やまうちのなく頃に 作:おやまうちさま
無人島試験が終わって、俺への風当たりはややマシになった。
つーのも、Dクラスはリーダーを当てられていたっぽいことが分かったからだ。
当てられたのは、なんでだ?
よそ者は、伊吹ちゃんしかいなかった。
伊吹ちゃんがスパイだったっぽい。
じゃあ、下着泥も伊吹ちゃんだったんじゃね?
という流れで、8対2で俺が犯人くらいから5割くらいに落ち着いた。
「伊吹ちゃんがスパイって分かったのに、まだ俺を半分疑ってるってなんでだよ」
ありえなくね?
まあ、いいけどさ。女子が女子の下着を盗むとかよく分かんない話だしさ。
俺の失敗は、伊吹ちゃんが盗んだ時点で声をかけたことか。
寛治の鞄に入れるまで黙っておくべきだった。
わざわざ男子の鞄に入れたって主張できれば、クラスに混乱を引き起こすためにやったって主張できたはずじゃん。
無人島の反省はこんなもんか。前よりも悪くなったのは堀北のせいだし、俺には関係ない。
なんて考えながら、豪華客船を堪能している。
せっかくだから全メニュー制覇したかったけど、飲食店だけでも多数あるため、全店制覇に切り替えて、今日はレストランで食事したところだ。
Aクラスが偉そうにしていたのがイラっとくる。そりゃあ、AクラスとDクラスじゃかなりの差が開いたけどさ、まだまだこれからだよなぁ。絶対に逆転できるはず。
そのためには、次の試験が大事だ。
「まずは、運が回ってくるかだよなぁ。俺が優待者ならいいのに」
優待者試験。
簡単に言えば、人狼ゲームみたいなもので学校側に適当に決められたグループの中から1人優待者が選ばれて、優待者はそれを隠し通す、優待者以外は誰が優待者かを当てるゲームだ。
優待者が圧倒的に有利なため、優待者に選ばれるのかどうかが超大事だ。
前の時は残念ながら俺は優待じゃなかった。
グループの結果は、どっかのクラスの生徒が優待者を当てたっぽい。
12人くらいだったはずだから、優待者に選ばれるのは12分の1。
既に1回外してるから、今回選ばれてもおかしくはない。
神様、どうか俺を優待者に選んでくれー。
ルール説明での呼び出しを挟んだ翌日の朝。
『厳正なる調整の結果、あなたは優待者に選ばれませんでした』
「くっそー、今回こそは優待者に選ばれるって思ってたのになぁ」
残念ながら、今回も優待者に選ばれなかった。これで2回連続外した計算になる。
あーあ、ついてねえなぁ。まあ、12人いたら中々選ばれないか。
前回は、誰かが優待者を当てたってことは、たぶん隙があったんだよなぁ。
俺が絶対に優待者を探し出して当ててみせるぜ。
そう気合いを入れ直して、優待者試験の最初の会議へと向かった。
なんつーの? 干支だっけ? 十二支だっけ? なんかそれぞれのグループはそれを表しているらしい。俺が所属することになったのは、鳥だったってわけ。
グループの内訳はこうだ。
Aクラスから4人
Bクラスから3人
Cクラスから3人
Dクラスから3人
優秀なAクラスが多いってだけで不利じゃん。
前の時もそう思った気がするから、たぶん前回と同じだ。メンバーもたぶん同じだと思う。
Aクラスの山村って子は、初めて見た気がするけどどうだっけ。
なんか影薄いんだよなぁ。キセキの世代のシックスメンかって話。山村は女子だけど。
まあ、他クラスはいいよ。
問題はさ。
「はー、最悪。なんで下着泥と同じグループなんだろ」
「ないよね」
Dクラスの他のメンバーが、
篠原は、俺を下着泥だと思い込んでいる筆頭みたいなやつだ。
伊吹ちゃんがスパイと分かった後でも、一切認めていない。
寛治はなんでこんなやつに惚れたんだか、見る目ないよなぁ。
で、東はなんつーの、地味だけど佐倉と違ってキツイ感じの地味な子。
悪い意味で真面目なタイプっつーか、自意識高くて他人を見下してるんだろうなーってのを節々に感じる。
勝手なイメージだけど、小学校時代に帰りの会とかで「先生〇〇君が、××してました」とか教師に報告してつるし上げることに喜びを感じてそうって言えば伝わるか?
