キングカズマinヒロアカ   作:うさぎ

12 / 13
第12話

 

 

 

 翌日、週末。

 俺の予感は見事に的中し、実家で待っていたのは万助さんによる修行だった。

 肉体を極限までシバき倒され、精神を一度ログアウトさせて水曜日。俺はゾンビのような足取りで雄英高校の門をくぐった。

 

 そんなボロボロの俺を、前の席から轟が静かに見つめてくる。オッドアイの瞳に宿る「こいつ、週末でさらに強固な精神(死んだ目)を手に入れたのか……!」という謎の熱いリスペクトが突き刺さって痛い。頼むからこれ以上ライバル視しないでくれ。てかお前はもっとクールキャラでいけよ。

 

「——席につけ」

 

 ガラガラとドアが開き、相澤先生が入ってくる。いつものローテンションだが、今日はその手に分厚い資料が握られていた。

 

「今日のヒーロー基礎学だが。俺とオールマイト、そしてもう一人の三人体制で君らを見ることになった」

 

 三人体制。その言葉に教室がにわかにざわめく。原作通りだ。職員室のカリキュラムは(ヴィランに覗かれはしたものの)死守したはずだが、予定されていた授業内容自体に変更はないらしい。

 

「先生! 何をするんですか!?」

瀬呂の質問に、相澤先生は淡々と「レスキュー」と書かれたカードを掲げた。

「水難、土砂、火災等。あらゆる事故災害を想定した模擬演習。——救助訓練だ」

 

 USJ。原作における、1年A組の最初の大きな試練だ。

 

「レスキューか……! 腕が鳴るぜ!」

「水難なら私の独壇場ね、ケロ」

切島や梅雨ちゃんが盛り上がる中、俺は背筋に冷たいものが走るのを感じていた。

 

 職員室での一件で、死柄木は俺を「うさぎ野郎」と呼び、「次は本番でな」と言い残して消えた。カリキュラムは奪われているから原作通り来る可能性は極めて高い。

 

(……USJで、確実に奴らは来る。しかも、俺の顔と個性を認知した状態で、だ)

 

 胃が痛い。だが、ここで逃げるわけにはいかない。万助さんの地獄のシゴキ(物理)に比べれば、ヴィランの奇襲なんて……いや、どっちも同じくらい地獄だな。

 

「今回はコスチュームの着用は個人の判断で構わない。訓練場所は少し離れた場所にあるから、バスで移動する。以上、着替えて速やかに集合しろ」

 

 各自コスチュームに着替え、移動用のバスへと乗り込む。

原作通り飯田くんは空ぶっていた。ドンマイ!

車内は、和気藹々とした空気に包まれていた。

 

「緑谷ちゃん、あなたの個性、オールマイトに似てるわね」

「えっ!? あ、あはは、そう、かな!?」

 

 梅雨ちゃんの鋭いツッコミに、緑谷が分かりやすくパニックを起こしている。それを横目に、俺は隣の席に座った切島と、なぜか正面の席からじっと俺を凝視してくる轟の視線に挟まれていた。

 

 

 「しかしよ、兎山。お前の個性は『兎』だけど武術の扱いがすごいな! 先週の戦闘訓練の時も思ったけどよ、あの身のこなし、マジで男気溢れててカッケーわ!」

切島がキラキラした目を輝かせながら、ガシガシと俺の肩を叩いてくる。肉体を極限までシバき倒された身には、その純粋な称賛の衝撃すら地味に響く。痛い、切島、硬化してなくても地味に手がデカくて痛い。

「あ、ありがとう切島……。でもあれは、修行をすれば誰でも会得できる。死ぬかもしれないけど」

「死ぬ環境!?」

 

