やまうちのなく頃に 作:おやまうちさま
結果発表ーーー!
「Dクラスは……238ポイントで1位だ。以上とする」
Aクラスの担任からの発表に、クラス中から大歓声が沸き上がる。
伊吹ちゃんが消えて、堀北が体調不良でリタイアした時はどうなるかと思ったけど、どうやら堀北は今回はやる気を出してくれたみたいだ。当たり堀北だ。やったぜ。
あとは、体調不良にさえならなきゃ、Dクラスが堀北リタイアで引かれた30点を足して、268ポイントで圧倒的だったんだけどなぁ。
中々大当たり堀北ってわけにはいかないらしい。
「あれ? 当たり堀北って最初の時以来だよな」
健がう〇こでリタイアしたり、健が腹痛でリタイアしたり、俺が下着泥棒になったり、無人島試験も色々あったけど、当たり堀北に合うのは、2回目だったはず。
「……どちらも俺がドロドロにした堀北であってるよな」
何度も繰り返した無人島。記憶違いが起きていないのか、どうにか思い出す。
泥だらけは綾小路から条件が出たときだけのはずだ。
1回目は、佐倉のメアドのためにやった。
2回目は、櫛田ちゃんの風呂上がりのためにやった。
3回目は、櫛田ちゃんの入浴シーンのためにやった。
って3回じゃん。無人島当たり北は2回だけだから、関係ないのか?
あ、でも2回目って俺が堀北に殺されたやつじゃん。当たり北だったのか外れ北だったのかわっかんねー。
くっそー、俺が殺されてなかったらどっちか分かったのに、なんで殺したんだよ堀北。
もう1回試してみる?
「でもなぁって、綾小路に動画貰わないとじゃんか」
携帯端末は返却された。
これで俺の櫛田ちゃん入浴動画を阻む壁はない。
「おーい、綾小路ぃいいいいい」
なお、綾小路から動画が貰えなかったことだけは明記しとくぜ。
あいつ、いつか絶対しばいてやる。
ん? 今なんか大事なことを考えてたような……まあ、いっか。
◇◇◇
つーことで、無人島を大勝利で終わって、優待者試験がやってきたんだぜ。
昨日説明が終わって、今日は優待者が発表される日だ。
今のところ、2回連続で外してしまってるから、今回こそはって想いが強い。
12分の1? 13分の1を2回連続で外したら次は当たる。
この辺ってどうなんだっけ。数学を学んだから行ける気もすっけど、確率はまだ先なんだよなぁ。
確率を学んだら計算してみよっと。おーー、こうやって勉強ができると特別試験でも活きてくるんだな、すっげぇ。俺、勉強が身についてる。
『厳正なる調整の結果、あなたは優待者に選ばれませんでした』
でも、運は身についてなかったっぽい。ぐすん。
そろそろ俺に順番が回ってきていいと思ったんだけどなぁ、そんな甘くなかったか。
こうなってくると出来ることが限られるんだよなぁ。
どうにか優待者を見つけ出したいけど、どうなるんだか。
◇◇◇
どうにもならなかったんだぜ。
この試験って運だけじゃね?
