この時代の人間の住処は、とても安全で頑丈だった。
街には結界が貼ってあって、並みの妖怪では入れない。
一度こじ開けてみたら、すぐに発見されたので逃げた。
街の周りを飛んでいると、この前助けた人間が、数名の人を引き連れてやってきた。
私は木の陰に隠れ、聴力を強化して会話を盗み聞く。
「…奴は探知レーダーに映らないわ…」
「…ではどうすれば…」
「…双眼鏡で探さないといけないわね…」
「…しかし、見つけても倒せるとは限らない…」
誰かを探しているようだ。
暇だから手伝ってあげよう。
「何してるの?」
「あ!奴がいたわよ!」
「皆!奴だ!殺せ!」
こちらを見るなり光線銃を撃ってきた。
反応が遅かったせいか、光線が左腕に掠る。
掠っただけのはずが、左腕は無くなっていた。
「これ、普通の妖怪じゃ死んじゃうよ?」
「なっ…痛みを感じていない!?」
「諦めないで撃ち続けて!弱点はあるはずよ!」
この前会った銀髪の女が、仲間らしき人間に命令する。
私は右手で手刀を作り、妖力で強化してから、亜光速で人間たちの銃を破壊する。
封印を強めているので今はこれが最高速だ。
「銃が!もう武器が無いぞ!」
「なぜ銃しか持ってこなかった!」
「まだよ、私の弓があるわ!これで仕留められなかったら終わりよ!」
銀髪の女は、こちらに向かって矢を放つ。弓とは思えない速度で迫ってくる。
しかし、光線銃に比べれば圧倒的に遅く、移動しなくても平気で掴める。
「…あなたの勝ちよ。好きにして、覚悟はできているわ。」
「じゃぁ…人間の街に入らせて。無理矢理入ったら追い返されたからね」
「それは、街の皆も襲うってこと?それは月夜見様が許さないわよ」
物凄い勘違いをされている気がする。
私が人を襲うような妖怪に見えるのか。
「違う違う、人間と暮らしたいんだよ。」
「それはできないわね。妖怪が人間の街に住むなんて、嘘に決まってるわ。」
私が反撃してこないのを良いことに、人間たちは街へ帰っていった。
「妖怪だからって、街に入るくらいいいじゃない…」
少し離れたところにある湖の畔で、文字通り羽を休める。
なぜあの人達は私を襲ってきたのだろうか。
人を探しているように見えたのも、私を見つけて殺すためだったのだろう。
封印を緩めないと、あの光線で殺される恐れはある。
しかし封印を緩めれば、人間どころか妖怪にも敵視される。
幸い人間たちは亜光速についていけないようだから、油断しない限り殺されはしないだろう。
ザッ、ザッ、ザッ。
何かがこちらに近づいてくるようだ。
今度は攻撃されないよう、人間に擬態する。
藪の中から何かが現れる。
「おお、人間か?俺の縄張りで寝ころぶたぁ、いい度胸じゃねえか!」
藪から現れたのは、額に1本の角を生やした大男。道着のようなものを着ているが、上半身は裸。
能力で調べると、種族は鬼だった。
「おい人間、聞いてるのか?まぁいい、逃げ出す前に食っちまうぞ」
鬼はそう言い、飛び蹴りで攻撃してきた。人間なら即死するような威力だが、私は右手で跳び蹴りを止める。
「なんだてめぇ、人間のくせに強いじゃねえか」
「勝手に人間って決めつけないでよ」
私はいつもの妖精の姿に戻り、妖力を丸めた球で鬼を撃つ。反応が遅れた鬼の腹に、妖力弾が直撃する。
「妖精!?いや、妖精がこんな力を持っているはずは…」
「油断してるとやられるよ」
鬼の腹を、妖力を纏った手で思いっきり殴る。
鬼は遠くへ吹っ飛んで行き、やがて見えなくなった。
「…あ、やっちゃった。大丈夫かな、あの鬼」
少し疲れた体を休めるため、何事も無かったかのように寝ころぶ。
―左腕に違和感を感じた。
「あ、左腕負傷してたんだった」