産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった   作:ぷに凝

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34 恐怖! 誘拐白クモ

「ここがリビングよ。普段は皆、ここで集まっていることが多いわね」

 

 ユウナさんに案内され、通されたリビングは。

 

 暖炉とソファー、大きなテーブルに壁には虎モンスターの剥製という、重厚感のある内装をしていた。

 

「あれ、このおっきなモニターなに?」

「ああ、それはテレビよ。昔使われてた古いタイプだけど」

「え! 初めて見た」

 

 壁にかけられた大きなモニターは、見たことない大画面で。

 

 トントンと画面をタップしても反応しなかった。

 

「そもそもダンジョンの中に電気が通ってるんです?」

「裏に発電機が置いてあるのよ。自家発電ね」

「そこまでするか」

 

 つくづく凄い施設だ。

 

「それでユウナさん? 面白い子っていうのは……」

「だぁ〜れぇ〜……?」

 

 ユウナさんに振り向くと。

 

 シュルシュル、と音がして天井から。

 

 白いハンモックと共に一人の少女が現れた。

 

 真っ白で細い体に、ふさふさと薄い毛が生えて。

 

 眠そうに擦られる真っ赤な目の中には、また独立して動く別の目が入っていた。額にも二つ、同様の目があって合計8つの目。

 

「わぁ。なぁにぃ? このかわいい子〜」

 

 その目が全て、ヒロトに向けられた。

 

「お、おお」

「その子はアラクネのイトナよ。スパイダーの魔性化ね。いつもこの部屋の天井で寝ているの」

 

 天井を仰ぎ見ると。

 

 確かに、イトナが降りてきた部分だけ天井がくり抜かれ、真っ白な糸で覆われていた。

 

「ユウ姉、この子もしかして新人さん〜?」

「えぇ、そうよイトナ。有望だと思わない?」

「ふぅん〜」

「新人? 有望?」

 

 ユウナさんの言葉に違和感を覚えつつも、全身を眺めるイトナさんの8つの視線。

 

「うん、大体わかった〜」

「あら、もう? 早いわね」

「え、何が……?」

 

 そしてイトナはうんと頷くと、手をパンと叩いて。

 

「それじゃ、早速準備しよっか〜」

「わっ!?」

 

 ぎゅっ、とイトナが抱きついてきた。

 

「良い抱き心地〜。君、名前はぁ?」

「お、大森ヒロ……」

「私、八手(やつで)イトナ〜。よろしくねぇ」

「ど、どうも……?」

 

 正面から抱きついてきたイトナが。

 

 ヒロトの胸に顔を埋めながら、にへらと緩んだ表情。

 

「ヒロちゃんのカラダ、もちもちのふわふわで……寝ちゃいそう〜……」

「ヒ、ヒロ? その人、大丈夫なのですか……?」

「うーん、まぁ別に変な感じはないけど……」

 

 ちょっと、ヒロトの体を触る手つきが。

 

 やらしいなってくらいで……。

 

「じゃ、行こっかぁ」

「え?」

 

 突然、体がぎゅっと何かに絡め取られたように動かなくなる。

 

「糸……?」

 

 見ると、いつの間にかヒロトの体を覆っていたのはきらきらと煌めく糸だった。

 

「上にまいりま〜す」

「わわわわっ!?」

「ヒ、ヒロ〜!?」

「あぁ! 15話の捕縛シーンにそっくり!!」

 

 そうして捕まったまま、いつの間にか天井から伸びていた糸がヒロトを天井まで吊り上げていく。

 

「んぶっ!」

 

 ズボッと頭から天井の白い糸だまりに顔を突っ込む。

 

 それでも上昇の勢いは止まらず、糸の天井を突き抜けてヒロトの体は屋根裏へ。

 

「くしゅっ! 鼻に糸が……!」

 

 糸の屋根を突き抜けて、体にまとわり付くムズムズとした感触にくしゃみをする。

 

 涙目で目を開けたヒロトの目の前に。

 

「……わぁ」

 

 壁、床、天井。

 

 全てが真っ白な部屋が広がっていた。

 

「ようこそ〜、私の工房(アトリエ)へ〜」

 

 どうやらその白は、糸で編まれたものであるらしい。

 

 糸で覆われた世界は、どこか幻想的な雰囲気だった。

 

工房(アトリエ)? ここ、イトナの部屋?」

「そうだよ〜。寝床兼、作業場って感じかな〜」

「作業場……」

 

 言いながら、イトナがニコッと笑うと。

 

 彼女の背中から、4本の細い“足”が飛び出した。

 

「おぉ」

 

 キシキシと動く、蜘蛛の足だ。

 

「……怖がらないんだねぇ?」

「びっくりはしたけど、クモって聞いてたから」

「んふふ、そこも気に入っちゃったぁ。私、ヒロちゃんのことだぁいすき〜」

 

