やまうちのなく頃に 作:おやまうちさま
「なんで優待者じゃねえんだよ!?」
これで何度目だ。
確率的には、俺がもう優待者に選ばれてもいいはずじゃん。
徳も積んだって言うのにさ。
Aクラスに配属された分で、徳を使いきったとか?
だいたい4割くらいで、1回は優待者に選ばれてないとおかしいんだけどなぁ。
俺の計算が間違ってるとか?
うーん、確率は2学期以降の勉強だから微妙にまだ自信ないや。
くっそー、優待者になったら色々やれることがあったんだけどなぁ。
「春樹、何もするな」
「え!?」
「この試験は優待者を探さない。それがベストだ」
「どういうことっすか、葛城さん」
俺がどうやって試験に挑むのか考えていたら、葛城さんから指示が入った。
葛城さんが言うには、学校は公平に全クラス3人ずつ優待者を選んでいるはずだから、誰も動かなければ、優待者がプライベートポイントを貰うだけで終わってプラスになると。
そういや、毎回Aクラスは話し合い拒否してたっけ?
なるほど、そういうことだったのか。さっすが葛城さん。
何もしなくていいなら、楽勝じゃん。よっしゃー、俺も何もせずに大活躍してやるぜ。
何もしないことを決意して、気合を入れて兎グループの部屋へと向かった。
「…………」
俺は何もしない。博士とか綾小路とかがいるけど、声をかけたりしないぜ。
メンバーはこうなっている。
兎(うさぎ)グループ
Aクラス 竹本茂 森重卓郎 山内春樹
Bクラス 一之瀬帆波 浜口哲也 別府良太
Cクラス 伊吹澪 真鍋志保 藪菜々美 山下沙希
Dクラス 綾小路清隆 軽井沢恵 外村秀雄 幸村輝彦
Bクラスのリーダーの一之瀬がいるってことは、賢いグループじゃね?
幸村もいるし、俺もついに学校側に能力を評価されたじゃん。
あ、でも博士とか軽井沢とか綾小路がいるってことは違うか。
賢いグループならこの3人は入らねえよなぁ。
まあいっか。やることをやっとこう。
「Aクラス山内春樹。自己紹介以外しないからよろしく」
グループディスカッションが始まるが否や、俺は誰よりも早く名乗り上げた。
どうよ、このやる気満々っぷり。
これが葛城さんの命令、何もするなを忠実に守る男のスピードよ。
自己紹介はしたけど、学校側からするようにって言われてたし。
「……Aクラスの竹本茂だ」
「Aクラスの森重卓郎」
俺に続いて部下2名も自己紹介を終わらせた。
偉いぞ。
葛城派の竹本はいいけど、森重は坂柳ちゃん派だ。葛城さんの指示を守るのかどうかちょっと不安だったが、どうやら杞憂に終わったみたいだ。
「今、自己紹介以外しないって聞こえたけど、どういうこと?」
すぐに一之瀬が突っかかってくる。
「…………」
だが、スルーしてやる。
だって、葛城さんに何もするなって言われたし、何もしないったら何もしない。
一之瀬のおっぱいが眩しいけど、華麗にスルーしてやるぜ。
いかん煩悩が生じている、あとで豪華客船のプールにでも行って汗を流しとかないと。
Aクラスの断固たる拒否っぷりに、Bクラスがお冠だったけど、別に悪いことしてないし何も問題はない。話し合うのかどうかも自由なはずだ。
どうせ優待者は各クラス3人と平等なんだから、これが最善に決まっている。
「…………」
あれ? 今嫌な予感がした。
そういえば、試験結果ってどうなるんだっけ?
