キングカズマinヒロアカ 作:うさぎ
「なら教えてやる」
その一言から、俺の生活は一変した。正月が終わった翌週。
俺は親に頼み込み、週末になると万助さんの道場へ通うようになった。
ちなみに親からはあっけなく許可を得た。
小学校一年生が突然、
「武術を習いたい」
とか言い出したのだから反対されると思っていたが、普段あまりワガ
ママを言わなかったので、自分から主張してくれて嬉しいらしい。
もう少し両親と話そうとおもった。
そして修行初日。
俺は現実を知った。 ボコボコにされた。
いや本当にやばいこの人。個性を使っても、身体能力でゴリ押しても
全部投げられるやらいなされるやらで全部読まれる。
なんなんだこの人。
ニュータイプか?
俺が十回攻撃したら十回返される。二十回攻撃したら二十回返される。
おかしい。計算が合わない。
すると万助さんは言った。
「速いだけだ」
グサッ。 心に刺さった。
めちゃくちゃ刺さった。
だが反論できない。
実際その通りだからだ。
キング・カズマの身体能力は高い。
とんでもなく高い。 だがそれに甘えていた。
今まで同年代に負けたことがなかった。
だから勘違いしていたのだ。
強いのは俺じゃない。
この体だ。
「強い奴はな」
万助さんが言う。
「速いだけじゃない」
俺は立ち上がる。
何度目かも分からない。
服は土まみれだった。
「相手を見る」
投げられる。
「考える」
転がる。
「待つ」
また投げられる。
「そして勝つ」
さらに投げられる。
理不尽である。
だが。楽しかった。
前世では味わったことのない感覚だった。
強くなっている。
確実に。少しずつ。
昨日できなかったことができるようになる。
それが嬉しかった。
気づけば二年。
三年。
四年。
時間は流れていった。
小学五年生。
その頃には学校でも少し有名になっていた。
もちろん良い意味でも悪い意味でも。
運動会はもちろん。徒競走。球技大会。マラソン。
全部上位。
全部化け物扱い。
先生たちも困惑していた。
そのおかげで友達は、相変わらず少ない。
俺の住んでいる地域は異形型の差別は少なからずあるが、小学校は少なかった。
運動神経のおかげで一定の好感度はもっていた。
異形型への偏見は昔より減ったが、完全にはなくならない。
俺も無理に輪に入ろうとはしなかった。
鍛える方が楽しいし。
学校にいる時間は参考書でお勉強。
平日は自主トレをして、休みの日は師匠に稽古をつけてもらう
そんな毎日を送っていた。勉強は中学生の英語の範囲を先取りして今やっている。あと数学も。
早めにやらないと、雄英高校に行けなくなってしまうから。
数学は忌々しい点Pが出ていないからまだいける。出たら知らん。
そんなある日だった。帰宅途中。
路地裏から声が聞こえた。
「やめろよ!」
子供の声。俺は足を止めた。
見ると三人の小学生が、一人の異形型の少年を囲んでいた。
トカゲのような顔をした少年だった。
体も小さい。
明らかに怯えている。
そして、聞こえてきた。
「気持ち悪いんだよ」
「怪獣みたいな顔しやがって」
「こっち来んな」
俺は立ち止まった。懐かしい。
いや。
懐かしいというのは違うか。
俺自身が幼稚園で言われていた言葉だ。
少年は俯いていた。
反論しない。
できないのだろう。
言い返したところで状況は変わらない。 俺は歩き出した。
ゆっくりと。
「……」
「?」
いじめていた三人が振り返る。
そして固まった。
俺はキング・カズマそのままの見た目である。
身長も同年代より高いおまけに毎日鍛えている。
ただ黙ってきるだけで普通に怖い。俺は何も言わなかった。
ただ見た。
三秒。逃げた。
全員。黙って。
「…………」
逃げるんかい。
俺は少しだけ肩を落とした。
そしてトカゲの少年へ向く。
「大丈夫か」
少年は目を丸くした。
たぶん驚いている。無理もない。
突然ゴリムキなうさぎが現れたんだから。
俺なら多分泣く。
「……うん」
「そうか」
会話終了。気まずい。
俺はコミュ力が高くない。
前世からそうだ。
キング・カズマリスペクトのせいでさらに悪化している。
だが。
少年は少しだけ笑った。
「ありがとう」
その瞬間。俺は思った。
ヒーローって。
こういうことなのかもしれない。
オールマイトみたいな派手な活躍じゃなくても。
世界を救わなくても。
誰か一人を助けられたなら。
それも立派なヒーローなんじゃないか。
そして俺は改めて決意した。
雄英高校に入る。
トップヒーローになる。
異形型への偏見をなくす。
そして――
キング・カズマのように。
誰かを守れる最強のヒーローになる。
その目標へ向けて。
兎山一真の本格的な挑戦が始まろうとしていた。
(とうとう点Pがでやがった!)
(現在完了なんてしらん!こちとら前世の偏差値40前半だぞ!)
問題は雄英受験までに偏差値を上げれるかどうかだ。
まだストックがある。