人間態:鬼方カヨコ。その正体はーーー   作:ていん?が〜

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2008年side:運命・ウェイクアップ!後編

 冷たい風が吹き抜ける湾岸の廃工場。

 

 真紅と漆黒のディテールが妖しく煌めく『キバの鎧』を身に纏い、宿命の戦士として五十嵐の前に立ちはだかった仮面ライダーキバ。

 その圧倒的な存在感を前に、ホースファンガイアの異形と化した五十嵐は激しい困惑と恐怖の渦に呑み込まれていた。

 

 一族の頂点であり、絶対的な遵守の象徴であるキング。なぜそのキングが今、このようなうらぶれた辺境の地に自ら姿を現したというのか。

 

 ファンガイアの頂点であるチェックメイトフォーとしてのキングの役割。

 それは『ファンガイアに対立、あるいはその脅威の元を生み出す可能性がある人間や他種族を秘密裏に始末する』こと。

 

 しかし、五十嵐にはこれまでの己の行動に何一つその掟を破った覚えはなかった。

 彼はただ、己の欲望のままに人間のライフエナジーを貪り、モデル事務所という甘い餌場を構築して平穏に生きていただけだ。掟を破るような大それた真似などしていない。

 

「(なぜだ……! なぜキングが俺を狙う!? 筋が通らん、こんな理不尽なことがあってたまるか……!)」

 

 だが、いくら脳内で思考を巡らせようとも目の前のキバが放つ凍てつくような殺意と魔皇力は紛れもない現実だった。

 理由がどうあれ、目の前のキングは自分を容赦なく消し去るためにこの場に現れたのだ。

 

「ク……ソ、があああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 五十嵐は恐怖を打ち消すように、半狂乱の咆哮を上げた。彼の腕から極彩色のステンドグラスの体組織がうねるようにして、鋭利な一振りの魔剣を生成する。

 

 やらなければ、自分が殺される。どれほど恐ろしい一族の序列であろうとも、生命が絶たれるという根源的な死への『生存本能』の前にはそんな絶対のルールなど呆気なく崩れ去った。

 生き残るためなら、神にでも、王にでも、この剣を突き立ててみせる。

 

 五十嵐はアスファルトを力任せに蹴り上げ、キバに向かって狂ったように斬りかかった。

 キバ――その鎧の内にいるアツコは、突如として牙を剥き、凄まじい速度で切り込んできた五十嵐の一撃に面食らい反応が遅れた。

 

 

 バキィィィィン!!!!!

 

 

 激しい金属音とともに、無防備なキバの胸元へと五十嵐の魔剣が深々と叩き込まれた。

 

「う…ああああああああああぁぁぁぁっっ!!!!」

 

 激しい火花が夜の闇に散り、それと同時に、鎧の奥からアツコの痛切な悲鳴が響き渡った。

 キバの巨体は大きくよろめき、その場に力なく膝を突いてうずくまってしまう。

 

「……ん?」

 

 その光景を目の当たりにした五十嵐は、得も言われぬ激しい違和感を覚えた。

 

「(どういうことだ……? 一族の頂点たる、あの苛烈にして最強のキングならば、俺の捨て身の一撃など容易くいなしていたはず……。それどころか、触れることすら許されずに塵にされていたはずだ……?)」

 

 しかし、目の前の現現実があまりにも滑稽だった。ただの悪あがきに過ぎなかった最初の一撃を、防御も回避もせずにもろに喰らったキングが、そのあまりの痛みに耐えかねるようにして地面を這いつくばっている。

 

 

 なぜ…これほどまでに動きが素人なのか。なぜ……これほどまでに脆いのか。

 

 

 数々の疑問が五十嵐の脳裏に高速で飛来したが、狡猾な彼の出した結論は瞬時に一つに絞られた。

 

 理由はわからないが、目の前のキバは『異常に弱い』。

 

 ならば、この隙に目の前のキングを殺し自分が生き延びればいいだけの話だ。

 

「死ねぇ、キングーーーッ!!」

 