そんな東と篠原は、結構仲が良いらしく鳥グループではタッグを組んで行動している。
やりにくいったらない。
まあ、それだけならいいんだけどさ。
「お前ら、俺を下着泥下着泥って言うなよ」
「事実を言って何が悪いわけ」
「拡散する必要はないだろうが」
「うるさい、下着泥のくせに」
こいつらがよりにもよって、鳥グループでの話し合いの最中も、俺のことを下着泥扱いしてきやがった。
一応否定したけど、どこまで通じたことやら。
これで他クラスまで拡散されたことになる。
本当はもちろん違うけど、仮に俺が下着泥だったとしてさ、それを他クラスに知られて何の意味があるんだっつーの。
クラスの恥を拡散するなよ、俺だってしないぞ。
はあー、やりにくいったらありゃしない。
こんなんで俺は優待者を見つけられるのかなぁ。
「篠原達は、優待者じゃないよな?」
「下着泥には教えたくない」
「同じく」
ったく、前途多難だぜ。
◇◇◇
「山内、勝手な行動するなよ」
「分かってるよ」
「山内くん、くれぐれも慎重に頼むわ」
「だから分かってるって」
「山内、余計なことするんじゃねえぞ」
「なんで俺ばっかりに言うんだよ」
優待者あてに真面目に取り組んでいるだけなのに、試験以外のタイミングでたまたまあったDクラスの仲間が、俺にアドバイスなのか注意なのか分からない言葉を投げかけてくる。
優待者試験には、優待者以外が単独で勝つルールが用意されている。
こいつが優待者だと思ったら、試験終了を待たずに学校側にメールを送るという裏切り制度だ。
成功すればクラスポイントが増えて、失敗すればクラスポイントを失う。
ハイリスクだが、ハイリターンなルールだ。
だからこそ、思い込みとか当てずっぽうで裏切り者にならないように注意されるのは分かる。
けどよー、会う奴会う奴言ってこなくてもよくね?
俺がそんなに考え無しに見えるのかよ、俺だってしっかり考えてるんだぜ。
例えば今のクラスポイントは、無人島で稼げた37ポイントしかない。
たった37ポイントだ。
裏切り者ルールは、当てたら50ポイント、外したら-50ポイントだ。
これが基本だが、Dクラスには特別ルールがあることに気づいたんだ。
「37ポイントしかないんだから、リスクの方が低くね?」
そう、Dクラスだけは失っても37ポイントで済む。
まあ、クラス以外に裏切り者がいたとして、10人のうちの1人で外す可能性の方が高いから、やっぱりハイリスクなんだよなぁ。
とか考えたりしてるんだぜ。
どうよ? 俺がしっかり頭を働かせてるって分かっただろ。
どちらかといえば、篠原を注意して欲しいくらいだぜ。
やらかすのは、ああいう強気な女。
特に自分が優位に立ったと思ったら、調子に乗って失敗する。今回は、優待者がじゃないっぽいから問題ないけど、篠原が優待者だったらたぶん余計なことをして見破られてたと思う。
その辺考えたら、Aクラスはやっぱずるいよなぁ。
リーダーの指示なのか、前回に続いて何もしないという選択肢を取ってる。話し合いも初回の自己紹介だけであとはダンマリだ。
優待者を当てるゲームに不参加を貫いている。
俺だって一生懸命話しかけたりしてみてるんだけど、うんともすんとも言わねえんだからどうしようもない。
これだとAクラスに優待者がいたら逃げ切り確定じゃん。
せいぜい、BクラスとかCクラスに優待者がいることを願うしかなさそう。
せめてクラス内だけでも連動が取れたらなぁ。
平田とか櫛田ちゃんあたりならクラスの優待者を把握してそうだけど、聞いても教えてくれなかったし。
平田ってほんとそういうとこあるよな。誰を守ってるのか知らないけど、もうちょっと協力してくれていいじゃん。
櫛田ちゃんは、いいんだ。だって、櫛田ちゃんって相談しやすいからいろいろ相談されてるだろうし、それを黙っていてくれる優しさがいいよね。櫛田ちゃんの前だと素直になれるというか、色々あるじゃん。
だから櫛田ちゃんが知っても黙ってるのは、正解だと思う。
あーあ、明後日には試験が終わるし、どうすりゃいいんだろうなぁ。
◇◇◇
「どうにもならなかったぁああああ」
怪しいやつすらいないってどういうこと!?
優待者はAクラスだったのか?
自分の直感を信じて、裏切りメールを送ろうとしたところで、先にグループから裏切り者が出て、試験が終わってしまった。
鳥グループ結果
裏切り者の正解により結果3とする。
うーん、これも前と同じパターンだ。
なんでだろうな。全然分からなかったのに、裏切りに成功してやがる。
どうやったんだ?
結局Dクラスは、全体でクラスポイント+50という結果に終わってしまった。
無人島試験と合計して、+87ポイント。
無人島前に0ポイントに戻ったから、そのまま8月以降のクラスポイントだ。
うう、Aクラスが遠いぜ。
あ、でも退学にならなかったら、やり直しをはじめてからの最長期間は更新か。
よーし、前に進んでる気がしてきたぜ。
「2学期から巻き返すっきゃねえな」
気合を入れ直して、俺の夏が終わった。