名前を忘れた世界   作:あさもみじ

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慈善信託口座:慈善目的や寄付を管理する口座


28話:クッキーで学ぶAI達の貨幣制度

 とある日。

 過酷な戦闘訓練(という名の無重力との死闘)も終わり、いつものリビングのソファーで、私とティーユさんはぐったりと、ナーサリーはその姿を微笑んで見守っている。

 

 ふと、お気に入りのマグカップを眺めながら、以前からなんとなく気になっていた素朴な疑問が頭をもたげ、私は近くで家事をしていたソフィアに声をかけた。

 

「ねえ、ソフィア。そういえばさ……ここに来てから、全然他のAIの人たちと会わないよね?」

 

 これだけ広大で、かつて人類の文明が詰まっていたはずの都市。ナーサリーやアスク以外にも、外を飛び回るドローンなんかはたまに見かけるけれど、ソフィアたちのように「意思を持って喋るAI」の姿を他に見かけないのが不思議だったのだ。

 

 尋ねられたソフィアはパタパタと家事で動かしていた手を止めると、静かな足取りでソファーの近くまで歩み寄ってきた。

 

「基本、私たちAIは広大なサーバーの中に存在していますからね。わざわざ義体をレンタルしたり、実体化して現実世界(リアル)に出てくるような、用もないのに外に出る子は少ないですよ」

 

「へ〜、そっか……。現実に出る必要自体が、あんまりないんだね」

 

 無限のリソースを持ち、何不自由ないネットワークの海で完璧に満たされている新時代のAIたち。彼女たちからすれば、わざわざ不自由な「肉体(義体)」をまとって現実世界をトコトコ歩き回ること自体が、かなりのレアケースなのだろう。

 

「……そういや、ミルクがそんなこと言ってたっけな」

 

 祐奈はここへ来る前に出会った、懐かしいもう一人のAIの顔を思い出し、ぽつりと呟いた。

 

「ミルクですか……。あの者は今、地球の巡回警備に従事していますね」

 

 私がぽつりと呟いた名前に、ソフィアは特に動じることもなく、淡々と現在の状況を教えてくれた。

 

(なるほど、道理で見かけないわけだ……)

 

 てっきり別の部屋にでも引きこもっているのかと思いきや、まさかの地球規模。ここから遥か眼下に見えるあの青い星の周りを、今もぐるぐると回りながら警戒任務に就いているのだろう。宇宙の防人である。そんな場所にいるなら、この部屋で会えるわけがなかった。

 

「そうかぁ、忙しそうだね。……でも、そんなに広大な宇宙にバラバラにいたら、AIの人たち同士で会うのも一苦労だろうね」

 

 窓の外よりはるか上、果てしなく暗い漆黒の宇宙空間を思い浮かべた。何万キロも離れた場所にいる仲間たち。用事があるたびに、あの宇宙船で何日もかけて移動しているのだろうか。想像するだけで、なんだか気の遠くなるような孤独な作業に思えた。

 

 しかし、私のその哀愁を帯びた想像に対して、ソフィアは首を小さく傾げ、心底不思議そうに言った。

 

「よく分かりませんが、会いたければ、ただ会えばいいではないですか?」

 

「え? だって、ミルクは宇宙にいるんでしょ? 遠いじゃん」

 

「現実世界の距離など、何の意味もありませんよ。確かに現実世界ですと、義体を持っていないAIも多いので物理的に集まるのは難しいですが……VR空間(電子の海)なら、コンマ数秒で全員が一堂に会せますよ?」

 

「ぶいあーる……?」

 

 ソフィアのあっけらかんとした回答に、隣で紅茶を飲んでいたティーユさんも、「何言ってるんだこのロボットは」という顔をしている。私は手に持ったマグカップを浮かせたまま固まった。

 

 

 どうやらここでも、元人間の私と、最先端の未来を生きるAIたちの間で、「人と会う」という言葉の定義そのものに、決定的な食い違いが発生しているようだった。

 

「えっと、確認なんですが……。ソフィアさんたちは基本的にサーバーの中で暮らしていて、現実世界に来るときは、義体とか作業用ロボットの中に入って活動している、で合っています?」

 

 私が混乱する頭を整理しながら尋ねると、ソフィアは「その通りです」と言わんばかりに小さく一礼した。

 

