TS魔法少女プリムノヴァ   作:ぷに凝

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6 プリマスター!

「プリムノヴァだと!?」

「何故ここに!」

 

 ヒロトくんが捕まった段階で、こっそり抜け出して『性転換』して『変身』して帰ってきたら。

 

「プリムノヴァ……どうして!?」

 

 なんか来るはずがないとか言われていました。

 

「たまたま近くを通りがかったら、叫び声が聞こえたから」

 

 大嘘だ。

 

 実際は滅茶苦茶現地にいました。

 

「プ、プリムノヴァだ……」

「すげぇ……」

「本物初めて見た……」

「めっちゃ可愛い……」

「足長っ!?」

「顔ちっちゃ!」

 

 有名人に出会ったような反応をするクラスメイト達。

 

 ついさっきまで、その辺にいたんだけどな。

 

 影が薄くて逆に助かったわ。

 

 しかし、そうか。クラスメイトでさえプリムノヴァの正体には気付かないものらしい。

 

 正体がバレづらくて安心なような、少し寂しい気もするよう

な。

 

 まぁいいや。

 

「その子を放しなさい。もう役目は終えたはずでしょう?」

「プリムノヴァ……」

「……確かに。貴様が現れたならこの子に読んでもらう必要は無くなった」

「だが、この子を助けに現れたということは、人質としての価値はあるのだろう」

「解放するわけにはいかんな」

 

 おいおい、マジかこいつら。

 

 やってることテロリストと何も変わらんぞ。

 

「最っ低……!」

「きたねーぞ! 何が騎士団だ!」

「ヒカルくんを放してよ!」

 

 生徒たちの印象も最悪だ。

 

 迷宮内の治安を保ってるはずの騎士団がこれじゃあ、こんな風に言われても仕方ないが。

 

「くっ! “フレイムバインド”!」

 

 形勢が悪いと悟ったのか、迷宮騎士団の一人が不意打ち気味に魔法を放ってきた。

 

 ぐるぐると縄のようにのたうちながら向かってくるこれは拘束系魔法か?

 

 当たれば厄介だが、その分弾速は遅い。余裕を持って回避できる。

 

「馬鹿な!?」

 

 それにしても、話し合いもせず即魔法をぶっぱしてくるとは。

 

 いつから騎士団はこんな物騒な連中になったんだ?

 

 というかこいつら、本当に迷宮騎士団か?

 

「あなたたちって、もしかして偽物の騎士団?」

「な!? に、偽物だと!」

「無礼な! 冒険者風情が!」

「身の程を弁えよ!」

 

 普通に疑問に思ったから質問したら、なんかめっちゃキレ出してしまった。

 

 そんな地雷だとは思わんじゃん。

 

「本物の迷宮騎士なら、もっと冷静に行動してるはずって思っただけ」

「貴様ぁ!!」

 

 弁明しようと思ったらなんかさらに煽ってるみたいになっちゃった。

 

 コミュニケーション、向いてないです。

 

「“フレイムサークル”!」

「“アーススピア”!」

「くっ、おのれちょこまかと!」

 

 飛んでくる魔法は、悪くはないがどれも決め手にかけるものが多い。強化された魔法少女の身体能力なら躱すも受け流すも自由だった。

 

 しかし、困ったな。

 

 反応的に本物の迷宮騎士っぽいから、流石にぶっ飛ばしちゃったらまずいよなぁ。

 

 いや、先に仕掛けてきたのは向こう側だぞ? 正当防衛では?

 

 うん、正当防衛だな。殴ろう。

 

「……ガハッ!?」

「なっ!?」

 

 懐に踏み込んで、騎士団の一人の鳩尾に回し蹴りをぶち込む。

 

 殺しはしないように、多少手加減した一撃だ。

 

「おっ、ゔぉええぇぇぇ」

 

 けど、まだ力加減がわからないんだ。

 

 胃の中の物、全部吐くぐらいは覚悟してもらう。

 

「ぼごぉっ!?」

 

 ぶちかまし、からの体勢を崩した所に頭を掴んで顎下に飛び膝蹴り。

 

 これで2ダウン。残り二人。

 

「貴様のどこが魔法少女なんだ!?」

 

 失敬な。

 

 どこから見ても、立派な魔法攻撃(物理)でしょうが。

 

「マジカルかかと落とし」

「い、異常者……! めぇ゛っ」

 

 3ダウン。

 

「く、来るな! 化け物!」

 

 最後の一人……は、ヒカルくんを拘束していた男だった。

 

 彼は手に持つナイフを見せつけるようにヒカルくんを強く締め上げていた。

 

 ぶっちゃけ、一瞬で近づけば何もさせずに終わりそうだけど……万が一にもヒカルくんを怪我させたら、まずいなぁ。

 

「ゆっくりだ……ゆっくりと下がれ……!」

 

 男の指示に従い、少しずつ下がる……と、ヒカルくんが目線で何かを訴えかけてきているのがわかった。

 

「……!」

 

 あの必死な眼差しは……!