 緑谷のパニックを宥めていたはずの麗日さんまで巻き込んで、周囲の視線が俺に集まる。

ほら見ろ、正面の轟くんの目が「やはり死線を潜り抜けてきた男の眼光……」みたいな、一段と深い納得の光を帯びてしまったじゃないか。

 違うんだ轟、俺の目はただ単に寝不足と筋肉痛でハイになってるだけだ。

「まあ、個性の派手さで言ったら爆豪や轟、それにお前の『兎』も相当な近接特化だけどよ。俺の『硬化』はプロ相手だと見栄えがなァ」

 十分ですやん。俺にもくれよその個性。

 

 切島が自分の腕をガチガチと硬化させながら苦笑する。

「そんなことないよ! 切島くんの個性はプロ相手でも十分通用する、すごく強固な盾になるし、何より救助活動(レスキュー)においては二次災害を防ぐための最高の個性だよ!」

 緑谷がノートを取り出しそうな勢いで早口にフォローを入れる。さすがヒーローオタク、分析が的確だ。

 

「そうだぞ切島。それに、派手な個性ってのはそれだけ注目も浴びるが、弱点もハッキリしやすい。……俺の『兎』なんて、ただ脚力が強くて耳が良いだけだ。武術で補わなきゃ、上流の奴らには一瞬で対策される」

俺がそう言うと、車内の空気がふっと引き締まった。

特に、正面の轟が小さく息を呑むのが分かった。

「……己の個性を過信せず、常に最悪を想定して技術を磨く、か。お前は、どこまで先を見据えているんだ、兎山」

「えっ、いや、そんな大層な話じゃ——」

「俺は、親父の力(炎)は使わない。だが、お前のような奴に勝つためには、氷の精度をさらに上げる必要があるようだな」

だからライバル視するなって! 氷だけで十分お釣り来るくらい強いからお前!

賑やかな車内の会話の裏で、俺の脳裏には職員室で対峙した、あの不気味な手だらけの男——死柄木弔の顔が張り付いて離れなかった。

『次は本番でな』

奴は確実に、俺たちを、いや、オールマイトを殺しに来る。

原作の知識はある。脳無という、オールマイト対策のバケモノが来ることも分かっている。

だが、今回はそこに俺への対策が含まれている可能性が極めて高い。

 

(万助さんの地獄の特訓のおかげで、身体のキレは上がってる。……だけど、ヴィラン連合の奇襲を一人でどうにかできるほど、この世界は甘くない)

隣で笑う切島、前席で冷徹に、しかし熱い闘志を燃やす轟、そしてオロオロしながらもヒーローへの一歩を踏み出している緑谷。

こいつらを、原作以上の大惨事に巻き込ませるわけにはいかない。

「もう直ぐ着くぞ、静かにしろ」

相澤先生の鋭い声が響き、目的地が見えてきた。

扉が開くと、目の前に現れたのは、巨大なドーム状の施設。

 

 「スッゲー! USJかよ!」

「——ようこそ。あらゆる事故や災害を擬似的に再現した演習。

         USJ

 その名もウソの災害や事故ルーム!」

 

 著作権はどこ言ったんだろう?

 

 目の前に現れたのは、モコモコとした宇宙服に身を包んだスペースヒーロー・13号。

 原作通りの登場に周囲が「13号だ!」「大好きなヒーロー!」と歓声を上げていた。いよいよ始まる。

相澤先生が13号に歩み寄り、小声で何かを話している。おそらく、本来ここに来るはずだったオールマイトが、通勤途中の人助けで活動限界を迎えてしまったという連絡だろう。

「まったく、非合理的だ……」と呆れる相澤先生の横顔を見て、俺は小さく息を吐いた。

(オールマイトが最初からいないのも原作通り。だけど、今回はヴィラン側が『俺』を警戒している。もし脳無の他にも何か対策を用意されていたら……)

 

 「——始める前に、一つ二つ、三つ四つ……五つ六つ……」

 

 13号が指を折りながら、お馴染みの説教(演説)を始める。

個性が簡単に人を殺めてしまうこと。この授業では個性を「人を傷つけるため」ではなく「人を救うため」にどう使うかを学ぶこと。

緑谷たちが真剣に頷く中、俺もその言葉を頭に刻み込む。

てか核融合できる個性とかもあるのかな?