Dクラスは可もなく不可もなくで終わってたけど、Aクラスの結果って芳しくなかったような。
葛城さんの指示が徹底されなかったせいだな。
徹底さえしておけば、鉄のカーテンを崩せるやつなんかいない。
そこは流石のBクラスリーダー。Aクラスの話し合い拒否すればノーリスク! の狙いを看破されたけど、大丈夫だ。
この作戦の優れているところは、相手にばれても影響しないこと。
そのまま最初の1時間を自己紹介以外で口を開くことなく突破した。
葛城さん、俺やったよ。
なんか終わった後で軽井沢がCクラスの生徒と揉めだしたけど、どうせ軽井沢が悪いことやったんだろ。プールに行って煩悩を払おう。
「水着最高じゃぁあああん。いかんいかん、煩悩退散、煩悩退散」
遊びに来ていた水着女子に心をぐらつかせながらも、どうにか我慢することができた。
うーし、俺も成長してるぜ。
◇◇◇
数日後。
「もう1回!」
「なんだよ、は──外村。仕方ねえな。ほら、貧民が配れよ貧民が」
「ぐぬぬ……」
試験3日目。俺は一之瀬が提案した大富豪を楽しんでいた。
俺の智謀が冴えわたって、一度富豪の地位を確保したら、あとは強いカードと弱いカードを交換する権利で、博士から強カードを受け取って勝ち抜けだ。
最後の勝負で、一之瀬から捲られてしまったけど、一度も貧民に落ちることなくAクラスの実力を示すことができた。
油断して博士って呼びそうになったのは、ちょっと焦ったがセーフ。
いやー、こうやって遊ぶのは楽しいなぁ。
ほら、Aクラスってなんか肩肘張ってる連中ばっかだからさー、バカな遊びもたまにはやりたくなるわけ。
「山内、いいのか?」
「話し合いを拒否することが大事じゃん」
こっちは真面目にやってんのに、こうやって竹本とかが忠告してくるわけ、めんどくさ。
俺は話し合いは一切拒否してるじゃん。トランプで遊んでるだけで。
あーもう、なんつーの? 臨機応変さが足りないって感じ。もうちょっと精進したまえ竹本くん。
よーし、このまま葛城さんの方針を貫こうぜ。
◇◇◇
「ねえ山内くん。話し合いの後で私たちと遊びに行かない?」
「俺でいいのか?」
「うん、遊び相手が見つからなくて」
おおお!?
俺にモテ期きたんじゃね?
優待者試験の話し合いの前に、Cクラスの女子が話しかけてきた。
伊吹を除いた3人だ。これはアレか、ハーレムってやつじゃん。
まあ、Aクラスのナンバー2になるとこれくらい余裕だっつーの。
「そこ邪魔なんだけど」
と、俺が真鍋達と話していたら、軽井沢が絡んできた。
「意味分からないんですけど、邪魔しないでよ」
「山内くんに用があるし、ね、山内くん」
少し媚びを売るようにした軽井沢はやっぱりカワイイ。
あれ? 俺の腕を引っ張るようにしてるけど、もしかしてこの感触って、おおおおおお、おっぱい!?
「ね、山内くんも私と遊びたいよね」
軽井沢って見た目だけは良いんだよなぁ。
「何言ってんだ? 俺は真鍋達と遊ぶし」
「はあ?」
「お前、平田の彼女だろ」
今更媚びてきてももう遅い。軽井沢の好感度なんか0を通り越してマイナスなんだぜ。
どうせ軽井沢は内心俺のことバカにしてるだろ。なんで真鍋達に対抗してきたのか知らんけど、俺は真鍋達を選ぶぜ。
おっぱいの感触は名残惜しいけど、腕を振り払って軽井沢と距離を取った。
「だよね、流石山内くん」
「任せろ」
「軽井沢さんって調子乗ってるよね」
「間違いない」
ぶはははは、軽井沢がいくら可愛くても所詮1人だし、ハーレムには勝てるわけないじゃん。
真鍋達もめちゃくちゃ可愛いしさ。
睨む前に日ごろの行いを反省しやがれ。
さ、今回も話し合いを拒否してトランプトランプっと。
試験が終わった後は、プールで1対3で遊びました。
煩悩最高、煩悩最高。
うはーーー、Aクラス最高だぜ。
早過ぎる。3時間が一瞬だったぜ。
でも、1対3だったおかげか、それ以上の進展はなかった。
あーあ、なんで真鍋ちゃん達の部屋は別々だったんだろう。同じ部屋だったら部屋まで遊びに行って、うっひょーーーーだったのにさ。
え? 俺の部屋?
葛城さんが無愛想に陣取ってるから無理だな。
Cクラスの女子を連れ込んだとか知られたら怒られそうだし。
葛城さんってそういうの嫌いそうだもんなぁ。しゃーない。
◇◇◇
こんな感じで、遊び惚けてるうちに最終日を迎えた。
「くーーー、やっぱりもったいなかったよなぁ」
後悔してるってほどじゃねえけど、悔やんでることが1つあったりする。
ちょっと聞いてくれよ。
真鍋達とさ、結構いい感じでさ。
なんとさ、昨日は真鍋からルームメイトがいないから部屋に来ない? って誘われちゃったんだ。
これってアレじゃん? プールの時は無理だったやつじゃん。
童貞卒業の大チャンスきたんじゃね?
しかも藪とか山下とかも一緒でさ、え、いきなり複数人!? マジか!?