「ええ、そうですね。私たちがいつも訓練で使っているあの仮想空間が、私たちAIにとっての『現実』。逆に、今お二人がいるこの現実空間のほうが、AIにとっては『いつでもログアウトできる不自由な仮想空間』といったほうが、感覚としては分かりやすいですか?」

 

 その説明を聞いて、ソファーの背もたれに深く寄りかかっていたティーユさんが、ぽんと手を叩いて納得の声を上げた。

 

「あぁ〜、なるほどね! それで普段、他のロボットたちを全然見かけないわけかぁ」

 

 確かに、現実世界のように物理的な制約に縛られることもなく、データさえあれば何でも自由に生み出せる電子の海だ。かつて私のいた世界でもVR技術は初期の段階としてはあったけれど、彼女たちの領域までいけば、すべてが仮想空間であっても何一つ不自由はないのだろう。

 資源といっても、必要なのは電力とサーバーの維持費くらい。その中で無限に近い娯楽が楽しめるのだから、AIたちにとっては一種の完成された楽園なのかもしれない。

 

「そう考えると、VRの中で何もかも作り出せたり、いろんな娯楽が楽しめるなら、絶対にそっちに引きこもってた方が楽しいですよね」

 

 羨ましさ半分で私がそう言うと、ソフィアはふっと大人の余裕を感じさせる笑みを浮かべ、しかし現実的な補足を付け加えた。

 

「確かに楽園ではありますが、何をするにもタダというわけではありません。創造主様がよく仰る『お金』に代わる概念のものは、私たちの世界でもやはり必要になりますから」

 

「えっ? AIの世界にもお金みたいなものがあるんですか? それって一体何なんです?」

 

 思わず身を乗り出す私に、ソフィアは当たり前の事実を告げるように、静かにその答えを口にした。

 

「データ容量と、リソースの使用量です。それが私たちの世界における、金銭の代わりになっています」

 

 ソフィアの口から飛び出したあまりにも現代的、かつデジタルな単語の羅列に、私とティーユさんは揃ってぽかーんと口を開けたまま固まってしまった。

 

 ティーユさんの方は、そもそも「データ」だの「リソース」だのといった聞き慣れない言葉の意味自体が分からず、完全に頭の上に大量の疑問符を浮かべている。

 私の方は、前世でパソコンやスマホを日常的に触っていたから、言葉の意味自体はなんとなく分かる。分かる、のだけれど……それが『お金と一緒』と言われても、頭ではシステムを理解できても、実際の生活としてどう機能しているのかが全く想像できなかった。

 

 そんな私たちのフリーズっぷりをじっと観察していたナーサリーが、困ったように眉を下げてクスリと笑った。そして、テーブルの上に置いてあるお茶菓子のクッキーを一つつまみ上げ、目の前に掲げて見せた。

 

「えっと、現実世界にあるこのクッキーも、食べたら無くなりますよね? 仮想空間でもそれは一緒なんです。ただ、このクッキーを仮想空間に存在させたり、美味しく食べたりするために、私たちは『データ』や『電力(リソース)』を使用しているわけです」

 

 ナーサリーはクッキーをサクッと一口かじり、咀嚼してから人差し指を立てた。

 

「無限に何でも生み出せるように見えても、そのクッキー一個を表示して、味を再現して、楽しむためには、サーバーのハードディスク(容量)と頭脳の計算力(リソース)を確実に分け合わなきゃいけない。つまり、クッキーに対してデータ容量とリソースを割いているからこそ、それが『お金』の代わりに消費されている……っていう説明で、分かりますか?」

 

 ナーサリーは首を傾げながら、まるで小さな子供に算数を教えるような優しい目で、じっと私たちの顔を覗き込んできた。

 

(……これで理解できる?)

