キングカズマinヒロアカ   作:うさぎ

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短めだけど2本目をどうぞ。


第10話

 

 

 

 

 

 

 戦闘訓練の終了を告げるサイレンが響き渡った瞬間、張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れた。

 

「……っ」

 

 足首に視線を落とすと、無理やり氷を引き剥がしたせいで、タイツ越しでも分かるくらいに赤紫色に変色している。

 キングカズマの見た目に憧れて作った戦闘服だけど、耐久テストとしては初陣からハードモードすぎやしませんかね。

 

 「兎山くん! 大丈夫!?」

 

ガタガタと震えながらも、床に置いてあった制服(※上着だけ)を大急ぎで羽織った葉隠さんが駆け寄ってくる。

 うん、見えないけど、きっと本気で心配してくれている顔をしてる。あと、その格好は逆に色々アウトだから早く下も穿いてほしい。

 

 「ああ、なんとかな。それより葉隠さんのおかげで勝てたよ。あの閃光がなきゃ、轟の広範囲氷結で全員フリーズしてた」

 

「えへへ、お役に立てたならよかった! でも本当に寒かったんだからね!?」

 

「本当に助かったよ。ナイスサポートだ、葉隠さん」

 

 尾白も障子を捕縛し終え、爽やかな笑みを浮かべてこちらに歩み寄ってくる。やっぱりこの男は癒やしだ。爆豪や轟みたいな尖りきったクソ強メンツを見た後だと、尾白の常識人オーラが聖母のように思えてくる。

轟は救えるが爆豪は生まれつきあれだからなおさら終わっている。

 

「悪かったな、二人とも。派手に壊しちまった」

 

 俺は廊下の奥、壁に背を預けたままぐったりしている轟の元へと歩み寄った。

推薦入学者、半冷半燃の天才。原作じゃ圧倒的な実力でこの訓練を無傷クリアしていたはずの男が、今は胸元を押さえ、苦しそうに呼吸を整えている。

 

「……お前、その足で、よくあそこまで動けたな」

 

 轟がオッドアイの瞳を僅かに見開き、俺の足元と、そして俺の顔を交互に見た。その目には、明らかな敗北の悔しさと、それ以上の「困惑」が浮かんでいる。

 

「ウサギは逃げる足だけじゃなく、蹴り出すバネが命だからな。……まぁ、万助さんの地獄の修行に比べたら、氷の1枚や2枚、気合いで割るしかねぇって体が覚え込んでただけだ」

 

「万助……? 誰だそれは……」

 

「気にするな。思い出すだけで背筋が凍る、俺のトラウマの具現化だ」

 

 

 轟の右半身から出ている冷気より、あのジジイの笑顔の方がよっぽど寒い。

 俺が差し出した手を、轟は一瞬だけ忌々しそうに見つめたが、やがて小さく息を吐き、その手を掴んだ。引き上げる。思っていたよりも、その体は冷え切っていた。

 

モニター室:クラスメイトたちの反応

 全試合が終了し、俺たちがモニター室へと戻ると、クラスの空気が明らかに変わっていた。

1試合目の緑谷VS爆豪の「ド派手なドツキ合い」とはまた違う、純粋な技術と連携によるジャイアントキリング。その余韻が部屋に満ちている。

 

「兎山! お前めちゃくちゃ強ぇな!!」

 

 真っ先に声をかけてきたのは切島だ。男気全開の顔で、自分のことのように興奮している。

 

「あの轟の氷をジャンプで躱しまくって、挙句の果てに八極拳だろ!? 鉄山靠マジで痺れたわ!」

 

「いや、俺は必死だっただけだって。それより葉隠さんの閃光と、尾白の的確なカバーがあったからだよ」

 

「謙遜するなって! 首席入学は伊達じゃねぇな!」

 

 上鳴や芦戸もワイワイと寄ってくる。中学時代、常にポツンと一人で弁当を食べていた(爆豪との闘いは除く)前世の記憶が脳裏をよぎり、少し面痒い。あ、やばい、これちょっと……いや、かなり嬉しいやつだ。