 腕と、背中の足で計6本。

 

 それがヒロトの肉体に絡みつくようにしてイトナが抱きついてきた。

 

 抱きつき癖があるのかなぁ……なんて、呑気なことを思っていた矢先。

 

「んっ……?」

 

 ヒロトの体を弄る手つきが、どんどん怪しくなってくる。

 

「イ、イトナ? あのぉ……?」

「ふむふむ」

 

 最初は肩、腕、指先、足先。これはまだいい。

 

 顔、首筋、鎖骨、脇腹、腰、内股、太もも。

 

 胸。尻。

 

「ちょ、ちょっと!?」

「ヒロちゃんだぁいすき〜♡」

 

 キシキシキシ、と音を立てて。

 

「わあぁっ!?」

 

 ヒロトは、四方八方から襲いくる。

 

 糸の波に飲み込まれた。

 

 

「ヒ、ヒロ〜!!」

 

 ハラハラと天井を見つめていた博多瀬奈ことハカセは。

 

 天井裏からヒロの悲鳴が聞こえたことでいよいよ血相を変えてユウナに掴みかかる。

 

「お、お前! ヒロに何したですか! ヒロはお前たちのことも守ったのに! 裏切ったですか!? 絶対許さな……」

「ハカセ、落ち着いて」

「ひーくん!?」

 

 取り乱すハカセの肩に手を置く、無表情のヒカル。

 

 彼は、ユウナに正面から向き合うと……。

 

 ──懐から、銃型の魔道具を取り出して彼女に向けた。

 

「プリムノヴァを今すぐ解放してください。さもなければ、この屋敷を瓦礫の山にします」

「ひ、ひーくん……」

「倒れたプリムノヴァを一度は介抱していただいたことは感謝しています。ですが、それとこれは話が別です。僕たちにとって、最も大事なのはプリムノヴァと大森ヒロの安否なので」

 

 小学生とはとても思えない冷たい声が。

 

 ユウナの喉元に突きつけられる。

 

「ふふ、慕われてるのね。ヒロちゃん」

 

 それでもユウナは微笑みを崩さないどころか。

 

 むしろ、より笑みを深めてみせた。

 

「残念です」

 

 呟いたヒカルが、引き金に手をかけ──。

 

「終わったよぉ〜」

 

 その瞬間、緊迫のリビングにのんびりとした声と共に。

 

 真っ白なクモ少女が舞い降りた。

 

「えっ……」

「あらイトナ。早かったわね?」

「モチベ爆増ボディだったからね〜。あそこまで凄いのはユウ姉以来じゃないかなぁ〜」

「そうね。私もあの子は“売れる”と思うわ。でもちょっと残念。この子の武器の威力に興味があったのに」

「相変わらずのバトルジャンキーだねぇ」

「……どういうことなのです?」

 

 ついさっきまでの緊張が嘘のように霧散し。

 

 のんびりとした会話を繰り広げる二人に、ハカセが困惑したように聞く。

 

「ヒ、ヒロはどこに……!」

「上にいるよぉ。でも、恥ずかしがっちゃって出てこないんだぁ」

「は、恥ずかし……?」

 

 頭の中が疑問符で埋め尽くされるハカセ。

 

「説明してください。僕は今、冷静さを欠こうとしています」

「イトナちゃんはね? 暗里繭の“服飾”担当なの。それで、ヒロちゃんに似合う服を見繕ってもらったのよ〜」

「新しい仲間なのに、いつまでもユウナのお下がりを着せてたらデザイナーの名が廃るからね」

「え、じゃあ……」

「さっきの悲鳴は?」

「体のサイズを測ってたよぉ〜。ちょ〜っと、やりすぎちゃったけどねぇ〜」

 

 それを聞いて、ハカセが脱力する。

 

「し、心配して損したのですよ。お前……」

「ごめんなさいね? あんまりにも反応が可愛かったから、つい揶揄いたくなっちゃって」

 

 苦笑するユウナに、ジトっとした目を向ける。

 

「あのですね! ヒロがワタたちにとってどれだけ大切な存在か……!」

「イ、イトナ……?」

 

 食ってかかろうとしたハカセは、その声に思わず止まる。

 

 糸天井がぐぱっと開いて、垂れてきた糸を掴みながら姿を現したのは。

 

「これ……他の服なかったの……?」

「……」

 

 魔法少女……ではなく。

 

 その衣装をアレンジして、学校制服風のミニスカとノースリーブに仕立てた上で。

 

 裏地がピンクの黒いジャケットを肩出しで羽織り、普段着として着れるようにデザインされた。

 

「あ、あ……!」

「か、かわわわわ……!?」

 

 黒と桃色を基調にした制服着で赤面する大森ヒロの姿に。

 

 二人の情緒がバグった。

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