やまうちのなく頃に   作:おやまうちさま

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ループ2回目その2 ニュー山内は真面目でクールなんだぜ

 2日目。

 

 授業中に、早速健が寝てやがる。どうすりゃいいんだ。

 声をかけてえけど、怖えよ。

 

 周りはまだ様子見って感じで遠慮がある中で、健だけグースカグースカだ。

 

 起きろ、と念を送ってみても無駄に終わった。

 

 ま、まあ、健だけで1000ポイント削られたりしないだろうし、健はいいか。

 

 ほら、健を起こす。

 殴られる。暴力でクラスポイントが減らされる。

 健は結局寝る。

 

 健を起こさない。

 健は寝る。

 

 起こさない方がマシじゃね? つーことにしとこう。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 2週目。

 

「でさー、あれなわけよ」

 

 授業中に、私語が増えだした。

 そりゃそうだよな。これまでの授業で、教師は誰も注意したりしねえもん。

 最初は様子見していた生徒も、次第に状況に慣れていく。

 まだ寝てるだけの健の方がマシに見える勢いだ。

 

「山内もそう思うよな」

 

 寛治から話が飛んできた。

 

「……授業中だろ。授業聞こうぜ」

「なんだよー、ノリ悪いなぁ」

「…………」

 

 俺は今どんな顔をしているんだろうか。

 自分でもわからないまま、寛治から視線を外して黒板と向き合った。

 

 真面目に授業を受けているわけじゃない。受けてる振りをしているだけだ。

 この1週間ずっと考え続けている。

 

 俺は会話には参加しねえし、遅刻とかも一切してない。

 話題を振られたら注意するようにしてるけど、ずっと止めたりは出来ていない。

 

 ウザがられてるのが伝わってくるのがしんどい。

 特に女子連中。軽井沢を中心としたグループは、一応注意したら正面から舌打ちされた。

 今も根に持ってるのか。寛治とのやり取りに対して「なにあれー」「受ける―」みたいな声が上がっている。

 

 何の立場で俺が止めてんだって話よ。

 教師が知らん顔してるのに、俺から注意とかされたくないよな。

 

 俺もどっちかといえば、あっち側だったから気持ちが分かる。それだけに、最初はクラスポイントを残してやるぜって思っていたけど、くじけそうだ。

 

 なーんて考えているうちに、授業が終わった。

 

「池、飯食いに行こうぜ」

 

 2週目に入れば、だいたいいつメンが出来ていた。

 たぶん前と変わらないメンツだ。俺は、昼休みは寛治と過ごしている。健は参加したりしなかったり、綾小路も1回参加したが大人しくしていた。

 

「……悪い。今日は宮本とかと飯食うから」

「は? なんで」

「さっきの話が半端だからさ。続きやりたいし」

「俺も交ざるって」

「山内ってなんつーか、ノリが俺達と違うじゃん? わざわざ無理に参加しなくていいって、それじゃあな」

「お、おい……」

 

 俺の呼び止めには応じずに、寛治は教室を出て行った。いつものように学食に向かったんだろう。

 

「……なんだよ、これ」

 

 俺は教室に取り残されてしまった。俺はただクラスポイントを残したかっただけなのに。

 その結果が、()()()()()か。

 

 さっきの話の続きがしたいとか、流石に嘘だよな。

 俺が避けられただけだと思う。

 

 うわー……傷つくっつーか。

 

 いや、俺も悪かったと思うよ。話をふられて拒絶したのは俺だもん。

 不真面目な中で真面目君を気取ったのも間違いないし。

 

 でも、だからってさー、ハブらなくていいじゃんよ。

 

 俺はクラスのことを思って頑張ってるんだぜ。

 それなのに、寛治から嫌われるとか、ねーわ。

 

 あーあ、やってらんねー。

 

 やってらんねーけど……どうすればよかったんだろう。

 

「飯、食うか」

 

 腹が減ってるから気持ちまで沈みやがる。

 気持ちを切り替えよう。飯だ飯。

 

 ただ、どうすっかなぁ。学食には今さら行きにくいよな。寛治と顔を合わせたら気まずいってもんじゃねえだろ。

 こんなことならコンビニでパンでも買っとけばよかったぜ。

 

 あ、そうだ。女子御用達のカフェパレットがあるじゃん。

 オシャレ重視だからボリュームが物足りねえし、値段も高めだしでコスパは悪いからあんまり使ったことねえんだよなぁ。

 

 一緒にいく相手がいなかっただけとも言えるけど。

 いいんだ。坂柳ちゃんとはよく行ったし。

 

 坂柳ちゃん……何の自慢にもならないか。

 

 ま、まあいいじゃん。学食以外に選択肢があって助かったぜ。

 前向き前向き。

 

 ただ、一人じゃ行きにくいんだよなぁ。

 