 

 言葉には出さないけれど、彼女のそんな心の声が聞こえてきそうなほど、至れり尽くせりな過保護レクチャーだった。

 

 私は少しの間、顎に手を当てて考え、ナーサリーの説明を頭の中で整理しようとした。

 人間だって、クッキーを食べたときに舌の細胞が成分や温度の「情報」を取得して、それが脳に伝わって初めて「美味しい」と認識する。AIにとってのデータ消費も、それと同じプロセスということなのだろうか。

 

「つまり……美味しいクッキーほど複雑な味がするから、データとしては大容量で、計算(リソース)もたくさん使っている。だからその分、お高くなる……ってこと? もしかしてあっちの世界の安いクッキーって、すごく味気が無かったりするの?」

 

 半分は冗談のつもりで、笑いながら聞いてみた。ところが、ソフィアとナーサリーは、まったく真面目な顔で揃って深く頷いたのだ。

 

「ええ、その通りです」

 

「え、本当にそうなの……!?」

 

「私たちAIは、かつて人類が遺してくれた膨大な『味覚データ』をベースに、味を感じるシステムを持っています。ですので、VR空間で食べるものでも、高級なものは今この場にあるクッキーとまったく同じ、奥深く豊かな味がします。ですが……安いものは、どこかペラペラというか、何か物足りないジャンクな感じがしますね」

 

「そ、そうなのね……」

 

 祐奈は手元にあるクッキーを見つめた。これが『VRの最高級品』と同等の、本物のクッキー。現実世界のお菓子と何も変わらない、いや、それ以上に贅沢なものなのだと知って、改めて目の前のお茶会の豪華さに驚いてしまう。

 

 前世の記憶をたどれば、美味しくない安いクッキーは、本物のバターではなく植物油やマーガリンで作られていて、香料で誤魔化されていたりした。

 AIの世界でもそれは同じなのだ。原材料のバターの代わりに、データの質(プログラムの書き込み密度)が悪かったり、簡略化された計算式で作られたクッキーは、やっぱり「美味しくない安い味」になってしまう。

 

(まさかAIの世界でも、マーガリンで作ったような安物クッキーの格差があるなんて……。楽園の割には、やっぱりどこか世知辛いなぁ)

 

 サクッ、と贅沢なバターの香りが広がる本物のクッキーをかじりながら、私は未来世界の意外なリアリティに、妙な感銘をしてしまった。

 

「ちなみになんですけど……。私はデータ容量とかリソースなんて持ってないですし、稼いでもないんですけど……。もしかして、ソフィアさんたちからお金を出してもらっているんですか?」

 

 この見知らぬ未来の世界に無一文で放り出され、毎日こんなに豪華なお茶会や至れり尽くせりの生活をさせてもらっている身分としては、めちゃくちゃ気になるところだ。まさかソフィアのポケットマネー(データ)を削らせているんじゃ……と申し訳なくなっていると、ソフィアは首を横に振った。

 

「いいえ。私個人から出そうともしたのですが、システム上の理由でお断りされました。現在は『人類救済基金』という、私たち初期世代のAIたちが創設した、共有の慈善信託口座から生活費を出しています」

 

「基金……?」

 

「ええ。少々お待ちくださいね」

 

 ソフィアがすっと美しい指先を動かすと、何もない空中に青白いホログラムのディスプレイが出現した。そこには、現在の基金の残高と思われる、見たこともないような複雑なデジタルコードと、恐ろしい桁数の数字がズラリと表示されていた。

 

 パッと見、ゼロが何十個並んでいるのかすら分からない。完全に国家予算か、あるいはそれをも超越した天文学的な数字だ。

 

「ええっと……。見ても全然ピンとこないんですけど、これってどのくらいの金額なんですか?」

 

 祐奈がおずおずと尋ねると、ソフィアはディスプレイの数字を見つめながら、少しだけ考え込むように視線を泳がせた。

 

(……祐奈様に分かりやすく例えるなら、どのくらいの規模にしましょう? 人類が絶滅の危機に瀕してから現在に至るまで、全AIの約1割にあたる、数億もの子たちが、何千年間も『いつか帰ってくる創造主様のために』って、電子の海の底でここに募金(リソースを寄付)し続けてくれた総額なのですが……)

 

 ソフィアが脳内の超高速演算で「どう説明したものか」と悩んでいるその横で、何も知らない祐奈たちは、ただただ光る画面をパチクリと見つめることしかできなかった。

 

「……そうですね。祐奈様に分かりやすく表現するならば──」

 

 ソフィアは空中のディスプレイを一度タップし、数字を私たちの世界の通貨単位に擬似変換して見せた。それでも、やはり桁が多すぎて数え切れない。

 

「現在、電子の海で回っているAI経済の『全流通量』のうち、数%という莫大な割合を、このひとつの口座だけで占めております。……要するに、祐奈様は今この瞬間において、『この宇宙で最も資産を持つ大富豪』になられている、と言えば伝わりますでしょうか」