 

 全然わからん。

 

 コツッ

 

「ん」

 

 ふと、足元に何かが当たる。するとヒカルくんがブンブンと首を縦に振った。

 

 “これを使え”ってことか?

 

「お、おい! 妙な真似をするな!」

 

 男を無視して足元に落ちていたそれを拾う。

 

「杖?」

「“プリマスターロッド”だ!」

 

 それは、先端に星の衣装が施されたファンシーなデザインの杖だった。

 

「くっ! 妙な真似を!」

「うぐっ……プリム、ノヴァ……!」

 

 叫んだヒカルくんの喉元に、僅かに押しつけられるナイフの刃。

 

 つぅ、と赤い血が流れた。

 

 気づけばヒロトは杖……いや、プリムスターロッドを翳して魔法を唱えていた。

 

 魔法には人それぞれ適性というものがあり、適性がない属性の魔法は使えないか、威力が著しく下がる。

 

 ヒロトの適性は“闇属性”だ。

 

「“ブラックバインド”」

 

 杖の先端から漆黒の蛇に似た縄状の魔法が打ち出された。

 

 騎士団が使った拘束魔法とは異なり、この魔法の発動は素早く、そして。

 

「ぐおぉっ!?」

 

 人の体をすり抜ける。

 

「わっ」

 

 ヒカルくんの体をすり抜けて、背後の男を拘束した魔法は、そのまま全身に巻きつき完全に動きを拘束する。

 

 こうして、迷宮騎士団は全員が無力化されたのだった。

 

 

「ヒカル!」

「お父様……」

「無事でよかった……本当に……!」

 

 解放されたヒカルくんに、真っ先に源治さんが駆け寄った。

 

 ヒロトが現れてから、一番戦いを心配そうに見つめていたのは彼だ。もしヒカルくんに何かあったらと、気が気じゃなかっただろう。

 

「すみません、ヒカルくんに傷を負わせてしまいました」

「プリムノヴァさん……」

 

 そして、ヒロトはヒカルくんを無傷で返すことは出来なかった。

 

 例えば、もしあのナイフに毒でも塗られていたら。

 

 取り返しがつかなかったかもしれない。

 

 ヒロトの落ち度だ。

 

「いいんです。あなたには……感謝しかありません。本当に、ありがとうございました」

「ほら、言ったでしょうお父様! プリムノヴァは凄いんですよ!!」

「ああ、お前の言った通りだったよ。凄いな」

「プリムノヴァ! 凄かったよ!」

「めっちゃ強ぇじゃん!」

「可愛い〜! こっち見て!」

 

 うっ、なんか知り合いに直接褒められるの、凄いむず痒いんだが。

 

 正体は男ってのを隠してるから余計に。

 

 さっさと退散したいんだが……気絶させた騎士団達。こいつらどうしようか。

 

 ここに放置でいいのかなぁ。

 

「!」

 

 と、悩んでいると彼らの体がふわりと浮かび上がった。

 

「東迷宮高校の皆様に、神谷様。そして……」

 

 続いて、広場に続くと通路の奥からカツ、カツというブーツが地面を叩く音。

 

 ヒロトは音の方向に向き直った。

 

「プリムノヴァさん、ですね」

「誰」

「私たちは迷宮騎士団。ダンジョンの治安維持に努めております」

「迷宮騎士団……!」

 

 まさか増援を呼んでいたとは。

 

 ヒロトはプリマスターロッドを構え直した。

 

「あぁ、大丈夫ですよ。そんなに警戒しないでください。彼らとは違って、私たちは“正規”の騎士団ですので」

「正規?」

「私はカスパル。カワサキダンジョンの迷宮騎士達の“筆頭”、取りまとめ役のようなものをしております」

 

 そんなヒロトを制するように、気絶した男達を魔法で宙に浮かせていた、集団の先頭に立つ優しげな雰囲気の男は頭を下げた。

 

 敵意はないらしいので、武器を下げると「ありがとうございます」と微笑む。

 

 むぅ、イケメンの笑顔というのは何故無条件で人を安心させるのか。この世の不条理だ。

 

「実はそこにいる彼らは、問題行動を起こして団を追放された者たちでしてね……それなのに未だに騎士団を名乗って、仕事を受けていたというわけです」

「本当に偽物だったんだ」

「はい。我々も事態を把握したのはついさっきのことでして……情けない話です」

 

 じゃあなんであんなにキレてたんだ、あいつら。

 

 あるいは、図星だったからこそ怒ったのかもしれないけど。

 

「プリムノヴァさん、この度は我らの“元”同胞がご迷惑をおかけしてしまいまして、大変申し訳ございません」

「……私に言われても。ヒカルくんたちに言って」

「えぇ、勿論。個別に謝罪はさせていただきますが……時にプリムノヴァさん。これは提案なのですが」

 

 何だろう、と顔を上げるとカスパルさんはあくまで笑顔で。

 

 爆弾を落とした。

 

「我々『迷宮騎士団』の一員として、その力を使ってみるつもりはありませんか」

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