やまうちのなく頃に   作:おやまうちさま

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ループ8回目その5 2学期

 今日から2学期だぜ。

 

 なんか忘れてるなって思っててさ、思い出したことがあるんだ。

 今年はプールに行ってねえじゃん!?

 

 つーか、誘われなかったから忘れてた。

 前の時は、色々あってドタバタしたけど櫛田ちゃん達と水上バレーやったりで楽しかったんだよなぁ。あーあ、イベントを1回逃すとか俺らしくねえなぁ。

 

 寛治との距離がそのまま出ちまった感じか。

 健とも無人島で色々あったから微妙な感じだし。

 なんだよー、俺が止める間もなく食った健が悪いじゃんかよ。逆恨みしやがって。

 

 綾小路とか佐倉とか堀北は誰かを誘うタイプでもないしなぁ。

 

 誘ってくれそうなのは櫛田ちゃんだけど、櫛田ちゃん忙しかったのかなぁ。

 前の時は、どうにか一緒に遊ぶことができたけど、大人気の櫛田ちゃんだもんな。たぶん今回は、別のメンバーで遊んだりしたんだろ。

 そうだ、そうに違いない。

 

「桔梗ちゃん、おはよう。この間はプール付き合ってくれてありがとう」

「寛治くん、おはよう。ううん、こっちこそ、誘ってくれて嬉しかったよ、堀北さんと一緒に遊ぶのが新鮮だったし」

 

 なぁにーーーー、やっぱり寛治達と櫛田ちゃんでプールに行ったのかよ。

 しかも、いつの間にか名前呼びになってるし。

 

 寛治、お前には篠原っていう地雷がいるじゃんか。

 くっそーーー、一緒できなかったのが悔しいぜ。

 

 ああ、もういい、過ぎちまったことは仕方ねえし、2学期だ2学期。

 Aクラス入りを目指して頑張らないと。

 

「ただなぁ……2学期ってやることがねえんだよなぁ」

 

 やる気はあるのに、やることがない。

 2学期に実施される試験は2つしかないせいだ。

 体育祭とペーパーシャッフル試験だ。

 

 簡単に言えば、前者は運動テスト、後者は学力テスト。

 こういう単純なやつって、前回の経験と俺の発想力を活かす場面がないっつーか。

 体育祭は運動が得意なヤツ頑張れよって感じだし、ペーパーシャッフル試験は勉強が得意なヤツしっかりな、で終わるんだよなぁ。

 1学期中間テストと同じようなやつっつーか、無人島試験とか優待者試験とかなら俺の出番もあるけどさー、こういうのは違うよなぁ。

 どうしろっつーんだ。

 

 やることがないってなると遊びたくなるけど、クラスポイントが低いせいでプライベートポイントもかつかつっていう。最初の時みたいに、いきなりプライベートポイント使いまくったりせず節約してたのに、なんで最初の時よりひどくなってんだよぉ。

 

 確か9月の時点で最初の時は、毎月2万くらい入ってたはずだよなぁ。

 それが今回は、8700ポイント。泣けてくるぜ。

 

 こんな感じで体育祭シーズンへと突入した。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 そして、終わった。

 

 本当に特に触れるようなことがない感じ。

 最下位取って健に殴られるし、クラス対抗競技は龍園クラスにいいようにやられるし、健は途中で拗ねていなくなるし、堀北はなんか怪我してたし。

 

 一応綱引きで、途中で相手が手を放すかも知んねーってみんなに教えてやったけど、だからといって手を抜くわけにもいかないしで、結果は変わらなかったんだよなぁ。

 龍園の命令でCクラスが一斉に手を放して、俺らは尻もちをつくっていう。一歩間違えたら人間将棋倒しで超危険じゃん。

 

 堀北が最初の時に怪我したことを覚えてたから、堀北にも怪我には気を付けようぜってアドバイスしたのに、何言ってんの見たいな目で「そうね、気を付けるわ」とか返されてさ、結局怪我してんじゃん、ちょっと堀北ざまぁって思ったよ。

 でも、体育祭が終わった後も顔色が悪かったから心配してる、ちょっとやばいんじゃねえの。

 

 健は拗ねて体育祭を途中で放棄して出ていくのは前と一緒、でも今回は戻ってこずにそのまま終わっちまった。

 