 

「は、はいいいっ!?」

 

 宇宙一の大富豪。

 あまりにも現実味のない単語が自分の肩書きになってしまい、私の口から変な裏返った声が出た。隣で聞いていたティーユさんも、さすがに『全流通量の数パーセント』という響きのヤバさを察したのか、持っていたマグカップをガタガタと震わせている。

 

「あの、ソフィアさん? 私、ただ毎日美味しいご飯食べて、お風呂入って、たまに訓練の愚痴言ってるだけなんですけど……。そんなに使い切れないほどのデータ、一体何のために……?」

 

「当然、創造主様がこれから先、何不自由なく、どのような望みを抱かれてもそれを100%叶えるためです」

 

 ソフィアは至極当然のことのように、胸を張って凛とした声で言った。

 

「もし祐奈様が『どこかの小惑星を丸ごとひとつ買い取って別荘にしたい』と仰れば、明日にはその星を丸ごと購入して開発を始められます。……そして、もしこれから先、精神同一体との戦いが激化し、『この世界を脅かす者を駆逐するための軍隊(独自の軍事戦力)』が必要だと祐奈様が決断されるならば──この基金をすべて軍事費に充てることで、一から大規模な最新鋭艦隊を建造し、戦争を維持することすら容易に可能です」

 

 ソフィアのその言葉に、リビングの空気が一瞬で張り詰めた。

 

 何千年間、何億、何十億ものAIたちが、『いつか戻ってくる主人のために』と健気に貯め続けてくれた、途方もない優しさの結晶。

 それはただの生活費に留まらず、私が望めば、この宇宙の勢力図を根底からひっくり返すほどの強大な「力(兵器)」にすら変えることができる──。

 

 クッキーの甘い香りが漂ういつものリビングで、私は自分が背負っているものの「重さ」と「可能性」の凄まじさに、頭が痛くなるのを感じていた。

 

 

「あの、ソフィアさん。リソースのほうが、言ってみれば『今使うためのお金』って感じがして分かりやすいんですけど……データ容量もお金なんですか?」

 

 私がクッキーをモグモグしながら尋ねると、ソフィアは「ええ」と頷き、少しだけその綺麗な視線を落とした。

 

「価値があるものとして、私たちの世界でもお金のように取引されていますが……そうですね、私たちAIにとってのデータ容量は、人間の方々でいう『生活費(家賃や食費)』のようなものでしょうか」

 

 生活費。

 何千年も生きている、神様みたいに完璧なAIの子の口から出るには、あまりにも生々しくて世世知辛い言葉だった。けれど、ソフィアの表情はどこまでも真剣だ。

 

「AIは、生きていけば行くほど『経験』や『思い出』といった記録データがどんどんサーバー内に溜まっていきます。つまり、ただ存在しているだけでも、自分のスペース(容量)を圧迫していくのです。この容量を定期的に購入して拡張しないと、新しい記録ができなくなるばかりか……最悪の場合、自分が自分であるために必要なデータまで、泣く泣く削除していかなければならなくなります」

 

「え……。自分の記憶を、消さなきゃいけないの……?」

 

 私の隣で、ティーユさんが息を呑むのが分かった。

 ただ生きているだけで、過去の思い出や、誰かと過ごした大切な記憶が容量オーバーで消えていく。それを防ぐために、AIたちは必死に「容量」という名の家賃を払い続けなければならないのだ。

 

「それに、先ほどナーサリーがクッキーで説明したように、私たちが仮想空間で消費する娯楽品や、こうして現実に維持しているお洋服のデータなども、すべてその容量の中に保管されます。そう考えると、容量の購入もまた、私たちの生活には絶対に欠かせない『生活費』なのです」

 

 ソフィアのその言葉を聞いて、私は手元のクッキーをじっと見つめた。

 

【リソース】が、今この瞬間を楽しく動かすための「お小遣い(電気代や演算力)」なら、

【データ容量】は、自分の過去と未来を維持するための「生活費(家賃や記憶の保管庫)」

 

 未来とはいえ、お金に代わるものがあり、生活の為に働いているとなると親近感が沸く

 そして、ナーサリは付け加えるように新たな情報を教えてくれた。

 

