キングカズマinヒロアカ   作:うさぎ

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金曜日ロードショーのとき万助と佳主馬の関係をカットするのはなぜ?


第3話

 

 

 

ここで一応、俺の「個性」を確認しておこう。

個性――【ウサギ】。ウサギっぽいことができる!

 

 まんま、親戚のミルコの個性と変わらない。強いて言えば俺は獣人なことくらい。

 だから、前世の映画OZに出てくるキングカズマのように、空中を自在にステップして空を飛んだりする超常的な芸芸は不可能だった。

 

 だからこそ、俺は尾白くんタイプの個性だ。

 だが、「鍛えれば鍛えるほど強くなれる」という確信は、ミルコという最高の前例がある。やる気は十分だった。ちなみに、そのミルコも最近ヒーロー活動を本格的に始めたらしい。いつか職場体験に行きたい、というのが今の密かな野望だ。

 

 

小学六年生。俺は人生で初めての壁にぶつかっていた。

 

「また速くなったな」

 

 万助さんが静かに言う。俺は汗だくになりながら、荒い息を整えて頷いた。

 ここ数年、毎週のように地獄の修行を続けてきた成果は、確実に身体に刻まれている。身体能力だけで言えば同年代とは比較にならないし、技術も身についた。少なくとも、昔みたいに触れることすらできずに投げ飛ばされて終わり、ということはない。

 

十回戦えば、一回くらいは万助さんに一撃を掠められる。大進歩だ。

 

だが――。

 

「それで?」

 

 万助さんが、見透かすような視線を向けてくる。

 

「……」

 

「お前は何を目指してる」

 

 答えは、とっくに決まっていた。

 

「ヒーロー」

 

 万助さんは小さく頷く。「その先は?」

 

 俺は少し考えた。世界一のヒーロー。異形型差別のない社会。もちろん、それもある。

だが、俺が本当に心から目指しているものは何だろう。

前世で憧れたキングカズマのように、強くて、格好良くて、誰かのために理不尽と戦える存在。そして――あの日、俺に「ありがとう」と言ってくれた子に、迷わず手を差し伸べられるような存在だ。

 

 そして異形型差別撲滅委員会をつくる。

 

 俺は真っ直ぐに前を向いて答えた。

 

「誰かを、守れる人になりたい」

 

 万助さんは、ほんの少しだけ口元を緩めた。

 

「なら合格だ」

 

「?」

 

 「強さを求めるだけなら、ヴィジランテ(自警主義者)にでもできるからな」

 

 その言葉は、妙に深く胸に残った。

 

「よし、ならもっと修行を厳しくしても耐えられそうだな」

 

「!?」

 

 ……マズい。ヘタに格好いいことを言うんじゃなかった。今日は本当に殺されるかもしれない。

 

 

 

 その日の帰り道。俺は重い足取りで一人、歩いていた。

いつもならトレーニングがてら走って帰る気力があるが、今日のしごきは文字通り次元が違った。筋肉が悲鳴を上げている。冬の空気が冷たく、吐き出す息が白く染まる。

 

その時だった。

 

――ドォォォォン!!

 

 遠くから、空気を震わせるような爆発音が響いた。

 俺はピタリと足を止める。商店街の方向から、黒い煙が立ち上るのが見えた。

 嫌な予感が、心臓を強く叩く。気づけば、俺は限界のはずの足で走り出していた。

 

 現場に到着した時、そこは地獄絵図と化していた。

 

「ヴィランだ!」「逃げろ、こっちに来るな!!」

 

 人々が悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすように逃げていく。そのパニックの中心に、一人の男が立っていた。

 全身から激しい火花を散らしている。電気系の個性だろう。だが、その目は血走り、完全に理性を失っている。足元に転がっているのは、個性を過剰活性化させる違法薬物(トリガー)の注射器か。

 

 そして、そのヴィランの目と鼻の先に、泣き崩れている女の子がいた。

逃げる途中で転んだのだろう。周囲の大人たちは自分のことで精一杯で、誰も彼女を振り返らない。

 

 ヴィランの狂気に満ちた視線が、標的を定めるように女の子に向く。

まずい。ヒーローはまだ到着していない。

 

 脳内で、生存本能がけたたましく警報を鳴らす。

 

 だが、身体は、もう動いていた。

 

ドンッ!!