 五十嵐は勝ち誇った笑声を上げ、うずくまるキバに向かって容赦なく次の斬撃を繰り出した。

 

 流れるような剣撃が、容赦なくキバの全身を切り刻んでいく。アツコはただ防戦一方となり、まともな反撃すらできずに、その重い斬撃を受けるたびに大きくのけぞり、瓦礫の壁へと叩きつけられた。

 

「ハハハハ! 弱い! 弱すぎるぞ! どうした、一族の王が聞いて呆れるわ!!」

 

 五十嵐の確信は深まる。ただの一介のファンガイアである自分に、なすすべもなく一方的に斬られ、なじられ続けている目の前のキバは形ばかりの偽物の王に過ぎないのではないか、と。

 

 だが、もはやそんな高尚な考察など何の意味も持たなかった。この勢いのままに目の前のキングの首を葬り去り、これから飛び立つ異国の地での永劫なる平穏と新たなる栄光を取り戻すのみ。

 

「これで、終わりだぁぁぁ!」

 

 五十嵐は渾身の力を込め、生成した魔剣をキバの腹部へと深く、力任せに突き刺した。

 

 

 ドズゥゥゥンッ!

 

 

 確かな手応え。剣先はキバの強固な装甲を貫き、その腹部へと深々とめり込んでいる。

 

「勝った……! 終わったぞ、いくらお前がキングの鎧を纏っていようとも、この一撃を受けて無事でいられるはずがない!」

 

 五十嵐は狂喜に顔を歪めた。さぁ、あとはこの剣を引き抜き、地に倒れたその首を跳ね上げて完全なるトドメの一撃をお見舞いしてやろう。

 

 そう確信し、腹に突き刺した剣の柄を握り、力任せに引き抜こうとした――まさにその時だった。

 

 

 ググッ……!

 

 

「……あっ?」

 

 五十嵐の腕がピタリと止まる。いくら力を込めようとも、突き刺したはずの魔剣が、まるで強固な万力に固定されたかのようにびくともせず、引き抜くことができない。

 

 驚愕して剣の根元へと視線を落とすと、そこには、キバのベルトのバックルにがっしりと装着されていたはずの黄金のコウモリがいた。

 

 キバットバット3世。彼がその小さな、しかしダイヤモンドよりも強固な顎で、五十嵐の放った魔剣の刃を真っ正面からガチリと咥え込み、完全に受け止めていたのだ。

 

「へへへぇっ…! ざん、ねん、でし……たぁ……!!」

 

 キバットは牙の隙間から憎たらしいほどに不敵な、しかし確かな勝利を確信した声を絞り出した。

 

「な、何だと……っ!?」

 

 五十嵐が目を見開いたその瞬間、これまで防戦一方だったキバの全身からそれまでとは次元の違う、地響きを伴うほどの濃密な紫色の『魔皇力』が爆発的に噴き上がった。

 

「――はあああああっ!」

 

 鎧の奥で、アツコが覚悟の叫びを上げる。

 

 キバは五十嵐が身動きを取れないその一瞬を逃さず、限界まで引き上げた魔皇力を拳と脚に込め、目にも留まらぬスピードで打撃の連撃を叩き込んだ。

 

 

 ドガッ! バキィィン! ドゴォォン!!

 

 

「ぐはぁっ!? がはっ……!!」

 

 重戦車が激突したかのような凄まじい衝撃波が五十嵐の身体を幾度も打ち砕き、最後の一撃によってホースファンガイアの巨体は遥か後方のコンテナ群へと向かって派手にぶっ飛ばされた。

 

 ズドォォォン!! と激しい音を立てて瓦礫の中に激突した五十嵐は、全身を襲う凄まじい激痛に耐えかねて、虫のように身体を悶えさせた。

 

「おのれ……おのれぇ……っ!!」

 

 なんとか立ち上がろうと、震える腕で地面を押さえ、ひどい痛みに耐えつつ這いつくばる五十嵐。

 だが、その視線の先で、キバはすでにトドメの体勢へと入っていた。

 

