やまうちのなく頃に   作:おやまうちさま

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まさかのAクラス編その7 Aクラスで卒業するのが大事っす

「……あーあ、せっかくの冬休みだっつーのに、楽しめねえや」

 

 2学期が終わって冬休みに入った。

 特に特別試験とかもない、純粋な休みだ。

 

 昔の俺だったら遊びほうけて過ごしてたけど、今の俺は遊ぶ気にもなれなかった。

 2学期最終日に、葛城派の解散が決まったせいだ。

 

「……勉強でもしとくか。3学期のテストって結構きつかったしさ」

 

 あーあ、これもそれも全部坂柳ちゃんのせいだ。

 

 2学期は、主要なイベントが2つあった。

 体育祭とペーパーシャッフル試験だ。

 

 で、体育祭までが葛城さんがリーダーだったわけよ。

 

「あいつら手を抜きやがって」

 

 Aクラスは、元々どちらかといえば運動よりは勉強に優れた生徒が多い。

 つっても、運動が出来る生徒がいないわけじゃない。

 

 たださー、その運動が出来るAクラス生徒っつーのが、橋本、鬼頭、神室と揃いも揃って坂柳ちゃん派だったってオチよ。

 

 競技で1位を取って欲しい連中が、3位~5位くらいでゴールしてるわけ。

 この辺隙が無いっつーか、露骨に最下位とか取ってたら責められるけど、可もなく不可もなくくらいの順位を上手く取りやがる。

 

 葛城さんにあいつ等は「わざと負ける」って指摘されてたから気づけたけど、指摘されてなかったら気づけなかったかもしんねえ。

 

 ただでさえ運動では優れてるわけじゃないAクラス。それなのに、出来るやつに限って手を抜きやがる。そりゃAクラスは学年3位も納得っつーか、最下位にならなかっただけマシって感じだ。

 

 Aクラスがそんな状況で最下位を取るDってどんだけひどいのかを改めて知るっていうさ。

 まあ、あっちはあっちで相変わらず高円寺は不参加だし、健はブチ切れて途中で放棄するし、そりゃそうかって感じ。

 こっちの出来るやつは3位~5位だけど、あっちの出来るやつは最下位にすらならないんだから、Aクラスが勝つよな。

 高円寺がどれだけ出来るやつなのかとかしんねーけど。

 

 で、リーダーの葛城さんが負けの責任を取らされて、ペーパーシャッフル試験では坂柳ちゃんがリーダーになった。

 

 結果は、2点差でBクラスに勝ち。

 点差は僅かつっても、勝ちは勝ちだ。

 直接対決だったおかげで、クラスポイント100ポイントアップだ。相手は100ポイントダウンだから、トータル200ポイントの差がついた。

 

 坂柳ちゃん派の生徒は、しっかり点数を取ってたし、葛城派もわざと負けにいくようなふざけた奴はいない。

 Aクラスが本気を出せばこんなもんだ。

 

 俺? 俺も、まあ余裕だったぜ。

 本当だぜ? ペア相手の方が点数高かったけどさ。

 

 あ、そうだペア決め。

 ペア決めには、法則があるじゃん? 小テストの結果で決まるってやつ。

 俺気づいたんだけどってドヤ顔で提案したんだけどさ、却下されるっていう。

 

『Aクラスに小細工は必要ありません』

 

 で、終わりよ。ひどくね?

 それで勝てたし退学者も出なかったから文句も言えねえけどさ。

 俺の見せ場が小細工呼ばわりで潰されたし、ひでえよ。

 

 葛城さんがリーダーだった体育祭は、敗北。

 坂柳ちゃんがリーダーだったペーパーシャッフル試験は、勝利。

 

 各リーダーの明暗が分かれる結果となっちまった。

 

 この結果を受けて、葛城さんが派閥の解散を決めたんだけど、俺は当然反対した。

 あいつらが手を抜いてる。騒ぎましょうって言ったんだ。

 

「騒いだところで、関係が悪化するだけで、クラスに得にはならない。いつまでもクラス内で争っていては、他のクラスを喜ばせるだけだ」

「葛城さん……」

「よくついてきてくれた。礼を言う」

「葛城さん……」

 

 俺、泣いたね。

 いや、泣くって。こんなん泣かないとか無理っしょ。

 

 葛城さんが一番怒っていい立場なのに、最後まで葛城さんはクラスのことを考えて身を引いてさ。

 一部から敗北者呼ばわりされてるんだぜ? ひっでーよ。

 

 葛城さんはハゲてるだけで、敗北者じゃねえし。

 

 あーあ、俺がAクラスでやってきたことって何だったんだろうな。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 冬休みの間で、どうにか気持ちに折り合いをつけて3学期に突入した。

 葛城さんがあのタイミングで解散を決めたのは、折り合う時間を作ってくれたのかもしれない。

 流石葛城さん。

 

 ほら、葛城派が解散しちゃったのは悔しいけどさ。

 俺らAクラスじゃん?

 ポイントウハウハ継続中じゃん?