優待者になれるかどうかで全てが決まるっつーか。
高円寺は今回も正解してたみたいだけど、あいつって運良さそうだし、勘が当たったんだろ。
俺はそんな無茶しなかったぜ。ほら、一応クラスに迷惑かけたらダメだしさ。
せっかくここまで順調に来てるんだから、危ない橋を渡らずに行くだけよ。
前の時は、東から下着泥下着泥連呼されてたからきつかったけど、今回はそんなこともなかったし、試験に集中出来てたんだけどなぁ。
まあいいや、気持ちを切り替えよう。
せっかくの豪華客船だし、残り僅かな船旅を満喫しないとだな。
よーっし、遊ぶぞーーー。
◇◇◇
8月下旬。
「ついに山内史上最大の作戦を決行する時が来たぜ」
無人島前の7月頭の時点で165ポイント。
無人島の成果が238ポイント。
優待者試験で50ポイント。
つーわけで、Dクラスのクラスポイントは453ポイントまで回復してる。
やっぱ中間テストを頑張った回があったつーか、今回いつになく順調なんだよなぁ。
欲を言えば優待者になっとけば、もっとよかったけどさ。
中間テストは、実力で突破できたし。
佐倉は、健の暴力事件の証言をしてくれたし。
泥だらけになった堀北がリタイアしたけど、無人島試験で頑張ってくれたし。
もちろん下着泥棒なんかにならずに済んだ。
だいたい俺が下着泥とかするわけねえっつーの、東と篠原だけは一生許さん。
優待者には成れなかったけど、最低限のポイントも増えてる。
おかげで9月になったら4万5千3百円。
ここまで収入があるなら、節約生活も終わりというか、溜めてた分を夏休みで使い切っても生活には困らないじゃん。
5万ポイントくらい手元に残ってる。
で、忘れちゃいけねえのが、前回参加できなかったプール。
5万ポイント×プールイベント。
この組み合わせでさ、失敗したあの計画を実施できるってわけ。
「やっぱ、女子更衣室を盗撮しねえとな」
ほら、俺ってこうやって何回も繰り返すうちに失敗の反省をして、突破してきたわけじゃん。
だからさ、前に挑戦した時に何で失敗したんだろうってしっかり考えたわけよ。
やっぱ、寛治とか健とかこういっちゃアレだけど、バカじゃん?
バカ2人が仲間だったせいで足を引っ張られた部分がでかいっつーかさ。
あんときは、クラスポイントが一旦0になるわ、ポイントは使い切ってるわで散々だったからさ、3人で協力して出しあわないと機器が手に入らなかった。
だから協力せざるを得なかったからけど、やっぱ失敗だったなって反省してる。
こういうのは少数精鋭。賢い頭脳役が一人いれば実施できるんだから、足を引っ張られる要素は消すのが正解じゃん。
どうにか3人で4万ポイントかき集めてやったけどさ、今の俺は5万ポイント持ってる。
つまり、俺一人で実施可能ってわけ。
しかも5万ポイント使えるから、前回よりも機器をパワーアップできる。
やっぱ撮影データが消えたのは、安物使っちまったからだよな。
せっかく俺が綾小路を巻き込んでポイントを出させろっていったのに、説得に失敗してさ。本当に無能が仲間だとこれだから困るぜ。
失敗の反省は、この辺でいっか。
既に櫛田ちゃん達との約束は取り付け済み。
明日、ケヤキモールに行って、家電量販店で材料を買い集めよう。
よーし、今回の俺の計画は完璧なんだぜ。
絶対に、櫛田ちゃんとか佐倉とかオマケで堀北の全裸を撮ってやる。
あ、Bクラスの一之瀬とかもいたんだよなぁ。
うっひょ―――、やる気出てきたぁ。
目がギンギンでなかなか寝付けねえけど、さっさと明日にならねえかなぁ。
◇◇◇
「俺ってやっぱ天才かもしれねぇ」
ラジコンカーに小型カメラを搭載して、部屋の中で動作を試す。
順調に部屋内を走り回るラジコンカーで、撮影できたのを確認できた。
あ、ベッドの下から銀英伝外伝の3巻を発見。どっかに行ったと思ってたらこんなところに落ちてたのか。
あとは、本番当日に撮影するだけだ。
通風孔の位置と構造はバッチリ覚えてる。こればっかりは忘れられるもんじゃないし、天才的な記憶力ってやつ?