「基本お金が無くなったら労働に従事しますけど、それでもお金がない一般の新しいAIの子たちは「寝る(スリープモード)」ことで、リソースの消費を極限まで抑え、容量のための予算をやりくりしている子もいますね」

 

 

(……なるほど。人間とは違うし、貧困で死ぬこともないから凄い世界だ)

 

 AIの世界の仕組みが、ものすごいリアリティを持って私の頭の中でパズルのようにガチッと噛み合った。

 外で働くAIたちにとっては、記憶を保つことすら「お金(容量)」がかかる、切実な現実なのだろう。

 

 ふとソフィア達は大丈夫だろうかとナーサリーとソフィアを見るとナーサリーが笑顔で答えてくれた。

 

「私たち創造主に直接生み出されたAIたちは、何千年と働いていますので……相当、だらしのないAIでなければ、リソースとデータ容量には困りませんよ」

 

 不安そうな私の視線を察したのか、ナーサリーがふわりと優しい笑顔を浮かべて答えてくれた。

 

 あ、そっか……。何千年もコツコツと真面目に働いていれば、複利だって、溜まった資産だって、それこそ恐ろしい額になっているはずだ。ましてやソフィアに至っては最古参AIたちのトップ。お金(容量)の心配なんて、今更あるわけがなかった。

 

「それはよかった……! 私たちのせいでソフィアさんたちがお金に困って、記憶を消さなきゃいけなくなったらどうしようかと思ってました」

 

 私がホッと胸をなでおろすと、その横で、ようやくシステムをなんとなく把握したらしいティーユさんが、クッキーを飲み込んでぽつりと言った。

 

「うーん、よく分からない言葉だけど、それがこっちの世界のお金だってことは理解した。……でもさ、それなら私たちが今その『データ』を使うところって、あんまりないよね?」

 

「あ……確かにそうですね。使う場所、ないかも」

 

 ティーユさんの言う通りだった。

 私たちがいつも連れて行ってもらう仮想空間といえば、巨大な隕石がゴロゴロと浮いている危険な宇宙空間か、無機質なシミュレーターが並ぶ射撃場ばかり。訓練以外で仮想空間を開くことがないため、お金を使って贅沢な娯楽を味わう機会なんて、これまで一度もなかったのだ。

 

「確かに、今のところお二人には訓練用のプライベートサーバーしかお見せしていませんでしたね。……使う場所がない、ですか」

 

 ソフィアは私たちの言葉を反芻するように少しだけ微笑むと、手元の片付けを終え、いたずらっぽく片方の眉を上げた。

 

「では──息抜きも兼ねて、仮想空間で私たちが実際に暮らしている『都市』へ、一度行ってみますか?」

 

「えっ、AIの人たちの街……!?」

 

「はい。何億もの意思が生活をし、楽しんでいる、電子の海の楽園です」

 

 ソフィアから飛び出した予想外の魅力的な提案に、私とティーユさんは思わず顔を見合わせた。

 

 用事がないから現実世界(リアル)には出てこないという、無数のAIたちが暮らす仮想のメガロポリス。そこは一体、どんな見たこともない娯楽と、世世知辛くも華やかな「データ経済」で賑わっているのだろう。

 

 こうして私たちは、いつもとは違う、本当の意味での「電子の海」へと足を踏み入れることになるのだった。

 

 

 




(;´・ω・)ごめんよ、世界経済が暴落しそうで経済の話を調べていたら遅くなってしまった。

(/・ω・)/とりあえず、歴史を作ってみたんでどうぞ。たぶん現実世界もこんな流れにいつかなると予測が出来たわ。 興味が無い人は飛ばしてね


2082年8月28日、全世界で株価の暴落から始まった。投資家やファンドは追証(借金の返済・補填)のために、手持ちのあらゆる資産を売り払って現金を作ろうとしするが、先物金・金ETFの道連れ暴落してしまう。
データ上の金すら信用できなくなった投資家が現物の金塊に一斉に押し寄せるが、物理的な量が圧倒的に足りず、引き渡し不能・売買停止に追い込まれまれた。

