づけば外はダンジョン内だというのに明るくなっていたのでため息を吐きベッドから起きた。

 

 その矢先に、ヒロトが起きたことを察したヒカルくんに大声で挨拶されて。

 

 今に至る。

 

「悪しきモンスターと戦うプリムノヴァの勇姿! この目にしっかりと焼き付けました! 感動的でした!!」

「う、うん……私がプリムノヴァだってわかるんだね?」

「ハイ、モチロン! 実は上層にいる時から気づいていましたが、プリムノヴァの意思を尊重して黙っておりました!」

「マジか」

 

 ピッと人差し指を立てたヒカルくんの告白に驚く。

 

 うーむ、流石は天才小学生。

 

「あっ、勿論他の人に正体を言ったりはしないのでご安心ください。世を偲ぶ仮の姿を持つのは、魔法少女モノでは王道中の王道ですので」

 

 まぁ、確かに。

 

 そんで、普段はだいたい学生なんだよね。懐かし……って、あ。

 

「学校、全然行けてない……」

「僕もです……」

 

 二人でガックシ。

 

 深層に入って、もう二日以上だ。ジンがお父さん辺りに伝えてくれていれば、別に仮病とかではないってのは伝わるだろうけど。

 

 それでも、すぐに戻れそうにはないなぁ……。

 

 そもそも、元々今回の依頼って代表冒険者になるための試験だったんだけど、試験どころか生きて戻ることすら危うい状況だ。

 

 すぐに助けが期待できる状況でもなさそうだし。

 

 どうしたもんかなぁ。

 

「おい、起きたのかお前ら」

 

 ヒロトとヒカルくんがうーんと頭を悩ませていると。

 

 ドアが開いてカナトが顔だけひょっこりと出した。

 

「じゃあすぐに出る準備しろ。移動しながら朝食を取る。“暗里繭(あんりまゆ)”に向かうぞ」

「いいけど……」

 

 なんでそんな変な姿勢で? と聞こうとして。

 

 首筋に僅かに残る赤い痕を見て全てを察する。

 

「さくばんは おたのしみでしたね」

「バカなこと言ってる暇あったら着替えろ。ヒロ、お前にはユウナの服を渡す」

「え? あ、うん。ありがとう……って」

 

 バサッと手渡される。

 

 ピーチピンクのセーターと。

 

 フリフリがついた下着。

 

「って、下着投げんな!」

「ああ、悪い。混じってた。その辺に置いといてくれ」

「……な、なんつーガサツ」

 

 せっかくかわいいデザインなのに、色気も何もあったもんじゃない。

 

 そもそも、ヒカルくんがいる前で着替えられるかっつの。

 

「……あ! もしかして今から変身シーンですか!? 安心してください! お約束は守りますよ! 僕は目を瞑っていますので!」

「あ、うん」

 

 チラリと視線を送ると、目を瞑って勝手にワクワクし始めるヒカルくん。

 

 この子、人生楽しそうだなぁ……。

 

 下着は自分の着けてるから変えないけどね。

 

「よいしょっと」

 

 上に着ていた黒シャツを脱ぐ。

 

 その瞬間、上下に揺れる体の一部。

 

「……」

 

 邪魔なんですけど、この脂肪の塊……。

 

 ……っていうか、なんか。

 

「キツイ、か?」

 

 昨日は忙しかったのもあって、気にならなかったけど。

 

 もしかして、ブラのサイズが合わなくなってる?

 

 ホックを外し、一旦封印を解除。

 

「お、おお」

 

 瞬間、胸がだぷんっと重力に従って落ちる感覚。

 

 こ、これは思った以上に……。

 

 そして、渡された服の中からユウナさんが普段つけていると思われるブラを……って。

 

「デケェ……」

 

 こんなデカいの、着けれるわけがない。

 

 全く、これだから女体化エアプは。

 

 ブラってのはサイズが合わないと、形が崩れたり肉が流れたりしちゃって大変らしいし……。

 

 ほら、こんな風に隙間が……。

 

 うん?

 

「……ピッタリ」

 

 ……。

 

 マジか。

 

「ヒロー? いるのですか? ヒカルくん起きて……って、わあああああっ!?」

 

 ジャストフィットしたブラを驚愕交じりに腕で寄せていると、部屋の扉が開いてハカセが入ってきて、発狂。

 

 顔を真っ赤にしてヒロに掴み掛かった。

 

「な、なんて破廉恥な格好してるのですか!? しかもひーくんの前で! は、早く隠すのですよ!!」

「あ! ハカセ! ずるいぞ! 勝手にプリムノヴァの変身シーンを覗き見るなんて!」

「ヒロちゃ〜ん? さっき渡した下着だけど、もし良かったらこっちも着てみない? ほら、可愛いでしょ? ちょっとスケスケで大胆だけど、ヒロちゃんのスタイルで夜にこの下着見せたらイチコロよ?」

