超人(ガチ)系Vtuberは世界を救う夢を見るか   作:蓮太郎

7 / 8
超人、ホラーをやる

 

『さあ、今日やっていくのは「天ツ風が吹くように」というゲームだ』

 

 いつもの配信時間にゲームをする。これは特に珍しくもない話だ。

 

 ただし、ヒロイ・スパナがホラーゲームをやるとなれば話は別。

 

:あら珍しい

:びっくりするのはきらいじゃなかったんだっけ?

 

『ああ、大嫌いだとも。だけどな、選り好みしてたら人気も出ないってものじゃないか?』

 

:草

:今更人気を気にしてw

 

『なんだとぉ…………?楽しく遣りたいために視聴者は必要だろうが!お前ら、俺の事拡散してないのか!?』

 

 怒りと冗談半分に叫ぶが、その響きは虚しく消えていった。

 

 視聴者は常に一桁台、コラボでなければ視聴者を稼げない底辺Vtuberなのだ。

 

 SNSでは他方面に絡みに行ったりはしているものの、どうしても知り合い程度の認知にしかなっておらず、ヒロイ本人も他のVtuberからの絡みに対応しているとはいえ互いに立ち位置は知り合いに収まっている。

 

 友人が少ない訳ではない。活動する時間帯が合わないのだ。

 

『…………ふうぅーーーー』

 

:覚悟決めようとしてんじゃねえよ!

 

『ああん!?心の準備は必要だるぉぉ!?』

 

:覚悟決めずに叫んでる成人男性が見たいんだよ

 

『くそ、精神的ヴィランが…………』

 

 罵倒だけで人を殺せるのは極少数である。なお、ヒロイのメンタルは何十回もBANされようとへこたれない鋼よりも固く、絹よりもしなやかであるため問題ない。

 

 超人的なパワーを持った存在がメンヘラになったら大惨事なのだから。

 

『さて、和風ホラーとして有名になり始めたこれは一体どのような化学反応を見せてくれるのでしょうか、ぜひご覧ください』

 

 何故か紹介風に話を進めているヒロイ。

 

 実はホラー物、特にジャンプスクエア系のいきなり驚かしてくるものが苦手なのだ。

 

 暴力に関しては超人ゆえに寛容的であるが、妙なところで恐怖に対する感性は一般人という弱点を持つ。

 

『あー、何で夜に学校を徘徊するんだよ。明日にしろよ。それか宿題を忘れたことを開き直れよ』

 

:主人公にケチ付け始めたよこいつ

:不真面目野郎がよぉ

 

『学校…………じゃなくてスクールじゃ真面目で通ってたんだぞぉ?そもそも学校に宿題を忘れるな!』

 

 至極最もな発言に反論しづらいのか、それともあえて反応しないのか。

 

 何故か静かになったコメント欄に不安を覚えながらも、テーマである暗い学校内の探索を進めていく。

 

 ストーリーでは夜の学校に宿題を取りに来た主人公が学校の怪異に襲われるというありきたりな内容だ。

 

 ありきたり故に王道、最低限の筋書きは保証されている。

 

 グラフィックもインディーゲームにしては端麗であり、それが余計に恐怖を助長させる。

 

『なにもでるなよ…………ここら辺から人体模型が突然現れて追いかけてこないよな?』

 

:あ

:あ

:フラグ乙

 

『そうやすやすとフラグ踏んでたま、おあああ!?』

 

 口は災いの元と言わんばかりに誰も居ない教室の扉を突き破り人体模型が飛び出してくる。

 

 その衝撃と音でがったんとゲーム外から何かが倒れる音が響く。

 

 そして人体模型は何故か動かなくなった主人公に襲い掛かり…………

 

『『『GAME OVER』』』

 

:草

:ビビりすぎワロタ

:やっぱりこうなったか

 

 血文字で書かれたゲーム終了の画面に沈黙する配信者ヒロイ。

 

 この状況で本来ならコメントを残して再起するはずだが、一向に画面上に戻ってこない。

 

 立ち絵もどこかに吹っ飛んだようなあらぬ方向へ向いており、不在であるような感触が漂う。

 

 

『…………ふざけんなよ、ゲームじゃなかったらぶっ飛ばしてたぞ』

 

 ヒーローとは思えない恨めしそうな声を聴いて皆はどう思うのだろうか。

 

『ちくしょうめ、こいつをぶっ飛ばす手段を手に入れたら絶対にぶっ殺してやる!』

 

:殺意が高い

:ホラーに武器は頼りないのでは?

 

『うるせえ!抵抗するなら武器をくれ!』

 

:多分、製作者はそんなこと考えてないよ

 

 視聴者のツッコミはあえて無視され、ヒロイは怪異を倒すべく夜の学校を駆け回る。

 

『うおぁーーー!?トイレから水をあふれさせるんじゃねーーー!もったいないだろうがーーー!』

 

 あまりにも庶民的に叫ぶヒーローはあまりにも滑稽であった。

 

 いくら体が強くともゲームでは一般人、一部は超人的な速度で敵を屠っていくこともあるがRPGやホラーゲームに対しては一般人と大差ない。

 

『だあぇ!?また死んだ!消火栓から現れるな!』

 

 泣き声と鳴き声に近い声を上げながら、配信する夜は更けていく。

 

 なお、この日にノーマルエンディングすら達成できずに配信を追えたことを記す。

 




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