 

 そんな中、部屋の隅で壁に寄りかかり、異様な殺気を放っている男が一人。

 

「……チッ」

 

 爆豪勝己である。

 目が合った瞬間、文字通り親の仇みたいな顔で睨まれた。手のひらからパチパチと小さな爆発音が聞こえる。おーこわ。関わらんとこ。

 

『——うん、素晴らしい戦いだった!!』

 

 教壇(ではなくモニター前)に立つオールマイトが、大粒の汗を流しながらもプロの顔で総評を始めた。

 

『今回のMVPは……ヒーローチームの轟少年そして敵チームの兎山少年、葉隠少女の3人だ! 状況に応じた作戦の切り替え、そして個性を活かした見事な連携だった!』

 

八百万が「ふむ」と顎に手を当てる。

 

「兎山さんの遊撃としての突破力はもちろんですが、葉隠さんの『姿が見えない=光学的な個性の応用が可能』という点を瞬時に作戦に組み込んだ柔軟性。これこそが勝因ですわね」

 

 流石は八百万、考察がガチすぎる。ほらみろオールマイト先生がぷるぷるしちゃってるよ!

 でも「全裸のJKを閃光弾にする」というこの世の終わりみたいな絵面のヤバさには気づいていないようだ。それでいい、その清純さを保ってくれ。ていうかバレたら俺がやばい。

 

 放課後:リカバリーガールの診療所

「はい、終わり。全く、初日から派手にやってくれるねぇ」

 

 チュ、と軽いキスを受け、独特の疲労感と共に足首の痛みが引いていく。

放課後、俺は一人で保健室を訪れていた。

 

「すみません、リカバリーガール。」

 

「はしゃぐのは結構だけど、自分の体のキャパシティを考えなさい。あんたのそのウサギの脚力、筋肉と骨にかかる負荷が尋常じゃないんだから。いくら鍛えているからって、氷を力任せにブチ折るなんて馬鹿な真似、二度とするんじゃないよ」

 

「……善処します」

 

 お菓子をいくつか貰い、包帯が巻かれた足を引きずりながら保健室を出る。

夕暮れの廊下は静かだった。窓から差し込む茜色の光が、雄英高校の長い廊下をオレンジ色に染めている。

 

(まあ、なんとかなるか)

 

 原作の知識はある。これから先、USJ襲撃や体育祭、さらにはヴィラン連合との本格的な抗争が待っている。俺という「21人目」が存在することで、未来がどう変わるかは分からない。あとうろ覚えだし。

 

 だけど、今日確信した。

この脚なら、万助さんの地獄の特訓を耐え抜いたこの体なら、どんな未来が来ようとも、跳べない壁なんてない。多分。(フラグ)

 

「あ、兎山くん!」

 

 校門へ向かう下駄箱の近くで、緑谷が待っていた。隣には麗日と、なぜかロボットみたいな動きの飯田もいる。新手のロボットダンスか?

あと爆豪との話はついたのかな?

 

「足、大丈夫? リカバリーガールのところ行ってたんだよね」

 

「おう、ばっちり。ほら、もうピンピンしてる」

 

 わざと軽くステップを踏んで見せると、緑谷はホッとしたように目を細め、それからノートを差し出してきた。

 

「あのさ! 兎山くんの今日の『鉄山靠』と空中での方向転換の時の足の角度なんだけど、あれってやっぱり……」

 

「ストップ緑谷、オタク特有の早口が始まってる」

 

「あはは! デクくん、またやってる!」

 

麗日が笑い、飯田が「しかし兎山くんの武術は実に見事だった! 我々も弛まぬ努力を重ねねばな!」と腕を激しく上下に振る。

 

 賑やかな彼らの声を聞きながら、俺は夕日に向かって歩き出した。

 

  「高校に入っても修行はあるぞ」

 

 「!!!」

 師匠勘弁してくれ。

 

 




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