超人(ガチ)系Vtuberは世界を救う夢を見るか   作:蓮太郎

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超人、リアルで働く

 

「柴木ー!そのセメントこっちに運んでくれー!」

 

「はいよー!」

 

 柴木昌也は工事現場で働く青年である。

 

 近隣の工事現場によく現れては力仕事を率先してこなしていき、最も力持ちな男として知られている。

 

「柴木さぁ、台車使って運べよ!腰痛めるぞ!」

 

「へーきです!」

 

「平気たってお前なぁ」

 

「ほっとけ、柴木は力持ちなんだよ」

 

 同じ現場で働く先輩の男が昌也を指差しながら続ける。

 

「前の現場でもそうだったけど、あいつセメント袋を1人で20袋運んでものピンピンしてたんだ。言うだけ無駄ってやつ」

 

「そんなに運べるもんかよ…………」

 

 普通は無理である。昌也が超人であるからこそ成せる所業であった。

 

 こういった悪目立ち気味なことをやっているだけあって嫌がらせのように仕事を押し付けられていたりする。

 

 だが、力仕事こそ天職と言わんばかりの働きっぷりに閉口せざるを得ない。

 

 そもそも仕事を大量に抱える本人が何も言わないため誰も口を出すことが出来ない。

 

「おーい柴木!休憩しようぜ!」

 

「先方の差し入れがさっき来たんだ、若いのから取っていけ」

 

「あざーす!」

 

 その分だけ可愛がられている節もあった。

 

 若いのによく食べてはよく働く。古い男にとっては昔の学生時代を思い出すような男だったのだ。

 

 いつもは普通の成人男性の2食分を食べておいて控えているとほざいており、休日の目撃証言で大食いチャレンジを難なくクリアしている姿を見られている。

 

 そのことで職場内の話題になったが一切隠すこともなく、さも当然のように話してくる。

 

 ある意味では男らしい姿が人気になったのだろう。

 

 なお、誰も昌也が参加する酒の席で奢りを言い出さない模様。

 

「このせんべい美味いっすね。甘さとしょっぱさのバランスが良い」

 

「柴木が言うなら違いない」

 

「安全確保ヨシ」

 

「俺らも食うか」

 

「俺、毒見役にされた???」

 

 本当にかわいがられているかはともかく、信用はされている。

 

 何故かグルメ系の方面でも信用されており、柴木が一度言った店から評判を聞くこともしばしばあったりする。

 

 それもその筈、柴木昌也は超人である。五感はもちろん鋭くここに居る誰よりも優秀である。

 

 つまり味覚も普通の人間より優れている。

 

「前に言ってた店だけどさぁ、やっぱりイマイチだったわ。全部パサパサして口が乾く」

 

「あのカツ丼屋?ソースもただくどいって感じで余計に味が分から無くなるんですよねー」

 

「そこまで言うんだったら逆に知りたいな」

 

「でーすーがー、この近くにただただ不味い店があります」

 

「それは知りたくないな…………」

 

「いや、逆に知っていたら入らずに済むだろ」

 

「むしろ柴木が不味いって言う店の方が気になるわ」

 

 休憩時間にぺちゃくちゃと喋り、豪快に水を飲む。

 

 本来なら酒を飲みたいところだが、残念なことに仕事の時間だ。

 

 遊びの時間は酒を飲もう。つまみを食べて酔っ払うのが男の楽しみ方だ。

 

 だが、昌也は酒に酔うことは無い。肝臓も超人であるが故に強すぎてアルコールに負けないのだ。

 

「柴木よぉ、お前彼女とかいないのか?」

 

「居ませんが?」

 

「何でお前に居ないんだよ。このおっさんだって結婚出来てるのに」

 

「うるせいやい。というかお前も即答するなよ、遊べよ、女で」

 

「すっごい失礼な言い方っすね」

 

「……………………チッ」

 

 男しかいないからこそノンデリな会話が繰り広げられ、これは配信のネタにできないなと心の中で苦笑いする。

 

 配信での下ネタやノンデリ発言は非常に気を使う。

 

 SNSというネットの海にぽいっと火種を投げ込んだら一瞬で炎上してしまう。

 

 まだ顔を出していない内はいいが、万が一何らかの要因で身バレでもしたら一大事だ。

 

 そうなれば誹謗中傷は自分自身だけでなく職場にも影響することは間違いない。職を失うだけでなく居場所すら失ってしまう。

 

 無職の超人なんてシャレにならない。救うモノもないヒーローに何の価値があるのだろうか。

 

「うーし、休憩終わり!仕上げていくぞ!」

 

「「「おー」」」

 

 現場の仕事は終わりさえすれば終わりという当たり前な事ばかりだ。

 

 今日の仕事も早く終わらせたら終業、あとは自由である。

 

「柴木ぃ!機材運んでくれ!」

 

「はいよー」

 

「待て待て待て!それ100kgあるやつ!やめろやめろ!」

 

 重機のように重すぎるものを運び出そうとする昌也に呆れられながら面白がられるのもいつもの事であった。

 

「…………あいつばっかり」

 

 そんな中、嫉妬と羨望の視線を向けられていることなんて気づかないのであった。

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