 

 骨が軋むほどの力で地面を蹴る。

 全力疾走。流れる景色。

 ヴィランの腕が振り下ろされる瞬間、俺は女の子の身体を抱き込み、そのまま横へと爆発的に跳んだ。

 

バチィィィッ!!!

 

 鼓膜を突き刺すような放電音が響き、さっきまで彼女がいたアスファルトが黒く焦げ付く。

 ギリギリだった。あと一秒、いや、コンマ数秒遅れていたら終わっていた。

 

 腕の中で、女の子がガタガタと震えている。

 

「大丈夫か……っ?」

「……う、ううん……っ」

 

 涙声だが、意識はある。

 

「怪我はないか?」

「う、うん……」

 

 よかった。ホッとしたのも束の間、強烈な殺気が肌を刺した。

視線を戻すと、ヴィランと完全に目が合った。

 まずいな完全にヘイトを買った。撃退したいが、生身の肉弾戦がメインの俺の個性にとって、電撃を纏う相手は相性が最悪すぎる。絶縁体のグローブでもあれば別だが、そんな都合のいいものは持っていない。

 

「ガキがァァァ!! 邪魔するなぁァ!!」

 

 狂乱の叫びと共に、容赦のない電撃が放たれる。

俺は反射的に女の子を抱えたまま回避行動をとった。だが、避けた先には、腰を抜かして逃げ遅れた老人がいた。

 

(このままじゃ、あの人が巻き込まれる――!)

 

考えるより先に、身体が最適解を選んでいた。

腕の中の子供と、その場にいた老人の身体を、俺のウサギの脚力で全力で突き飛ばす。安全圏へ。

 

代わりに、俺の身体が完全に無防備になった。

正面から迫る電撃の奔流。

避けられない――そう、覚悟した瞬間だった。

 

――ドゴォォォォォン!!!

 

空から隕石でも降ってきたかのような、凄まじい衝撃音がすべてを圧裂した。

突風が吹き荒れ、視界が白煙に染まる。

 

そして、その中心から、世界中の誰もが知っている「あの声」が響いた。

 

「もう大丈夫だ!」

 

俺は息を呑み、目を見開いた。

爆煙の向こうに立っていたのは――。

 

眩い金髪。見上げるような巨大な肉体。圧倒的な、希望の存在感。

平和の象徴。No.1ヒーロー。

 

「私が来た!!!!」

 

オールマイト。

前世でも、今世でも、俺がずっと画面の向こうで憧れ続けたヒーローが、今、目の前に立っていた。

 

凄まじい安心感に全身の力が抜けそうになる中、俺はまだ知らなかった。

この時、オールマイトの鋭い青い瞳が、眼前のヴィランよりも先に、一人のウサギの少年に注がれていたことを。

 

(ほう……)

 

ヴィランを見据えたまま、オールマイトは内心で小さく、しかし深く感嘆していた。

(あの若さ、あの状況で……躊躇なく他人を守るために身体が動いたか。プロでも容易ではない。あの子は――)

 

その力強い視線は、確かに兎山一真へと向けられていた。

 

後に雄英高校という最高の舞台で再会することになる二人の運命の縁は、この日、誰にも知られないまま静かに始まったのだった。

 

 

 

……と、ここまでは最高に格好いいプロットだったのだが。

 

「ヴィランに遅れをとって直撃を食らいそうになるとは不甲斐ない! 一真、今週は我が家に泊まり込みで修行だ!」

「!!?」

 

変わり果てた姿で帰宅した俺を待っていたのは、鬼の形相の師匠だった。

師匠……このままだと、俺、ヒーローになる前にあなたに殺されます。

 

 

 

 

  

ヒロイン作るべき?

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