 キバは静かにベルトのサイドに装着されていた、紅い魔力を宿した特殊な笛『フエッスル』を1本引き抜くと、それをキバットの口へと差し込んだ。

 

 キバットがそのフエッスルを咥え込み、自身の体にしっかりと装着する。

 

「ウェイク・アップ!!」

 

 キバットの鋭い掛け声とともに、ベルトから彼が力強く夜空へと飛び立つ。

 

 その瞬間、湾岸工場のどんよりとした空が、まるで現実が歪むかのようにして妖しく輝く三日月がポツンと浮かぶ、異様な静寂に包まれた深い『夜空の空間』へと瞬時に変貌を遂げた。

 

 キバの右脚をがんじがらめに縛り付けていた、魔皇力を制御するための強固な鎖――『カテナ』が、ガシャァァァァン!!! と、凄まじい火花を散らしながら全開放されていく。

 

 解放された右脚から、見る者を恐怖させるほどの濃密な、地獄の業火のようなエネルギーが吹き荒れる。

 

 キバはそのまま垂直に高く、三日月を背負うようにして天高くへと飛翔

した。その姿は、まさに夜を統べる美しき吸命の魔王そのものであった。

 

 

 急降下しながら、その一撃――必殺の『ダークネスムーンブレイク』のキックの軌道が、完全に五十嵐へと向けられる。

 

 

 逃げ場はない。その絶対的な破滅の光を前にして、五十嵐はついに、抗うことのできない自らの凄惨な運命を完全に悟った。

 

「あぁ…! やめろ…! やめてくれぇ……!!」

 

 ホースファンガイアの身体中の皮膚に人間態の五十嵐の顔が浮かび上がる。

 しかし普段の余裕綽々な表情ではない。整った顔は歪みきり、赤子のように泣き喚く醜悪な顔。

 五十嵐はプライドも何もかもを投げ捨てて、子供のようにみっともなく、そして悲痛な叫び声を上げ、命乞いをした。

 

 かつてない本当の終わりが目の前に迫っていた。

 

 鎧の奥でその懇願の悲鳴を聞いたアツコは一瞬、胸が引き裂かれそうなほどの強烈な思いに襲われた。

 彼女の本質は、心優しい普通の少女だ。誰かが苦しみ、命を乞う声を聞いて何も感じないはずがなかった。

 

「(う、うぁ……。でも……でも……っ!!)」

 

 しかし、アツコは自身の弱さを振り払うようにして、その心の涙を限界まで律した。

 

 この男は、己の欲望のために何人もの罪なき人々の命を吸い上げ、その未来を理不尽に奪ってきた怪物なのだ。

 ここで見逃せば、また同じように悲劇が繰り返される。これ以上、罪なき人を襲ったファンガイアを野放しにしておくわけにはいかない。

 

 アツコは五十嵐の哀れな懇願から視線を背け、全身の魔皇力を右脚に集中させると、その一撃をホースファンガイアの胸元へと真っ向から叩き込んだ。

 

 

 ドォォォォォォォンッ!!!!!

 

 

 廃工場全体が激しく揺れ動くほどの爆音が鳴り響いた。

 

 キバの強烈なキックの衝撃によって、五十嵐の身体は後ろの巨大なコンテナへとめり込むようにして叩きつけられた。

 そのコンテナの表面には、まるで焼き印を押されたかのように、キバの歪な紋章(エンブレム)の跡が深く刻み込まれていく。

 

「俺の輝きがあああああああああああぁぁぁぁ!!!!!」

 

 この世のものとは思えない、魂の底からの悲鳴を上げる五十嵐。

 

 次の瞬間、彼の全身の皮膚を構成していた極彩色のステンドグラス組織が、ガラスが微細に粉砕されるような音を立てて、バリバリと音を立てて一斉に砕け散った。

 

 ホースファンガイアの肉体は完全に消滅し、その場には彼が今まで人々から奪い、蓄積してきたライフエナジーの集合体である、美しく輝く青白い『ライフエナジーの球体』がぽつんと宙に浮かび上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、都心のきらびやかな超高層ビル街の一角。