あったら隔離されたら敵に利用されそう。

 

「——以上! ご清聴ありがとうございました!」

 13号が綺麗に一礼し、生徒たちがわっと沸き立つ。

「よし、まずは——」

相澤先生が指示を出そうとした、その瞬間だった。

パチッ、パチチ……

 

 中央の広場、噴水のある空間の空気が、奇妙に歪んだ。

異変に最初に気づいたのは、聴覚を極限まで研ぎ澄ましていた俺、そして相澤先生だった。

 

「……!」

ドーム中央の空間が、墨を溢したように黒く、紫に染まっていく。渦巻く霧のようなゲート。その中心から、ぞろぞろと不気味な影が現れ始めた。

「一歩も動くな!」

 

 相澤先生の鋭い怒号が響き渡る。

「……先生、あれって入試の時の、もう始まってるパターンのやつですか?」

 切島が暢気に身を乗り出そうとするのを、相澤先生が片手で制した。ゴーグルを装着するその背中から、一気に冷たい威圧感が放たれる。

 

「動くなと言っている……! あれは、本物のヴィランだ!」

クラス中に戦慄が走る。

 

 ゲートの中心から現れたのは、全身に「手」を纏った男——死柄木弔。そしてその傍らには、脳みそを剥き出しにした巨体の化け物・脳無。

死柄木はゆっくりと首を巡らせ、そして——一直線に、階段の上にいる俺を見据えた。

 

 その狂気に満ちた視線が、皮膚を突き刺すように痛い。

「……あは。見つけた。いたよ、黒霧」

死柄木の声は、かすれているのに、ドーム内の全員の耳に届くほど不気味に響いた。

 

 「オールマイトはいないのかぁ……せっかく『お出迎え』の準備をしてきてあげたのに。まぁいいや。まずは、こないだの『コソ泥うさぎ』から片付けようか」

 

 死柄木が細い指先を俺に向け、楽しげに歪んだ声をあげる。

「紹介するよ。君のせいで、予定を少し変更して連れてきたんだ。——対『兎』用、近中距離圧殺特化型のマルチ脳無さ。さあ、お前の大好きなサバイバルを始めよう」

死柄木の言葉に応じるように、黒霧のゲートから、もう一頭の「異形」が這い出てきた。

 

 通常の脳無よりも一回り小柄だが、その脚部はまるでバッタか獣のように異常に発達しており、全身を強固な甲殻のような皮膚が覆っている。明らかに「スピード」と「跳躍力」で俺の『兎』を潰すために調整された個体だ。今のところ中距離要素はないが、油断は出来ない。

(マジかよ……! ほんとに俺へのメタを用意してやがった……!)

 

 冷や汗が背中を伝う。だが、不思議と身体は震えていなかった。

俺の脳は今、異常なほど冷静だった。恐怖よりも先に、生き残るための生存本能がパチパチと火花を散らしている。

「兎山……奴ら、お前を狙っているのか?」

 

 正面にいた轟の右側から、冷気がピキピキと立ち上る。そのオッドアイには、恐怖ではなく、明確な戦闘への意志が宿っていた。

「……どうやら、職員室でちょっと生意気な口叩いたのが気に入らなかったらしい」

 

 俺は極限の緊張感の中、あえて不敵に笑ってみせた。

「13号、生徒を守れ! 兎山、お前は絶対に前に出るな!」

 

 相澤先生が捕縛布を構え、中央の広場へと飛び降りる。一人で多勢のヴィランに突っ込んでいく担任の背中を見ながら、俺は拳を強く握りしめた。

原作の知識はある。これから黒霧によって、クラスメイトたちは各ゾーンへ分断される。

そして、俺に向けられたあの「対兎用脳無」。

 

(…受けて立つ!)