イメージトレーニングもパーペキだ。
通風孔を塞ぐ蓋はドライバー使えば5秒で外せる。これも準備済み。
ちょっとデカタオルで隠れて着替えてる振りをすればイチコロって寸法よ。
本当は、事前にプールで試せればいいんだけどさ、プールを使えるのは3日間のうち1日だけなんだよなぁ。なんか人気過ぎて制限とかだったはず。
危ない危ない、思い出せてよかったぜ。
初日に練習のために行って、櫛田ちゃんとかかわいいどころが居ない更衣室を無駄に撮影して終わるところだった。
櫛田ちゃんとかと約束したのは3日目の最終日だ。バッテリーもしっかり充電して本番を迎えないと。
◇◇◇
本番当日。
コミュ力の高い寛治が動いたことにより、櫛田ちゃんに堀北や佐倉とかがプールに参加した。
しかもおっぱいという意味で戦闘力の高いBクラスも、今日を選んだというオマケつき。
「うぉおおおお、着替えようぜ」
「落ち着けって山内」
「慌てて着替えたって女子の着替えは長いって聞くし、プールで待つだけだぞ」
オープンと同時に更衣室に突貫。
猛ダッシュで最奥のエリアを確保する。
ロッカーを開いて、扉とバスタオルを使って死角を作り出す。
こっからはスピードが勝負だ。時間をかけると怪しまれる。
ポケットから取り出したドライバーで通風孔の蓋を自己最速の4秒で突破。行ける、今日の俺はいつになく絶好調だ。
「楽しみだぜぇえええ」
「山内うるせえぞ」
不自然な音は叫び声で吹き飛ばす。
ついでに衣服も脱ぎ捨てて周囲に投げることによって着替えてますよアピールをしつつ、鞄からラジコンカーを取り出して通風孔にセット。いっけーー、俺のブリュンヒルト*1
ラジコンの捜査は見なくてもいける。突き当りにぶつかったら曲がるだけだ。
左、右、左。
よーし、これで女子更衣室の通風孔の入り口まで辿り着いたはず。
あとは帰りに回収すれば、みんなの着替え&全裸をゲットだぜ。
「プール行こうぜ、プール」
「なんだよ、そのテンション」
「お前今日おかしいぞ」
「いいんだってば」
「とりあえず着替えろよ、フル〇ンじゃねえか」
「ああ、忘れてた」
いけねっ、水着着るのを忘れてた。
危ない危ない、露出狂として捕まるところだった。
大人しく水着を着用して、プールへと向かった。
◇◇◇
「フー、遊んだ遊んだ」
プールを堪能しまくれてよかったぜ。
あとは、今年の成果の夜のお楽しみを堪能するだけ。無事に回収も終わって、着替えも完了。
「帰ろうぜ」
「だからなんでそんなテンションが高いんだっつーの」
だって早く帰って盗撮動画をチェックしたいし。言えないけど。
普段なら気にならない女性陣の着替えの遅さに、イライラしながら待って合流。さあ、プールを出ようとしたところで出口に人だまりが出来ていた。
「どうしたんだ?」
「荷物検査だって、更衣室で盗みが出たとかなんとか」
「まじか、最低じゃん」
水着を盗んだのか、下着を盗んだのかは分かんねーけど、泥棒とか最低じゃん。
あーあ、スムーズに帰ってさっさと動画が見たいのに。時間が掛かって仕方ねえよ。
20分程、プールで遊んだメンバーでダラダラ喋りながら待って、ようやく俺達の番がやってきた。
「…………」
「これは、俺の水着っすよ」
「…………ちょっと来い」
「え? だからこれは俺の水着ですって」
提出した鞄の中身をチェックされたところで、荷物検査の担当者が止まった。
寛治達の時とは違った対応に、俺の水着だということをアピールした。
けど、それもむなしく列の輪から連れ出されて、別室に案内された。
「……なんなんすか。俺別に盗みとかしてないっすよ」
「これはなんだ」
「あ……」
担当者が気にしていたのは、水着じゃなかった。我がブリュンヒルトだ。
「それは、プールで遊べるかなって思って」
「なぜカメラがついている」
「モニターを見ながら遊ぶんですよ。やだなぁ、知らないんですか今流行ってるのに」
「分かった。それなら映像をチェックさせてもらっても問題ないな」
「いや、それは俺のプライバシーが」
ええ、なんでなんでなんで。
盗みが出たんだろ。映像チェックとは関係ねえじゃねえか。
待て、なんでわざわざ映像チェックのために女の先生を呼んでくるんだよ。それだとまるで変な動画が入ってるみたいじゃねえか。
10分後。
「山内、お前は退学だ」
「……なんでだよ」
「この高校じゃなくても退学だ」
こうしてテストを乗り越えて、下着泥棒の汚名を受けずに絶好調モードだった俺は、盗撮犯として退学することになった。
「せめて、退学になるにしても動画の中身を見てからにしろよぉおおおおおお」
俺の悲しい叫び声が響いた。
ガチな犯罪者になってしまったやまうちのなく声だけが変わらず、
毎度、お馴染みの退学を告げていた。