超人(ガチ)系Vtuberは世界を救う夢を見るか 作:蓮太郎
「ふう、今日も何とかなったか」
Vtuberとしてコラボ配信を終えた昌也は一息ついて用意していた飲み物を口に含んだ。
友人と新たな友人の配信は色々と騒がしく楽しいものだ。
自分のコメント欄がそこそこ荒れていた事を差し引きしても良い思い出になった。
配信終了後に『ですこーと(会話&通信アプリ)』で軽い感謝のやり取りを行いSNSで配信終了宣言を行いようやくコラボ配信が終了となる。
満足感と共に笑顔で画面に向き合い、そしてぴこんとSNSで個人向けに開かれているメッセージボックスに①の文字が出る。
「ん?誰からのメッセージだ?」
無視する必要もなく、特に何も考えずに昌也はメッセージを開いた。
『お前調子に乗るなよ?不正ばっか働いて楽しい?ちやほやされたいのにこんなのやってんじゃねーよバーカ』
「出た出た、ひっさしぶりに来たな」
お気持ち表明、または暴言ばかりで良心がないメッセージが彼の目に飛び込んできた。
あまりにも常軌を逸したプレイングを堂々と見せつけられ、それが才能の物でないと考える人間も少なからずいる。
まさか現実世界に空想じみた超人がいるなど思いもしない一部の視聴者は悪意を持って大胆な行動に映ることがある。
圧倒的反射速度は人体よりも機械でやった方が合理的ではある。
それを遊び場に持ち込んで、真剣勝負の場に持ち込んでいいものかどうかは別として。
少なくとも競技としてゲームに打ち込む者からすれば厄介極まりないだろう。
実際にゲーム内でヒロイとゲット、明乃が参加したチームは皆から敵視されており敵味方問わずフルボッコにされてしまった。
それでもしっかり勝ってしまうあたり超人が過ぎた。
「そりゃあ俺だってみんなと楽しみたくて張りきっちゃうけどさぁ、完全に手加減するってのも違うんじゃないか?」
身体能力は超人でも心は人間である昌也にとって、やり過ぎとは言えど遊びたい心はある。
それが皆と同じような感覚のつもりであっても常軌を逸してしまうのだ。
少し面倒なことになりやすくはあるが、鋼よりも固いメンタルによってこういった状況すら楽しんでいる。
ぴろん、と再びメッセージが入った音が耳に入る。
先ほどの暴言主とは違う者からのメッセージである。もうこの時点で中身が察せるのは昌也の経験なのか、それとも流れに沿った結果なのか。
『明乃に近づくなチート野郎がお前ごときが話していい子じゃねえんだよさっさと引退しろ』
「おー、これこれ。女性ライバーに粘着してる感がついてていいね」
性格が悪いことに届く暴言を全て保存しており、いつかいいタイミングで配信のネタにしてやろうと画策している。
実際に集まった暴言や誹謗中傷の数は少ない。一回の配信内でミニコーナーとして消費できてしまうレベルだ。
「ふふふ、これも目的だったんだ。もっと俺に暴言を集中させろ、それら全部ネタにしてやる…………」
怪しげに笑う姿はヒーローからは程遠い。むしろヴィランではないかと思わせるほどの悪い笑みだ。
ある意味ではこのような精神も必要なのだろう。
匿名で活動するなら匿名の悪意と向き合わなければならない。
ぴろんぴろん、と再びメッセージが入る音が鳴り始める。
『女性Vtuberと絡まないと話題になれないのか』
『コラボ相手に人気を頼っているだけだろ底辺』
『明乃ちゃんに媚びて注目を集めようとしているようにしか見えない。近寄るんじゃない』
「おお、怖い怖い。やっぱりユニコーンと言うやつは何処にでも現れるな」
昌也が言うユニコーンというのはアイドルや女優に対して異性との交流を拒む視聴者の総称である。
今回のコラボ配信のように男性とコラボした後によく誹謗中傷気味に湧いてくるような輩であったりするが、基本は潜み表に出ないものだ。
たまに自身の身すら顧みず攻勢にでる謎は未だに解き明かされていない。
『自分の実力で勝負できないからコラボに逃げている』
『チートにまで手を出して数字稼ぎのためなら何でもするんだな』
「んー、全部実力なんだけどなぁ」
ゲームに限っては手元を映さない限り実力で勝ち取ったものという事は難しい。
それに何らかのツールを別の画面越しに使っているといわれてしまえば証明もできなくなる、いわば悪魔の証明を押し付けられているのだ。
だが気にすることは無い。特に何のしがらみもない個人Vtuber、事務所に所属している訳でもなく一人寂しく、そして楽しく趣味として遊んでいるのだ。
「うっし、風呂入るか」
コラボ配信の余韻に浸りながら、アンチコメントも余韻の内と感じつつ昌也は日常生活に戻る。
明日も働いて配信をする、超人だろうと人間だろうと社会に溶け込むことに変わりはない事実に翻弄されながら、事件も何事もない日々を送るのであった。
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