「みんな、来るぞ! 固まれ!!」

俺の叫びと同時に、黒い霧が激しく渦巻き、俺たちの視界を奪おうと襲いかかってきた。

 

 「初めまして。我々はヴィラン連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして」

 

 原作通りだが相変わらず頭がイカれてやがる。

「まあ、それとは関係なく私の役目はこれ」

 

 黒霧をみながら13号先生が射線上に構えている。

 

 その時、先手必勝とばかりに切島と爆豪が黒霧に襲いかかった。まずいな。飛び出した2人に対して轟と俺は舌打ちをする。2人の立ち位置は13号の前であり、そこは『ブラックホール』の射線上だった。

 

「その前に俺たちにやられる事は考えてなかったか!?」

 爆豪お前今現在進行形でやらかしているぞ。

「ダメだ!どきなさい2人とも!」

 

「危ない危ない。そう、生徒といえど優秀な金の卵。散らして、嬲り、殺す」

 

 「しまっ――!」

黒霧のモヤが爆発的に膨れ上がると同時に、空間がグニャリと歪んだ。

13号先生の警告も虚しく、爆豪と切島の突撃によって生じた一瞬の隙――そこを黒霧は見逃さなかった。どす黒い闇が、津波のように生徒たちの足元から一気に噴き上がる。

「うわあああ!?」

「何だこれ、身体が――」

 

次々と闇に呑まれ、各ゾーンへ強制転送されていくクラスメイトたち。原作通りの展開だ。

 だが、俺の長い耳は、その混沌とした悲鳴の裏で、頭上から迫る「空気を爆破するような凄まじい風切り音」を完璧に捉えていた。

――ドオォン!!!

「がはっ……!?」

次の瞬間、目の前が真っ白になるほどの衝撃波が広場を走った。

 中央広場からこの入り口の階段まで、数十メートルの高低差を、ただの一跳びで跳躍してきた影。

対『兎』用、近中距離圧殺特化型のマルチ脳無。

そいつは、俺がワープの闇に完全に呑まれる直前、その強靭なバッタ脚による超高速のドロップキックで、空間ごと俺を横から力任せに「蹴り飛ばした」のだ。

「兎山くん!?」

「おい、そいつは――!」

 

 闇の向こうで緑谷や轟の声が聞こえた気がしたが、視界が激しく回転する。

気がつけば、俺は黒霧の転送網から強引に弾き飛ばされ、ドームの壁際――誰もいない、完全に孤立したコンクリートの瓦礫地帯へと叩きつけられていた。

「ズササササァッ!」と激しく地面を滑りながら、兎の受身を極限まで取って立ち上がる。

 

 慌てて周囲を見回すが、誰もいない。轟も、緑谷も、他の奴らも全員、原作通り各ゾーンへ散らされたようだ。完全に引き離された。

 

「ガ、ギギ…!」

煙の中から、鳥のような嘴をカチカチと鳴らしながら、そのバケモノがゆっくりと立ち上がる。

 

 通常の脳無より一回り小柄だが、その脚部は異常なほどに肥大化し、全身を強固な甲殻のような皮膚が覆っている。

(マジかよ……本当に原作の展開を維持したまま、俺だけを狙い撃ちにするタイマン環境を作りやがったな……!)

 

 冷や汗が背中を伝う。だが、不思議と身体は震えていなかった。

水曜日まで万助さんにノンストップでシバかれ続け、精神を一度ログアウトさせたおかげか、俺の脳は今、異常なほど冷静だった。

 恐怖よりも先に、生き残るための生存本能がパチパチと火花を散らしている。

 

 「ハッ、随分な過保護じゃねえか、死柄木弔……!」

俺は足の裏でコンクリートを叩いてステップを刻んだ。

 

 実家での地獄の特訓のおかげで、筋肉痛でバキバキのはずの身体は、驚くほど軽く、キレ上がっている。

 

