TS魔法少女プリムノヴァ   作:ぷに凝

9 / 9
9 白黒ハッキリつけちゃおう!

「物理攻撃が効かない」

 

 カウンターで吹き飛ばしたカマイタチは、派手に吹き飛びこそしたもののピンピンしていた。

 

「いや、白くなってる……?」

 

 かと思えば体の色に変化が発生しており、黒かった体は今度は真っ白になっていた。

 

「どういうスキルなんだろ」

 

 冒険者と同じように。

 

 モンスターにもスキルを所有している個体がいる。

 

 カマイタチが物理攻撃を無効化するという話は聞いたことはないので、これはスキルの恩恵である可能性が高い。

 

 ユニークモンスターだ。

 

「プリムノヴァ……あんた、プリムノヴァだったのか……」

「だったら何。動かないでって言って……」

「あっ、あのスキルは見たことがある!」

 

 振り向き、話の続きを促す。

 

「おっ、おお……顔面威力すげぇ……」

「殴るよ」

「す、すまん、つい。あれは“陰陽”ってスキルだ、確か。黒い時は魔法攻撃を無効化して、白い時は物理攻撃無効だ」

「陰陽……」

 

 なるほど。

 

 ヒロトの攻撃が届く直前にスキルを発動して、物理攻撃を無効化したってわけか。

 

「それなら」

「おぉ!!」

 

 『収納袋』の中から、一本の杖を取り出す。

 

「ニュースで見たやつ!」

 

 “プリマスターロッド”。

 

 例によりヒカル少年から譲り受けた『魔導具』だ。

 

 ……今思うと、ダンジョンで襲われた翌日にはこれを作ってたって持ってきてたってことになるのか?

 

 『魔導具』ってそんなポンポン作れるもんじゃないと思うんだけど、どうなってるんだろうか。

 

「まぁ、いいや」

 

 杖を翳し、魔法を詠唱。

 

「“ブラックアロー”」

「キュイッ!」

 

 杖の先端を向けて即攻魔法を放つ。

 

 しかし、カマイタチは一声鳴くと魔法が届く直前に体の色を変化させた。

 

 直撃。

 

 しかし、ダメージを負った様子はない。

 

「無効化された!」

「面倒臭い」

 

 自分で無効化対象を選べるのか。

 

 それも、物理と魔法攻撃を意識して切り替える程度の知能も持ち合わせているらしい。

 

 これ、無効化する攻撃に威力の上限とかないならかなりの無法スキルじゃないか?

 

 ヒロトもこういうスキルが欲しかった。

 

「キュイイイイッ!」

「来るぞ!」

「わかってる」

 

 カマイタチが回転し、三度目の攻撃を仕掛けてくる。

 

 ガントレットで反撃……いや。

 

「なんだぁ!?」

 

 ギャリギャリギャリ──と壁を削りながら。

 

 通路の壁面を縦横無尽に駆け回り始めたカマイタチ。

 

「どこから仕掛けてくるかわからないってことね」

「どうすんだ!?」

 

 これはシンプルかつ地味なようで、結構効く。

 

 ヒロトに直接攻撃してくるならまだいい。

 

 だけど、二階堂を狙われると反応が鈍るし、そっちに意識を割かなきゃいけない分ヒロト自身への攻撃も少し対応が遅れる。

 

 嫌な二択を押し付けつつ、攻撃のタイミングは向こうの匙加減だ。

 

「キュイッ!」

「!」

 

 カマイタチが壁面から跳ねて、攻撃を仕掛けてくる。

 

 狙いは私……。

 

「!?」

 

 と見せかけて、防御しようとした私の手前で大きく攻撃の軌道が逸れて。

 

「えっ」

 

 二階堂が狙われた。

 

「くっ!」

 

 地面を蹴り、チャージでカマイタチを吹き飛ばす。

 

 しかし無理な体勢だったこともあり、肩を大きく切り裂いてしまった。

 

 使えなくなるほどじゃないが、少し動きが鈍るな。

 

「プリムノヴァ!?」

 

 生半可な攻撃を通さない魔法少女の防御を貫通するこの攻撃力。流石はユニークモンスターだ。

 

「大丈夫か!?」

「大丈夫。擦り傷。そこから動かないで」

「大丈夫って……」

 

 二階堂が心配そうにヒロトを見る。

 

「ふふっ」

「な、なに笑ってるんだよ」

「別に」

 

 その心配そうな視線を見て、思わず笑ってしまった。

 

 思えばプリムノヴァになってから、誰かに心配されるほど苦戦したことがなかった。

 

 だから新鮮だったんだ。

 

 魔法少女の時の自分は、まるで別人だと思っていたが……。

 

 人間というのはそう簡単には変わらないらしい。

 

「さて、と」

 

 物理も魔法も、有効打にはなり得ない。

 

 向こうからの攻撃は、必ずこちらにとって手痛い一撃となる。

 

 やることは一つだ。

 