 

 だったらこの生活を楽しめばいいじゃん。坂柳ちゃん派に、俺という戦力が加わったら盤石になるし、そこに葛城さんも合流でしょ、これで最強チーム結成っつー寸法よ。

 

 退学にならないように、バッチリ予習できたし、俺もAクラスの一員として頑張るぞ。

 

 まずは、綾小路のアレがデカい合宿か。

 これはある意味慣れっこなんだよなぁ。前回も俺以外全部Aクラスっていう環境で勝ち抜いたし、余裕余裕。

 風呂場で綾小路のTレックスを囃し立てる練習だけしとこ。

 

「あ、それ、TレックスTレックス」

 

 よし、完璧。

 葛城さんも結構デカいけど、綾小路には勝てない。

 葛城さんは所詮、Aクラスって感じだよなぁ。

 Tクラスには勝てねえよ。

 

 

 あ、無事にAクラスに戸塚を加えたグループが1位を取ったぜ。

 うっし、これでクラスに貢献できたし、また一歩Aクラスでの卒業に近づいた。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 で、クラス内投票。

 

 俺にとっては、退学になった因縁の試験だ。

 昔の俺だったらめっちゃビクビクしてビビり倒して、坂柳ちゃんに相談して失敗したけどさ。

 

 今の俺は、Aクラスの山内だから余裕っつーか。

 しっかりAクラスの戦力になれてる自信あるし、俺が退学になる要素ないんだよなぁ。

 

 後は誰に入れるのかだけ考えとかないと。

 

 賞賛票は、葛城さんは鉄板だろ。残り2人かぁ。見た目の良い白石とか森下に入れとくか。

 女子が減るのは寂しいからな。退学になるのは、男子であって欲しいし。

 

 他クラスの賞賛票は、健にしとくか。

 ほら、アイツって退学筆頭候補じゃん。

 俺がいれたくらいで救われないかもしんねーけどさ、ちょっとは救ってあげないと。

 

 俺のせいで何回か退学になっちまったしさ。恩返しってやつ?

 

 問題は、批判票なんだよなぁ。

 

 船上試験で裏切りに失敗して、クラスにダメージを与えた森重にとりあえず入れるとして、残り2票かぁ。

 気に食わねえのは、橋本と鬼頭だけど、坂柳ちゃん派の幹部だからなぁ。

 こいつらに入れてもどうせ退学にならねえし、無記名投票のはずだけどバレそうでちょっと怖い。

 

 ほら、坂柳ちゃんにちょっとは媚び売っとかないとさ。これもクラスの円満のため、旧葛城さん派から投票しとくか。1票目の森重は坂柳ちゃん派だし、バランスバランスっと。

 

 フー、こんなもんか。

 

 最初の時は、誰を退学にさせて助かるかばっかり考えてて、大変だったっけ。

 綾小路以外は、健と寛治に入れたんだよなぁ。

 

 友情は、裏切れねえけどさ。

 ほら、退学になった時点で友情は切れちゃうわけで、俺が退学になる方が裏切りじゃね?

 

 友情を守るためには、健か寛治が退学になって俺が助かるしかなかったんだ。

 綾小路が退学になるのが一番だけどさ。

 

 結局、助からなかったし。

 って、嫌なことを思い出すのは止めよう。これで投票試験は、やること終わったしその後について考えないと。

 

 投票の後って何があるんだっけ。

 

「………………………………知らねえじゃん!?」

 

 あ、ああああああーーーーーーー!!!!

 生き残ることに必死に生きてきたから、全然考えてなかったけど。俺、この試験で退学になっちまったから、この後のこと全然知らねええええええええ。

 

 ええええええ、こっから先は事前知識ゼロで戦わないといけないってこと!?

 

 ちょっと待ってよ。それは、約束が違うだろうが。

 ほら、俺が蓄えた知識を元に戦ってAクラスで卒業するために頑張ってるのに、知識がないとかこっから先どうしろと。

 

 不親切過ぎるだろ、このループ。先の展開も教えといてくれよ!!!!

 

 こっから先、どうしりゃいいんだよぉおおおおお。

 

 お先真っ暗だ。

 俺、次の試験でやらかすんじゃね?

 

 どうしよう。

 

 

 そんなオレの次の試験に対する心配は、杞憂に終わった。

 

「山内、お前が退学だ」

 

 クラス内投票で俺が退学に決まったからだ。

 

「え!? ちょっと待って、どういうこと!? 退学するのは葛城さんじゃ」

 

 そう。なんか坂柳が動いて、退学は葛城さんに決まったはずだった。

 ほら、抵抗したかったけど、葛城さんが受け入れちゃったからさ。俺も仕方ねえなって受け入れたんだ。批判票も森重から葛城さんに変更よ。

 

 って事情を説明してる場合じゃない。

 

「どういうことだ!?」

 

 葛城さんらしからぬ声をあげてくれている。

 良かった。葛城さんが俺を陥れたわけじゃないらしい。大ピンチだけど、ホッとした。

 さっすが葛城さん。俺は最後まで葛城さんの味方でいるっすよ。

 

「どういうことだ坂柳」

「答えはシンプル。山内くんが邪魔だからです。船上試験で、裏切り者になって失敗したことを把握しています。クラスの足を引っ張る人は不要です」

「は? あれは森重がやったことだろ」

「裏切り者が出た時間帯に、私の派閥の生徒は集まっていたんですよ。誰も操作していません」

 

 なんだよ、それ。聞いてねえし。

 

「そんなの示し合わせたらどうとでもいえるじゃねえか」

「そうかもしれませんね。ですが、私は彼らの証言を信じます。それだけの話です」

「なんだよ、それ」

 

 そんな理不尽がまかり通っていいのかよ。

 裏切ったのは俺なのに、森重に罪をなすりつけることができねえとか、いくらなんでも理不尽過ぎる。それで退学とか納得できねえよ。

 

「山内くん。この学校を去ってもお元気で」

 

 俺が納得できるできないとか、そんなことは許してはもらえなかった。

 こうして俺の退学が決まった。

 

 あーあ、せっかく坂柳ちゃんに協力してAクラスで卒業しようって決めてたのに。

 次こそは絶対に、俺がAクラスになって卒業してやるぜ。

 

 俺は改めてそう決意を固めて、Aクラスから退学になった。




坂柳派の策略に嵌ってしまい繰り返される20回目の惨劇。
まさかのAクラスチャンスを逃したやまうちのなく声だけが変わらず、
毎度、お馴染みの退学を告げていた。

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