「ギシャアアアア!!!」

脳無の強靭な後ろ脚が爆発した。

 筋肉の収縮と解放だけで、音速に近い踏み込み。一瞬で俺の目の前まで肉薄し、甲殻に覆われた丸太のような腕が、俺の顔面目掛けて振り下ろされる。

 

(――遅い)

 脳が、いや、身体がそう判断した。

確かに速い。だけどな、先週末から俺が相手にしていたのは「何の予備動作もなく、気配すら消して、あらゆる角度から音速の拳を叩き込んできた万助さんだ。

 

 あの人の理不尽な暴虐に比べれば、この脳無の動きは直線的で、あまりにも「分かりやすい」。

俺は紙一重で頭を下げ、脳無のストレートを避けた。耳元をかすめる猛烈な風圧で自慢の毛が数本吹き飛ぶ。

「せェの、っ!」

 

 避けた勢いのまま、自慢の脚力に「万助流古武術・縮地」の体重移動を乗せ、脳無の懐へと滑り込む。狙うは、不自然に肥大化した右膝の関節。

 

ドカァン!!!

 

「ガッ……!?」

俺の全力のローキックが、脳無の膝裏に炸裂した。音やばくね?

 いくら衝撃吸収や頑強な甲殻を持っていようと、構造上の「関節の曲がる方向」への打撃、それも全体重と脚力を一点に集中させた一撃は防げない。カクン、と脳無の巨体が体勢を崩す。

 

 だが、こいつは俺用のマルチ脳無だ。ただ崩されるだけでは終わらない。

「ギガァッ!!」

脳無は崩れた体勢のまま、全身の甲殻から信じられないほどの熱量を放出。俺を至近距離から焼き尽くそうと、赤い熱波が爆発的に広がった。ただの馬鹿力じゃない、機動力を殺された時のための「熱を放つ個性」の組み合わせだ。

 

「熱っつ!? 視覚的にも戦い方的にも汚ねぇぞ特注品!!」

俺は咄嗟に地面を強く蹴り、後方へと大跳躍して熱波の範囲から逃れる。

衣服の端が少し焦げたが、ダメージはない。しかし、脳無はその隙に強引に立ち上がり、再びその異常な脚力で跳ね上がった。

ドームの壁、天井、瓦礫。それらを猛烈な速度で蹴り渡りながら、全方位から残像を伴って俺を追い詰めてくる。まるでピンボールだ。 

 

 さらに、一定の距離を保ったまま、蹴りの風圧による衝撃波までこちらに飛ばしてきやがった。対策されれば一瞬で潰される――バスの中で切島に言った言葉が、最悪の形で現実になっていた。フラグをたたせやがって、ちきしょうめー!!(ちょび髭風)

 

だが、俺には、あの地獄を生き延びた技術がある。そしてあいつは一生中距離の衝撃波を撃ち続ければ勝ちなところを、なぜかは知らんが、丁寧なことに自分から近距離戦に持ち込んできてくれる。勝機は十分ある!

 

 耳をピクピクと動かし、全神経を集中させる。

右斜め後ろ、天井、そして――今、俺の真上!

「もらったぁ!!」

頭上から弾丸のように突っ込んでくる脳無に対し、俺は逃げるのではなく、あえて自ら踏み込んで距離を詰めた。相手の突進の威力が最大になる手前、懐の死角へ。

 

 万助流・発勁。相手の重心を、内側から完全に破壊する打撃の極意。

俺は独楽(コマ)のように鋭く身体を回転させ、兎の脚力のすべてをその一撃に注ぎ込んだ。

 

「――『因幡・圧壊』!!!」

 

