キングカズマinヒロアカ   作:うさぎ

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スタイリッシュなのにパワーキャラなの良くない?



第2話

 

 

 

 

 なら教えてやる」

 

その一言から、俺の生活は一変した。正月が終わった翌週のことだ。

 

 俺は親に頼み込み、週末になると万助さんの道場へ通うようになった。ちなみに親からはあっけなく許可が下りた。

 小学校一年生が突然「武術を習いたい」と言い出したのだから反対されるかと思ったが、普段あまりワガママを言わない俺が自分から主張したのが嬉しかったらしい。……もう少し両親と会話を増やそう、と静かに反省した。

 

 そして迎えた、修行初日。

 俺は非情な現実を知ることになる。――ボコボコにされた。

 

いや、本当にやばい、この人。

 個性を使おうが、恵まれた身体能力でゴリ押そうが、すべて読まれているかのように綺麗にいなされ、投げ飛ばされる。なんなんだ、この人は。ニュータイプか?

 俺が十回攻撃したら十回、二十回攻撃したら二十回、寸分の狂いもなく完璧に返される。おかしい。計算が合わない。

 

 呆然とする俺に、万助さんは言い放った。

 

「速いだけだ」

 

 グサッ、と心に刺さった。めちゃくちゃに刺さった。

だが、反論の余地は微塵もない。実際、その通りだからだ。

 

 キング・カズマのアバターから引き継いだ身体能力は高い。とんでもなく高い。だが、俺はそれに甘えていた。今まで同年代に負けたことがなかったから、勘違いしていたのだ。

 強いのは俺じゃない。この『体』のスペックだ。

 

「強い奴はな」

 

万助さんが静かに言う。

 

「速いだけじゃない」

 

俺は泥だらけの服で、何度目かもわからない立ち上がり方をする。

 

「相手を見る」

――投げられる。

 

「考える」

――地面を転がる。

 

「待つ」

――また投げられる。

 

「そして勝つ」

――さらに投げられる。

 

理不尽極まりない。だが――最高に楽しかった。

前世では絶対に味わえなかった、五感がヒリつくような感覚。

確実に、少しずつ、昨日できなかったことができるようになっていく。その成長のステップが、たまらなく嬉しかった。

 

 

気づけば二年、三年、四年と、時間はあっという間に流れていった。

 

 小学五年生。その頃には、俺は学校でちょっとした有名人になっていた。もちろん、良い意味でも悪い意味でも、だ。

 運動会、徒競走、球技大会、マラソン。出場する競技はすべて一等賞。

だが、その結果は「すごい」を通り越して、周囲からは「化け物」を見る目で見られていた。先生たちもどう扱っていいのか困惑している。

 

 そのせいか、友達は相変わらず少なかった。

 俺の住んでいる地域は異形型への差別が比較的少ない方で、小学校でもあからさまな虐めはなかった。運動神経のおかげで一定の好感度は持たれていたものの、やはりどこか壁がある。

 異形型への偏見は昔より減ったとはいえ、完全に消えることはない。俺も無理に周囲の輪に入ろうとはしなかった。そんな暇があるなら、体を鍛える方が何倍も楽しかったからだ。

 

 学校にいる時間は参考書を広げてお勉強。

 平日は自主トレに励み、休日は師匠に稽古をつけてもらう。

そんなストイックな毎日を送っていた。最近は雄英高校の受験を見据えて、中学生の英語や数学を先取りして進めている。

 

(……なんて油断してたら、とうとう『点P』が動き出しやがった!)

(現在完了形なんて知らん!こちとら前世の偏差値40前半だぞ!)

 

 忌々しい数学の点Pと英語の文法に頭を抱えつつ、俺は「問題は雄英受験までにこの偏差値をどこまで引き上げられるかだな……」とため息をついていた。

 

 

 そんな、ある日の帰宅途中だった。

薄暗い路地裏から、鋭い声が聞こえてきた。

 

「やめろよ!」

 

 子供の声だ。俺は足を止めた。

覗き込むと、三人の小学生が一人の異形型の少年を囲んでいた。トカゲのような顔立ちをした、体つきの小さな少年。彼は明らかに怯え、身を縮こまらせている。

 

「気持ち悪いんだよ」

「怪獣みたいな顔しやがって」

「こっち来んなよ!」

 

 容赦のない言葉が浴びせられる。

 俺は一瞬、足を止めた。懐かしい、と一瞬思った。いや、懐かしいなんて綺麗な言葉じゃないな。俺自身が幼稚園の頃に浴びせられていた、苦い記憶の言葉そのものだ。

 トカゲの少年は俯いたまま、反論すらできずにいた。言い返したところで状況が悪化することを知っているのだろう。

 

俺はゆっくりと歩き出した。

 

「……」

「?」

 

 足音に気づいた三人組が振り返り、その瞬間、完全に硬直した。

今の俺のビジュアルは、キング・カズマそのものだ。同年代より遥かに頭一つ抜けた身長に、毎日鍛え上げられた筋肉。そんな『ゴリムキなうさぎ』が、無言で、ただじっと見下ろしているのだ。普通にホラーである。

 

俺は何も言わなかった。ただ、静かにメンチを切った。

 

三秒。

奴らは一言も発さず、脱兎のごとく逃げ出した。

 

「…………」

 

 逃げるんかい。

拍子抜けして少しだけ肩を落とし、俺はトカゲの少年へと視線を戻した。

 

「大丈夫か」

「……えっ?」

 

少年は目を丸くした。無理もない。突然現れたゴリムキうさぎに助けられたのだ。俺が彼の立場なら、恐怖で泣き叫んでいる自信がある。

 

「……うん、大丈夫」

「そうか」

 

 会話終了。めちゃくちゃ気まずい。

前世からコミュ力が低い上に、キング・カズマをリスペクトしすぎて寡黙さに拍車がかかっている。

 

だが、少年は泥を払いながら、少しだけはにかむように笑った。

 

「ありがとう」

 

その瞬間、胸の奥が熱くなった。

ああ、ヒーローって、こういうことなのかもしれない。

 

 オールマイトのような派手な大活躍じゃなくても。世界を救うような大層なものじゃなくても。

目の前の、誰か一人を救い出すことができたなら。それだって立派なヒーローのはずだ。

 

俺は胸の中で、新しく、そしてより強固になった決意を刻み込む。

 

雄英高校に入る。

トップヒーローになる。

異形型への偏見を、この力で叩き潰してなくしてやる。

 

そして――あのキング・カズマのように。

誰かを絶対に守り抜く、最強のヒーローになる。

 

その大いなる目標へ向けて、兎山一真の本格的な挑戦が、今ここから始まろうとしていた。

 

(……そのためにも、まずは点Pの移動速度を計算できるようにならなきゃ異境に辿り着く前に学力で落ちるな、これ……頑張ろう……)

 




まだストックがある。

ヒロイン作るべき?

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