とか、ウキウキだったんだけどさ。
いや、そりゃ分かってるよ。いきなりそうなるわけじゃないって。
なんかいい雰囲気作ってさって思ってたんだけど。
「……いじめはちょっとなぁ」
真鍋達は、軽井沢と色々あったっぽい。
で、軽井沢の悪口で盛り上がるまではさ、俺も結構軽井沢には言いたいことあったから話題が尽きない。このままいけば、やれちゃうんじゃね? って盛り上がりまくったところまでは良かったんだけどさ。
軽井沢が実はいじめられっ子で、強気で当たれば何でも言うこと聞くとか言い出して。マジかよって感じで流してたら、今度は何させよっかとかそういう話になってさ。
「いや、あんまりやり過ぎはダメじゃね?」
って止めたら、そっから総スカンよ。なんつうの? 味方認定から敵扱いに早変わりってやつ?
空気読めないなら帰ってって言われて、それで終わりよ。
くっそーーー、どうすりゃよかったんだ。
そりゃあ、軽井沢はムカつくけどさ。いじめとかは違うじゃんか。元クラスメイトだしさ。
うううう、でも、やりたかったぜ。
真鍋達、軽井沢のこといじめたりしてんのかな。
「そんなことねえよな。覚えてる限り2学期もいつものクラスの女王様って感じだったし」
仮にいじめられそうになっても、平田がどうにかしたんだろ、きっと。
あーあ、それなら真鍋達の話題に乗っかっとけばよかったのか。
うーんでもなぁ。
って、試験試験。気持ちを切り替えよう。
さーてっと、今日も話し合いは拒否するぜ。
とか思ってたんだけど、最終日は展開が違った。
Bクラスの浜口だっけ? 男子は名前があやふやなんだよなぁ。が、動いて自分の携帯に届いたメールを見せ始めた。
あれ? これはどう対処すればいいんだ?
竹本や森重に目配せしたけど、何も反応がない。
なんだよこいつら、葛城さんの命令さえ聞いとけばいいとか思ってないか?
ったくAクラスって言ってもこんなもんかよ。やっぱ、俺が対処するしかないか。
えっと、優待者じゃない人が名乗り上げて行って優待者を絞り込んでいく。
なるほどなるほど。
これ、俺が優待者だったらビビりまくったんだろうなぁ。
竹本や森重も違うって言ったから、結局Aクラスにはノーリスクじゃん。
絞り込んだところでAクラスが不参加だと絞り込めきれないし、何もしないが正解だな。
分かったか、竹本や森重。何も反応すんなよ。反応したら負けだからな。
Bクラスの3人、綾小路と続いて、Cクラスも開示した。
これで残っているのは、AクラスとDクラスの幸村、博士、軽井沢だ。
あれ? 結構絞れてない? これって大丈夫か!?
「俺が優待者だ」
「なんだってーーーーー!!!」
あ、思わず叫んじゃった。
幸村、お前名乗り上げちゃっていいのかよ。賢いと思ってたのにバカじゃん!?
ってことは、幸村って書いてメールを送ればクラスポイント50ポイント+50万プライベートポイントじゃん。
は、はやく裏切らないと。
ってあれ?
幸村の携帯が鳴りだした。
一之瀬が掛けたのか、何やってんだ一之瀬。
って、掛けたのは綾小路の携帯!?
え、ええええ、どういうこと!?
「フェイクだったんだね」
ここで一之瀬による種明かし。
幸村が見せた携帯は実は綾小路の携帯で、綾小路が本物の優待者だったらしい。
フー、危ない危ない。慌てて幸村が優待者って送ることだったぜ。
落ち着け、冷静になれ、優待者は綾小路で確定だ。
あとは何食わぬ顔で話し合いを終わらせて、裏切りメールを送ろう。
「…………」
長い。5分が1時間くらいに感じるぜ。
平常心平常心っと。
「全員裏切りは無しだからな」
口ではこう言っとこっと。
これで俺が裏切ったとか誰も思わないだろ。
さ、話し合いが終わったし、ええっと優待者は綾小路で送信っと。
ふー、葛城さん、俺がクラスポイント50ポイントゲットして試験を終わらせましたよ。
◇◇◇
結果発表。
兎グループ ……裏切り者の回答ミスにより結果4とする。
あれ? おかしい、メール間違えたかな。いや、綾小路で解答してるから間違いないか。
「どういうことだ!?」
葛城さんも困惑している。
これは、兎グループについて説明が必要だよな。
よし、俺が葛城派のナンバー2として葛城さんに報告してやるぜ。
「か、葛城さんアレですよアレ。森重だ。坂柳派の森重の野郎が裏切って失敗したに違いありませんよ。話し合いの時に怪しい動きしてたっす」
「く……何もするなと言ったんだが」
「これだから坂柳ちゃん派は。最低っすよ、最低」
あーあ、これだから坂柳ちゃん派はさ。クラスの足を引っ張るなっつーの。