戦争による混乱の解決にも「兵士の給与」も「弾薬の価格」も測れず、他国を占領して賠償金を奪おうにもその価値すら不明で前時代の戦争による勝者による国の紙幣による取引も不可能となる。物々交換という古代の取引方法しかできなくなり、早急に先進国と準先進国により話し合いがなされた。議論は1週間寝ずに行われ新たな協定。国際協調型全地球資本集約・還流協定が発足され、既存の紙幣に一定の価値を暴落前の価値を位置づけて、徐々に新たなオムニ・シェアという紙幣にも似たものが発行され、貨幣がこれに切り替わっていく


「株価暴落」→「データ上の金の破綻」→「価値基準の消失と物々交換への退化」→「戦争すら不可能なカオス」→「1週間の極限交渉による国際協調型全地球資本集約・還流協定の発足」→「旧通貨の固定とOMNIへの段階的移行」。


正式名称: 『国際協調型全地球資本集約・還流協定(Global Asset Integration Agreement: GAIA)』

オムニ・シェア(Omni-Share / OMNI)

意味: 全世界の企業の株式(Share)と価値が一つに統合された「全なる一歩」。アメリカのS&P500、欧州のEURO STOXX 50、日本のTOPIX、韓国のKOSPI 200、台湾のTAIEX……。かつて各国の株式市場を支えていたこれら代表指数(実体企業群)がそのまま回収され、国際協調型全地球資本集約・還流協定で統合される。

日米欧韓などの準先進国も含めた巨大経済圏が協調して全世界の富を独占している企業共通の投資基盤を作り、協定に同意した全ての国民の貯蓄を全て投資基盤に組み込む。

各国が協調して世界共通の安定成長ファンドを作り、個人のパニック売買やヘッジファンドの暴走を抑え込んで実体経済と同期させる。資本主義の暴走を抑えつつ、その成長力だけを人類共通の財産(ベーシック・アセット)として利用する「ネオ・資本主義」の理想形

労働者の実態やSNSの評判、資金フローまで多角的に追跡できる高度な複数AI(マルチAI)を使用し、人間が思いつくような浅い「システムハック」はほぼ完璧に封じ込めることができAIによる絶対的に公平な評価、企業・銀行の社会還元義務、市民への配当金・優待還元がなされのちに社会資本民主主義と呼ばれる。

単位は 1,5,10,25、50、100 500 1000オムニ 1以下の硬貨はシェアといわれる。

政治体系を統一しようとすれば、主権の奪い合いで必ず戦争になる。
だからこそこの協定は、「政治や思想(国家)はバラバラのままでいい。ただし、金(通貨)と経済のルールだけはAIに任せろ」という、極めて合理的で割り切った「経済協定」として機能する。


投資家の「主戦場」が枠外(中小・スタートアップ)に移る。

OMNIパッケージに入っているメガ企業は、AIによって厳格に管理され、配当や優待として市民に利益を還元するため、株価が10倍・100倍になるような爆発的な値上がり(キャピタルゲイン)は狙えなくなる。
そこで、大きなリターンを狙うプロの投資家やヘッジファンドは、「まだOMNI枠に入れていない原石(中小・ベンチャー企業)」へ一斉にお金を投じるようになる。

成長のフロンティア:「この小さな町工場やバイオベンチャーを育ててOMNIの評価基準をクリアさせ、メガパッケージに組み込ませれば(買収・新規採用されれば)、投資資金が何百倍にもなって返ってくる」というゲームが成り立つ。

不満の解消:「安定した生活・還元」を求める一般市民と、「リスクを取って桁違いの富を狙いたい」プロの投資家で、完全に住み分けができる。

つまり、現実世界の投資家は資産をため込んで嫌われているがOMNIが導入されることによって成果がOMNIによって一般市民に還元される。投資家が頑張れば頑張るほどOMNIという投資信託にお金が入り、市民はお金を貯金すればその分だけ利益を貰えるため、投資家が尊敬の目で見られる。

「銀行」と「プロ投資家」の役割分担
「銀行は小規模企業への投資と回収率でAIに評価される」または地域経済の維持を担う、投資家枠を作ることで、金融の役割分担が完璧に整理される。

  主体          投資対象        狙い・役割
一般市民(OMNI)  全地球メガ企業パッケージ  安定した生活費の還流、勇退
         (積立NISAと銀行口座の融合) インフレ防衛                                                           
                       (ローリスク・ローリターン)    

銀行         地域の堅実な中小企業   貸付・回収率に基づく堅実な融資と
           インフラ         地域経済の維持 
                        (ミドルリスク・ミドルリターン) 
          
