Gift;Archive   作:ミレニアムに在籍したい(願望)

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仕事が忙しくて投稿が遅れた


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 アナウンス(こえ)が響く。

 

 

『対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません』

 

「え、え!? 何で私のこと知ってるの?」

 

 

 すぐに周囲を見渡す。

 カメラの様なものは見られないし、視線も感じない。

 しかし、声の主は明確にこちらを認識している。

 

 

『対象を確認します。才羽ミドリ、資格がありません』

 

「私のことも……一体どういう……?」

 

 

 次はミドリ。

 モモイと同じく資格無し。

 

 

「資格云々の基準もそうだが、明確にこちらの身元がバレてるとは……ミレニアムのサーバーでもハッキングされたか?」

 

 

 それくらいしか身元がバレている理由が思いつかない。

 しかし、この短時間で身元を見つけ出すとなると裏に相当な腕前のハッカーがいることになる。

 

 

『対象を確認します。天音 リンタロウ、資格がありません』

 

 

 次は俺だった。

 やはり資格は無いらしい。

 最後に残されたのは先生だけだ。

 部屋の空気が少し重く感じる……先生でもダメならどうなる?

 最悪のパターンと考えるならこちらを排除する、だろうか?

 

 

『対象を確認します。「シャーレの先生」……』

 

「あれ?」

 

 

 先生の番になってから反応が変わった。

 すぐに資格無しと判断せずに無言が続いた。

 資格……

 

 

「ヘイローの有無、大人か子供か……判断基準はこの辺りか?」

 

「呑気に考察してる場合なの!?」

 

 

 必要なことだと言う前に結果が出た。

 

 

『資格を確認しました。入室権限を付与します』

 

「え?どういうこと? 先生はいつこの建物と仲良くなったの!?」

 

 

 俺を含む三人の目線が先生に向けられる。

 当の本人も戸惑っているが、流石に怪しまざるを得ない。

 もし戻ることができたなら一度調べる必要があるかもしれない。

 

 

『才羽モモイ、才羽ミドリ、天音リンタロウの三名を先生の「生徒」として認定、同行者である「生徒」にも資格を与えます。……承認されました』

 

「お?」

 

 

 先生だけではなく、後付けで俺たちにも資格とやらが付与されたらしい。

 発言の内容からして、どうやら資格とは先生であるかどうか。

 俺たちはそのおまけみたいな扱いだ。

 とにかく権限が付与されたということはより調べやすくなったと見てもいいはずだ。

 

 

『下部の扉を開放します』

 

「……下部の扉? 目の前の扉じゃなくて?」

 

「まさか……」

 

 

 すぐに扉に触れる。

 そして力はすぐに教えてくれた。

 これは扉ではない、扉に偽装されたセンサーだと。

 こちらを認識していたのはコレが原因だ。

 劣化もあるだろうが、巧妙に隠されているから気づけなかった。

 

 

「ゆ、床が無くなっ……」

 

 

 ミドリの慌てた声と一瞬だけの稼働音。

 そして落とし穴のように開かれた床。

 吸い込まれるように三人は落ちていった。

 

 

「落とし穴!? こんなところに!?」

 

 

 唯一、俺だけは落ちなかった。

 力を使うためにセンサーに触れたから、落とし穴の範囲から外れたからだ。

 

 

『……貴方は入らないのですか?』

 

「落とし穴じゃないのか?」

 

『肯定します。それは扉です。王女の眠る間に続く道です』

 

 

 穴を覗き込む。

 垂直に続いているというわけではなく、スロープのように曲がりくねった部分も見える。

 その先が安全かはわからないが、言い分からして罠の可能性は低いと見た。

 先生はともかく二人が心配だ。

 

 

「入るよ」

 

 

 俺もまた、続くように穴に入った(落ちた)

 

 

 

 

 

 落ちた先は、思っていたより暗くはなかった。

 と言っても暗いことには変わりないが。

 

 

「っと……三人とも無事のようで」

 

 

 事前に知っていれば着地か受け身くらいはできる。

 問題があるとしたら先に落ちた三人がいまだに這いつくばっていたら踏んでしまうくらいだが、すでに三人とも立ち上がっていた。

 しかし、三人はこちらに気づいていない。

 三人の視線は一つのものに釘付けになっている。

 

 

「……へぇ」

 

 

 女の子が一人……いや、これまでの情報と場所を考慮すれば、アンドロイドが一体というべきか。

 機械仕掛けの椅子の上で寝かされていた。

 身に纏うものは何もないが、相応の物を纏えば確かに王女と言われてもおかしくはない容姿に造形されている。

 この辺りはおそらく製作者の趣味だろう。

 隣には小さなディスプレイが備えられている。

 

 

「先生」

 

 "リンタロウ、君も落ちてきたの?"

