産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった 作:ぷに凝
「今日も一日」
ヒロトはモップを片手に、屋敷を掃除しようと意気込んでいた。
穀潰しとは言わないまでも、居候をしている身だ。出来るだけの家事はやった方がいいだろう。
「……と思ったらめっちゃ綺麗!」
しかし、ここで予想外の事態。
モップがけの必要が微塵もないくらいに床はピカピカで、埃一つ落ちていないのだった。
「わたしたちがいますので!」
「えっへんです!」
「えらいぞ〜。でも私のやることなくなっちゃうぞ〜」
「ヒロ様はお客様です! お掃除を手伝わせるわけには参りません!」
自慢げに胸を張るスイホウちゃん達。
まったく、憎たらしいほど有能な子達だゼ。
ちなみに、掃除はやらなかったけど夜の手伝いは何も言わずにやらされたよって言ったらどんな顔するんだろう。
……やめとこ、普通にショック受けそうだ。
この無邪気な笑顔を守りたい。
「……でも、そうなると暇だなぁ」
例のタコ娘ちゃんがやってきて、屋敷内は彼女の受け入れで忙しい。
まぁ、私が来て早々だもんね。そりゃ色々バタバタするか。
シアも手伝いに駆り出されてるので、前に聞きそびれた私の魔性化についての話をすることもできない。
さて、どうしたものか。
「プリムノヴァ、プリムノヴァ」
「んひゃっ!?」
うーんと頭を捻っていたヒロトの脇腹が、突然ツンツンと突かれて声を上げて飛び上がる。
「……ってなんだヒカルくんか! びっくりしたぁ!」
「す、すみません。そんなに驚かれるとは思わず」
「……最近不意に体を触られることが多かったからね」
誰に、とは言わんけども。
「で? どうしたの?」
「あっ、えっと……少し相談したいことがありまして。今、お時間よろしいでしょうか?」
「もうね、全然おっけー」
おずおずとした様子で切り出したヒカルくんにグーサインを出す。
ちょうど暇になったところだ。お時間、よろしすぎる。
「こちらへ」と案内してくれるヒカルくんの後に続いて行く。
そして、ヒカルくんの部屋の中に通された。
「おぉ……」
中に入って、飛び込んできた圧巻の光景にヒロトは思わず感嘆する。
「す、すみません。プリムノヴァをこの部屋に呼ぶことになるなんて想定してなくて……散らかっているんですが」
「うん、まぁね」
その部屋を一言で表すなら“工房”だった。
部屋の中に備え付けられた机の上には、魔道具と思われる複雑な機構の物体が所狭しと並べられ、床にはメモや設計図のような書類が散らばっていた。
そして、魔道具の部品となるであろう金属がそこかしこに置いてあった。
「こっちに置いてあるのが動力やコアの部品。こっちは回路系。作成途中のものもあるので、出来れば場所は動かさないで貰えると……」
「おっけー、了解」
なんだか昔を思い出す。
ヒロトも子供の頃はプラモデルを作っている最中、ランナーをそこかしこに展開してこれと同じような状況になっていた。
まぁ、ヒカルくんがやってることはプラモデルとは比にならないくらい複雑な作業なんだろうけどね。
「今、新しいプリムノヴァの装備を作っているんです。もうじき完成するので楽しみにしていてください」
「もう? 凄いじゃん。流石は史上最年少の“
「えへへ……」
頭をかいて照れ笑いするヒカルくん。
最近は一緒にいるから忘れがちになるけど、この子は正真正銘本物の天才だ。
“
魔力を動力として動く人工物や武器は“魔道具”と呼ばれており、ヒロトの持つ“プリマスターロッド”や“プリマスターフィスト”なども魔道具だ。
そして、それら魔道具を作成する職人のことを
専門的な知識と確かな経験、技術が必要とされる彼らは貴重な人材であり、一人前になるには長い経験と豊富な実績が必要とされる。
国が発行する
だけど、制度上はそうってだけで実際に
それは
学力、経験、成果物、技術を多角的に評価される
そういった諸々の理由で、国内でも特に有名な職人ですら実際に活動を始めたのは専門学校や大学を卒業してからの者が大半。
中には学生時代に試験を通過した者もいるにはいるが、本格的な活動はやはり卒業後から。
才能を持つ人間が、さらに多くの時間と研鑽を重ねてようやく名乗れる職業。それが
の、はずだった。
そんな試験を、12歳になると同時に受けて、ストレート通過。
その合格者は成人済みどころか、まだ学生……それも“小学生”だった。
本来想定される受験時期を、8年も前倒ししての偉業。
それを達成したのが、ヒロトの目の前にいる男の子。
「……改めて思ったんだけどさ」
「はい?」
「ヒカルくんって、本来はこんなとこにいちゃいけない子だよね……」
そんな、国が誇る天才小学生が、今はあろうことか危険極まりないダンジョンの“深層”にいるわけだ。
冷静にならなくても、これがどれだけヤバい状況かわかる。
「何を言いますか! プリムノヴァいるところに僕の姿もアリです! 本当はヒロさんと一緒にダンジョンに潜りたいのですが……年齢制限が!!」
「あぁ、そうだったね」
悔しそうなヒカルくんに苦笑する。
不思議なことに、12歳で受けられる
こちらはダンジョンに関する基礎的な知識と、いくつかの依頼の達成。ダンジョン探索の実績などを積み上げることで合格できる。
決して容易というわけではないけど、
それなのに、
「子供を死なせるわけにはいかないから、か」
わざわざ
割に合わない危険な仕事。それが冒険者だ。
いつ死んでもおかしくはない。
それはヒロトも例外じゃなく……。
「? ヒロ?」
「あぁごめん。で、何の話だっけ」
思考の海に浅瀬だけ浸かり、すぐに陸に上がる。
今は生きるためのことを考えるべきで、死んだときのことを考えても仕方ない。
「あ、はい。それでですね、先日ヒロはハカセの
「あぁ、そんなこともあったね」
あれで衣装がキツめのデザインになっちゃったりして、大変だった。
スターの性格も結構キツい感じだったし。
「実はですね、あの後ハカセと話して、ヒロのスキルのことを聞いたんです。どういった原理で動いているスキルなのか。スターはそういった分析を得意とするスキルですから」
「へー」
口をぽかんと開けて気の抜けた返事をするヒロト。
原理、原理ねぇ。
美味しいよね、原理。醤油かけて食べるとウマい。
「その結果、わかったことがありまして」
「はい」
「プリムノヴァ、空を飛べるかもしれません」
……。
?????