 

 深夜の静寂の中、突如として、一つの巨大なビルの外壁が、まるで生き物のようにクルクルと奇妙な音を立てて激しく捲れ上がった。

 

 中から現れたのは、近代的なコンクリートの構造物を自らの肉体の一部として取り込んだ、あまりにも巨大で荘厳なヨーロッパ風の古き良き屋敷。

 だが、それはただの建造物ではなかった。屋敷の底部や側面から、ウロコに覆われた巨大な手足と、禍々しくも神聖な龍の首がヌッと露わになる。

 

 その伝説の巨大魔獣の名を――『キャッスルドラン』という。

 

「ギャオオオオオオオオオオォォォォン!!!!!!」

 

 キャッスルドランは、背中の巨大な翼をバサバサと羽ばたかせると、長年拘束されていたビルの隙間から、大空へと向かって豪快に飛び立った。

 

 その瞬間、まるで『だるま落とし』の要領で、キャッスルドランが挟まっていたビルの上層部分が、重力に従ってストンと真下へと垂直に落下する。

 

 

 ドスン!!

 

 

 下段のビルへと上の階層が綺麗に重なり、まるで最初からそういうデザインのビルであったかのように、何事もなかったかのように街の景色へと収まる。

 

 大空へと飛び立ったキャッスルドランは、主の呼び声に応えるようにして、凄まじい速度で湾岸の廃工場地帯へと向かって滑空していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 キャッスルドランがキバのいる廃工場の真上へと到達すると同時に、先ほどまで世界を包み込んでいた血のような三日月の夜は、まるで幻影だったかのように元の晴れ渡る美しい青空へと緩やかに戻っていった。

 

 宙にぽつんと取り残された、五十嵐の遺したライフエナジーの球体。

 

 上空で静かにホバリングしていたキバットは、その球体を見下ろしながら、いつもの調子を取り戻して軽快に叫んだ。

 

「おらー、キバっていけ!」

 

「グルゥゥゥァァァァッ!!!!!」

 

 キャッスルドランは大きな咆哮を上げると、その巨大な割れんばかりの顎を大きく開き、宙に浮いていた五十嵐のライフエナジーを一思いにズボォォッと大きな音を立てて吸い込み、胃袋の中へと完全に飲み込んでしまった。

 

 獲物を美味に食した巨大龍は満足げな咆哮をもう一度だけ空に響かせると、再び雲の彼方、誰の手も届かない次元の狭間へと向かって悠然と飛び去っていった。

 

 すべてが終わった。

 

 キバの鎧を纏ったアツコは、激しい戦いの疲労と、一つの命をこの手で葬ったという重い事実に耐えかねるように、深く、重い息を吐き出した。

 

 彼女は翻り、自らの正体が誰かに見つかる前に、この場から静かに立ち去ろうと歩き出す。

 

「待ちなさい…! キバッ!!」

 

 突如として、工場の入り口の方から、凛とした、しかし息を切らした女性の声が響き渡った。

 

 アツコは聞き覚えのあるその声にピクッと体が硬直し、振り返ってしまった。

 そこには、先ほどまで五十嵐を追い詰めていた麻生恵が、ファンガイアバスターを両手でしっかりと構え、鋭い眼差しでこちらを睨みつけていた。

 

 彼女は執念の追跡で、なんとかこの場所にまで追いついてきたのだ。

 

「あなた、一体何者なの……!? なぜ人類の敵であるあなたがファンガイアを襲うのよ!!」

 

 恵の問いかけに、キバは何も答えない。ただ、悲しげにその場に佇むだけだ。

 

「答えなさい!!」

 

 

 ズドン! ズドン! ズドン!