 あとこれは余談だけど、綾小路はリレーでそこそこな走りでゴールしてた。

 やっぱ前の時の、やたら足が速かった綾小路って例外中の例外で、たまたま足が速い綾小路だっただけで、本当の綾小路の実力はこんなもんなんだよな。

 俺達の綾小路が帰ってきた気がする。

 

 そのおかげか、寛治と綾小路が仲良くなってて、俺のポジションがないっていうなんなの状態。

 寛治、健、綾小路の3人でつるむことが増えてやがる。

 

 結果はもちろん、学年のクラス別順位ではDクラスが最下位。ただ3学年が協力する赤組(A組+D組)VS白組(B組+C組)は、2年3年のAクラスが圧勝していたおかげで、赤組の勝利と同じ結果に終わっている。

 

 最初の時が最下位だった時点で、良くはなっても悪くはならねえもんな。

 3年2年のAクラスがやたら強いおかげで、よほど足を引っ張らない限り、赤組の勝ちは揺るがない陣容だし。

 

 たださ、ぶっちゃけるなら赤組と白組の勝敗は何の意味もなかったぜ。

 つーのも、Dクラスの体育祭前のクラスポイントは、87ポイント。

 学年のクラス別で4位になった時点で、-100ポイントだからな。赤組と白組対決は勝ってもプラス無し、負けたら-100ポイントってルールだったから、学年のクラス別だけでポイントが0まで戻ったDクラスにとっては、どっちが勝とうが意味がないっていう。

 

 あーもう、嫌になりそうだぜ。

 

 あとは、次の中間テストでペナルティーが出る総合成績下位10位。結構ドキドキだったけど、どうやら俺はギリギリセーフだったっぽい。

 

 ほら、たまたま強敵とばっか同じ組で走ることになっちまったから、順位が伸びなかっただけでさ。俺だって博士とか相手なら楽勝だったのに。

 どうせなら足が悪い坂柳ちゃんと勝負したかったぜ、絶対に勝てるじゃん。坂柳ちゃんが男だったらな。なんで女なんだよ、坂柳ちゃん。

 

 あっという間にペーパーシャッフル試験に突入した。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 ペーパーシャッフル試験。

 2学期期末試験を使って、各クラスで争う試験だ。

 組み合わせは、A対B、C対Dと決まった。前と同じだ。

 

 重要なのは、テストで退学に関してはペアで戦う試験であること。

 

 赤点の基準は、各自100点×8科目の試験に対して、ペアの合計点で目安が700点以下。

 科目別では、ペアの合計点で60点以下が赤点となる。

 

 個人で考えれば、科目別で30点。総合点で800点中350点取れればとりあえず大丈夫って感じだ。

 ペアの相手によっては足を引っ張られるから、ペアが超大事。

 で、そのペアを決めるのがミニテストの結果よ。

 俺は堀北に指示されるまま白紙解答を提出することにより、余裕でミニテストを突破した。これで万全に本番を迎えられるんだぜ。

 

 と思っていた時期が俺にもありました。

 

「なんでペアが下着泥なのよ、最悪」

「それはこっちの台詞だぜ。よりにもよって東かよ」

 

 ペア決めは、ミニテストの結果で1位と40位、2位と39位と成績が良い生徒と悪い生徒が順番に選ばれる仕組みだ。

 俺がアドバイスするまでもなく堀北が気付いてた。

 

 だから、クラスで成績が悪い生徒の下から10人が0点を取ることで、成績の良い生徒と確実にペアが組めるという作戦だ。その結果、俺含めて0点で10人が並ぶわけじゃん。

 そうなると同率最下位だから、ランダムで成績の良いやつとペアになっていくわけ。

 

 前の時は、無事に平田っていう大当たりを引けたのに、今回はよりにもよって東咲菜、優待者試験でも同じグループだった嫌な女だ。

 たしかに成績は良かったはずだけどさー、俺を下着泥扱いする女とペアとか最悪じゃん。

 

 どうせなら櫛田ちゃんとペアが良かったぜ。

 ちゃっかり寛治が今回も櫛田ちゃんとペアを組んでやがる。

 最悪、堀北とか幸村みたいな嫌な奴だけど、学力ツートップとかがペアでも許す。

 

 でも東だけはねーわ。俺のくじ運を恨みたいぜ。

 