 ドゴォン!!! と、肉体が衝突したとは思えない重低音が響き渡る。

衝撃吸収の個性を貫通し、内部の骨を直接粉砕するような衝撃が、空中で迎撃された脳無の左膝の関節を、完全に文字通り「逆方向」へとへし折った。

「ギ、ガァァァァァァァッ!?」

最大の武器である脚の機能を破壊され、バケモノが悲鳴を上げて地面に転落する。激しい砂煙を上げながらのたうち回る脳無。これでもう、あの神速の跳躍はできない。

「ふぅー……ふぅー……。クソ、万助さんのシゴキに比べりゃ、お前の防御力なんて、まだ可愛いもんだぜ……」

肩で息をしながら、俺は冷や汗を拭った。

とどめを刺すために俺は脳無に近づく。

 「けけけけけかきくこかきくけこ!!」

暴れているが息の根を止めるまで容赦はしない。

 苦し紛れに殴ってくるが俺は逆に受け流し、腕の関節と腕をちぎた。

 

 カキクケコってなんだよ、どんな断末魔だよ!

「ギ、ゲェェ、カキくけ……コオォォッ!!」

のたうち回りながら、バケモノがなおも執念深く、残った右腕を大振りに振り回してくる。風圧だけでコンクリートが削れるような一撃。だが、その軌道は完全にブレブレだ。

 

 万助さんの、あの「呼吸をするように急所を撃ち抜いてくる」神速の拳に比べれば、ただの暴風に過ぎない。

「……終わりだ」

俺はステップを踏んでその大振りを軽くいなし、開いた懐へと一歩踏み込む。

そのまま脳無の右脇へと滑り込み、腕の関節を逆方向に極め——自慢の兎の脚力による踏み込みと、全身の捻りを連動させた「柔」の技術で、一気に引き絞る!

——ブチ、ブチブチィィッ!!!

「ガ、ギィァアアアアアッ!?」

強固な甲殻ごと、脳無の右腕が文字通り根元から引きちぎられ、汚い体液が瓦礫に飛び散った。

両足の関節を破壊され、唯一の武器だった腕まで失った特注品は、もはや自立することすらできず、ピクピクと痙攣しながら地面に転がることしかできない。

 

 だが、こいつの再生能力がオールマイト用(本命)と同等なら、これでも数分後には元通りになる可能性がある。原作知識があるからこそ、中途半端な手加減は命取りだと知っている。

(脳無の弱点は、剥き出しの脳だろうたぶん…!)

「悪く思うなよ…!」

 

 俺は転がる脳無の脳天目がけ、垂直に跳躍した。

空中での最高到達点から、重力と、万助流古武術の体重移動、そして俺が持つすべての脚力を一点に集中させる。

「——万助流奥義・『玉兎・圧殺踏』!!!」

ドゴォォォンッ!!!!!

 

ドームの端だというのに、まるで大型ミサイルでも着弾したかのような大質量爆発の音が響き渡り、瓦礫地帯のコンクリートがクモの巣状に激しく陥没した。

直撃。衝撃吸収の個性を、骨伝導による発勁で完全に無効化された脳無の頭部が、文字通りコンクリートの底へと文字通り消し飛ばされ、完全に沈黙した。

……ふぅー、ふぅー、と荒い息を吐きながら、俺は陥没したクレーターの中心から飛び退く。

今度こそ、完全に戦闘不能だ。ピクリとも動かない。

 

 ひとまずは俺へのメタ個体を戦闘不能に追い込んだ。だが、本当の地獄はここからだ。 

遠く、中央広場の方に目を向ける。

そこでは相澤先生が、一人で数多のヴィランを相手に孤軍奮闘している姿が見えた。そしてその奥には、まだ一歩も動いていない、オールマイト対策の本命である「黒い巨体の脳無」と、首をガリガリと掻きむしる死柄木弔の姿が。

 原作通りだ。あっちには、相澤先生の骨を折るための、本物のバケモノが控えている。

 

 相澤先生を助けるため、そして原作の悲劇を阻止するために、中央広場へと向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿遅くなってすんません。部活やらテストでドタバタしてました。

誤字脱字報告と感想や評価のほどをよろしくお願いします。

ヒロイン作るべき?

  • いる
  • いらん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。