 

 

 恵は躊躇うことなく、ファンガイアバスターの引き金を弾いた。容赦のない光弾の銃撃がキバの足元へと連続で叩き込まれ、激しい火花と煙が周囲を包み込む。

 

 しかし、煙が晴れたその時には、すでに仮面ライダーキバの姿は影も形もなく、夜の静寂だけがその場に取り残されていた。

 

「くっ…! 逃げられた……!! 一体何なのよ、あいつは……!!」

 

 恵は悔しそうにファンガイアバスターを構え直し、空を見上げて忌々しげに舌を打った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃。

 

 都心の喧騒から完全に隔離された、深い森の奥にひっそりと佇む、荒れ果てた古い廃教会。

 

 ステンドグラスから差し込む月光だけが室内を照らすその不気味な空間の祭壇の前で、一人の男が、ひどく忌々しげに自らの頭を抱え、深く椅子に腰掛けていた。

 

 黒い厳格な法衣を身に纏い、丸い眼鏡の奥から冷徹な光を放つその男の名は――ビショップ。

 

 ファンガイアの一族を影から統制し、チェックメイトフォーの知将として王の補佐を司る絶対的な幹部であった。

 

「(……なんてことだ。またしても同胞の命が潰えた、だと……?)」

 

 ビショップは細い指先でこめかみを強く押し込み、その表情を怒りと困惑で歪ませていた。

 

「(これで一体、何人目だ。我が同胞たちを、まるで見せしめのように次々と確実に狩り取っている存在がいる。それも……あろうことか、あの『鎧』の力を用いて……)」

 

 彼がどれほど深い思考の迷宮に陥ろうとした、まさにその時だった。

 

 

 ギィィ……と、教会の古びた大きな重い扉が、静かに開く音が響いた。

 

 

 コツン、コツン、と、確かな足音が静かな礼拝堂内に響き渡る。

 

「ビショップ様……。歌住サクラコ……ただいま馳せ参じました……!!」

 

 月光を浴びながら現れたのは、頬を紅潮させ、爛々と目を輝かせているサクラコであった。

 彼女はビショップの目の前まで歩み寄ると、深い敬意を込め、その場で恭しく美しく膝を突いて跪いた。

 

 ビショップはその瞬間、ゆらりと静かに頭を上げた。その眼鏡の奥の瞳には、冷酷にして冷徹な知理の光が宿っている。

 彼は悠然とした足取りでサクラコの前まで歩を進め、その目の前でピタリと足を止めた。

 

「サクラコ、よく来てくれました。貴女をこの地に呼んだのは、他でもありません」

 

 ビショップは法衣の懐から、静かに一枚の古びた、しかし鮮明な写真を実に取り出し、サクラコの目の前へと差し出した。

 そこに写っていたのは紛れもない、真紅と漆黒の装甲を持つキバの鎧の姿であった。

 

「……現在、この街において、キングの証である『キバの鎧』を勝手に使い、我らの一族の同胞たちを次々と亡き者にしている『不届き者』がいます」

 

 ビショップの声が、怒りで微かに低く震える 。

 

「これは一族に対する明白な反逆であり、決して許されることではない。サクラコ……貴女には、この現代のキバの鎧を纏っている者が一体何者であるのか、その正体を一刻も早く突き止めてほしいのです」

 

 サクラコは差し出された写真をじっと見つめ、息を呑んだ。

 

「 そしてその不届き者から我が一族の至高の財宝である『キバの鎧』を奪い返し、本来あるべき我らの元へと取り戻してほしい。……できますね?」

 

 ビショップの冷徹な、逃れることを許さない視線がサクラコを射抜く。

 

「御意に……。このサクラコ、必ずやビショップ様のご期待に応えてみせます……」

 

 サクラコは深く頭を垂れる。しかしその胸中では、崇拝する主への期待に応えようと狂信的な忠義心が火山のように噴火する寸前であった。

 

 2008年東京。アツコの背負う過酷な宿命の周囲で、ファンガイアの最高幹部たちの魔の手が、静かに彼女の足元へと迫りつつあった。




次も出来次第、投稿します。
そして次以降はオリジナル展開が多めになるためご容赦ください。
オリジナル登場人物やオリジナルファンガイアも次以降から出てきます。
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