 まあ、前回もどうにか突破できた試験だし、今回もいけるっしょ。

 勉強会もそれなりに参加しとけば大丈夫のはず。

 

 東じゃ一緒に勉強とかねえな。俺と一緒の空気を吸うのも嫌そうだもん。下着泥下着泥って鏡見ろっつー話。誰がお前なんかの下着なんか盗むか。使用済みでタダだったとしても貰うか考えるレベルじゃん、考えた結果貰うけど。

 

 

   ◇◇◇

 

 

「ペア試験の結果で赤点が出た。山内、東、お前らのペアは退学だ」

 

 茶柱が無情な通告をしてきた。

 クラス中が静まり返る中で、俺と東が同時に立ち上がる。

 

「は? なんでよ。私、一番悪い英語でも50点取ったのに」

「俺だって、一番良い社会は50点取ってたじゃん」

 

 あれだけ意見も性格も好みの異性のタイプも合わなかったくせに、こんなときだけ息ピッタリで茶柱に反論した。

 

「誰も社会の話なんか聞いてない。山内、あんた英語は何点だったわけ」

「難しかっただろ、引っかけ問題とか多かったし、やたら難しい長ったらし単語ばっか書かせられたりさ」

「だから何点だったのよ」

「8点」

「最悪」

「こっちが言いたいぜ。お前が54点以上取ってたら、巻き添えで退学にならずに済んだんだぞ」

「どう考えても被害者は私でしょ」

「お前とペアになったせいじゃん」

 

 最初の時みたいに平田とペアだったら、俺が退学になることなんかなかったのに、俺のペアが東だったばっかりに退学になってしまった。

 

「そろそろ黙れ。退学という事実は覆らない。これから職員室まで来てもらう」

「そんな」

「分かりました」

 

 東は絶望してるっぽい。俺も辛い……辛いけど、流石に慣れもあったりする。これで何回目の退学だっけ。今回は良い感じにきてると思ったんだけどなぁ。東のせいでこんなことになるとか、ついてねえ……。

 

 良い感じと言っても、まあ、クラスポイントは0だったけどさ。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 そして俺は、何度目かのバスの中にいた。

 

「…………って、東を巻き添えにしちまったーーーーーー」

 

 退学処分を食らってすぐは、巻き込まれに頭に来てたけど、バスの中で一度冷静になってみたら、ちょっとは申し訳ないことしたような。

 

 うーん、でも東からあれだけ下着泥、下着泥って連呼されたらさ、俺だって頭に来るじゃんか。

 だからといって俺の英語が酷い点数だったのは、変わらないけどさ。

 

 もうちょっと、本腰入れて勉強しないとダメじゃね?

 

 俺がこうしてバスに揺られてるのは、何故なのかは分からない。

 だからあんまり振り出しに戻されることを前提にしちゃ、ダメなことだと思ってた。

 いつかは退学してそのままバスに戻らずに終わる、そんな気もしてる。

 

 けどさ、こうして経験したことは持ち帰ることができる。

 

 だったら勉強して成績を上げれば、東だって救えたんじゃねえの?

 いけ好かねえ嫌いなやつだけど、クラスメイトだもん、退学はやっぱつれえよな。

 

 俺が東を救う。そのためには、やってみっか勉強。

 

 でも、目標が無いと締まらないよなぁ。

 

 そうだ。櫛田ちゃんのことを信用して、特におざなりになってる中間テスト。

 これを目標にしてみるか。

 

 櫛田ちゃんが用意してくれる過去問に頼ることなく、中間テストを突破すること。

 

 これが出来ればその先の可能性も広がるんじゃね?

 なんかすっげーいい考えに思えてきた。

 

 よーし、そうと決まったら頑張ってみるか。

 ごめんよ、櫛田ちゃん。せっかく用意してくれた過去問は、しばらく使わないようにするぜ。

 

 

 後に俺は思うわけよ。この目標を突破するために、まさか、あれだけかかるとは……あーあ。

 

 次回、山内ハルキの憂鬱 第20話『エンドレス・テスト』お楽しみに。




成長したのかしていないのか、クジ運の悪さに振り回されて繰り返される8回目の惨劇。
新たなる決意を固めたやまうちのなく声だけが変わらず、
毎度、お馴染みの退学を告げていた。

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