 

「あのアナウンスに急かされましたし、二人も気掛かりだったので」

 

 

 先生と共に視線は再び眠っているアンドロイドの方へ。

 

 

「先生、一応確認ですが……どう思います?」

 

 "間違いなくロボットと見るべきかな、少しだけ埃被ってるし、人は普通ならそこまで眠れないからね"

 

 

 先生と認識と意見を交わす。

 そんなやりとりを傍目にモモイはお約束の一言を言った。

 

 

「……返事がない、ただの死体のようだ」

 

「不謹慎なネタ言わないで!!」

 

「そもそも死んでるのかはまだわからんしな」

 

「え?」

 

「あのアンドロイドが本当に死んでるなら椅子に座らせて眠らせるか?」

 

 

 俺なら解体するか、スクラップ置き場で瓦礫の山の一部にしている。

 しかし、あのアンドロイドはそうじゃない。

 

 

「待機状態、あるいは電源を切られている……という可能性が高いと見るべきだろ」

 

 

 俺はアンドロイドに近づく。

 何かあったときのために愛銃に利き手を添えておく。

 ホラーゲームなら近づいた途端に……なんて事もある。

 そもそも今の状況で警戒しない方がおかしい。

 

 

「……」

 

 

 ゆっくりと手を伸ばし、アンドロイドの首筋に触れる。

 肌は、滑らかで柔らかった。

 熱は感じないが、冷たさも感じない……限りなく人肌に近いシリコンのような不思議さを感じる。

 何も知らなければ誰もアンドロイドとは気づかないだろう。

 少なくとも俺は騙される。

 

 

「……脈はない」

 

 

 わかっていたことだが、やはり生きてはいない。

 同時に力も反応する。

 解析はできているし、予想通りこれはアンドロイドだ。

 ……ただ、使われている技術があまりに常軌を逸脱している。

 内部機構どころか肌や髪に使われている技術すら俺には理解することができない。

 調月会長クラスの頭脳の持ち主なら話は変わってくるのかもしれないが。

 また、意思も感じられない。

 結局わかったのはこのアンドロイドは長期にわたってスリープ状態であるということくらいだ。

 

 

「……あれ? ここに何か、文字が書かれてる?」

 

 

 椅子の近くに設置されたディスプレイ。

 モモイは安全と思ったのか、近くに来てディスプレイを覗き込んでいた。

 俺はアンドロイドを優先して調べたので目も向けなかったが、視線を向けると確かに刻まれている。

 

 

「……えー、える、あい、えす……AL-IS(ありす)?」

 

 

 モモイが口に出して読み上げる。

 但し、それが本当に正しい読みかは少し疑問に思う。

 そもそも今の言語とこのアンドロイドが作られた時代がどれだけ離れているかわからないからだ。

 時代が違えば言語だって違うかもしれない。

 

 

「ちょっと待って、これよく見ると全部ローマ字なわけじゃなくて……AL-1S、じゃない?」

 

「え、そう?」

 

「先生はどう思いますか?」

 

 "確かにそう見えるかも"

 

「ほら」

 

 

 そんな会話をしている時だった。

 電子音が鳴った。

 

 

「ん?」

 

「な、何この音!?」

 

 "リンタロウ!!"

 

「……何がきっかけになったかはわからないが、目覚めた(きどうした)みたいだ」

 

 

 音の主はアンドロイドだ。

 同時に力が伝わる。

 アンドロイドの全身に血が通うように電力が供給されていく。

 次第に肌は熱を帯びて、本当に人肌と変わらない物になった。

 そして、王女(アンドロイド)は目覚めた。

 

 

『状態の変化、および接触許可対象を感知。休眠状態を解除します』

 

「……」

 

「め、目を覚ました……?」

 

 

 アンドロイドは目を覚ました子供のように周囲を見渡した。

 そして、少し困ったような顔をして口を開いた。

 

 

「状況把握、難航。会話を試みます……説明をお願いできますか?」

 

「……」

 

「え、えっ? せ、説明? なんのこと?」

 

 

 俺は驚いた。

 目の前のアンドロイドが同じ言語を喋っていることにだ。

 時代、技術格差……様々な要因もあり、会話が通じると思っていなかったから。

 最悪、力を使って意思を解釈すればなんとかなるかと思っていたが、思わぬ誤算だ。

 

 

「状況を説明する」

 

「え、先輩!? 普通に話しかけるの?」

 

 

 彼女の望み通り、説明することにした。

 ……というが、これは建前だ。

 会話が通じるのか?

 どこまで反応が返ってくるのか?

 調べるにこしたことはない。

 

 

「俺はミレニアムサイエンススクール所属の天音 リンタロウ。調月会長の依頼で調査に来た。その最中に君を見つけた」

 

「……」

 

 

 反応はない。

 

 

「逆にこちらからも質問だ。君は何者だ?」

 

「……本機の自我、記憶、目的は喪失状態であることを確認。データがありません」

 

 

 今度は反応があった。

 先程の無反応は思考中だったのかもしれない。

 しかし……

 

 

404 not found(なにもわからない)か、ならこちらに敵意はあるか?」

 

「否定します。接触許可対象への遭遇時、本機の敵対意思は発動しません」

 

「うわ、すごい。ロボット市民ならキヴォトスによくいるけど、こんなに私たちに似てるロボットなんて初めて」

 

「うん……先生、どうしましょう?」

 

 "「接触許可対象」って、どういう意味か教えてくれる?"

 

「回答不可。本機の深層意識における第一反応が発生したものと推定されます」

 

 "そっか……なら、今度は君の名前を教えてほしい"

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