「二階堂」

「な、なんだ? 俺にできることならなんでも……!」

「じゃあ手握って」

「うえぇ!?」

 

 そう言うと、二階堂は真っ赤な顔でヒロトの顔と左手の間で交互に視線を左右させて。

 

 決意を固める。

 

「ま、任せろ!」

「そっちじゃない。怪我してない右手の方」

「先に言えよ!?」

「普通そうでしょ」

 

 怪我してる手の方を握ってどうする。

 

「魔力、練れる?」

「え、お、おう。最低限は」

「私の右腕に、魔力を纏わせてほしい」

「エンチャントか?」

「そう」

 

 物理も魔法も効かないなら、魔法物理だ。

 

 両方の性質を併せ持った攻撃で殴る。

 

「そして、私を信じて」

「……!」

 

 二階堂が目を見開き。

 

 私の右腕を強く握った。

 

「……一つ、聞きたいんだが」

「なに?」

 

 ヒロトの右腕に土色の魔力の膜が形成されていく。

 

 自分の魔力で外側を覆うのは難しい。けれど、元々反発する他人の魔力ならそれが出来る。

 

「なんで俺の名前、知ってたんだ」

「……」

 

 やべっ。

 

 そういえば、思いっ切り“二階堂”って呼んじゃった。

 

 名前聞いてないのに。

 

「この戦いが終わったら、教えてあげる」

「わ、わかった」

 

 とりあえず濁して、忘れてくれる可能性に賭ける。

 

 二階堂は納得したのかしてないのか、魔力の操作に集中し出した。

 

「キュイッ!」

 

 また、攻撃が来る。

 

 だけど今度はヒロトと二階堂の距離がとても近い。

 

 わざわざ狙いを絞る必要すらなく、まとめて切り裂ける。

 

 それも、二人して蹲って手を握り合っているのだから。

 

「キュイイイイッ!!」

 

 急接近。

 

 間近に迫るカマイタチの三本の刃に対して。

 

「……」

 

 二階堂は動揺していなかった。

 

 死を前にして一切集中を乱さず魔力を操作することなど、自分にはできないことだと二階堂は知っていた。

 

 二階堂仁は臆病で姑息な小心者だ。

 

 そんな小心者に、信じてほしいと言った少女がいた。

 

 二階堂が妬んで、羨んで、憧れた輝く少女がいた。

 

 その少女のことを二階堂も信じれるなら。

 

 動揺なんてするはずもない。

 

「──」

 

 刃が届く直前。

 

 ヒロトは跳ねるように飛び上がり、誰もいない虚空に向けて拳を振るった。

 

「キュイッ!?」

 

 滑り込むように、虚空にカマイタチが入り込んできた。

 

 最初にヒロトを攻撃して、変身後は二階堂を狙った。

 

 ならばコイツは、必ず弱い者を狙う。

 

 それが強者に傷を負わせる方法だと知っているから。

 

「思った通り」

 

 拳に纏っている魔力を見て、カマイタチは色を黒に。

 

 いや、あれは拳だ。白だ。

 

 だが魔力をどうする? 黒だ。

 

 白だ。黒だ。白だ。黒だ。

 

 白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒。

 

「キュイイイイッ!!?」

 

 そして、白と黒のマダラとなったカマイタチは。

 

 どちらの攻撃も無力化することなく、降ってきた拳に叩き潰され。

 

 その生涯に幕を閉じた。

 

 

「はい、これ君の分」

 

 戦闘終了後。

 

 ヒロトはカマイタチから取り出した白と黒、二つの球体を取り出した。

 

 カマイタチのコアだ。それもユニークモノ。

 

「いや、お前が持っててくれ」

「? わかった。貰うね」

「ちょっとは遠慮しろや」

 

 白い方を二階堂に差し出すと、彼は首を横に振った。これ幸いとどちらも懐に仕舞い込む。

 

 多く報酬を貰えるというのにわざわざ遠慮する冒険者がどこにいると言うんだろうか。

 

「……その、助かった。本当に」

「無事でよかったね。じゃあ、また」

「ちょっと待てや!?」

 

 頬をかいて、目を合わせようとしない二階堂に別れを告げると右腕をがっしりと掴まれる。

 

「離してくれない?」

「いやいや! もっと、なんかこう……言うことねぇの!?

「ない……あっ」

 

 腕を振り解こうと視線を下に向けて。

 

 胸のブローチが点滅していることに気づいた。

 

 これは、変身時間が残り30秒の合図だ。

 

「じゃあ、また」

「おぉい!?」

 

 するりと手首を抜いて、その場から走って立ち去る。

 

「なんで名前知ってたんだよー!?」

 

 去り際に叫び声が聞こえて、一瞬悩んでから振り向いた。

 

「前から二階堂のこと、知ってたからー」

「……えぇ!?」

 

 背後から素っ頓狂な悲鳴が聞こえてくるのを無視して。

 

 ヒロトは全速力でその場を去った。

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