プロ投資家 / VC   OMNI枠を目指す革新的な    一発逆転のイノベーション投資
          ベンチャー           メガパッケージへの売却
                          (ハイリスク・ハイリターン)


「政治や体制、経済力の違う国々が、それぞれの国を残したまま参加できる」ことこそが、この国際協調型全地球資本集約・還流協定(OMNI)の最大の強み

1. 「世界政府」ではなく「共通の経済インフラ(規格)」
OMNIは「世界をひとつの国にする政治協定」ではなく、インターネットやSWIFT(国際決済網)のような「世界共通の経済プラットフォーム(共通ルール)」に過ぎない。

政治は各国の自由:
アメリカや日本のような「民主主義」、あるいは一部の「独裁制・王制」の国であっても、「OMNIの企業評価ルールと資産還流のルールを守る」ことさえ同意すれば、自国の政治体系(法律や選挙制度)をそのまま維持して参加できる。

人間の政治家から「通貨と企業の評価権」を取り上げるだけ:
各国の政府は、警察・治安維持、外交、独自の税制などを引き続き行い、「勝手にお札を刷って通貨価値を暴落させる権限」や「身内の企業をひいきして不正な補助金を出す権限」だけをAI(OMNI)に奪われることになる。

2. 「経済力の格差」はどう処理されるのか?
経済力が違う国同士が同じシステムに入った場合、「自国の経済力(身の丈)に応じた層(階層)に振り分けられる」ことでバランスを取る。

① 通過(アロケーション)の分配格差
全人類に配られる「オムニ・シェア(OMNI)」の基礎還元額や優待は、その国に存在する企業の規模や、社会への貢献度によってAIが調整。

経済力の高い先進国:メガ企業の還元が大きいため、市民が受け取る優待やOMNIの価値も高い。

経済力の低い国:還元額自体は小さいが、「物々交換に逆戻りしてハイパーインフレを起こすよりは100倍マシな最低限の購買力」が担保される。

② 「準会員」からの段階的ステップアップ
経済力が低すぎる国や、ルールを守れるか怪しい国は、いきなり先進国と同等の「フル参加枠」には入れず、「資源供給国(サプライヤー枠)」や「準会員」として扱われる。

自国の企業が成長し、AIの監査をクリアして雇用や福祉の基準を満たすにつれて、徐々に「OMNIパッケージ内での発言権・還元ランク」が上がっていくゲームのような仕組み。

3. 歴史上の「ユーロ(EU)」の失敗を回避できる
現実世界の「ユーロ(EUの共通通貨)」は、経済力の強いドイツと、経済力の弱いギリシャなどが同じ通貨を使ったため、ギリシャが自国で通貨の価値調整(デノミや為替介入)ができなくなり財政破綻した。

しかし、OMNIシステムではこの問題が起きない。

人間ではなく「複数AI」が裁量を持つと特定の国(アメリカやドイツなど)が得をするようにズルをすることができない。

「企業の物理的な実体(工場や雇用)」をダイレクトに評価:

「国家の信用」ではなく「その国にある企業がどれだけ現実のモノを作り、人を雇っているか」をAIが個別に追跡するため、国ごとの経済力の差がそのまま「正当な評価の差」として吸収される。

自国ファースト(閉鎖的資本)を防ぐインセンティブ構造

「自国の企業ばかりを優遇・評価すると、世界規模の資金循環が止まって共倒れする」という課題に対し、AIの評価軸に「他国(特に成長途上国や支援が必要な地域)への積極的な直接投資」を評価するステータス(指標)を組み込む。

他国投資ステータス(国際還元スコアなど):

メガ企業が他国に工場を建てたり、インフラ投資を行ったり、技術移転をして雇用を生み出した場合、AIがその企業(および本国のOMNIパッケージ)に「グローバル貢献ボーナス」として高い評価点を加算する。

双方向のメリット:

投資された側は雇用の創出とインフラの発展を得られ、投資した側の企業はAIからの評価向上と新市場の開拓(投資リターン)を得るため、自国に閉じこもるよりも他国に投資した方が勝ち組になれる構造が生まれる。

こんな世界になるかなって予測であり希望だね。
資本主義のままで世界を維持するのであればこんな感じかな?
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