「なあ、誰か一緒にパレットいかね?」

「…………」

 

 教室に残っていた10人くらいに声をかけてみたけど、返事がなかった。

 

 だよなー。わざわざ教室に残ってるやつは、パンとか弁当とか用意してる連中だもんなぁ。

 

 仕方ねえ。一人で食いに行こう。

 

 明日からはどうしようかな。寛治に断られるのならパンとか買いたいけど、最初から断られるとか思いたくないし。

 うへー、悩んでばっかだぜ。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 1か月後。

 

「先生、4500ポイントしか振り込まれてなかったんすけど」

 

 そんな質問から、茶柱のドヤ顔説明が開始された。

 俺にとっては2度目だから適当に聞き流す。

 

 結局、俺が頑張った結果が45クラスポイント残すことができたらしい。

 

 45ポイントかよ。

 

 前回は0だったことを考えたらマシにはなった。けど、寛治との友情と引き換えてまで納得できるかって言われたら……なぁ。毎日ジュース飲んだら消える程度でしかない。

 

 俺の頑張りは何だったんだっつーの。

 

 流れでDクラスが、落ちこぼれクラスであることの説明があった。

 こっちは朗報だ。

 これで、Aクラスを目指すぜって公言できるようになったわけだ。

 

「……次は、中間かぁ。まあ、これは楽勝だからいいけどさ」

 

 退学をかけた中間テストの概要も発表された。

 この学校の定期テストは、結構厳しい。

 赤点を取ったら退学。これが基本だ。

 

 いきなり発表された時は、結構ビビったけど今は余裕しゃくしゃくよ。

 なんつったって2回目だし、中間テストは櫛田ちゃんっていう天使が味方についている。

 

 櫛田ちゃんがどっかから、去年の過去問と答えを手に入れてくれるんだぜ。

 真面目に勉強しなくても、答えさえ覚えりゃ突破できるって寸法よ。

 

 つーわけで、勉強会とか参加しねえよ。悪いな平田。

 

 櫛田ちゃんとの勉強会は参加してえけど、前回は結局堀北が口うるさいだけだったしさ。今の寛治との関係じゃ、一緒に参加っつーのも気まずいし、遠慮しとくか。

 

 次にクラスポイントを手に入れるチャンスは、夏の無人島試験だ。

 

 サバイバル知識があれば、ポイントを温存できることを知ってるってめちゃくちゃデカいよな。

 よーし、どうせ暇だし、無人島まであと3ヵ月。バッチリサバイバル知識を手に入れて大活躍しちゃおうかな。

 

 そうすりゃクラスのみんなも見直してくれるっしょ。

 前回は、寛治がそれで評価されてたしさ。寛治の活躍の場を奪うのは悪いけど、これも友情っつーことで、櫛田ちゃんにモテるために犠牲になってくれよ。

 前回は、譲ったし良いよな。

 

 こうして、俺の当面の目標が決まった。

 勉強に励むクラスの連中とは違って、先行してインターネットでダラダラサバイバル動画を見たりする日々を送っていった。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 6月頭

 

 計画通りに、櫛田ちゃんが入手した過去問で一夜漬けを行い、中間テストに挑んでいた。

 今日はその結果発表だ。

 

「お前たちは頑張った。だが──」

 

 茶柱先生は、赤いペンを無情にも健の名前の上に入れる。

 赤点かどうかの区切りだ。クラスから赤点者が出てしまった。

 ここまでは前回と同じだ。健が英語を覚えきれずに、赤点を取ってしまった。

 

「赤点は2人だ。須藤、山内」

 

 違ったのは、須藤の下に俺の名前もあったことだ。

 

 え? なんで?

 

 確かに、巨乳の子がビキニでビーチを遊ぶサバイバル動画を見つけちまって、そっちに気を取られてたけど、1時間くらいは勉強してたんだぜ。

 

 英語の綴りとかちょっと怪しかったけどさ。選択肢はばっちりだったはず。

 

 しかも健より下ってどういうことだよ。

 

 ま、まあ、大丈夫か。

 

 前回、健はなんかしんねーけど助かったはず。

 最初の中間だし、脅しで言ってるだけで本当に退学とかはさせないとか、そんなノリだったよな。

 よーし、騒ぐ健と対比的に、クールぶっちゃおう。

 こんな時でも慌てずクールな俺を見ててくれよ、櫛田ちゃん。

 

 

 

 30分後。

 

 何も救済がなく俺は退学となってしまった。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 そして4度目の学校へと向かうバスの中にいた。

 

「なんで健だけ助かるんだよぉおおおおおおお」




完全なる油断が引き起こしてしまった、繰り返される回目の惨劇。
しょうもないやまうちのなく声だけが変わらず、
毎度、お馴染みの退学を告げていた。

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