超人(ガチ)系Vtuberは世界を救う夢を見るか 作:蓮太郎
『うっす、調子はどうだ?』
『ボチボチ、とりあえず練習はしてきた』
『感度はやっぱり最高設定か?』
『そっちがやりやすいからな』
『バケモノだよあんた』
『失礼な、スーパーヒーローだぞ』
久しぶりのコラボ配信のお誘いがあり、柴木昌也こと『ヒロイ・スパナ』はFPSゲームを楽しんでいた。
ゲームの内容は多人数同士で陣地を取り合う戦争モノ。1人の力では収まらない戦いをチームとして戦い抜く定番のゲームだ。
確かに一人だけ無双しても他の陣地を取られてしまえばおしまいなので、ヒロイはこういったゲームを好んでいる。
エイム力という点では超人として優れ過ぎた動体視力と反射速度を用いて射線を合わさることで無敵と思われる兵士が爆誕する。
しかし、それは視界内の話であるため不意打ちや読み合いによる罠戦術に敗北することも多々ある。
勝利と敗北を繰り返していても、やはり視界を尋常ではない速さで動かしエイムを合わせる荒業は普通の人間からすると何らかのチートを使っているのではないかと疑われる。
それ故に通報されてアカウントがしばらく使えなくなるという事態も多々あったりする。
『まだアカBANされてないよな?』
『当たり前だ!手加減して遊んでたからな』
『普通なら嫌味にしか聞こえないだけどなぁ』
コラボ相手である『
『ヒロイ・スパナ』との付き合いはそこそこ古く、活動初期から絡みがあった。
月に何度かゲーム実況にてコラボを行っており、ヒロイの能力の高さにおんぶに抱っこされながらレートを挙げていたりする奇人でもある。
『今回は俺だけじゃないぞ。何と女の子とコラボだ!』
『いやいやいや、俺とは初対面でしょ。急に敷居を高くするなよ』
『頼むって!俺もランキングにギリ食い込めたから舞い込んだ話なんだよ。お前が居たら百人力だから!』
『まあいいけど、チームごとBANされても文句言うなよ?』
『そこは、ほら、ちょっと手ごごろというか…………』
自前の技術で憂き目にあうことがあるヒロイの言葉に少言葉が詰まるゲット。
今のところは、と前提は付くが悪い人間ではないと信じているためそれ以上の追及もしない。
ただ、ゲームをするときは多人数でやる方が楽しいことは知っている。
仕事も休憩時にワイワイする方が好きなヒロイこと昌也は自分でもノリがいい方だという自覚はある。
ただし、超人的な力を保有しているためやることなすこと一つ一つに心づかいが必要なので考えなしに動くと後悔することもしばしば。
『ったくよぉ、とりあえず今日裏で練習しない?夜暇だろ』
『配信終わったらな』
『おけ、しかしお前って雑談好きだよなぁ』
『だが気になるだろ?スーパーヒーローが実際に事件を解決しようとしたらどうなるか』
『そこら辺は夢持ちたいなぁ…………』
『夢を持てってのが無理だろ、そんな事件が現実に起こったところで間に合うか分からないし』
柴木昌也は超人であるが一般人である。事件に関わるような運命に恵まれるわけでもなく、頭脳も正直な所で言うと大したことは無い。
それに過去に起こしてしまった問題により素行が悪いと判断されており、そういった清く正しい所に行けないのもあった。
『じゃ、9時によろしく』
『あいよー』
カチャカチャとパソコンのキーボード操作で敵をバッタバッタと撃ち倒していきながらスマホが反応するギリギリの接触時間で通話ボタンを押して切る。
話をしながらであったため集中力はかなり削がれていたが、それでも敵を撃ち落とす速度は殆ど変わっていない。
的確に手持ちの銃で拠点を取りに来た敵の頭を撃ち抜き、キル数を稼ぐ。
確かに無双、そう言って差し支えない活躍。それでも勝てない時があるのがチームの戦い。
「よし、残り占領時間は…………やっべ、他のところ押されてるじゃん」
昌也が守る拠点には敵がほとんど寄ってこず、他拠点を重点的に攻め込まれて敗北しかけている状況であった。
明らかに強すぎる敵が居たら避けるのは当然、向かってくる猛者の方が異常ともいえるほどであった。
手薄ではないものの、昌也が守る拠点に攻め込む人員が他の場所に攻め込み押されてしまった状況が出来上がっている。
「うおおおお、間に合ええええ!」
他の拠点を奪還すべく彼のキャラクターは駆けだす。
事件も事故も何もかも発生して手遅れと思わしき状態からヒーローは動き出すのだ。
なお、戦場はもう既に手遅れで敗北した。
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