「ブン殴られたいのですかお前ら!?」

 

 ハカセに腕を掴まれ、ガクガクとゆさぶられながら。

 

 賑やかな朝だなぁ、とヒロトは現実逃避をしていた。

 

 

 それから数時間後。

 

 ヒロたちはねぐらを出て、“暗闇の森”を歩いていた。

 

 ちなみにこの森が暗い理由は、辺り一体に生えている特殊な樹木が黒い霧を発生させているかららしい。

 

「ヒロ? 大丈夫なのですか?」

「う、うん……」

 

 ぐぅ〜、ぎゅるるる……。

 

「大きなお腹の音ね?」

「お腹すいた……」

「朝食はさっき取ったはずだぞ」

 

 そしてヒロトは、猛烈に腹が減っていた。

 

 さっき、家を出る前に残っていた冷蔵庫の食糧をあらかた食べ尽くしたというのにこれだ。

 

 この体になってから、何故か異様に腹が減る。

 

「そうね、じゃあ空腹を誤魔化すために“暗里繭”の話をしましょうか」

「あ、お願いします」

 

 冒険者らしい厚着を着込んだユウナさんの提案にありがたく乗っかる。

 

 ちなみに厚着していてもスタイルの良さは隠せてない。

 

「暗里繭は魔性化によってモンスターになった中でも、人間としての強い理性を残してる人たちを受け入れてる施設なの」

「受け入れてるだけじゃなく、働いて貰ってるけどな」

「働く? 何をするの?」

「ふふ、それは見てのお楽しみ」

 

 片目を瞑ってウィンクするユウナさん。

 

 可愛い。

 

「まさか、カワサキの下にそんな秘密があったなんて思わなかった」

「ん? あぁ、別にここは“カワサキダンジョン”の深層じゃないぞ」

「え?」

「ある意味では、それも合ってるけどね。ここは他のダンジョンと繋がってるの。一番近いところだと“ヨコハマダンジョン”ね」

「ヨコハマダンジョン!」

 

 知ってる。

 

 “カワサキダンジョン”に隣接していて、国内最大の“トウキョウダンジョン”に次ぐ二番目に大きいダンジョンだ。

 

 最高深度は確か79層。

 

「つまり、ここは“カワサキダンジョン”の深層でもあり、“ヨコハマダンジョン”の深層でもある。ダンジョンって、深いところでは繋がってるのよ」

「じゃあ、ヨコハマダンジョンの冒険者がこの辺りに……?」

「ええ、そうね。今は確か“黄金の牙”が遠征から帰ってきてたはずよ」

「黄金の牙……!」

 

 これも知ってる。

 

 最上位冒険者、“獣王”と呼ばれる男が率いる大型ギルドだ。

 

 その構成員のほとんどが、“獣人”で構成されているという噂だ。

 

「だから前人未踏のはずのエリアに人がいたんだ……」

「ふふ、夢を壊してごめんなさいね? けど、あなたたちがカワサキから落ちてきたって聞いて驚いたわ。まだあそこって30層のフロアボスも倒されてないはずだし」

「カワサキといえば、なんだったか……アレだよ、アレ。魔法少女?」

「プリムノヴァちゃんでしょ? すっごく可愛いんだって! あなた達会ったことある?」

「あ、あー……」

 

 魔法少女。

 

 魔法少女ねぇ……。

 

「い、いや、知らな」

「ふふん! ここにいるヒロこそ、その魔法少女プリムノヴァなのですよ! お前!」

「そして僕はプリムノヴァの装備を開発してるエンジニアです!」

 

 天を仰いだ。

 

 ドヤ顔で腕を組んでいる二人のチビっ子。

 

 その堂々たる宣言を聞いて、カナトとユウナさんが目を丸くしていた。

 

「ヒロちゃんが……プリムノヴァ?」

「マジかよ」

「あ、でも確かに顔立ちは似てるかも……?」

 

 二人に顔をまじまじと見られ、ヒロトは縮こまる。

 

 やめてほしい。そんな視線で見るのはやめてほしい。

 

「……プリムノヴァ、です」

「あらあら……! ってことは、確かとっても強いはずよね?」

「単騎でモンスターハウス壊滅だったか。すげぇじゃねぇか」

「わぁ! 頼もしいわ!」

 

 期待のこもった目線が向けられ、思わず顔を逸らす。

 

 な、なんだこれは。

 

 服捲られて胸揉まれた時より余程恥ずかしいんだが。

 

「ねぇ、ヒロちゃん? それならお願いがあるんだけど」

「は、はいぃ……」

「私たちのこと、守ってくれない?」

「え……?」

 

 至近距離で、ユウナさんの長いまつ毛で彩られた目が向けられる。

 

「ヒロちゃんには、暗里繭を守って欲しいの! 正式な依頼として!」

 

 そして、見惚れるような笑顔でそう言った。

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